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2006年02月27日

●フルートその後

音が出るようになるとなかなか楽しいもので,まだ曲が吹けるレベルではないがフルートの練習を続けているWebmasterである。それにしてもサックスにしろフルートにしろ,楽器というのはまことに高価である。今はKinoppy(奥様)が練習した後に少し貸してもらって吹いているが,自分の楽器が欲しいと思っても貧乏サラリーマンがほいほい買えるような値段ではない。もちろん通販などで「今日から憧れのフルートを始められます。教則ビデオ付きで29800円!」なんていう製品もあることはあるが,経験者に聞くとその品質は酷いもので,とても初心者の練習用に勧められるシロモノではないのだとか。

Kinoppyが高校時代に忙しい勉強と部活が終わってから,睡眠時間を削ってアルバイトをして貯めたお金でなんとか買った現在のフルート(サンキョウ製のエントリーモデル)が品質的に妥協できる最低ランクの品で,それでも20万円もするという。宝飾品的な価値もある数百万円級の品はまあ別としても,一般的なメーカーの普及帯の製品で30万〜60万円というのが相場らしい。音楽を志す気持ちがあっても,学生や安月給のサラリーマンが気軽に買える値段ではない。

幼児用フルートなんてモノもあって,小さい身体でもキーが操作できるように管が曲げてあったりする特殊品である。幼児が金を出せるわけもないので,家庭が相当に裕福でないと難しいと思う。まあこの辺はフルートその他の楽器に限らず道具を使う習い事や講師の報酬が高い(月謝が高い)習い事はみな同じだろう。子供の才能に差はないだろうに,貧乏人(とその子供)には門戸が極めて狭いという意味では理不尽な世界である。

話が脱線した。Webmasterの教本進度は低音は(一応)クリアして中音まで進んでいる。音響工学的に言うと基音(fundamental)で出せる領域が低音と呼ばれ,それより高く倍音(harmonic)という奏法(?)を用いる領域を中音から高音と呼んで区別するようだ。金管にしろ木管にしろ,管の長さで最低音の限界は決まってしまう。フルートは開放端(吹口)から開放端(足管)までの長さが0.6[m]で,これを基音で鳴らす場合はこれが半波長に相当するから,音速を約330[m/s]とすると演奏可能な最低音の周波数は330/0.6x2=275Hzで,これはC4の音に相当する。物理的に管を短くすれば音は高くなるが,それをやっているのはトロンボーンの類で,フルートなどでは管に穴を開けてそこを指で塞ぐか開放するかによって音響学的な管長を変えることで音の高さを変えている。これが運指によるトーンコントロールである。

運指だけでは全ての音孔を開いた状態(C#5)よりも高い音は出せない。そこで倍音が必要になる。これは基音で管長=半波長となっていた振動モード(?)を1波長とすることで,同じ運指で倍の周波数まで出せるようにするテクニック。周波数が倍になるということはオクターブが1つ上がることを意味する。さらに3倍,4倍,6倍とモードを変えていくことでさらに高い音を出す事ができ,フルートの最高音はC7程度とされている。倍音は口の形(アンブシャー;embouchure)と呼気の速度,エッジに対する入射角などが複雑に関係して出されるのだが,人間の体の特性上そのあたりが限界なのかもしれない。

とまあ,いつものように理論は完璧で,管の中の空気の粗密波がイメージできるほどに妄想を膨らませたWebmasterだが,実際に出てくる音はイメージとは程遠いのであった...。

参考:フルート(Wikipedia)

2006年02月26日

●ミステリ読了 封印再度

「封印再度ーWho insideー」(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ第5弾。駄洒落タイトルだが内容と関連もありなかなか工夫されている。

ミステリに限らず,5冊も同じ登場人物の長編を読んでいるとそれなりに愛着がわくもので,本作で萌絵ちゃんが○○になって犀川先生に××したシーンでは,すっかり動揺してしまったWebmasterである。

丸の内の神社に初詣に行くシーンがあって,Webmasterも昨年仕事で何度か丸の内のホテルに泊まったのでどの辺だろうと思って調べたら,下記に那古野神社(作中では名護野神社)というのがある。ここがモデルだろうか。Webmasterが泊まったのは少し西の22号線を渡ったあたりのビジネスホテルだった。まあだからどうだということもないのだが...。

