●SF本読了 ダイナミックフィギュア
「ダイナミックフィギュア(上・下)」(三島浩司)を読了。Kindle版。
内容の割にボリュームがありすぎた感じ。そして長かった割にちょっと首を傾げたくなる結末。
ファーストコンタクトものなのにそっち方面へはほとんど向かわず,リアル巨大ロボ(?)とそれを管制する組織のゴタゴタの話に終始していて,とはいってもエンターテインメントにも徹しきれず...。
ということでちょっと好みの方向性ではなかったです。
「ダイナミックフィギュア(上・下)」(三島浩司)を読了。Kindle版。
内容の割にボリュームがありすぎた感じ。そして長かった割にちょっと首を傾げたくなる結末。
ファーストコンタクトものなのにそっち方面へはほとんど向かわず,リアル巨大ロボ(?)とそれを管制する組織のゴタゴタの話に終始していて,とはいってもエンターテインメントにも徹しきれず...。
ということでちょっと好みの方向性ではなかったです。
「プランク・ダイヴ」(G.イーガン)を再読了。2年ぶりかな。
イーガンの文庫化された本はすべて所有しているはずだが,震災後の混乱でどこに埋もれたかよくわからない本もある。Kindle化されたら全部買い直してしまいそう。(2013年7月現在,イーガンの書籍はまだ一冊もKindle化されていない)
「百億の昼と千億の夜」(光瀬龍)を再読。Kindle版。
小説版もマンガ版も持っているけれど,実家に置いたままで最後に読んだのは(自分のWebサイトの記録に残っていないということは)15年以上前ということになる。
日本SFの金字塔と呼ぶにふさわしい名作。「マイナス・ゼロ」とともにオールタイムベストに必ず入ってくる作品。ついKindle版も買ってしまった。
「機龍警察 暗黒市場」(月村了衛)を読了。Kindle版。
まだ文庫化されていないのでKindle版の価格も高かったけれど,文庫化なら二分冊になりそうなボリュームだったし,まあ仕方がないか。
ヘヴィな話だったけれど,楽しく一気に読めた。まだまだ続きそうな感じ。
「盤上の夜」(宮内悠介)を読了。Kindle版。
将棋や囲碁などを題材とした異色のSF。大変面白かった。
将棋の電王戦なんていう話題もあったし、囲碁はまだまだコンピュータが人間の棋士に勝てるところまではいかない、そんな背景もあって楽しめた。
「フランケンシュタイン 野望」(D.クーンツ)を読了。
瀬名秀明さんの本を読んでいると必ず目にするD.クーンツの名前だけれど,ホラーっぽいのかなと思って敬遠していて,読んだのは初めて。
けっこうSF系の話で素直に楽しめた。日本だと伝奇という感じのジャンルかも。かなり長いシリーズもののようで,紙の本で買い続けるか,Kindle版が出るのを待つか迷うところ。Kindle化の予定などもわかると便利なんだけど(紙の買い控えが起きるから無理かな?)。
「天冥の標VI 宿怨PART3」(小川一水)を読了。
第6巻の完結編。この第6巻の3冊は非常にヘヴィな展開だった。この後どうなっていくのか,楽しみに待ちたい。
現在はKindle版も出ているけれど,買い始めたときは紙版しかなかったので,行きがかり上ずっと紙版を買っている。途中からKindleにしてしまうと中途半端な気がして。
「量子怪盗」(H.ライアニエミ)を読了。Kindle版。
かなりボリュームがあったように思うけれど,Kindle版だと「厚み」というものがないのでよくわからない。
文庫縛りのために今までは読めなかった新しい作品が読めるのは嬉しい。ものすごく面白い,というほどではなかったけれど,デビュー作だそうなので今後に期待かな。
「MM9-invasion-」(山本弘)を読了。
MM9の続編。まだ文庫化されていないけれど,Kindle版で読むことができた。ラノベ的展開がなかなか良い感じ。さらに続くようなので楽しみ。
文庫化されていない作品が読めるというのは大変助かるのだけれど,価格設定はちょっと納得しがたいものがある。文庫化されている作品ならば,Kindle版は文庫と同等かちょっと安いくらいの価格がついている。しかし文庫化されていない作品は,単行本よりも若干安いが文庫よりもかなり高い。単行本が高いのはまあわかる。装丁が立派だしコレクション的な意味もあるからだ。しかしKindle本はそういうプレミアムはないし,解説も省かれているし,ちょっとねぇ,という感じ。
「ペルセウス座流星群」(R.C.ウィルスン)を読了。
なかなか面白かったと思うけれど、この人の作品は長編も短編もあと一歩という感じ。途中まではすごくわくわくするけれど、オチがちょっと残念とか。どっちかというと散々引っ張った仮定体3部作よりも、短編の方が好みかな。
それにしても昨年末に買ったKindle PW3Gでまだ1冊しか読んでいない。紙の文庫本で先に出てしまうと買ってしまうからなぁ。出版時に「これは1ヶ月後にはKindle版が出ます」とかアナウンスでもあれば待つんだけど。
ペルセウス座流星群といえば,以前観察したのがペルセウス座流星群だった(2007年,2009年)。
【収録作品】
アブラハムの森
ペルセウス座流星群
街の中の街
観測者
薬剤の使用に関する約定書
寝室の窓から月を愛でるユリシーズ
プラトンの鏡
無限による分割
パール・ベイビー
「キリストのクローン/覚醒(上・下)」(J.ボーセニュー)を読了。
3部作の完結編。途中「おっ?」と思う展開もあったものの,あまりSF分がないまま終わってしまった。エンタメとしてはまあアリかもしれないけれど,〜クローンという言葉からもっとSFな展開を期待した割にはちょっと残念な終わり方。
解説で,アメリカ出版界には「クリスチャン・フィクション」というジャンルが確立していて,かつそれらはほとんど日本には入ってきていない,というのが一番勉強になったかな。
3.11の東日本大震災から1年9ヶ月。波はあるものの余震は続いていて,今月も一回津波注意報が出たりした。原発事故の放射線は,2012年12月末現在で0.055〜0.060uSv/hくらい。昨年の半分以下,1/3近くに下がってきている。事故前に比べると2倍くらいの値。
トピックスとしてはアマチュア無線関係が多かった。開局した当初は災害時に安心かな,という程度だったのが,うっかりCW(モールス通信)を試してみたところが,これがけっこう面白くてハマってしまった。オールモードの無線機FT-817を買ったり,ハムフェアにも出掛けてみたし,コンテストに参加して海外とも交信することができた。
