December 17, 2005
SF本読了 啓示空間
ブックリスト更新。啓示空間(A.レナルズ)読了。一冊の文庫本で1040ページの大作。正直上下分冊にしてほしいと思った。持ち歩くにはかさばって重いし,愛用の文庫カバーは使えないし,読むときも指が疲れる。上下分冊にしなかった意図は不明だが,啓示空間という何やら謎めいた雰囲気をその厚さで表現しようと考えたのだろうか...。
ハードSF的なガジェットは満載だが,ライトな雰囲気で読みやすいと思う(上述のようにスタミナは必要だが)。これだけの分量でも詳しく描かれなかった歴史背景や小ネタ(超啓蒙時代とか連接脳派とか融合疫などなど)が気になるところだが,巻末解説によると原著では続編,続々編まで出ているというから今後が楽しみである。
出てくるガジェットのひとつに,人格のアルファレベルシミュレーションとベータレベルシミュレーションというのがあって,これについて考えるのもなかなか楽しい。
- ○アルファレベルシミュレーション
- その人の脳をスキャンして得られた神経パターンをコンピュータ上で再現し,その人物の人格を神経回路レベルでシミュレーションする。
- ○ベータレベルシミュレーション
- その人の入力(視聴覚などの感覚器官からの入力)と,出力(言動や行動など)をモニタ・記録し,その反応を充分長期間にわたって学習することによって,その人物と寸分違わぬ反応を返せるようになったソフトウェア(シミュレーション)。
作中では前者には人間としての権利が認められているが,後者は単なるプログラムとして扱われ権利などはないとされている。それは一見合理的に思えるかもしれないが,作中で触れられているように,ベータレベルシミュレーションだって,「あなたに自意識はあるか?」と問われれば当然「ある」と答えるし,チューリングテストにも合格する(元になった人物と同じ反応を返せるように学習させるのだから当然だ)。この場合,アルファレベルとベータレベルは同等のものとして考えていいのだろうか...。もちろん技術的に可能かどうかという問題はあるが,思考実験としては楽しめる。
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November 29, 2005
SF本読了 ハイブリッド
ブックリスト更新。ハイブリッド(R.J.ソウヤー)読了。ホミニッド,ヒューマンに続くネアンデルタールパララックス三部作完結編。人類の恥ずべき醜悪さをこれでもかと並べたてる自虐的三部作もようやく完結である。とりあえずはハッピーエンドで良かった。往復8時間の日帰り出張の移動中に疲れた頭で読んでいたせいか,ラストの盛り上がりはいまひとつという感じがした。
何度も書くが人工知能インプラント(アリバイ履歴機能つき)はかなり欲しい。少なくとも自分が装備すれば,自身の冤罪の防止と,自分を狙う犯罪者に対する抑止にはなるだろう。まあ裁判で無罪になるような精神疾患患者の他害行為はどうしようもないが…。つくづくこの世界には不条理なことが多い。
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November 16, 2005
SF本読了 ディアスポラ(2周目)
今年中に読みたいSFがあと2冊控えている(うち一冊は1,030ページの大作「啓示空間」だし...)のだが,まずは「ディアスポラ」(G.イーガン)の2周目である。現在の人間とは文字通り次元が違うソフトウエア知性たちの話なのに,読み終えたときのこの静かな感動はどこからくるのだろう。
数学描写は残念ながらさっぱり理解できないが,その突き放され具合もまた気持ちいい。
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October 30, 2005
SF本読了 ディアスポラ
ブックリスト更新。ディアスポラ(G.イーガン)読了。待望のグレッグ・イーガン新作長編。むさぼるように読んでしまった。急いで読んでもったいなかったのでじっくり味わいながら再読を始めたところである。巻末の大森望氏の解説に付け加えることは何もない。これぞハードSFの中のハードSF。ウルトラ・スーパー・ハードSFである。
あらゆる文学形式の中で,SFだけが与えうる深い感動。そのもっとも純粋なかたちがここにある。
(巻末解説より)
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September 21, 2005
SF本読了 日本SFベスト集成'73
