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2006年01月17日

●DVD鑑賞 i,Robot

i,RobotのDVDをレンタル。アシモフのロボットシリーズは,こんな安っぽい話じゃなーい!と,ファンの人は皆思ったであろう。ロボット工学3原則,(スーザン・)キャルビン博士,USロボット社,陽電子頭脳など,おなじみの要素が登場して期待を持たせるだけに,失望も大きい。

まず,ストーリーは原作のi,Robot(邦題:われはロボット )に収録されているいずれの短編とも無関係だ。ロボットが明らかにロボットだと判る外見をしている点,キャルビン博士が若い(原作では確か美人という設定ではなかった...)点から,彼女が研究を始めて間もない時代という背景設定だと思うが,第1法則(ロボットは人間を傷つけてはならない)の解釈の問題に踏み込むあたりは後半のシリーズから上っ面だけ持ってきたような感じだろうか。

安易に人間に暴力を振るうロボットが登場するのは大問題である。第1法則を回避することが非常に困難だからこそ,伝説のR.ダニールとイライジャ・ベイリが活躍する傑作SFミステリとそれに続く物語が生まれたわけで,「じつはこのロボットには3原則が組み込まれていませんでした」というオチは安易すぎるし卑怯だ。アシモフに少しでも敬意を表す気持ちがあるのなら,サニーやNS-5シリーズは重度の機能不全に陥らなければウソである。

とはいえ,どの話にしろ原作に忠実に映画化するとしたら,多少の演出は入れるとしても極めて地味な映画になることは目に見えている。ロボットの見た目は人間と区別できないのでCGを使う必要はない(せいぜいC3POレベルで良い)し,そもそもロボットは絶対に暴力など振るわないし,その高度な運動能力の発露によって偶然にでも人間に危害が及ぶ可能性のあるような動作は厳に慎むため,アクションシーンも皆無である。そう考えるとこの映画はこういう感じでも仕方がなかったのかなぁ,とも思う。

現実世界のロボットはアシモにしろアイボにしろ3原則は組み込まれていない。「重いと転んだときに人にぶつかってケガをさせてしまうから軽くしよう」とか,「カドは丸くして柔らかい素材で作ろう」程度の消極的なレベルである。3原則を実現するには人工知能分野のブレイクスルーが必要であり,今も盛んに研究が行われていると思う。「ロボット心理学」がまじめに議論されるのはいつの日だろうか。