新しいことに挑戦するのは楽しいし,これからもアマチュア無線は少しずつ続けていければ良いと思っている。ただし,1年間やってみてそんなにのめり込むようなことはないだろうと踏んでいる。なぜかといえばアマチュア無線は所詮「金がないと極められない/金さえあればそこそこ極められる」趣味だとわかったから。もちろんCWをはじめとしてPhoneでもオペレートのスキルに依存する部分はあるし,アンテナだとか電波伝搬を勉強することは必要だ。でも,いくらスキルを磨いたって無線機が買えなければ交信できないし,アンテナを建てる場所だって要る。そして無線機や道具類はいちいち高価。お金のない人は私のようにQRP(低出力)と移動運用で慎ましくやるのが精一杯。この1年で無線関係に20万円くらい使っても,だ。
そういう意味ではアマチュア無線というのは楽器やスポーツよりも,車だとかカメラに近い趣味ではないだろうか。そしてつぎ込んだ金額で満足度が変わるような趣味にはそれほど夢中になることはできない。これから続けていくにしても,投資は最小限に,スキルと知識を伸ばす方向で楽しみたいと思っている。
アコースティックギターの弾き語りは,無線とは対照的に90%はスキル依存であり,こっちの方こそ末永く楽しめる気がしている。とはいえスキルに依存するということは常に練習していないと上達はないということで,忙しいとなかなか厳しいのが実態。かろうじて年2回の発表会(春と秋)だけは参加するようにしている。
猫のピートは7歳,デルタは5歳になった。今年はいつものフォトコンテストで,かんなさんの撮った写真が特別賞を受賞した。日々の写真はアメブロの方に載せている。
読書は年末になってついにKindleが発売され,私も早速PaperWhite 3Gを購入した。今後紙の本と電子書籍の読書比率がどのように変わっていくのかは予測できないけれど,1年後の総括ではある程度方向性が見えてくるかもしれない。保管場所のことを考えるとKindle優位なので,購入を迷っている本が複数ある場合はKindle版が出ている方を優先する可能性は高い。
ということで今年読んだ本は下記。
【SF】
キリストのクローン/新生(上・下)(J.ボーセニュー)
キリストのクローン/真実(J.ボーセニュー)
南極点のピアピア動画(野尻抱介)
希望(瀬名秀明)
連環宇宙(R.C.ウィルスン)
天冥の標6 宿怨 PART1(小川一水)
白鹿亭綺譚(A.C.クラーク)
銀河ヒッチハイク・ガイド(D.アダムス)
拡張幻想 ー年刊日本SF傑作選ー(大森望・日下三蔵 編)
宇宙の果てのレストラン(D.アダムス)
機龍警察 自爆条項(上・下)(月村了衛)
天冥の標6 宿怨 PART 2(小川一水)
宇宙クリケット大戦争(D.アダムス)
去年はいい年になるだろう(上・下)(山本弘)
フェッセンデンの宇宙(E.ハミルトン)
さようなら、いままで魚をありがとう(D.アダムス)
ほとんど無害(D.アダムス)
小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団(瀬名 秀明, 藤子 ・F・不二雄)
【ミステリ】
工学部・水柿助教授の逡巡(森博嗣)
工学部・水柿助教授の解脱(森博嗣)
四季 春(森博嗣)(再読)
タカイ×タカイ(森博嗣)
朽ちる散る落ちる(森博嗣)(再読)
シャーロック・ホームズ作品集(I) お風呂で読む文庫(C.ドイル)
シャーロックホームズ作品集(II) お風呂で読む文庫(C.ドイル)
【ご参考】
2011年総括
2010年総括
2009年総括
2008年総括
2007年総括
2006年総括
2005年総括
「小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」(瀬名 秀明, 藤子 ・F・不二雄)を読了。
Kindle Paperwhite 3Gで初読書。
作品についてはこれはもう瀬名氏だけに間違いはない。懐かしいやら素晴らしいやら,マンガでは描かれなかった細部までフォローされている上,瀬名氏のオリジナルエピソードも心憎い。同時にあらためて原作の素晴らしさを再確認できる。
四次元空間に道具を配置することで、省スペース化と物質の劣化対策がなされている。ただしユーザーの状況によってはタグとの記号接地問題がうまく解決されず、無関係な道具が次々に選択されてしまうというプログラム上の欠陥も抱えているようだった。
Kindleについては,紙と比べるとちょっと読みづらいように思った。e-inkの特性なのか表面処理のせいなのか,コントラストが低いというか,黒が黒くないというか,エッジが眠いというかそんな感じ。ただ便利な点は多いし,集中していれば気にならないかな。充分に「読書」はできると思う。
何より本作のように文庫になってない単行本を,保管スペースを気にせず購入できる点は素敵だ。ワンクリックで瞬時に購入して読み始められるので,「そろそろ今の本が読み終わりそうだから,次に読む本を買っておかないとな」という心配もしなくて済む。
写真はKindle(ライトの設定は真ん中くらい)と紙の本を並べたところ。肉眼で見た印象とはやはり違うので,kindleを検討している方は実物を見てみることをオススメしたい。
「ほとんど無害」(D.アダムス)読了。
銀河ヒッチハイクガイドシリーズの5作目で完結編。いやに読みやすいし良くまとまっている素直な話だなと思いながら読み進めていったらこのラストですか。やっぱりマーヴィンが出てくる話の方が好きかな。
「さようなら、いままで魚をありがとう」(D.アダムス)読了。
銀河ヒッチハイクガイドシリーズの4作目。マーヴィンがあまり出てこないのでイマイチかな。訳者解説にあるエピソードの方が面白い。
原著はKindle版が当然のようにある。
「フェッセンデンの宇宙」(E.ハミルトン)読了。
表題作はSFのサブジャンルとして確立された概念であまりにも有名であるが、恥ずかしながら未読だった。
とりあえずこの表題作さえ読めれば良いかな、という思いで読み始めたけれど、どの作品も素晴らしかった。フェッセンデンの宇宙をはじめ、現在のSFはだいたいハミルトンが考えたプロットを現代風のガジェット(電脳とか)で焼き直しただけなんじゃないか、という気さえしてくる。もちろんそれが悪いということではなくて、ハミルトンの想像力が素晴らしかったということだ。
【収録作品】
フェッセンデンの宇宙
風の子供
向こうはどんなところだい?
