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2011年07月10日

●発電方法の謎

福島の原発事故を受けて,普段意識しなかった電力事情について,一般の方もずいぶん詳しくなったのではないだろうか。

莫大な核エネルギーを解放する原子力が実は,お湯を沸かしていただけだったと,はじめて知った方もいたかもしれない。

原子力発電や火力発電は,核分裂反応や燃焼で発生した熱でお湯を沸かし,発生した水蒸気でタービンという風ぐるまのおばけみたいなものを回す。そしてその回転エネルギーで発電機を回して電気を起こす。この水蒸気を使った発電方法のことを,汽力発電と呼んでいる。お湯が沸かせさえすれば,元の熱源は何でも良い。地熱発電というのは地下のマグマの熱でお湯を沸かすわけだ。

火力発電の仲間に,燃料の燃焼ガスで直接タービンを回すガスタービン発電や,燃焼のエネルギーで回るエンジン(ディーゼルエンジン,ガソリンエンジン)で発電機を回す方法もある。

水力発電や風力発電は,水の落ちるエネルギーや風のエネルギーで直接タービンを回して,そこから先は汽力発電と同じく発電機で電気を起こす。

ここまでの方法はとにかく発電機を回して,機械的なエネルギーを電気に変える方法。ところで発電機というのはどんなものかイメージできるだろうか?

一番身近な発電機としては自転車のライトを点けるダイナモというのがあるのだが,最近の自転車には付いていないものもある(車軸に内蔵されてしまっている)。あとは震災後に注目されている,手回し式の懐中電灯やラジオ,あれも発電機だ。磁石が作る磁界の中を,電線を横切らせる(あるいは,電線のそばで磁石を動かす)と,電線に電流が流れるという,電磁誘導の法則を利用している。

では発電機を回すとか面倒なことをせずに,もっと直接的に電気を発生させることはできないのか。

ひとつは最近風力発電と共に注目されている太陽電池。これは光を当てると電気を発生させる半導体を使っている。

それから化学反応で電気を生み出す電池の仲間。これは一次電池,二次電池,燃料電池などたくさん種類がある。共通するのは化学反応を利用しているということ。電気というのは電子の流れなので,化学反応によって物質から電子(e-)を取り出すことができれば,電池になる。

化学反応の仲間になるが,生物も電気を発生させている。神経の信号の伝達はそもそも電気を使っているし,巧妙に電気をためて放電するデンキウナギなどもいる。

他には摩擦で静電気を発生させる(雷)だとか,熱を直接電気に変えるゼーベック効果(熱電対),圧力を加えると電気が起きる圧電効果(100円ライター)あたりでだいたい網羅できただろうか。あ,磁場とプラズマを使うMHD発電というのもあった。

皮肉なことに,熱>水蒸気>タービン>発電機と,いろいろな段階を経由して効率が悪そうに思える汽力発電が,もっとも大規模に,そして安定的に電気を起こすことができる。