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2005年09月26日

●ミステリー読了 黒猫の三角

黒猫の三角(森博嗣)読了。秋の夜長はミステリー…というわけでもないのだが,未読のSF本が一段落したのでKinoppy(奥様)の蔵書の中から貸していただいた。Webmasterは小中学生の頃にホームズを少し読んだ程度で,基本的にミステリーに対する耐性がない。物語を淡々と読み進めて…度肝を抜かれた。まさかそう来るか~っという感じで,まったく理想的な読者だと自分でも思う。

今まで読んだ森氏の作品は理系ミステリーという感じで,とても読みやすく好感が持てる。気になるのは登場人物に喫煙者が多いことくらいか。推理のときなど,タバコを吸わせて間を持たせるのは確かに楽かもしれないが,非喫煙者としては喫煙者に対して少なからず悪いイメージを抱いてしまうのは事実。せめて非喫煙者の登場人物の前では吸わない気遣いを見せるとか,外で吸うときは携帯灰皿の描写を入れるとかしてくれたら良かったと思う。

黒猫の三角(森博嗣)

2005年09月24日

●火災報知器点検

マンションにはガス漏れ警報器の他に各部屋に火災報知器(火報)がある。最近は一戸建てでも住宅用火災報知器の設置が進んでいるのだとか。で,その設備の点検というのがあった。これは消防法で義務付けられている年1回の点検である。入居してから初の点検で,動作するところを始めて見ることができた。火報が動作すると,動作した火報(天井にある)が赤く点灯し,部屋のインターホン端末から警報音とよく通る男性の録音音声で「火災が発生しました!安全を確認して避難してください!」という警告が繰り返し流れる。どの部屋で火災が発生したかはオンラインで管理人室と管理会社(と消防署?)に通報がいく仕掛けだ。同時に登録してある携帯のメールアドレスにメールが届く。親切な機能だがしかし外出中にこんなメールが来たらどうしたらいいのだろう...。

ついでにベランダの避難ハッチの点検である。ここで一点訂正である。今まで避難ハッチを開けてみたことがなかったので,以前「災害対策」を書いたときに,コメントで「ベランダに下の階への縄バシゴが備え付けてあるので…」と書いたが,実際に点検で開けたところを見たらハシゴは金属製だった。カバーを開けると下の階の天井部分のカバーも同時に開き,カバー内のレバーを押すと折り畳まれた金属製ハシゴがカシャカシャと下の階まで伸びる仕組みだ。収納するときは巻き上げ装置にハンドルを差し込んでクルクル回すと再びハシゴが畳まれる。原始的な縄ばしごでなくて少し安心したWebmasterであった。

写真:携帯に火災発生のメールが届きます

2005年09月21日

●SF本読了 日本SFベスト集成'73

ブックリスト更新。日本SFベスト集成 '73(筒井康隆編)読了。ハードSF好きのWebmasterとしては取り立てて注目するような作品はなし。退屈で半分寝ながら読み終えた。資料的価値としては,野田-宇宙大元帥-昌宏氏の「コレクター無残!」などは,日本SFおよびファンダム黎明期の雰囲気を知る上で貴重かもしれない。

収録作品一覧

  • キングコング 北壮夫
  • 交代制 星新一
  • ニッポンカサドリ 河野典夫
  • 通り過ぎた奴 眉村卓
  • 霧にむせぶ夜 増村博
  • 村人 半村良
  • 立体映画 大伴昌司
  • コレクター無惨! 野田昌宏
  • 熊の木本線 筒井康隆
  • さまよえる騎士団の伝説 矢野徹
  • 不安の立像 諸星大二郎
  • タイム・ジャック 小松左京
  • 最後の狩猟 田中光二
  • 時の葦舟 荒巻義雄

73sfbest.jpg

2005年09月19日

●仕様書工房

久しぶりに「これは使える」と思うソフトを見つけた。富士通インフォソフトテクノロジの仕様書工房である。

ソフトウェアの開発ではドキュメント(仕様書)が欠かせない。ソフト開発ではまず最初に「仕様書をしっかり作れ」と言われる。細部まで検討された完全な仕様書があれば開発はほとんど完了したも同然で,コーディング作業はおまけのようなものだ。

しかし,実際にソフトを組もうとするとなかなか理想通りにはいかない。最初に仕様書は書くのだが,検討から漏れている項目があったり,コーディングしているうちに仕様が変わったりする。その度に仕様書をメンテナンスすればいいのだが,コーディング作業がメインになってくると,仕様書のメンテなど忘れてしまう。ソフトが何とか動くようになる頃には,最初に作った仕様書とはまるで違う仕様になっていたりする,という事態が往々にしてあるのだ。