帰ってきた男
凶運の彗星
追放者
翼を持つ男
太陽の炎
夢見る者の世界
世界の外のはたごや
漂流者
フェッセンデンの宇宙(1950年版)
「去年はいい年になるだろう(上・下)」(山本弘)を読了。
素直に面白かった。今後も山本氏のSF新刊は買いたいと思う。そういえばAmazonのKindleストアが日本でもはじまって,山本氏の新刊もKindle版で買えるようだ。
電子書籍についてはいろいろと問題もありそうだが,住居スペースが狭く,購入するのを文庫本だけに縛っていてすら置き場所に苦労している現状を考えると,さっさとKindleに移行してしまった方が良いのかもしれない。なんといっても文庫落ちしていない単行本もKindle版なら気にせず買える。
「宇宙クリケット大戦争」(D.アダムス)読了。
銀河ヒッチハイクシリーズの第3作。そもそもクリケットがどんなスポーツかわからないので,というかそれが原因かどうかもよくわからないけれど,前2作と比べるとちょっと微妙だった。
でもここまで読むと一応最後まで読んでおかないと気持ちが悪いので,残り2作も買ってある。
「天冥の標6 宿怨 PART 2」(小川一水)読了。
現在一番楽しみにしているシリーズ。なかなか恐くて悲しい展開が続いているけれど,個人的にはハッピーエンドに向かってほしい。でもここまで悲劇を書いてしまうと厳しいかなぁ。
いずれにしても続刊が待ち遠しい。
「機龍警察 自爆条項(上・下)」(月村了衛)読了。
「機龍警察」で中途半端な終わり方だと感じた通り,シリーズだったようだ。だったらそう書いておいてくれないと。
格段に面白くなってきていて,でもまだ肝心のところが伏せられていたりするので,今後が楽しみ。
「拡張幻想 ー年刊日本SF傑作選ー」(大森望・日下三蔵 編)読了。
アンソロジーにはちょっと食傷気味で,NOVAの方は買うのをやめてしまったけれど,こちらは一応「年間傑作選」を謳っているので買い続けている。
「今まで知らなかった好みの作家の発見」については今回も特になかったけれど,個別に好みの作品はけっこう多かった。特に「5400万キロメートル彼方のツグミ」は非常にクサいネタではあるが,不覚にも落涙。歳のせいか涙もろくなっている。他にも「巨星」,「美亜羽へ贈る拳銃」,「黒い方程式」,「超動く家にて」,「結婚前夜」,「絵里」なども良かった。既読だが「ふるさとは時遠く」も好き。「〈すべての夢|果てる地で〉」もこれがデビュー作ということで凄いと思った。
【収録作品】
小川一水「宇宙でいちばん丈夫な糸 ――The Ladies who have amazing skills at 2030.」
庄司 卓「5400万キロメートル彼方のツグミ」
恩田 陸「交信」
堀 晃「巨星」
瀬名秀明「新生」
とり・みき「Mighty TOPIO」
川上弘美「神様 2011」
神林長平「いま集合的無意識を、」
伴名 練「美亜羽へ贈る拳銃」
石持浅海「黒い方程式」
宮内悠介「超動く家にて」
黒葉雅人「イン・ザ・ジェリーボール」
木々津克久「フランケン・ふらん ―OCTOPUS―」
三雲岳斗「結婚前夜」
大西科学「ふるさとは時遠く」
新井素子「絵里」
円城 塔「良い夜を持っている」
理山貞二「〈すべての夢|果てる地で〉」(第3回創元SF短編賞受賞作)
「銀河ヒッチハイク・ガイド」(D.アダムス)を読了。
スラップスティックSFって普段あまり読まないけれど,そもそも書いている人が少ないのかもしれない。他にはラッカーとか?
人生,宇宙,すべての答えが知りたい人は読んでおいた方がいいだろう。
続編もあるようなので,最近他に新刊も買っていないし,読んでみようかどうするか。
「白鹿亭綺譚」(A.C.クラーク)読了。
久しぶりのクラーク。最近疲れているので軽めの作品でちょうど良かった。
軽いけれどさすがの切れ味。やっぱり巨匠というのはすごい。
「天冥の標6 宿怨 PART1」(小川一水)を読了。
早いものでもうシリーズ6巻目。まだ最初に戻って再読はしていない。今回劇中の年表が巻末についているが,案の定かなり忘れている。そろそろ未読本もなくなりそうだし再読してみても良いけれど,震災後にばらばらになってしまったので発掘するのが大変そう。
「連環宇宙」(R.C.ウィルスン)読了。
前作「無限記憶」の感想で,「第3部が出るのは当分先になりそうだし,その間に内容を忘れてしまいそう。」と書いたけれど,3年経って本当にすっかり忘れてしまっていた。共通する登場人物のことも名前くらいしか思い出せない。
それでもまあ,3部作の完結編ということで,最後の方は割と楽しめたかな。
メン・イン・ブラック3を鑑賞。
映画の日の夕方の上映で,お客さんは10名ほど。3Dの字幕版。
本当はアバターを観たときの反省から,2Dが良かったのだけれど,時間の都合で3Dになった。
せめて自然に見えるようにと,中央後ろよりの席を取ったおかげで,まあそれほど疲れることはなかったけれど,やっぱり3Dじゃなくても良かったように思う。アバターのときは3D方式が4つくらいあって,この劇場はどうだとかいう話題もあったけれど,最近そういうのは聞かなくなった。どれかひとつに統一されたのだろうか。メガネを購入するタイプだった。持込みも可。
1と2はテレビで観ただけだが,けっこう好きなシリーズ。3もなかなか面白かった。
都市伝説としてのメン・イン・ブラック(黒衣の男)は日本ではあまりポピュラーではないけれど,UFOとともにけっこう好きな話である。
参考リンク:メン・イン・ブラック3公式サイト
「希望」(瀬名秀明)を読了。
パラサイトイヴ以来の作品の中で,SFっぽいものはだいたい読んでいるつもり。でも正直に言ってBrain Valleyより後の作品は今ひとつピンとこない。
美しい文体で,なんとなーく深いことを書いているんだろうなぁ,とは思うけれど,ちょっと難しいというかわかりづらいと思う。こんなことを書くと「おまえの読解力が不足しているだけ」と言われそうだ。
まあ個人の好みの問題であって,解説にもBrain Valley以降こそ瀬名氏の真髄だ,みたいなことが書いてあったので,たぶん非常に高尚すぎてSFとミステリをちょっと読むだけの私には理解できないだけなのだろう。
【収録作品】
・魔法
・静かな恋の物語
・ロボ
・For a breath I tarry
・鶫(つぐみ)と鷚(ひばり)
・光の栞
・希望
「南極点のピアピア動画」(野尻抱介)読了。
尻Pの作品は短編を除くと「魔法使いとランデブー」以来5年ぶり。
寡作なのがもったいないけれど,国内SF作家でお気に入りの一人。やはり読後暗い気分になるような作品よりは,明るいものが好きだ。
今のところボーカロイドには興味はなくて,初音ミクは買っていないし歌を聴くこともない。DTMは中学生くらいまでは興味があったけれど,現在は自分で楽器を演奏するスキルを磨く方が楽しい。
「キリストのクローン/真実」(J.ボーセニュー)読了。
3部作の2作目。今のところまだ第3部は出ていないようなので,しばらく待ち。
キリスト教の知識としては,W.ワンゲリンの小説聖書(旧約編,新訳編)程度しかないけれど,けっこう頷ける内容が多い。結末がどこに向かうのか楽しみ。
「キリストのクローン/新生(上・下)」(J.ボーセニュー)読了。
この人の本は初読。そもそも創元推理文庫なのだが,宗教SFはけっこう好きなジャンルなので未読本もなくなったことだし買ってみた。
