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2011年09月21日

●SF本読了 結晶銀河

「結晶銀河 ー年刊日本SF傑作選ー」(大森望・日下三蔵 編)読了。

この年刊傑作選も4冊目。最近日本SFはアンソロジーばかり元気でちょっと辟易しているのだが,注目している作家の新刊がなかなか出ずに読むものもないので買ってみた。

何度か書いていることだけれど,ある程度長くSFを読んでいると,アンソロジーを読んで「すごい,こんな作家がいたのか!」という発見はほとんどない。未読の作家さんは単に好みじゃなくて読んでいないか,新人ということだ。

なので今回もそのことを確認しただけにとどまった。元々好きで文庫の新刊が出れば買っている小川一水(アリスマ王の愛した魔物),山本弘(アリスへの決別)が一番好みに合って,他の作品はまあそれなり。アリス~は短編集で既読だったので,ほとんどアリスマ王~のために買ったようなものだ。

たぶん一般の評価が高いのは長谷さんのallo,toi,toiだと思うけれど,「あなたのための物語」と同様,ちょっとヘヴィすぎて楽しめなかった。

初読の作家さんの作品の中からあえて面白かったものを選ぶとしたら「ゼロ年代の臨界点」かなぁ。ただこれはこういう企画の中で面白いという話で,この人の書く小説を今後も読んでみたいと思わせるほどのものではなかった。

あと,別のアンソロジーのNOVAからの収録(五色の船)があったけれど,読者層の重なるアンソロジー間で融通するのってなんか水増しっぽい感じを受けた。NOVAは書き下ろし,こちらは年刊傑作選だから...という理屈だと思うんだけど,それならNOVAの方は読む必要は感じない。どうせ面白い話は年刊傑作選にも収録されるんでしょ?という意味で。実際NOVAは収録作のばらつきが大き過ぎて,2以降は買ってない。

とはいえ,今後もSF界の定点観測という意味で貴重な企画なので,続いてほしいと思っている。

【収録作品】
冲方 丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
上田早夕里「完全なる脳髄」
津原泰水「五色の舟」
白井弓子「成人式」
月村了衛「機龍警察 火宅」
瀬名秀明「光の栞」
円城 塔「エデン逆行」
伴名 練「ゼロ年代の臨界点」
谷 甲州「メデューサ複合体」
山本 弘「アリスへの決別」
長谷敏司「allo, toi, toi」
眉村 卓「じきに、こけるよ」
酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)