ご参考:那古野神社(googleマップ)

2006年02月21日

●SF本読了 老ヴォールの惑星

「老ヴォールの惑星」(小川一水)[bk1]読了。小川一水は第六大陸復活の地で高評価を受けている新進の作家だが,Webmasterはいずれも未読だ。好みに合う作風かわからないのに長編をいきなり買うのはどうかと思い躊躇していたのだ。老ヴォールの惑星は中篇集ということで作風を見るにはちょうどいいと思って最初に選んでみた。

ところが読んでみるとこの中篇がいずれも素晴らしい。ハードではないのだが,思索的で読後感が良い。雰囲気はテッド・チャンに似ているだろうか。Webmasterと同年代ということもあり,今後も注目したい。

個々の収録作品については以下。

ギャルナフカの迷宮
異世界モノ。バビロンの塔(テッドチャン「あなたの人生の物語」収録)を思い出してしまった。自分が投宮刑にされたらどんな行動を取るだろうかと考えながら読むと楽しい。

老ヴォールの惑星
(人類にとっては)過酷な環境の惑星で発生・進化した知的種族の考察とファーストコンタクト。

幸せになる箱庭
コピー,ビジター,アルファレベルシミュレーション,マトリックス界,リング界,そしてトランザウト。自意識の連続性。現実と仮想現実の境界。

漂った男
これも自分がこんな目に遭ったらと考えてしまう。設定は遠未来。

2006年02月17日

●企業の情報セキュリティとモラル

会社の情報セキュリティ対策がどんどん厳しくなっている。昔は個人のパソコンを職場に持ち込んでも何も言われなかったので,私物のモバイルノートFIVAを常に持ち歩いて,スケジュール管理や会議のメモ取りに使っていた。その後,個人パソコンの業務使用(職場への持込含む)が禁止される。これはファイル交換系のソフトを入れた私物のパソコンがウィルスに感染して仕事のファイルが外部に流出する情報漏えい事故が他の職場で起きたためだ。

ノートパソコンを持ち歩けなくなったので,仕方なくデータをUSBメモリに入れて自宅に持ち帰っていた。個人パソコンの業務使用禁止のルールには抵触するが,USBメモリには備忘録や日記など,職場でも自宅でも参照する必要のあるファイルが入っていたのである。この頃はUSBメモリとローカル環境の同期を取るのが面倒で,最新の重要データがUSBメモリのみに入っているという状態になっていて,そのために起きた悲劇が日記データの喪失である。この後は懲りてバックアップをこまめに取るようになった。

そして最近,USBメモリなどリムーバブルメディアにファイルを保存するときは暗号化処理が義務付けられた。こうなると頻繁に更新するデータをいちいち暗号化して保存しなおすなどという作業は煩雑でやっていられない。そもそも暗号化したファイルはMacで復号できない。

「それならネット上に自前のサーバを立ててデータを置いておけば,職場からも自宅からもアクセスできるのでは」とちょっとスキルをお持ちの方なら考えつくと思うが,とっくの昔から業務外のインターネット使用は禁止されている。メールでデータを送る手もあるが,先日ついに社外宛て送信メールの検閲が公式に始まってしまった。

だいぶ前からスケジュール管理は紙の手帳に退化しているが,この上日記帳や備忘録まで紙メディアに退行するのはさすがに耐えられない。とりあえずの対策として,更新したデータにパスワード付きのzip圧縮をかけた上でメールで送るようにしてみた。これも大変煩雑な手順だが,USBメモリもネット上のサーバも使わず,検閲も防ぎ,さらにセキュリティにも配慮して自宅とデータをやり取りするにはこの方法しかない。

IT技術はどんどん進歩して,ネットは広帯域化し,リムーバブルメディアは大容量化,モバイルPCは軽量化してユビキタスな環境が誰にでも使えるようになってきているというのに,会社の方針は時代に逆行しているように思えてならない。