3部作ということでお話はまだ途中。SFかどうかはともかく,けっこう引き込まれる感じ。
2011年,やはり311の東日本大震災のインパクトは大きかった。幸い我が家は人的・猫的な被害はなかったし,マンションは揺れがひどくて家財はずいぶんダメになったが,住むところがなくなったわけではない。インフラが復旧するまで2週間に及ぶかんなさんの実家での避難生活も大変ではあったがとにかく家族がみな無事だったことを感謝したい。当時の日記を読み返すと,なかなか生々しい。給水車に3時間並んだこと,わずかしか品物のないスーパーに入店するのに2時間並んだこと,福島原発の状態を注視しつついざというときに逃げるためのガソリンを温存して徒歩で行動したこと,10日間シャワーも浴びられなかったこと,一日に何度も沢に水汲みに通ったこと…。できればもう二度と経験せずに済ませたいものだ。
震災後も余震が続き,9ヶ月以上経った現在でも1日か2日に一回くらいは体感できる揺れがある。そんな状況なので狭い部屋の中は備蓄の水や食料品などが所狭しと並び,倒れたり落ちて危険なものはすべて撤去するか床置きにしてあり,とても人様にお見せできる状態ではない。こんな体制をいつまで続ければいいのか,難しいところだ。
原発事故の放射線だが,2011年の12月現在で,事故前の5倍くらいの値(0.14uSv/hくらい)で推移している。ちなみに5月は0.2uSv/hくらいだった。
震災以外の話題としては,iPod touchを買って日記(プライベートな方)をEvernoteに移行したこと,盆栽を買ったこと,かんなさんのパソコン更新,そしてアマチュア無線の免許(3アマ)を取って,無線局を開局したことなどがあった。
アコースティックギターの弾き語りは現在ほとんど教室には通っておらず,コードを忘れない程度に気が向いたときにちょっと弾くくらい。アコギは手軽な楽器ではあるが,本当に忙しいとやはり手が付かない。ただ,来年も発表会だけは出ようと思うので,何か課題曲を考えなければいけない。
猫のピートは6歳,デルタは4歳になった。猫のネタはいちいち書いていないけれど,それは安定した日常ということで幸せなことだ。写真はアメブロの方に載せている。
読書は淡々と文庫新刊SFを読んだり再読したり。
【SF】
スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選(山岸真編)
さよならペンギン(大西科学)
ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>(大森望編)
アンブロークンアロー戦闘妖精・雪風(神林長平)
青い星まで飛んでいけ(小川一水)
地球移動作戦(上・下)(山本弘)
天獄と地国(小林泰三)
天冥の標IV: 機械じかけの子息たち(小川一水)
ねじまき少女(上・下)(P.バチガルピ)
あなたのための物語(長谷敏司)
結晶銀河 ー年刊日本SF傑作選ー(大森望・日下三蔵 編)
プランク・ダイヴ(G.イーガン)
ZOKURANGER(森博嗣)
究極のドグマ―穂瑞沙羅華の課外活動(機本伸司)
冷たい方程式(T.ゴドウィン他)
天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河(小川一水)
【ミステリ】
黒猫の三角(森博嗣) 再読
人形式モナリザ(森博嗣) 再読
月は幽咽のデバイス(森博嗣) 再読
夢・出逢い・魔性(森博嗣) 再読
魔剣天翔(森博嗣) 再読
恋恋蓮歩の演習(森博嗣) 再読
六人の超音波科学者(森博嗣) 再読
キラレ×キラレ(森博嗣)
捩れ屋敷の利鈍(森博嗣) 再読
赤緑黒白(森博嗣) 再読
工学部・水柿助教授の日常(森博嗣)
【その他】
吾輩は猫である(夏目漱石) 電子ブック
「天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河」(小川一水)読了。
シリーズ折り返し地点。ますます続きが楽しみに。復習の意味でそろそろ最初から再読するかどうか迷うところ。ちなみに今回はエロくありませんのでご安心を。
「冷たい方程式」(T.ゴドウィン他)を読了。
またまたアンソロジーだが,これはまあ別格かな。SF入門的な傑作揃い。
表題作は有名な短編だが,恥ずかしながらこれまで未読だった。震災を経験した後ではよりいっそう重いテーマである。
辺境の人間は遠いむかしに、自分たちを滅ぼそうとする力を呪うことの無益さを悟った。なぜなら、それらの力は盲目で聞く耳を持たないからだ。そしてまた、彼らは天にむかって慈悲を請うことの無益さを悟った。なぜなら銀河系の星でさえ、憎しみも哀れみもない法則によって冷酷に支配され、二億年という長い長い周期でその軌道を運行しているにすぎなかったからだ。 ーー「冷たい方程式」より
【収録作品】
徘徊許可証 R.シェクリイ
ランデブー J.クリストファー
ふるさと遠く W.S.テヴィス
信念 I.アシモフ
冷たい方程式 T.ゴドウィン
みにくい妹 J.ストラザー
オッディとイド A.ベスター
危険! 幼児逃亡中 C.L.コットレル
ハウ=2 C.D.シマック
「究極のドグマ―穂瑞沙羅華の課外活動」(機本伸司)読了。
前2作を読んで,面白いけど少し自分の好みとはズレているかなぁ,と思っていたのだが,今回はネコSFという噂を聞いたので購入。
まあ終わり方なんかはまずまずだったと思うけれど,ネコ分が不足していたように思う。あとキャラ萌えを狙うにしてももう少しかなぁ,という感じ。と言いつつつい買ってしまうということで,タイトルとかテーマの選び方はうまいのかな,と思う。
「プランク・ダイヴ」(G.イーガン)読了。
待望のイーガン新刊。本当はガチガチハードな内容の長編をふーふー言いながら読みたいところだが,本書は短編集でもハードSF分がかなり濃厚なのでオススメ。逆にハードSFが苦手な人にはまったくオススメできない。
とにかくもう全編オススメなのだが,イーガン好きとしては「ワンの絨毯」は外せないだろう。ディアスポラの4章との違いを比較しながら読み返したい。
「暗黒整数」もイーガンが初めて続編を書いた作品という意味で,「ルミナス」とともに再読したいところ。ダークインテジャ。シビれる。
long int i1, i2, i3;
dark d1, d2, d3;
"long int" は長整数型、通常の二倍のビットで表現される量のことだ。この年代物のマシンでは、それはたぶん合計六十四ビットのことだろう。「"dark"ってのは、なんなんだ」詰問口調になった。ふだんなら初対面の相手にそんな口のききかたはしないが、いまは冷静を装う気はなかった。
キャンベルは笑いながら、「暗黒整数」ですよ。わたしが定義した型です。四千九十六ビットあります」
----「暗黒整数」より
【収録作品】
クリスタルの夜
エキストラ
暗黒整数
グローリー
ワンの絨毯
プランク・ダイヴ
伝播
「結晶銀河 ー年刊日本SF傑作選ー」(大森望・日下三蔵 編)読了。
この年刊傑作選も4冊目。最近日本SFはアンソロジーばかり元気でちょっと辟易しているのだが,注目している作家の新刊がなかなか出ずに読むものもないので買ってみた。
何度か書いていることだけれど,ある程度長くSFを読んでいると,アンソロジーを読んで「すごい,こんな作家がいたのか!」という発見はほとんどない。未読の作家さんは単に好みじゃなくて読んでいないか,新人ということだ。
