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2008年12月21日

●密室トリックの傾向と対策

最近いい歳をして名探偵コナン(テレビシリーズ)のDVDを順番にレンタルして観ている。また,森博嗣氏のミステリはずいぶん読んだ。しかし,毎回毎回密室トリックがさっぱり解けずに途方に暮れるWebmasterである。コナンくんのように,あるいは犀川先生のように,もしくは紅子さんのように,はたまた海月くんのように,スマートに解決できないものであろうか。

せめて密室トリックの定石を頭に入れておいて,その可能性くらいは作中のキャラクタよりも早く検討したいところだ。密室トリックで思いつく手法としてはどんなものがあるだろう。

その前に密室の定義をしておいた方が良いかもしれない。「密室」とは初期の観察段階において次の要件を満たす状況である。

・明らかに他殺された被害者が(通常1名)おり,
・部屋の中には被害者以外に人間が存在せず,
・出入口や窓はすべて内側から施錠されており,
・それらの鍵(合鍵)は存在しないか部屋の中にあり,
・施錠された出入口や窓以外には人間が出入りできるルートがない。

こんなところだろうか。自殺の可能性を排除させるために,次のようなオプションが付く場合もある。
・上記部屋の中には凶器は存在しない(持ち去られている)。

密室トリックというのはつまり,上記の定義のいずれかが崩れる状況であると言える。
(1)他殺に見せかけた自殺である。
(2)瀕死の被害者が自分で施錠した後,絶命した。
(3)じつは隠し扉・通路などがある。
(4)犯人は入口が開けられるまで部屋の中に潜んでいる。
(5)窓・扉を細工して外部から施錠した。
 ー糸を使う,窓枠ごとはずす,蝶番をはずす,等。
(6)鍵を使って外部から施錠した後,鍵をどうにかして部屋の中に戻した。
(7)じつは施錠されていなかった。
 ー接着剤等を使って施錠されているように見せかける。
 ー施錠されていることを確認した人物が犯人あるいは共犯者である。
(8)外部から人間の通れない隙間を使って殺害した。
 ー毒ガスを流す,毒をもった動物を使う,等。
(9)犯人が部屋を出た後,時限式で作動する仕掛けで殺害した。
 ー毒入りの飲食物,タイマーやセンサで作動するメカニズム,等。

特定の作品を意識したわけではないけれど,だいたい思いついたのはこんなところ。まだあるかもしれない。だいたい(1)〜(3)の可能性は早々に除外されるケースが多いと思う(つまらないので)。(4)〜(8)はいろいろなバリエーションがあって,たいていこのどれかを集中的に考えることになる。(8)はホームズであまりにも有名になってしまった手口なので,あまり見かけない。(9)はいかに証拠を残さないか,という部分にセンスが問われる。

このあたりを考えながら見ると,もう少し楽しめるだろうか。いやむしろ早々にトリックが解けてしまったらつまらないかな?まあ今どきこの程度の可能性の列挙で解けるようなミステリはないかもしれないが...

「思考というのは、既に知っていることによって限定され、不自由になる」ーー「τになるまで待って」(森博嗣)より