ブックリスト更新。日本SFベスト集成 '73(筒井康隆編)読了。ハードSF好きのWebmasterとしては取り立てて注目するような作品はなし。退屈で半分寝ながら読み終えた。資料的価値としては,野田-宇宙大元帥-昌宏氏の「コレクター無残!」などは,日本SFおよびファンダム黎明期の雰囲気を知る上で貴重かもしれない。
収録作品一覧
- キングコング 北壮夫
- 交代制 星新一
- ニッポンカサドリ 河野典夫
- 通り過ぎた奴 眉村卓
- 霧にむせぶ夜 増村博
- 村人 半村良
- 立体映画 大伴昌司
- コレクター無惨! 野田昌宏
- 熊の木本線 筒井康隆
- さまよえる騎士団の伝説 矢野徹
- 不安の立像 諸星大二郎
- タイム・ジャック 小松左京
- 最後の狩猟 田中光二
- 時の葦舟 荒巻義雄
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September 12, 2005
順列都市で妄想
昨日紹介した「順列都市」の中で描かれる近未来の世界では,脳をスキャンしてその人の「人格」をコンピュータシミュレーションとして仮想現実の中で「走らせる」ことが出来る。同じ仮想現実モノでも,映画「マトリックス」では身体への入出力を仮想現実で代用して,処理そのものは生体脳で行うので根本的に違う技術だ。順列都市の作品中では,生体脳を必要とせず仮想空間の中でのみ生きる前者を「コピー」,生身の人間が仮想現実空間を訪問する後者を「ビジター」と呼んでいる。
ビジターについては現実にいろいろな研究が進んでおり,視力を失った人のために視神経に信号を乗せて物が見えるようにするだとか,運動神経をモニタして「考えたとおりに動く義手」などは実現が間近らしい。簡単なところではHMDやデータグローブというものもあるし,極端なことを言えばテレビゲームのRPGなどもビジターの一種だろう。
コピーは,生身の肉体が不治の病や老衰などで,もはやコピー以外に生き延びる可能性がないときの最終手段として描かれる。仮想空間は現実の世界に似せてあるといっても,プロセッサの能力的限界から,シミュレーションできる範囲は限られているし,同様の理由で現実世界よりも「遅い」速度でしか走らせることができない。作中では最も裕福で自前のスーパーコンピュータを持っているコピーでも,その速度は現実世界の17分の1に「減速」されている。
コピーが実現するかどうかは,脳科学や神経生理学が進歩して,「人間の意識というのは大変複雑ではあるが,脳のシナプスがこのように結合して,こんな風に信号を伝達する一連の流れの中で発生するものである」という結論を下せるかどうかにかかっている。どんなに複雑であろうとも,それが神経細胞の接続と物質や電流の伝達で成り立っているのなら,原理的にはそれをコンピュータのモデルで置き換えることは可能であろう。
私たちは自分に意識があることを知っている。他人はどうか知らないが自分に意識があることは自分のことだから断言できる。「我思う,故に我有り」というわけだ。コンピュータの中のコピーはどうだろうか。「そんなものに意識が宿るわけはない」という意見もあるだろう。しかし,コピーに問いかけてみたら「私には意識がある」と言ったとしたらどうだろうか。当然チューリングテストも合格したとしよう。「そんなのは入力に対してプログラムされた回答をしているに過ぎない」というかもしれないが,それを言ったら人間だって同じようなものである。外界からの入力に対して,どうするか考え,何らかの反応を返す。コンピュータの中のコピーと同じではないか。
コピーの「意識」はどこで発生しているのだろうか。コピーを走らせるコンピュータのクロックを落としていったとする。外界から見ているとコピーの動作はどんどん鈍くなっていくが,コピーから見たら外界の速度が加速されているように見えるだろうが,同じ処理が走っていることには変わらないのだから,同じように自分に意識があると感じることができるだろう。
さて,コンピュータは計算機である。猛烈なスピードで計算を実行することができるが,つまるところ0,1の足し算引き算をやっているにすぎない。ということは,コンピュータで走っているコピーの演算を,電卓でやったらどうだろうか。時間は果てしなくかかるだろうが「筆算」でやったらどうだろう。上に書いたようにコピーの立場からすれば同じように処理されればどんなハードウェアで走ろうと変わりはないはずだ。果たして紙に鉛筆で書かれた計算式に意識は宿っていると言えるのか...。
「そろばんで計算されるコピーにも意識があると言えるのか」という意味のセリフは作品中にも登場する。どうだろうか。順列都市を読んでみようという気にはならないだろうか。少なくともWebmasterは相当シビれた。
しかも上のような話はすべて序盤で出てくるネタである。この後さらに驚天動地の物語が展開される。SFって素晴らしい!