なので今回もそのことを確認しただけにとどまった。元々好きで文庫の新刊が出れば買っている小川一水(アリスマ王の愛した魔物),山本弘(アリスへの決別)が一番好みに合って,他の作品はまあそれなり。アリス~は短編集で既読だったので,ほとんどアリスマ王~のために買ったようなものだ。
たぶん一般の評価が高いのは長谷さんのallo,toi,toiだと思うけれど,「あなたのための物語」と同様,ちょっとヘヴィすぎて楽しめなかった。
初読の作家さんの作品の中からあえて面白かったものを選ぶとしたら「ゼロ年代の臨界点」かなぁ。ただこれはこういう企画の中で面白いという話で,この人の書く小説を今後も読んでみたいと思わせるほどのものではなかった。
あと,別のアンソロジーのNOVAからの収録(五色の船)があったけれど,読者層の重なるアンソロジー間で融通するのってなんか水増しっぽい感じを受けた。NOVAは書き下ろし,こちらは年刊傑作選だから...という理屈だと思うんだけど,それならNOVAの方は読む必要は感じない。どうせ面白い話は年刊傑作選にも収録されるんでしょ?という意味で。実際NOVAは収録作のばらつきが大き過ぎて,2以降は買ってない。
とはいえ,今後もSF界の定点観測という意味で貴重な企画なので,続いてほしいと思っている。
【収録作品】
冲方 丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
上田早夕里「完全なる脳髄」
津原泰水「五色の舟」
白井弓子「成人式」
月村了衛「機龍警察 火宅」
瀬名秀明「光の栞」
円城 塔「エデン逆行」
伴名 練「ゼロ年代の臨界点」
谷 甲州「メデューサ複合体」
山本 弘「アリスへの決別」
長谷敏司「allo, toi, toi」
眉村 卓「じきに、こけるよ」
酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)
「あなたのための物語」(長谷敏司)読了。
この人の本は初読。なんというか,読んでるだけで体調が悪くなるような生々しい感じ。ちょうどラストを読んでいるときに本当に体調を崩してしまった。
このテーマでよく描ききったなと感心するけれど,個人的には何度も書いているようにSFはハッピーエンドが好きなので,ちょっとキツかった。
「ねじまき少女(上・下)」(P.バチガルピ)読了。
SF賞総なめと聞くと,どうしても「あ,これは自分の好みではないな」と判断してしまう。
今回もまあほぼその予想通り。ただ,石油枯渇後の世界ということで,エネルギーの描写は興味深かった。今はとにかく便利なので何にでも電気が使われるけれど,確かにぜんまいとかフライホイールというのはもっと見直されても良いエネルギー蓄積手段かもしれない。
「天冥の標IV: 機械じかけの子息たち」(小川一水)読了。
これは...エロい。ほとんどエロ本と言っても良い。電車で読めないという評判を見たことがあるけれど,既婚者が自宅で読むのもなかなか勇気が必要だと思う(奥さんの見てる前でエロビデオやエロ本を堂々と見られる人はあまりいないでしょう?)。
ただ,お話としては面白いし,シリーズの重要なパーツではある。そしてこれだけエロい話をしておきながら,最後はちゃんとさわやかに持っていくあたりが素晴らしい。
「天獄と地国」(小林泰三)読了。
短編のアイデアを長編化したものらしい。小林氏にしてはグロさもそれほどでもなく,素直なSFだと感じた。
いろいろと明かされていない謎などもあって,もし続編が書かれるなら読んでみたい。s
「地球移動作戦」(山本弘)読了。
面白かったけれど,放射線障害,大地震,津波,竜巻などなどあまりにもタイムリーなネタ満載で驚いた。そして作中で起きる大災害で想定された大地震のマグニチュードを,311の地震は超えてしまったという事実もまたすごい。事実は小説を超えるというのはこういうことだ。
でもやっぱり,SFも現実もハッピーエンドの方が良い。
ちなみに山本氏のブログによると,この文庫版の印税はすべて義援金として寄付されるそうだ。
「青い星まで飛んでいけ」(小川一水)を読了。
最近の日本人SF作家の中では,一番波長が合う感じがするのが小川一水。次が山本弘と野尻抱介あたり。
ハードすぎず,読後感も爽やか。解説にもあったけれど,クラーク的な感じ。
ストレートな「都市彗星のサエ」や表題作「青い〜」ももちろん良いけれど,間に「占職術師の希望」なんかが入っているあたりも嫌いではない。チャンの短編集みたいな雰囲気。
天冥の標シリーズの続きが本当に楽しみ。
【収録作品】
・都市彗星のサエ
・グラスハートが割れないように
・静寂に満ちていく潮
・占職術師の希望
・守るべき肌
・青い星まで飛んでいけ
「アンブロークンアロー戦闘妖精・雪風」(神林長平)を読了。
前作「グッドラック」を読んだのが2002年ということで,正直に言って大まかなプロットくらいしか記憶になく,しかも意識とか言葉の話に入り込んでいってしまうために読み切るのが大変だった。
雪風<改>からグッドラック,そして本作と間を置かずに読んだ方が楽しめるかもしれない。雪風が好きだったので続編も買っているわけで,そのうち最初から再読したいけれど,雪風(無印)は実家だったかなぁ。
いずれにしろ神林作品を一番読んでいたのは2001年前後で,その頃の(文庫の)作風の方が好みというのは間違いない。魂の駆動体とか。
「ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>」(大森望編)読了。
結局買ってしまったアンソロジー。確かにどれも読み応えのある傑作だと思うけれど,それってつまり自分で短編集を買っている作家の本なんだよなぁ。ということで半分くらい(5作品)は既読の作品だった。
【収録作品】
野尻抱介「大風呂敷と蜘蛛の糸」
小川一水「幸せになる箱庭」
上遠野浩平「鉄仮面をめぐる論議」
田中啓文「嘔吐した宇宙飛行士」
菅 浩江「五人姉妹」
上田早夕里「魚舟・獣舟」
桜庭一樹「A」
飛 浩隆「ラギッド・ガール」
円城 塔「Yedo」
伊藤計劃+新間大悟「A.T.D Automatic Death■ EPISODE:0 NO DISTANCE, BUT INTERFACE」
神林長平「ぼくの、マシン」
「ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル」(T.チャン)読了。
文庫本化はされていないのだが,図書館でSFマガジン2011年1月号を借りて読んだ。SFマガジンはずいぶん前に購読してみようかと2ヶ月ほど買ってみたことがある。しかしブックカバーを付けて持ち歩くことができないし,他に読みたい文庫本があるのに連載まではとてもフォローできないよ,と思って早々に諦めた思い出がある。
今回のように図書館で借りて部分的にチェックするなら,お金もかからないしゴミも出ないので良いかもしれない。何よりチャンの次の文庫が出るのを待ってたらいつになるかわからない。
話の内容はストレートなAIもので,ちょっと意外だった。枚数の割に他のチャンの短編ほどのインパクトはなかったかな。
「SFが読みたい! 2011年版—発表!ベストSF2010国内篇・海外篇」(SFマガジン編集部編)を購入。
SF界の定点観測のために毎年買っている。
個人的には2010年は海外,国内ともにあまりぱっとした印象がない(小川一水の天冥の標を除く)。
