自宅の給湯器は都市ガス(13A)を使っている。スペックを見ると総合64kW(給湯52kW,風呂12kW)と書いてある。風呂12kWというのは追い炊き能力のことだろう。
52kWの給湯能力とはどれほどのものか。フル出力で1時間運転したとして得られる熱量は52kWh。1kWhは860kcalだから,52x860=44,720kcalになる。
一方,1gの水の温度を1℃上げるのに必要な熱量が1calなので,風呂に必要な200リットル(=200kg)の水を冬場の5℃の水温から40℃の適温まで温めるのに必要な熱量は,(40-5)x200x103=7,000,000cal=7,000kcalだ。
従ってこの給湯器でお湯張りをすると,7,000÷44,720=0.16時間,つまり約10分で風呂を適温のお湯で満たすことができる。お湯張りの時間は実際もこんなものだ。
さて,では昨日のお風呂のお湯があまり汚れなかったので,お湯を捨てないでおいて,今日は追い炊き機能を使って沸かしなおすことにしよう。この場合は12kWの能力(1時間で10,320kcal)だ。水温は寒い時の室温と考えて15℃程度からのスタートとすると,40℃まで温めるには(40-15)x200x103=5,000kcalが必要となる。
追い炊きで沸かす場合には,5,000÷10,320=0.48時間,つまり約30分かかるわけだ。追い炊きだとやけに風呂が沸くまでに時間がかかるな,と思っていたが計算すれば当たり前の話であった。
ガスの燃焼温度は2000℃ほどで,それで単純に水を温め数十℃程度のお湯を得る,というのが普通の給湯器(うちはコレ)だが,その温度差を見れば判るようにこれではあまり効率が良くない。特に最近ではオール電化に押され気味のガスなので,極力ガスの熱量を有効に使おうと,潜熱を回収して床暖房までする給湯器(エコジョーズ)や,いっそのことガスの燃焼でエンジンを回して発電して,お湯はその排熱で沸かしてやろうという家庭用コージェネ(エコウィル)などがこれからのトレンドである。
オール電化住宅の給湯設備で,でかい貯湯(ちょとう)タンクが付いてくるのは,電気給湯器の能力的な問題。電気はガスのように大熱量を短時間に発生させるのが苦手なので,ちょっとずつちょっとずつお湯を沸かしてタンクに貯めておき,シャワーなどで大量に使うときはこのタンクからお湯を供給するのである。設計がマズい昔のお宅だと,来客などがあって大量にお湯を消費するとシャワーが途中で水になる,なんてことも起きた。
うちで使っているシャワートイレは「瞬間湯沸し方式」といって,お湯タンクを持たずその都度電気で洗浄用のお湯を作るタイプだ。お尻に当てる細い水流のお湯を作るだけでも,その消費電力は1.2kWと,家庭用電気製品の中ではドライヤーと同じくらいの重量級である(給湯器の能力との違いに注目!)。貯湯保温によるロスがない分,総消費電力量はおトクらしい。