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September 11, 2005
SF本再読 順列都市
順列都市(上),順列都市(下)(G.イーガン)を再読。Webmasterイチオシの作品である。不死,人工生命,バーチャルリアリティ,人格のダウンロード,セル・オートマトン・・・といったキーワードで興味を覚える方には特にオススメ。
「そのとおり。この宇宙は永遠ではない。~中略~ それが,不死という言葉の意味だ。長い長い時間が経ってから死ぬこと――それは意味が違う。正解は――死なないこと,以上」
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August 27, 2005
SF本読了 UMAハンター馬子 完全版2
ブックリスト更新。UMAハンター馬子 完全版2(田中啓文)読了。面白かったが下品なので人に勧めるときは注意が必要。UMAを扱っているが,不老不死テーマの伝奇でもある。いつものダジャレも満載で,この人はマジメなんだか不真面目なんだかよくわからない。まあそこが魅力ではあるのだが。
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August 20, 2005
SF本読了 UMAハンター馬子 完全版1
ブックリスト更新。UMAハンター馬子 完全版1(田中啓文)読了。思惑通り,夏休みのリラックス読書としては最適だった。脱力系の面白さはもちろん,ミステリー仕立てで2巻が気になる。ということで早速2巻も購入してしまった。ダジャレSFで脱力したい人には銀河帝国の弘法も筆の誤りもオススメ。
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August 07, 2005
SF本読了 ヒューマン
ブックリスト更新。ヒューマン(R.J.ソウヤー)読了。ホミニッドの続編であり,ネアンデルタール・パララックス3部作の第2部になる。完結編「ハイブリッド」が待ち遠しいが出るのは2005年秋とのことでしばらくはお預けとなる。
前作に引き続き,人類(ホモ・サピエンスの方の)社会の不完全さ・醜さがこれでもか,というくらい強調されており読んでいて辛い。個人的にはコンパニオン・インプラントによるアリバイ履歴システムと遺伝子プールの浄化は(技術的に可能かどうかは別として)大いに賛成だが,現地球の限られた資源と既に増えすぎた人口,制御不能になりつつある気候・環境を前にしてはそれをもってしても軌道修正できるかどうか疑問である。なんとなく「逆襲のシャア」(映画の方)のシャアのセリフ「今すぐ愚民ども全てに叡智を授けて見せろ」というのを思い出してしまった。
とりあえず,完結編ではソウヤーらしいハードSF的な大仕掛けが用意されているのを期待して待つことにしよう。
次はリラックスするため(?)に「UMAハンター馬子 完全版1」(田中啓文)を購入。
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July 29, 2005
SF本読了 ホミニッド
ブックリスト更新。「ホミニッド」(R.J.ソウヤー)読了。出張の車内で一気に読んでしまった。ジャンルはハードではなく痛快娯楽SFというところか。好みの話ではないが楽しめた。その証拠に続編の「ヒューマン」も既に入手済みである。この三部作は今年の海外ベストSFランキングで上位に入ってくると予言しておこう。
こういうストーリー展開だと、途中で主人公を苦しめる苦難が大きければ大きいほど、または悪役が憎たらしければ憎たらしいほど,ラストのハッピーエンドが劇的に盛り上がるものだ。それはわかっているのだが,Webmasterはどうも途中の辛い場面で感情移入してしまって切ない気持ちになってしまう。「それがいいんじゃないの」と読書家な人は言うだろう。しかしそう言われても苦手なものは苦手なのである。誰も苦しい思いをしなければそれに越したことはない(それでは小説にならないが…)。しばしば人物描写が浅いと批判されるハードSFが好きなのもそういうことが関係しているかもしれない。この作品に関して言えば,人類の醜さを面と向かって指摘される辛さもある。