こういうことになった原因は,会社のパソコンでアダルトサイトを見まくったり,会社のアカウントで掲示板に不適切な書き込みをしたり,ろくなセキュリティ対策もせずに自宅のパソコンに重要なデータを入れたりする,モラルとスキルの低い従業員である。そして上記のようにいくら制度を厳しくしたとしても,モラルの低い従業員による(故意・過失はともかく)不正行為は防ぐことができないのだ。

対策をする費用と手間で教育を充実させた方がよっぽどいいのではないだろうか(※)。パソコンを使用する社員には初級シスアド程度の資格取得を義務付けて,合格できない社員はパソコンのない現場に配置転換するとか(過激?)。

(※)一応教育と称されるものも実施されてはいる。最近流行のe-learningというやつだが,修了試験は教材を読まなくても合格できるし(一度不合格になっても,正答が表示されるので次は間違えないし,何度でも挑戦可),その実効性には疑問がある。

このネタは公開するかどうか迷ってしばらく放置していたのですが,明日のために今日できる事。の管理人さんが同様の話を書いていたのでアップすることにしました。同じような方針の企業にお勤めの方,多いのではないでしょうか。

2006年02月12日

●SF本読了 太陽レンズの彼方へ

「太陽レンズの彼方へーマッカンドルー航宙記(C.シェフィールド)」[bk1]読了。現在絶版にならずに入手可能なシェフィールドの作品は前作と本書しかないそうで,復刊と未訳作品の翻訳を切に希望するWebmasterである。しかもシェフィールド自身は2002年に六十七歳の若さで他界されているのだそうで,残念でならない。訳者あとがきにもある通り,ハードSFの面白さと小説としての読みやすさをここまで高次元でバランスさせる業を持った作家は,そうは居ないと思う。

2006年02月09日

●フルートにも触ってみる

借用しているアルトサックスは,少しばかり練習して(これまた借用した)教本の「星に願いを」の前半が何とか吹けるようになった。もっともその音たるや星に願いをというよりは「妖星ゴラスに呪いを」という感じである。Kinoppyの根回しのおかげか今のところ苦情は来ていないが,どちらにしろ夜にこの音を出すのは気が引ける。気持ちよく吹けないとあまり練習にもならないということで,こちらは音漏れの心配があまりないフルートをKinoppyに教えてもらうことにした。

じつは1年以上前にも一度触らせてもらったことがあったのだが,このときはさっぱり音が鳴らなかったので,すぐに放り出してしまっていたのだ。ところが,最近になって再チャレンジしたところ,途切れがちで風切り音も酷いが一応音が鳴るではないか。サックスで吹奏感を養った甲斐があったというものだ(ホントか?)。

フルートの運指はサックスに負けず劣らず難しく,C→D→C→Dなんていう楽譜があったら作曲家を恨むであろう。またネックストラップなどはないので,唇と左右の手指で楽器を支えるわけだが,Cの運指は左手が人差し指だけになってしまうのでこのまま保持するのは困難極まりない。運指に気をとられると音が出なくなるし,口の方に集中すると指が動かない。特にKinoppyの楽器は押さえるボタンにご丁寧に穴が開いており(リングキー),きちんと押さえないとまともに音が出ないという初心者には厳しい仕様なのだ。

いろいろと楽器を試すのは楽しい。自分に合った楽器を見つけて続けていくことができれば,趣味の幅が広がって人生をより良いものに出来るのではないだろうか。

flute.jpg

2006年02月05日

●SF本読了 ハル

「ハル」(瀬名秀明)読了。ロボットテーマの連作集。瀬名氏の作品はSFはSFなんだけど,ホラーっぽい生々しさがあるというか,他の作家とはちょっと違う感じがする(表現が貧困で申し訳ない)。

個人的には「夏への扉」へのオマージュ「亜季への扉」が良かった。

2006年02月03日

●節分の豆まきのナゾ

節分の豆まきには殻つきの落花生をまくという話をしたらKinoppyが驚いていた。ウェブでもけっこう話題になっているようだが,殻つき落花生をまくのは北海道,北陸あたりだけで,大部分の地域では炒った大豆を投げるらしい。自分の地域の標準が,全国の標準だと思い込んでいるいい例である。