仕様書工房を使えば,ソースコードを解析して一揃いのドキュメントを自動生成してくれる。「ソースコードから仕様書を作るなどというのは順序が逆ではないか」と思う方もおられるかもしれないが,ソフト開発の現場の実態は,とりあえずプログラムを仕上げて,あとでドキュメントを(余裕があれば)書くというケースが多いのである。

ソフトを納品する場合にもドキュメントは重要である。顧客によってはドキュメントの中身など見ずにその厚みだけで仕事を判断されることもある。そのためにせっせとドキュメントを作る作業は,場合によってはコーディングそのものより大変だ。仕様書工房があれば,そんな作業も自動化できる。

価格は1ライセンスで¥42,000だが,これは安いと思う。仕様書の作成とメンテにかかる手間は人件費に換算すると大変なものだからだ。Webmasterは体験版をダウンロードして少しだけ機能を確かめた後,このソフトの購入希望を上司に申し入れ,その有用性を一瞬で見抜いた上司は即座に購入を決断した。

なんだか製品の宣伝のようになってしまったが,Webmasterは富士通の回し者ではないので念のため。

2005年09月18日

●ノンフィクション読了 国産ロケットはなぜ墜ちるのか

「国産ロケットはなぜ墜ちるのか H-IIA開発と失敗の真相」(松浦晋也)読了。これまた図書館からのレンタル品。

「所詮宇宙開発はネクタイだ」という言葉がすべてを表している。日本という国にとって宇宙などその程度の認識ということだ。政治家・官僚の理工系教養のなさというのも確かに大きいと思うが,日本ではやはり国民の無理解という壁が大きいように思う。「何百億円もロケットにつぎ込んだ挙句に失敗するくらいなら,もっと他に使い道があるだろう」というわけだ。道路公団その他巨額の税金の無駄遣いに比べればロケットなどかわいいものなのだが,その価値はなかなか理解されることがない。子供を退屈させるな!というのはまったくその通りで,子供に夢を与えることもせずに小手先の少子化対策などしても意味がないとWebmasterは思う。

そんな中,「はやぶさ」の小惑星イトカワへの到着は明るいニュース。サンプルリターンに無事成功することを心より祈っている。ちなみに「はやぶさ」にはWebmasterの名前も含む88万人の署名がターゲットマーカーに刻み込まれており,もうすぐイトカワに降り立つことになっている。

国産ロケットはなぜ墜ちるのか H-IIA開発と失敗の真相(松浦晋也)

2005年09月17日

●今日見た景色 御岩神社―奥日立きららの里ー秋の空

御岩神社~奥日立きららの里~秋の空

2005年09月15日

●ミラコスタ・ウェディングの感想

この原稿は一時期Kinoppyのミラコスタウェディング紹介ページに掲載されていたものだが,レイアウトの変更に伴ってボツにされたものである。ネタも乏しいことだしここに再掲することにする。ちょっと前(2003年)の話なので,これから検討しようという方はオフィシャルページをご覧頂くか,ディズニーシーに遊びに行ったときに見学させてもらうことをオススメする。

はじめに

晩婚・非婚化が進む現代にあって,彼氏彼女を見つけること,さらにそれを結婚にまで発展させることは(一部の勝ち組を除いて)大変困難なことになりつつある。(ボカっ)・・・という原稿じゃなかった,結婚式の感想である。きっかけは恋愛でも見合いでも出会い系でもいいが,とにかく意中の異性と婚約まで話が進んだとしよう。次に考えることはどのようなスタイルで結婚するか,である。ここでは結婚式スタイルの決定までの流れと,実際どうだったかという点について新郎の立場から述べてみたいと思う。

結婚(式)のスタイル

結婚式のスタイルも時代に合わせ様々な形態がある。Webmaster家の場合はKinoppyのページ記載の通りKinoppyの念願であるディズニーシー ホテルミラコスタでのネズミ挙式に決まったわけであるが,ネズミ挙式実現までの道のりはなかなか険しいものだった。

周囲への説明

Webmasterもミラコスタウェディング自体に異論はなかったものの,費用的・人的な問題により,両家親族のみの参列による小規模な挙式にすることがKinoppyとWebmasterの共通した希望であった。しかし,である。親戚の中には昔ながらの神前挙式+披露宴(宴会)を望む方もいて,その説得に苦慮したことを一言付け加えておく。こういうネゴが煩わしくて両親や親戚の言うなりのスタイルを選択したり,そもそも結婚まで至れなかったりという方も多いと思うが,結婚するのは自分たちなので,できるだけ妥協はしない方が後々の後悔がないと,Webmasterは考える。