そして更なる苦難が主人公に降りかかるだろうと暗澹たる気持ちになりつつも,続編の表紙をめくってしまうWebmasterであった。
あ,しゃべるコンピュータ好きのWebmasterであるからして,インプラント『ハク』は当然ツボである。ほしいなぁ。
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July 16, 2005
SF本読了:ウォー・ゲーム
ブックリスト更新。「ウォー・ゲーム」(D.ビショフ)読了。1983年公開の同名映画の原作というかノベライズだろうか。表紙には映画のシーンが使われているが詳しい経緯はわからない。ストーリーは映画も小説も同じ。
映画はテレビ放映されたものを観ただけだが,気に入ってしまいビデオに録って何度も見返した記憶がある。DVDも出ているがまだ買っていない。Webmasterは人間と会話を交わすことの出来るコンピュータ(人工知能)が出てくる作品が好きで,ウォー・ゲームでは北米防空司令部(NORAD)で核戦争の戦略を練っているWOPRというスーパーコンピュータがいい味を出している。
ネタバレになるがコンピュータWOPRはラストで戦争の無益さを悟る。心のないコンピュータですら理解できることを,互いを思いやる能力を持った人間がいつまでたっても理解できないとはなんとも悲劇的である。まあこの小説(映画)の楽しみはそういう道徳的な部分ではなくて,主人公の少年ハッカーが音響カプラを駆使して学校のコンピュータをハッキングして自分の成績を書き換えたり,電話会社の課金を無効にしつつ,ゲーム会社のモデムが応答するまでその地区の電話番号に総当りをかけるプログラムを走らせる(大迷惑!)場面だろう。日本でパソコン通信「ニフティーサーブ」のサービスが開始されたのが1987年だから,かなり時代を先取りした作品だったと思う。というよりアメリカが進んでいたのか。
投稿者 gena : 10:26 PM | コメント (0) | トラックバック
July 15, 2005
SF本購入:ホミニッド
ブックリスト更新。「ホミニッド」(R.J.ソウヤー)購入。ハヤカワ文庫SFの1500番刊行記念作品。「ネアンデルタール・パララックス」という副題が付いており3部作の第1作らしい。ソウヤーの作品は今のところハズレがないので楽しみである。
ちなみにこの本は,オンライン書店ビーケーワンのブリーダープログラムで貯まったポイントで購入した。写真ってたのしいねっ経由でビーケーワンから本を買った場合に,購入金額の3%がポイントバックされるのだが,そのポイントが今回文庫本1冊買えるだけ貯まったのだ。ポイントは自分で買った分にも付くが,それだけでは到底文庫本を買える金額には届かないので,本サイトをご覧になってくださる皆様が本を注文してくださったということである。この場を借りて御礼申し上げたい。
最近写真を載せるのをサボっていたので,本文とは無関係だがピートの写真をアップ。5月22日に撮影した1枚。
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July 10, 2005
SF本読了:物体O
ブックリスト更新。「物体O」(小松左京)読了。リンクはハルキ文庫版だが,読んだのは1977年初版の新潮文庫版なので収録作が異なる。SFというよりは不思議系,あるいはホラーという感じの作品が多かった。収録作品は下記。
- フラフラ国始末記
- ダブル三角
- 返還
- 物体O
- 先取りの時代
- イッヒッヒ作戦
- 仁科氏の装置
- 骨
- 墓標かえりぬ
- あれ
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June 26, 2005
SF本読了 ソラリスの陽のもとに
ブックリスト更新。「ソラリスの陽のもとに」(S.レム)読了。帯には日本SF作家クラブ員が選んだ 海外SFオールタイムベスト第3位
とある。コンタクトものではあるが,(人類が望む形での)コンタクトが成立しないという点が珍しい類型かもしれない。というかこの作品がそういうパターンの始祖ということで高い評価がされているのだろうか。
