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2007年03月12日

●SF本読了 グラン・ヴァカンス

「グラン・ヴァカンス 廃園の天使I」(飛浩隆)読了。

人間(ゲスト)の訪れなくなった仮想リゾート空間で取り残されたAI達が繰り広げる物語。永遠に続くかに思われた夏の日々に異変が・・・。という背景(プロット)は著者あとがきにあるように新味は無いかもしれないが嫌いではない。話も面白いと思うのだが,描写が痛々しくてホラーかと思うような残酷な場面が多かったのが個人的には辛かった。

現実(リアル)で出来ないことが実現できる仮想リゾート空間という成り立ちを考えれば,現代の残虐系ゲームの例を挙げるまでもなく,残酷なシーンが出てくるのはある意味必然なのかもしれないが,それを正面から描かれるとやはり辛い。

さて,生身の人間の場合,与えられる苦痛のレベルがある程度大きくなると感覚遮断(意識喪失)が起きてそれ以上の苦痛は感じずに済む(たぶん)。一方AIはソフトウェア的に感覚遮断が禁止されてしまうと,痛みの変数(?)の上限値まで苦痛を感じ続けなければいけない。ここで仮に,ネコに噛まれた痛さが100,骨折の痛みが10,000だったとしよう。変数がintで宣言されていれば痛みの上限は骨折の時の3倍で済む。しかしこれがlongだったりdoubleだったりしたら...

考えるだけで痛くなってくる。

著者のノート(あとがき)より引用

ここにあるのはもしかしたら古いSFである。ただ,清新であること,残酷であること,美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。