殻つき落花生は,まいたあと当然回収して食べる。小学校低学年の行事だったと思うが,図工でクラス全員鬼のお面を作らされて,それを被って体育館に集合し,キャットウォークから先生たちが落花生を投げつける・・・子鬼たちは奇声をあげながらそれを喜んで拾い集める。というのをやった記憶がかすかにある。今考えると節分の趣旨とはまったく関係がないような気がする...。

2006年02月01日

●消耗品商売のナゾ

パソコン用プリンタは本体を安く売って交換用インク・トナーで儲ける典型的な消耗品商売なのは有名な話だが,先日その実態を垣間見る機会があった。

職場で買ったのはモノクロ・A3・両面印刷対応で実売8万円台(トナー1個付き)というN社の激安レーザープリンタである。筐体はコンパクトで,安い割には印字もそこそこ速くジャム(紙詰まり)も少ない。1年3ヶ月の利用で総印字枚数は4万ページ超といったところで,なかなか重宝していた。

ところが,突然印刷結果に汚れが付くようになった。マニュアルを見て清掃してみたが改善しない。定期保守は10万枚なのでまだ余裕があるはずである。汚れは直径5ミリほどのシミが等間隔に1列に並ぶというもので,薄い汚れなので社内資料として使うならガマンできなくもないのだが,「お客さんに汚れた資料出せないから早く直して」と上司に言われてしまい,仕方なく修理の手配である。

どんな用事でもサポセンとやり取りするのは疲れる。幸いN社の電話サポートは数分待たされただけですぐにつながった。症状を伝えると「出張修理になります」とのこと。「症状を見て,その場で修理見積りを出します。ただし修理してもしなくても出張費用8千円と診断費用3千円はいただきます」という。個人ユーザならかなり悩むところだ。

幸い会社の金なので出張修理をお願いすると,以後は修理専門の関連会社とのやり取りとなる。サポセンから修理会社に個人情報を流しても構いませんか?と許諾を求められるが,ここで断ったら修理してもらえないのだろうか?

翌営業日には修理の人が来てくれた。症状を再現させて点々と付くシミの間隔を測ったりしている。汚れの原因を聞くと,トナーカートリッジの感光ドラムに汚れ(欠陥)がありますという。しかしトナーは2週間前に交換したばかりだ。というと「ええ,お客様のトナーカートリッジは純正品ではございませんので。そういうことはよくありますよ」と言われた。

トナーは会社が一括契約している指定会社が扱っているリサイクルトナーカートリッジだ。箱を見ると確かにN社とはどこにも書いていない。そういえばこのトナーは8千円ほどで,「昔に比べてトナーも安くなったなぁ」と喜んで予備をいくつも買っている。安いのは純正じゃなかったからだったのか。

この手の非純正カートリッジは,リサイクル業者が純正の使用済みカートリッジをあらゆる手段で入手して,それにトナーの粉を詰めて売っているシロモノだという。最近のトナーカートリッジはIC内蔵だったりして,他メーカーが勝手に作ることは出来ないのだそうだ。純正カートリッジを手に入れるため,メーカーの定期保守を装って会社を訪問し,トナーのチェックと交換(回収)をしていく強引な業者もいるという。

ということで,予備のカートリッジに交換したら確かに汚れは出なくなった。要するに,出張費用と診断料を払って「安物のカートリッジ使ってるからダメなのよ」と言いにきてもらったわけだ。

いくら安くても信頼性が劣る非純正リサイクルトナーを使うよりは,多少高くても純正品の方が安心だろうと,あとで値段を調べてみたら純正新品のトナーカートリッジは,なんと定価4万2千円もする!。いくら消耗品商売といっても本体の半額というのはやりすぎではないか

10万枚の定期保守にも罠があると修理の人は言っていた。このクラスだと保守するよりも新品を買った方が安いかもしれませんというのだ。個人や会社なら迷わず古い機械を捨てて新品を買えばいい話だが,役所ではそうはいかないらしい。その人が言うには,「役所では機械を買い換えるというのはとても大変で,いくら高額であろうとも保守や修理をして使い続けてくれる」のだという。増税の前にもう少し考えることがあるでしょうと,政治に疎いWebmasterでも思う今日この頃である。