定額給付金を当て込んで自分のギターを選んでいる。予算は3万+α程度と少ないが,こういうのはどうしようかと悩んでいるうちが楽しい。
楽しいのだが,困っていることがある。(アコースティック)ギターに関する情報がカタログにもネットにもほとんどないのだ。
これが例えばカメラであれば,カタログで詳細なスペックを確かめ,ネットで使用感などカタログに載らない部分の情報を得ることも容易い。こっちの機種は安いけれど連写性能が遅いなとか,ISO1600でのノイズはこっちの機種の方が目立たないけど少し予算オーバーだとか,あーでもないこーでもないと楽しいひとときを過ごせるわけである。
それがギターではどうだろう。例えばここにモーリスのカタログがある。予算の中でギリギリ買えそうなのは,M-32IIというギターだ。
M-32II
スプルース単板とローズウッドのドレッドノート・ボディが特徴のエントリーモデル
ネック幅43mm,弦長650mm
なるほど,このクラスになると表板だけは単板なのか。しかし,カタログから得られる情報はこれだけ(形と板材と弦長・ネック幅)である。外形寸法や重量はどこにも書いていない。
別にスペック至上主義というわけではないけれど,せめて30万円の上位機種と比べて装飾と板材以外にどんな点が違うのかとか,他メーカーの同価格帯のギターと比べてどんな特長があるのかとか,そういうことが知りたいのである。
その点ヤマハはまだ良心的だ。外形寸法は載っているし(でも重量は書いていない),それぞれのグレードの機種でブレイシングの工夫だとか,ネックとボディの接合方法の違いだとか,割と細かく書いてある。しかしスペック上はまったく同一だけど価格が3000円違う機種(FG700SとFG720S)があったりして,やはりまだわかりにくい。
それではネットで口コミ評価でも見るかと検索してみるが,ヒットするのは通販サイトばかり。ユーザーレビューも絶対数が少ない上に情報が断片的で間違いがあったりもして,ほとんど参考にならない。質問サイトで初心者が「初めて買うギターはどれが良いでしょう?○○という機種と△△という機種で悩んでいますが,この2つの違いは何ですか?」と聞けば,回答は決まったように「お店で弾いてみて気に入った方を買ってください」である。
いや,ここまで読んだギタリストのあなたが何を思っているかはだいたい分かる。「ギターはスペックじゃない,フィーリングだ!」と言うのだろう。あるいは個体差が大きくてスペックだけで判断するのは危険だということを教えたいのかもしれない。そんなことはもちろん分かっている。自分だって最終的には試奏して気に入ったものを買うつもりだし,買った後はスペックがどうとかいちいち気にすることはないだろう。
しかし,主要メーカーの主要なギターがすべて展示してあって好きなだけ試奏できる東京の有名ギター店の近所に住んでいる人ばかりではないということを考えてほしい。小さなお店の場合は「探してくれ」と言うにしても,ある程度候補の機種を絞り込んでから伝える必要があるのだ。そのときに(弾いてみる前の段階で)拠り所となるのはカタログのスペックであり,メーカーが工夫した点であり,ネットでのベテランの意見なのだ。「当社独自の◇◇製法により,上位機種に迫るサスティーンを実現しています」とか,「○○のA材は△△のB材と比べて温かみのある音がするけど,B材も弾き込むと良い音になってきます。指弾きなら○○,ジャカジャカやるなら△△がお勧めだけど,最終的にはお店で弾いてから決めてね」とか,そういう情報が欲しいわけである。
というわけで,楽しいはずの道具選びで少し欲求不満がたまっているWebmasterであった。