何度も書いたがアンソロジーは豊富に出たけれど,長編で好みのハードSFがほとんど読めなかった。ランキングでもハードSFと言える作品は入っていないんじゃないかな。もちろんアンソロジーだって悪くはないし,何も出ないよりは遥かにマシだけど,「売れるSF=短編」みたいな風潮にはなってほしくない。
「さよならペンギン」(大西科学)読了。
まったく存じ上げない作家さんだったのだが,偶然ツィッターで大西氏をフォローしてみたら,茨城ネタをけっこうつぶやいておられて,身近に感じられたのがきっかけで購入してみた。
なんとなく普段のつぶやきが面白い作家さんの本は気になるもので,ある程度の販促効果はあると思う。
普段読むジャンルの作品ではないけれど,良いお話だった。
「スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)」(山岸真編)読了。
最近このようなアンソロジーがたくさん出て,文庫と言えども安くはないので少々うんざりしているところだが,本邦初訳のイーガンの短編が収録されているとあっては買わざるを得ない。あざとい商売である。
で,やっぱり良かったのはイーガンの表題作,個人的にハズレなしと思っているソウヤー,あとは元々日本で人気のあるブリンの3作という無難な感想に。まだ買っていない新作SFアンソロジーが何冊かあるけれど,お金がもったいないのでしばらくは再読キャンペーンとしたい。とにかくイーガンの新作長編が早く読みたい。
【収録作品】
死がふたりをわかつまで(G.A.ランディス)
技術の結晶(R.C.ウィルスン)
グリーンのクリーム(M.G.コーニイ)
キャサリン・ホイール[タルシスの聖女](I.マクドナルド)
ローグ・ファーム(C.ストロス)
引き潮(M.S.リー)
脱ぎ捨てられた男(R.J.ソウヤー)
ひまわり(C.A.グーナン)
スティーヴ・フィーヴァー(G.イーガン)
ウェディング・アルバム(D.マルセク)
有意水準の石(D.ブリン)
見せかけの生命(B.W.オールディス)
2010年といえばSF読みにとっては意義深かったけれど,現実にはこれと言って大きなトピックのなかった年だったかもしれない。カメラ店のフォトコンテストで最優秀賞をもらったのと,5年ぶりにパソコンを買い換えたのがうれしかったかな。
日常のネタはツィッターでつぶやくことが多くなって,ブログの更新が停滞するようになったのも今年の特徴。これはネット界全体に共通する話で,何年も更新を続けてきた日記やブログが今年からぱったり更新されなくなったという人を何人も見ている。これが一過性の現象なのか来年以降も継続するのか,さらに新しい何かが出てくるのか注目である。
アコースティックギターの弾き語りは継続して習っているが,2年目に入って多少音の違いが判るようになってきたというのか,弦やギターのパーツが気になった年でもあった。サドルを買って削ったり,アンプを買ってピックアップを付けたりもした。ただこれは反省点でもあって,つい器材の方に興味がいってしまいがちになるのだが,いくら器材が充実しても腕が上がるわけではないので,演奏の練習に力を入れるべきだろう。
アメーバの猫写真ブログの方はとうとう惰性で今年も1年間毎日更新を続けてしまった。小さいサイズの写真をアップするようにしているので,無料の2GBを使い切るまでには50年くらいかかる計算である。忙しかったり旅行中でも毎日更新できるのは,事前に公開する日時を指定して記事を書いておける予約機能のおかげだ。
車(ポロ)のネタはあまり書いていないが,想像よりもトラブルが少ないためである。今後トラブルが増えてきたら記事にする機会が増えるかもしれない。(できれば増えないでもらいたいが)
読書も文庫新刊SFは低調で,なんだか最近はアンソロジーばかり出て食傷気味。商売的に売りやすいのだろうか?唯一の収穫は小川一水の「天冥の標」シリーズで,まあこのシリーズが始まったことだけでも2010年は価値があったかも。
【SF】
NOVA1(大森望 責任編集)
ZOKU(森博嗣) 再読
メシアの処方箋(機本伸司)
虐殺器官(伊藤計劃)
Self-Reference ENGINE(円城塔)
ラギッド・ガール(飛浩隆)
ゼロ年代SF傑作選(SFマガジン編集部編)
天冥の標<1> メニー・メニー・シープ(上・下)(小川一水)
天冥の標II 救世群(小川一水)
微睡みのセフィロト(冲方丁)
アードマン連結体(N.クレス)
機龍警察(月村了衛)
地球最後の野良猫(J.ブレイク)
パズルの軌跡 穂瑞沙羅華の課外活動(機本伸司)
MM9(山本弘)
NOVA2(大森望 責任編集)
天冥の標 3 アウレーリア一統(小川一水)
スペースプローブ(機本伸司)
量子回廊—年刊日本SF傑作選(大森望,日下三蔵[編])
アリスへの決別(山本弘)
神狩り2 リッパー(山田正紀)
天体の回転について(小林泰三)
ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (大森望編)
ディアスポラ(G.イーガン) 再読
ハーモニー(伊藤計劃)
【ミステリ】
Φは壊れたね(森博嗣) 再読
θは遊んでくれたよ(森博嗣) 再読
τになるまで待って(森博嗣) 再読
すべてがFになる(森博嗣) 再読
冷たい密室と博士たち(森博嗣) 再読
λに歯がない(森博嗣)
そして二人だけになった(森博嗣) 再読
笑わない数学者(森博嗣) 再読
詩的私的ジャック(森博嗣) 再読
封印再度(森博嗣) 再読
ηなのに夢のよう(森博嗣)
ゾラ・一撃・さようなら(森博嗣)
幻惑の死と使途(森博嗣) 再読
夏のレプリカ(森博嗣) 再読
今はもうない(森博嗣) 再読
イナイ×イナイ(森博嗣)
数奇にして模型(森博嗣) 再読
有限と微小のパン(森博嗣) 再読
「ハーモニー」(伊藤計劃)読了。
虐殺器官ほどではないが,こちらもなかなか怖いお話。
さすがにこの世界みたいになったら極端すぎるとは思うけれど,身近な人を病気で亡くすと,WatchMeみたいなテクノロジーがもしあれば,みたいに考えることはある。
あー,なんかクリスマスくらい素直なハッピーエンドの作品を読んで迎えるようにしたかったな。
「ディアスポラ」(G.イーガン)を再読。たぶん5回目。
最近買っても良いかな,と思うSF新刊(の文庫)はアンソロジーばかりという気がする。短編もまあ悪くはないけれど,たまにはヘヴィ級のハードSF長編が読みたい。
「ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 」(大森望編)読了。
テッド・チャンの短編が読めればいいや,と思って買ったら,他の作品も面白くて当たりのアンソロジーだったと思う。特に好みなのは「彼らの障害の最愛の時」「昨日は月曜日だった」「旅人の憩い」「12:01PM」「しばし点の祝福より遠ざかり」,表題作の「ここがウィネトカなら・・・」と,そしてもちろんテッド・チャン「商人と錬金術師の門」。またバビロンの塔が読みたくなった。
【収録作品】
商人と錬金術師の門(T.チャン)
限りなき夏(C.プリースト)
彼らの生涯の最愛の時(I.ワトスン&R.クアリア)
去りにし日々の光(B.ショウ)
時の鳥(G.A.エフィンジャー)
世界の終わりを見にいったとき(R.シルヴァーバーグ)
昨日は月曜日だった(T.スタージョン)
旅人の憩い(D.I.マッスン)
いまひとたびの(H.B.パイパー)
12:01PM(R.A.ルポフ)