打合せは楽しい

基本的なスタイルを周囲に納得してもらったら,次は詳細の打合せである。ミラコスタウェディングのオススメポイントとして,この打合せを挙げておきたい。普通ならば周辺のオフィシャルホテル群と比べても高価で,予約を取ることも一苦労のミラコスタだが,「挙式の打合せです」とひとこと言えば堂々と入ることができる。混雑しているディズニーシー駐車場に入る一般客を横目に,ミラコスタ駐車場に滑り込むと優越感を味わえること請け合いである(基本的にWebmasterは貧乏人なので,考え方が貧乏臭い点はご容赦願いたい)。通常は\800/1時間の駐車料金も,打合せをすれば4時間まで無料となる。打合せが済んだらアフターシックスパスポートを買ってパークで遊んでいくもよし,ミラコスタ内にいる分には無料なので,ヴィラベスタ(ミラコスタ内のレストラン)の窓から火山と水上ショウを眺めながらケーキセットを食べるもよし。この辺は普通の結婚式場では実現できないオプションである。

他に新郎へのアドバイスとして,新婦のウェディングドレス選びの時はぜひカメラを持参することをオススメする。他のところはどうか知らないが,ミラコスタブライダルサローネでは試着の際に時間をかけて撮影してもイヤな顔ひとつせず,どころか「どんどん撮ってくださいね」と勧めてくれた。挙式当日に着られるドレスは限られるので,他のドレスを着た写真もいい記念になる。Webmasterは念入りに4着分ほど撮影した。

接客は素晴らしい

一日に何組もの挙式を行える大きな結婚式場だと,場所によっては接客態度が悪くてイヤな思いをすることがあると聞いた。その点ミラコスタはさすがにディズニー精神が徹底されており,不快な対応をされることはまずない。Webmasterたちのときも関わってくれたスタッフ一人一人が素晴らしい対応で,一切不満はなかった。

費用は高め

ミラコスタウェディングで難点を挙げるとすれば,料金の高さと予約の難しさだろうか。Webmasterたちは参列者12名の小規模なスタイルで行ったが,かかった費用はかなり高額である。地方の普通の結婚式場ならばこの費用で相当立派な披露宴ができるのでは,というレベルだ。

予約に関しては,挙式日のちょうど半年前のAM9:00から予約受付開始となるので条件は平等だと思うが,一日にできる挙式の数が限られるため,人気のある日(大安の土曜とか)の予約は相当に取りにくいのではないかと推測する。Webmasterは平日(金曜)にしたので取れないということはなかったが,かなりのスピードで予約が埋まっていくのは事実。

まとめ

Webmasterは「かわいいもの好き」ではあるが特にディズニーやミッキーマウスが大好きというわけではなかった。現にディズニーリゾートも挙式の10ヵ月前にKinoppyとデェトで行ったのが初体験である。それでもミラコスタでの挙式は大変素晴らしいもので,打合せから当日までを通して,後悔や不満は一切ない。ミッキーの登場を差し引いて,一結婚式場として考えても,ミラコスタの素晴らしさは群を抜いているのではなかろうか。最後に,素晴らしい結婚式をアレンジしてくださったミラコスタスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。本当にいい思い出になりました。

ディズニーシーの中にあるミラコスタのチャペル

2005年09月12日

●順列都市で妄想

昨日紹介した「順列都市」の中で描かれる近未来の世界では,脳をスキャンしてその人の「人格」をコンピュータシミュレーションとして仮想現実の中で「走らせる」ことが出来る。同じ仮想現実モノでも,映画「マトリックス」では身体への入出力を仮想現実で代用して,処理そのものは生体脳で行うので根本的に違う技術だ。順列都市の作品中では,生体脳を必要とせず仮想空間の中でのみ生きる前者を「コピー」,生身の人間が仮想現実空間を訪問する後者を「ビジター」と呼んでいる。

ビジターについては現実にいろいろな研究が進んでおり,視力を失った人のために視神経に信号を乗せて物が見えるようにするだとか,運動神経をモニタして「考えたとおりに動く義手」などは実現が間近らしい。簡単なところではHMDやデータグローブというものもあるし,極端なことを言えばテレビゲームのRPGなどもビジターの一種だろう。

コピーは,生身の肉体が不治の病や老衰などで,もはやコピー以外に生き延びる可能性がないときの最終手段として描かれる。仮想空間は現実の世界に似せてあるといっても,プロセッサの能力的限界から,シミュレーションできる範囲は限られているし,同様の理由で現実世界よりも「遅い」速度でしか走らせることができない。作中では最も裕福で自前のスーパーコンピュータを持っているコピーでも,その速度は現実世界の17分の1に「減速」されている。