古典SFを読む場合,未来科学・技術の予言(予測)としてどうかという楽しみ方がある。この作品の場合は建物は素粒子の消滅エネルギーによって作動する重力調節機を使って,海面から五百メートルの中空に浮かんでいた
という描写があることから,対消滅機関が実用化されている一方,コンピュータを使うためには電源を入れてから真空管が温まるまで待たなければいけないという具合だ。
哲学的なお話が好きな方にはオススメの作品だが,近い年代の作品なら「都市と星」(A.C.クラーク;1956年)を推したいWebmasterである。
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June 10, 2005
SF本読了:復活の日
ブックリスト更新。「復活の日」(小松左京)読了。またまた古い作品だが不覚にも電車の中で泣いてしまった。タイトルからわかる通り、希望のあるラストなので「渚にて」のような人類完全滅亡モノではないが,ほとんどそれに近い悲壮感がある。もう40年も前にこれほどわかりやすい形で警鐘が鳴らされているというのに、人類は未だに核兵器の全廃すら出来ずにいる(それどころか新たに開発している国すらある有様だ)。世界中の軍事予算を医学や宇宙進出に振り向けることができたら、人類はずっと短期間に遥かな高みに達することができるだろう。逆にそうしなければいつまで経っても一瞬で自分達の滅亡を招く危険性と共に暮らしていくことになる。何度も同じようなことを書いている気がするが、子供が悪いことをして叱る親御さんは、その子から「なぜ核兵器が必要なのか?」「大人だって殺し合いをしているじゃないか?」と問われたらなんと答えるつもりだろうか。子供にはわからない大人の世界とでも言うのか。果たしてそんな世界に子供たちは夢を抱けるのか…。それはともかく風邪に罹るのが怖くなる作品である。
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June 09, 2005
SF本購入:ソラリスの陽のもとに
ブックリスト更新。「ソラリスの陽のもとに」(S.レム)購入。これまた古い作品(原著は1961年)だが,オールタイムベストSFに必ず挙がってくる有名作なので,そのうち読まねばと思っていたもの。最近国産SFばかり読んでいたのでバランスを取る意味もある。
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June 04, 2005
SF本読了:'72日本SFベスト集成
ブックリスト更新。「'72日本SFベスト集成」(筒井康隆 編)読了。'71から一転して(個人的には)凡作揃い。というか71年のレベルが高すぎたのかもしれない。SFとして楽しめたのは第4回星雲賞受賞作の「結晶星団」(小松左京)くらいで,「おれに関する噂」(筒井康隆)や「門のある家」(星新一)もお話としては面白いと思うが,これらをSFと言われてしまうと違和感がある。編者の解説によればニューウェーブということらしいが,だとしたらWebmasterはニューウェーブ系SFは苦手ということになる。
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May 15, 2005
SF本読了:'71日本SFベスト集成
ブックリスト更新。「'71日本SFベスト集成」(筒井康隆 編)読了。以前Kinoppyに寄贈して頂いたうちの一冊。半村良,小松左京,広瀬正,光瀬龍,星新一ら豪華な顔ぶれによる短編集。光瀬龍の時代劇SF「多聞寺討伐」が良かった。
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May 08, 2005
SF本読了:太陽の簒奪者
ブックリスト更新。「太陽の簒奪者」(野尻抱介)読了。第34回星雲賞受賞作。Webmasterにしてはすごい勢いで読破してしまった。あまり早く読み終えてしまうと娯楽としてのコストパフォーマンスが低くなってしまうのだが面白いものは仕方がない。ファーストコンタクトものの直球ハードSF。日本の現役SF作家でこのような宇宙ものハードSFが書ける人は実はすごく少ない(と思う)。
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May 04, 2005
SF本読了:タイムマシンのつくり方
