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2007年11月25日

●ノンフィクション読了 ローバー、火星を駆ける

「ローバー、火星を駆ける—僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢」(S.スクワイヤーズ)読了。

収納スペースの関係から,自らに「文庫縛り」を課しているWebmasterは,このようなハードカバーの本を買うことができない。そこで今回は近所の図書館でリクエストしてみた。出たばかりの新刊だったのでその場では「入荷するかどうかわかりません」という回答だったが,間もなく連絡が来てあっさりと入荷。一番で借りることができた。しかも読むのに時間がかかって延長してもらい1ヶ月くらい借りた。

2,600円もする本を新品で発売間もなく読むことができるのだから,図書館も使いようだ。年に何冊か注文したら高い住民税の10%くらいは元が取れるかもしれない。

もっとも,本書は図書館に置くべき良書であることは間違いない。華々しい惑星探査機の成果の裏には途方もない苦労と挫折が隠れているということを思い知らされる一冊。また,いま現在も火星の上ではスピリットとオポチュニティという人類の手による無人探査機(ローバー)が稼働中であるという感動を味あわせてくれる。

正直,次から次へとトラブルが発生する状況を読んでいると,自分の仕事と重なる部分もあって読むのが辛い場面もあった。事前にどれだけの不測の事態を想定し,それに対処できるようにシステムを作り込むか,という大変頭の痛い問題である。無限に開発時間をかけられればいくらでも信頼性の高いものが造れるが,納期と予算という非情な制約がある中で,可能な限り実現しなくてはいけないのだ。

この件を通じていちばん感じ入ったのは,システムにINIT_CRIPPLED(ポンコツの初期化)コマンドが組みこまれていたのが解決の決め手になったことだった。探査機が火星で通常の状態にあれば,まさか使うとは夢にも思わないコマンドだ。それにもかかわらず,グレンはプロジェクト始動後まもないころに,フラッシュファイルシステムが壊れたときに対処できるものが必要だと判断し,INIT_CRIPPLEDコマンドを組みこんでおいた。そして,異常事態が発生したときにこのコマンドがミッションを救ったのだ。