コピーが実現するかどうかは,脳科学や神経生理学が進歩して,「人間の意識というのは大変複雑ではあるが,脳のシナプスがこのように結合して,こんな風に信号を伝達する一連の流れの中で発生するものである」という結論を下せるかどうかにかかっている。どんなに複雑であろうとも,それが神経細胞の接続と物質や電流の伝達で成り立っているのなら,原理的にはそれをコンピュータのモデルで置き換えることは可能であろう。

私たちは自分に意識があることを知っている。他人はどうか知らないが自分に意識があることは自分のことだから断言できる。「我思う,故に我有り」というわけだ。コンピュータの中のコピーはどうだろうか。「そんなものに意識が宿るわけはない」という意見もあるだろう。しかし,コピーに問いかけてみたら「私には意識がある」と言ったとしたらどうだろうか。当然チューリングテストも合格したとしよう。「そんなのは入力に対してプログラムされた回答をしているに過ぎない」というかもしれないが,それを言ったら人間だって同じようなものである。外界からの入力に対して,どうするか考え,何らかの反応を返す。コンピュータの中のコピーと同じではないか。

コピーの「意識」はどこで発生しているのだろうか。コピーを走らせるコンピュータのクロックを落としていったとする。外界から見ているとコピーの動作はどんどん鈍くなっていくが,コピーから見たら外界の速度が加速されているように見えるだろうが,同じ処理が走っていることには変わらないのだから,同じように自分に意識があると感じることができるだろう。

さて,コンピュータは計算機である。猛烈なスピードで計算を実行することができるが,つまるところ0,1の足し算引き算をやっているにすぎない。ということは,コンピュータで走っているコピーの演算を,電卓でやったらどうだろうか。時間は果てしなくかかるだろうが「筆算」でやったらどうだろう。上に書いたようにコピーの立場からすれば同じように処理されればどんなハードウェアで走ろうと変わりはないはずだ。果たして紙に鉛筆で書かれた計算式に意識は宿っていると言えるのか...。

「そろばんで計算されるコピーにも意識があると言えるのか」という意味のセリフは作品中にも登場する。どうだろうか。順列都市を読んでみようという気にはならないだろうか。少なくともWebmasterは相当シビれた。
しかも上のような話はすべて序盤で出てくるネタである。この後さらに驚天動地の物語が展開される。SFって素晴らしい!

2005年09月11日

●SF本再読 順列都市

順列都市(上)順列都市(下)(G.イーガン)を再読。Webmasterイチオシの作品である。不死,人工生命,バーチャルリアリティ,人格のダウンロード,セル・オートマトン・・・といったキーワードで興味を覚える方には特にオススメ。

「そのとおり。この宇宙は永遠ではない。~中略~ それが,不死という言葉の意味だ。長い長い時間が経ってから死ぬこと――それは意味が違う。正解は――死なないこと,以上」

順列都市(上)(グレッグ・イーガン) 順列都市(下)(グレッグ・イーガン)

2005年09月06日

●災害対策

頻発する各地の地震や台風の被害と,防災の日(9月1日)が重なった影響か,スーパーに行くと防災グッズブームという様相を呈している。かくいうWebmaster宅でも先日の宮城地震を機に非常持出し袋を一応準備した。中途半端な品揃えだと自分でも思うが,どういった災害・被害の程度を想定するかで必要なモノは大きく変わるため,一袋にまとめる品を選ぶのはかなり困難だ。

一戸建てに住んでいれば大きなタンクに水を備蓄しておくなど,とにかくスペースに余裕があるだろうからいろいろな備えが可能だと思うが,狭いマンションではいつ使うかわからない災害対策グッズを寝かせておける収納などない。都会のマンションでは災害時の対応拠点としての機能を持たせるため,共有部分に水・食料・燃料その他を備蓄しておくところもあると聞くが,Webmasterの住んでいるマンションではそのような機能はない。水道水は地上のタンクに溜めてあるが,停電してポンプが止まった場合に備蓄タンクとして使える機能があるのかどうかは不明だ。

一方,最近の台風被害を見ると,少なくともマンションのある程度の高さに住んでいれば,直接浸水するリスクだけは低いかな,と思っている。元々近くに氾濫しそうな河川はないのだが,大雨が降ると排水経路の関係などで局地的に床下・床上浸水するケースもあるだろうし,海から近いので津波が押し寄せてこないとも限らない。そんなとき一戸建てではダメージが大きいだろう。マンションだって共有部分まで浸水するようなことがあれば相応の不便はあると思うが,少なくとも家財がドロ水に浸かることはなさそうだ。

結局あらゆる災害に対する万能の対策などというものは無いのであって,人間はいろいろなリスクに妥協しながら生きていくしかない。それが出来なければフレーム問題で機能停止してしまうだろう。