しばし天の祝福より遠ざかり…(S.スチャリトクル)
夕方、はやく(I.ワトスン)
ここがウィネトカなら、きみはジュディ(F.M.バズビイ)
「天体の回転について」(小林泰三)読了。
これもなかなかに恥ずかしい表紙だが,あの初音ミクのイラストレーターさんの仕事らしい。
表紙と中身のギャップが激しいというか,表題作はイラストのイメージ通りのさわやかな感じなのだが,そこは小林泰三。他の作品は例によってかなりキテいる。
でも,多少グロい描写を我慢(?)すれば,内容は面白い。思わず読み返してしまったのは「銀の舟」。あとはアシモフのロボット三原則を扱ったロボットもの「灰色の車輪」も良かった。
あくまでも全体を通しての読後感は小林泰三なので,注意が必要。
【収録作品】
天体の回転について
灰色の車輪
あの日
性交体験者
銀の舟
三〇〇万
盗まれた昨日
時空争奪
「神狩り2 リッパー」(山田正紀)読了。
宗教SFは割と好きなジャンルだけれど,前作を読んだのがあまりにも昔すぎてまったく覚えておらず。
お話としては良かったし,「想像できないものを想像する」と言う以上,即物的な結論にはもちろんならないというのも理解できるところだけれど,ちょっと説明がくどいというか文体が好みじゃなかったのが残念なところ。
脳のバージョンアップの話としては,神は出てこないけど「理解」(T.チャン『あなたの人生の物語』所収)が今のところ最高。
「アリスへの決別」(山本弘)読了。
山本氏の文庫新刊が出ると買ってしまうようになった。今の日本人SF作家の中では割と好きなタイプ。
表紙と表題作はなかなか恥ずかしいけれど,まあAmazonで買えば問題ない。
好きなのは「七歩跳んだ男」(NOVA1からの再掲載),「地球から来た男」あたり。「地獄はここに」「リトルガールふたたび」も怖くて面白い。オルダーセン〜夢幻潜航艇も,設定の割にごちゃごちゃせずに良かった。要するにハズレはなかった。
長編が読みたいけれど,文庫化待ち。
【収録作品】
アリスへの決別
リトルガールふたたび
七歩跳んだ男
地獄はここに
地球から来た男
オルダーセンの世界
夢幻潜行艇
「量子回廊—年刊日本SF傑作選」(大森望,日下三蔵[編])読了。
「虚構機関」「超弦領域」に続く第3弾。今回も初めて読む作家が多かった。しかしなかなか「これはツボ」という作品なり作家には出会えないものだ。
個人的に面白かったのは,2編のマンガ「日下兄妹」「無限登山」と,「夜なのに」「確認済飛行物体」「雨ふりマージ」「バナナ剥きには最適の日々」「星魂転生」あたり。第1回創元SF短編賞受賞作の「あがり」も良かった。
【収録作品】
上田早夕里「夢見る葦笛」
高野史緒「ひな菊」
森奈津子「ナルキッソスたち」
皆川博子「夕陽が沈む」
小池昌代「箱」
最果タヒ「スパークした」
市川春子「日下兄妹」
田中哲弥「夜なのに」
北野勇作「はじめての駅で 観覧車」
綾辻行人「心の闇」
三崎亜記「確認済飛行物体」
倉田タカシ「紙片50」
木下古栗「ラビアコントロール」
八木ナガハル「無限登山」
新城カズマ「雨ふりマージ」
瀬名秀明「For a breath I tarry」
円城 塔「バナナ剥きには最適の日々」
谷 甲州「星魂転生」
松崎有理「あがり」(第1回創元SF短編賞受賞作)
「スペースプローブ」(機本伸司)読了。
宇宙ネタだけど話のほとんどがカラオケボックスでの会話,というのは斬新だったかもしれない。けれどちょっと中途半端かなぁ。
機本氏の本は一貫して「人間とは何か?なんのために生まれてきたのか?」的なテーマで,毎回期待してしまうのだけれど,少し肩すかしというか違う方向に行ってしまう感じがある。それが味といえば味なのかも。神様のパズルシリーズの続編とか,今後に期待したい。
「天冥の標 3 アウレーリア一統」(小川一水)読了。
新刊が出るのが楽しみなシリーズ。次のサブタイトルは「機械じかけの〜」とあるので,魅力的なAIたちの活躍に期待。
10年くらい前には海外SFばかり読んでいたけれど,最近は日本人作家のSFを読む比率が高い。イーガンやチャンなど,極めてハイレベルな海外作家は別として,それ以外に新刊が楽しみな作家がいないというか,いなくなってしまった。アシモフやクラークが逝き,J.P.ホーガンも逝ってしまった。
「NOVA2」(大森望 責任編集)を読了。
NOVA1が出てからまだあまり経っていないような気がする。割と早い刊行ペース。
神林作品は久しぶりに読んだ。「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」(倉田タカシ)は未だに読めず。頭が固いのかも。なので完全読了とは言えない。
好みとしては「バベルの牢獄」,「衝突」,「クリュセの魚」,「五色の舟」,「聖痕」あたり。結構楽しめたけれど,「この人の他の作品もぜひ読んでみたい」と思わせるほどのインパクトはなかったかな。
【収録作品】
・かくも無数の悲鳴(神林長平)
・レンズマンの子供(小路幸也)
・バベルの牢獄(法月綸太郎)
・夕暮にゆうくりなき声満ちて風(倉田タカシ)
・東京の日記(恩田陸)
・てのひら宇宙譚(田辺青蛙)
・衝突(曽根圭介)
・クリュセの魚(東浩紀)
・マトリカレント(新城カズマ)
・五色の舟(津原泰水)
・聖痕(宮部みゆき)
・行列(西崎憲)
「MM9」(山本弘)読了。
山本氏のSFも今のところハズレなしで,どれも面白い。本書は「怪獣モノ」なのにちゃんとSFになっているのがすごい。
「パズルの軌跡 穂瑞沙羅華の課外活動」(機本伸司)読了。
「神様のパズル」の続編。著者あとがきにもあるが,沙羅華ちゃんが思いがけずツンデレ萌えな人々にウケてしまったということで,続編の本作ではそのあたりのサービス(?)に力が入っている。
読後感は前作同様さわやかで,こんな感じのお話は嫌いではないけれど,好きってわけじゃないんだからねっ。
「地球最後の野良猫」(J.ブレイク)読了。
タイトルを見てポチっと予約してしまった。でも猫SFとしてはイマイチかなぁ。
「夏への扉」を読んでいたので,最初に飼う猫の名前は「ピート」にしようと思ったけれど,次に別な猫を飼ったとしても名前を「フィーラ」にしようとは思わないだろうな,という程度の作品。これなら「犬は勘定に入れません」のプリンセス・アージュマンドの方が良いと思う。
「機龍警察」(月村了衛)読了。
えっと,パトレイバーですよねこれ?という感想を抱いたのは私だけではあるまい。もしくはアップルシードとか。まあくどくどと類似性を述べるのは無粋だと思うのでそれ以外のことを。
なんとなく中途半端なところで終った印象がある。特に龍機兵開発の秘密とか。これはシリーズとして続くということなのだろうか。あとがきも解説もなかったのでよくわからない。何の説明もなく「特別高性能な機甲兵装が特捜部にだけ与えられました」というのではちょっと必然性がない。極端に言えば,「主人公にだけ魔法が使えるのです。その力は神様が与えてくれたもので,悪者には魔法は使えません」というのと一緒だろう。こういうお話を書く上で守らなくてはいけない大前提は,「自分(味方)の入手できるテクノロジーは相手(敵)も入手可能である」ということではないだろうか。その上で,作戦とか,個人のスキルとかで見せ場を作るわけだ。
月村さんって,なんか見たことのある名前だな,と思ったらアニメの脚本とかやっておられた方らしい。「ノワール」は独身時代に観ていた。それで上で書いたような「アニメ的展開」なのだろうか。