ブックリスト更新。「タイムマシンのつくり方」(広瀬正)読了。日本SF史に残る不朽の名作「マイナス・ゼロ」の広瀬正が,マイナス・ゼロ以前に書いたショートショートを集めた本らしい。時間テーマの作品が多い。ショートショートなので気楽に読める。集英社文庫版は1982年第1刷。
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April 30, 2005
SF本購入:太陽の簒奪者
ブックリスト更新。「太陽の簒奪者」(野尻抱介)購入。小説は文庫しか買ってはいけないという縛りを自らに課しているWebmasterである。本書もようやく文庫化されたことを知り,購入しようと思って大手の書店を回ったのだが置いていない。新刊といえどもSFには厳しい世の中である。まあそんな扱いには慣れているのでネットで買おうかと思い始めた頃,新居の近所に小さい書店があるのを発見した。文庫の書架を見てみると(Webmasterは入ったことのない書店を見つけると,とりあえずSFの品揃えはチェックすることにしている),ラッキーなことに上記の本が置いてあるではないか。他にも数点気になる本があり,思わぬ発見であった。
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April 21, 2005
SF本読了:コンタクト
ブックリスト更新。「コンタクト(上)」「コンタクト(下)」(C.セーガン)読了。ジョディ・フォスター主演の映画はDVDを持っているが,原作の方は未読だったのだ。映画は派手さを抑えた硬派な出来で,SF映画の中ではWebmasterお気に入りのひとつである。原作はハードSFといっても良いくらい刺激的で,これを読んだ後に映画を観たら(肝心な見せ場が端折られていて)ちょっとガッカリするかもしれない。特にハデン(ハッデン)の野望,異星人が語る宇宙の秘密などの描写は素晴らしい。充分に妄想系SFである。SETI@homeで200ユニットほど計算に協力したところで中断しているWebmasterだが,これを読んでまた再開したい気分になった。2005年現在,地球外知的生命からの電波を捉えたという報告は聞かない。また(少しネタバレだが),円周率πの計算記録は1012桁程度であるが,その中にメッセージが見つかったという話も聞かない("01234567890"や"111111111111"のような面白い数列はいくつか見つかっているようだ)。生きているうちに本当のコンタクトが実現することを切に願っている。
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March 31, 2005
SF本再読:あなたの人生の物語
「あなたの人生の物語」(T.チャン)を再読。収録作の「理解」をもう一度読みたくて手に取ったところ,思わず全部通して読んでしまった。設定はファンタジーだが雰囲気はSFという絶妙な作品(バビロンの塔,72文字,地獄とは神の不在なり 等)などは,SFが苦手な人にも楽しめると思う。とにかく全編ハズレなしの素晴らしい短編集である。チャンを読まずしてSFを語るなかれ
-G.ベア-
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March 09, 2005
SF(?)本読了 奇術師
ブックリスト更新。「奇術師(ハヤカワ文庫 FT 357)」(C.プリースト)読了。買ったときに書いたように輝かしい実績をもつ作品。読んで損はないと思う。SF的仕掛け(ガジェット)も多少登場するものの,Webmaster的にはミステリー,あるいはホラーのように感じた。ファンタジーとSFの境界的作品という評価をよく見かけるが,まさにそんな感じである。Webmasterの好みのジャンルではないが,それでも続きが気になってグイグイ引き込まれたということは,小説としての完成度がそれだけ高いということかもしれない。
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February 15, 2005
SF(?)本購入 奇術師
