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2005年12月17日

●SF本読了 啓示空間

ブックリスト更新。啓示空間(A.レナルズ)読了。一冊の文庫本で1040ページの大作。正直上下分冊にしてほしいと思った。持ち歩くにはかさばって重いし,愛用の文庫カバーは使えないし,読むときも指が疲れる。上下分冊にしなかった意図は不明だが,啓示空間という何やら謎めいた雰囲気をその厚さで表現しようと考えたのだろうか...。

ハードSF的なガジェットは満載だが,ライトな雰囲気で読みやすいと思う(上述のようにスタミナは必要だが)。これだけの分量でも詳しく描かれなかった歴史背景や小ネタ(超啓蒙時代とか連接脳派とか融合疫などなど)が気になるところだが,巻末解説によると原著では続編,続々編まで出ているというから今後が楽しみである。

出てくるガジェットのひとつに,人格のアルファレベルシミュレーションとベータレベルシミュレーションというのがあって,これについて考えるのもなかなか楽しい。

○アルファレベルシミュレーション
その人の脳をスキャンして得られた神経パターンをコンピュータ上で再現し,その人物の人格を神経回路レベルでシミュレーションする。
○ベータレベルシミュレーション
その人の入力(視聴覚などの感覚器官からの入力)と,出力(言動や行動など)をモニタ・記録し,その反応を充分長期間にわたって学習することによって,その人物と寸分違わぬ反応を返せるようになったソフトウェア(シミュレーション)。

作中では前者には人間としての権利が認められているが,後者は単なるプログラムとして扱われ権利などはないとされている。それは一見合理的に思えるかもしれないが,作中で触れられているように,ベータレベルシミュレーションだって,「あなたに自意識はあるか?」と問われれば当然「ある」と答えるし,チューリングテストにも合格する(元になった人物と同じ反応を返せるように学習させるのだから当然だ)。この場合,アルファレベルとベータレベルは同等のものとして考えていいのだろうか...。もちろん技術的に可能かどうかという問題はあるが,思考実験としては楽しめる。

啓示空間(A.レナルズ)

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