ブックリスト更新。「奇術師(ハヤカワ文庫 FT 357)」(C.プリースト)購入。名古屋駅構内を少しウロウロしてみたのだが,大型の書店は発見できず。駅ビルの高島屋が開店すればその中には入っていたかもしれないが,朝は残念ながら閉まっていた。仕方がないので新幹線車中は寝て過ごした。上野駅での乗り継ぎの待ち時間は15分ほどしかなかったが,その間にいつものブックガーデン ディラ上野店に寄って,すかさず手にとったのが本書。ファンタジーレーベルからの出版でありながら,先日買った「SFが読みたい!2005年版」で,ベストSF2004海外篇の2位に選ばれており,さらに1996年の世界幻想文学大賞受賞作であり,その上「このミステリーがすごい!2005年版」の海外篇10位にランクインしているという凄まじい作品である。いくら受賞作やランキングの結果にこだわらないWebmasterでも,これだけの実績を無視するわけにはいかない。むしろこれほど話題になっている作品(しかも文庫)を昨年中に読めなかったことを恥ずべきであろう。
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February 13, 2005
SF本読了 非Aの傀儡
ブックリスト更新。「非(ナル)Aの傀儡(創元SF文庫)」(A.E.ヴァン・ヴォークト)読了。うっかり出張に向かう往路の新幹線の中で読み終わってしまった。ということは帰りの電車で読む本がない・・・。名古屋駅構内に大きい書店あるだろうか。というのはともかく,非Aの傀儡は「非(ナル)Aの世界(創元SF文庫)」の続編であり,非A二部作の後編となる。非(ナル)Aというのはあとがきから引用すると,『非A』つまり『非アリストテレス的思考体系』とは,コージブスキーがつけた一般意味論の別名である。~中略~ 要するに,アリストテレス論理学の三大法則,(1)AはAである(同一の法則),(2)すべてのものはAであるか,非(ナル)Aであるかのいずれかである(中間除外の法則),(3)Aであり,同時に非Aであるものは存在しない(矛盾の法則),――を根本的に打破するところから出発する。~後略~
なのだそうだ。とにかく古い出版(雑誌連載の初出は1948年)ということで古典もいいところである。たまには
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February 12, 2005
SF本購入 SFが読みたい!2005年版
SFが読みたい!2005年版を購入。購読しても読むヒマがないのでSFマガジンは買っていないWebmasterである。従って新刊SFの情報はWebとこの「SFが読みたい!」に頼っている状況だ。単にランキング上位の作品を買えばいいというものでもない,という話は前にも書いたとおりで,この中の解説や書評を精読して,自分のツボにハマりそうな作品を厳選していくわけである。また,ランキングに入っている作品はハードカバーのものも多く,地道に文庫化されるまで待つという苦労もある。
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January 28, 2005
SF本読了 過負荷都市
ブックリスト更新。「過負荷都市(ハヤカワ文庫 JA 544)」(神林長平)読了。タイトルにつられて買った作品である。神林氏が新潟出身ということも関係しているのだと思うが,作中で新潟市の描写が出てくる(しかも異世界として描かれる)のには同じ新潟出身者として不思議な感覚であった。主人公がターゲットを追って鳥屋野潟にかかる弁天橋を渡るシーンなどはその様子がリアルに想像できる。そういう楽しみはあったものの,氏の作品で個人的にツボにはまるのは本作のように「言葉」や「想い」をテーマにした話よりも,雪風シリーズや魂の駆動体のような機械を扱ったお話の方である。
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January 24, 2005
SF本読了 前哨
ブックリスト更新。「前哨(ハヤカワ文庫 SF 607)」(A.C.クラーク)読了。全11編の短編集であり,表題作は「2001年宇宙の旅」の元ネタになったお話である。全体的に読みやすく読後感も良い。このあたりはアシモフ,クラーク,ハインラインの3巨頭に共通する要素ではなかろうか。