「アードマン連結体」(N.クレス)読了。
「プロバビリティ」シリーズや「ベガーズ・イン・スペイン」の方が有名だが未読。アードマン連結体はタイトルに惹かれたので買ってみた。
退屈せずに読めたけれど,冬樹さんの解説にあるように地に足がついた感じで,悪く言えばスケールが小さい話。「いまのSFには,小難しくてついてゆけないよ」という,むしろその小難しいSFが読みたい。
好みとしては表題作と,オレンジの値段,初飛行あたりかな。
【収録作品】
・ナノテクが町にやってきた
・オレンジの値段
・アードマン連結体
・初飛行
・進化
・齢の泉
・マリゴールド・アウトレット
・わが母は踊る
「微睡みのセフィロト」(冲方丁)読了。
話題の冲方さん。本作を読んでからマルドゥックシリーズを買うかどうか考えようと思っていたけれど,うーん,ちょっと微妙。
お話としては面白いし,ハッピーエンドなのも良いけれど,SFっていうよりファンタジーですよねこれ。
「天冥の標II 救世群」(小川一水)読了。
シリーズ2作目。いやー,こういう展開で来るか。これは続きがますます楽しみ。
「天冥の標<1> メニー・メニー・シープ(上・下)」(小川一水)読了。
全十巻の大作の幕開け。いろいろと面白そうな伏線が張ってあって続きが楽しみ。
移民船シェパード号の記述にもまだまだ伏せられているところや,虚偽の伝承があるかもしれないけれど,上巻に書かれていたことをそのまま信じるとして,生き残っている発電炉の最大出力が5,000万キロワット。これで植民地全土の電力をまかなっている。これはなかなかすごい設定ではないだろうか。
100万キロワットの原発50基分(日本の全原子力発電所出力と同等)の発電出力を宇宙船一機で発生させるというのもすごいけれど,送電や負荷追従の制御はどうやっているのだろう。交流なのか直流なのか,電圧は何ボルトなのか,などなど気になってしまう。
「ゼロ年代SF傑作選」(SFマガジン編集部編)読了。
初めて読む作家の作品が多かった。マルドゥック〜はなかなか面白そうなので,未読本がなくなったらシリーズを読んでみてもいいかもしれない。
まあまあ面白かったのはアンジー〜と,アリスの心臓,おれはミサイルあたり。
【収録作品】
・マルドゥック・スクランブル"104"(冲方丁)
・アンジー・クレーマーにさよならを(新城カズマ)
・エキストラ・ラウンド(桜坂洋)
・デイドリーム、鳥のように(元長柾木)
・Atmosphere(西島大介)
・アリスの心臓(海猫沢めろん)
・地には豊穣(長谷敏司)
・おれはミサイル(秋山瑞人)
「ラギッド・ガール」(飛浩隆)読了。
痛々しい描写は苦手だけれど,なんとなく引き込まれてしまうのは世界の描写が魅力的だからだろうか。まだ続くようなので楽しみ。
「Self-Reference ENGINE」(円城塔)読了。
これは,なんと表現していいのか良くわからないが,難解?ギャグ?不思議系?
他に類を見ないとか,そんな意味では確かに突出した作品だとは思うけど,イーガンとかが突出してるのとはぜんぜん別の方向であって,正直この方向に行かれてしまうとついていけない。感性が古いのかな。
「 虐殺器官」(伊藤計劃)読了。
怖いタイトルだが日本SF界の各種アワードを受賞した話題作。
タイトルがタイトルなら内容も内容で,かなり悲壮な感じ。個人的にはこういう話を読み続けるのは辛い。
ただ,伊藤氏が素晴らしいSFを書く作家だったことは間違いないので,早すぎる死が本当に惜しまれる。
「SFが読みたい! 2010年版」を購入。
「ハーモニー」(伊藤計劃)と「地球移動作戦」(山本弘)は気になるなぁ。文庫化が楽しみ。
今月に入って話題作が何冊か文庫化されて買ったけれど,これは2006年から2007年版で上位になった作品。文庫読みは最先端から3〜4年くらい遅れていることになる。
洋書はKindleで読めるらしいけれど,日本ではいつになることやら。もし電子ブック化するならSFほどそれに相応しいジャンルはないと思うけれど...
「メシアの処方箋」(機本伸司)読了。
「神様のパズル」を読んだときに,いずれ他の作品も読みたいと書きつつ忘れていた。Amazonのオススメで表示されたのでそのまま購入。こうして考えるとAmazonの戦略は非常に効果的。逆にAmazonのオススメに表示されないと発売されたことすら気付かないという感じ。
内容は割と面白かったけれど,期待した方向とはちょっと違ったかも。
「ZOKU」(森博嗣)を再読。
ついに,とうとう,ようやく,満を持して,「ZOKUDAM」の文庫版が発売された。
ZOKURANGERが文庫化されるのはさらにまた数年先だろうから,ZOKUとZOKUDAMを大切に読んで行きたい。
「NOVA1」(大森望 責任編集)を読了。
書き下ろしのSF短編アンソロジー。解説にも書いてあるが,今まであまりなかったスタイル。
ただ,「ど真ん中のSF」というほどにはSFっぽさが感じられなかったのは,やっぱりWebmasterの嗜好が世間とズレているためだろうか。
まあそんな中でも良かったと思ったのは,「忘却の侵略」,「エンゼルフレンチ」,「七歩跳んだ男」あたり。伊藤計劃氏の絶筆となった「屍者の帝国」も面白そうだったのに,残念である。
【収録作品】
・社員たち(北野勇作)
・忘却の侵略(小林泰三)
・エンゼルフレンチ(藤田雅矢)
・七歩跳んだ男(山本弘)
・ガラスの地球を救え!(田中啓文)
・隣人(田中哲弥)
・ゴルコンダ(斉藤直子)
・黎明コンビニ血祭り実話SP(牧野修)
・Beaver Weaver(円城塔)
・自生の夢(飛浩隆)
・屍者の帝国(伊藤計劃)
3D映画の「アバター」を鑑賞。
例によって予備知識ゼロ(3D映画らしいという程度は知っていた)で観に行った。
で,まあそうなるだろうなぁ,とは思っていたのだが,やっぱり「お,ここはキレイに立体に見える。あ,ちょっとチラつくなぁ。二重に見えてイマイチ・・・」とか,全編そんな感じで「見え方」ばかり気になってしまった。
あとで調べたらアバターの3D上映には4方式あるらしく,今回見たのはRealDというタイプ(シネマイクスピアリ)。
メガネをかける面倒臭さは置いておくとしても,いずれにしろ現在の3D方式は「臨場感」という意味ではどれも大差ない気がする。これは正面だけにある平面のスクリーンに映している限りどうしようもないだろう。音響だけ後ろからも聞こえてきたりして,アンバランスである。プラネタリウムでの大型ドーム映像の方がずっと迫力がある。臨場感という意味なら目を閉じてバイノーラル録音のラジオドラマをヘッドフォンで聴くのが一番かもしれない。
今後どんどんこのタイプの映画が増えるという噂だが,「やめといた方が良いんじゃない?」と個人的には思う。
で,映画の内容に関しての感想としては,人類側のメカはなかなか格好よかったけれど,そもそも異星人であるナヴィ族が人類とそっくりすぎるところとか,いくら希少資源のためとはいえ知的種族への侵略という選択をするほど人類がアホな設定なのはなんでなのかとか,そういう点について説明が欲しかったかな,と思った。なんせ3時間もある映画なので。
参考リンク:映画「アバター」公式サイト
当ブログでは種々雑多なネタを取り扱っており,タイトルと内容がマッチしないことも多くご迷惑をおかけしている。年初にあたり,各カテゴリ別に少し状況を整理しておきたい。
【写真部門】
EOS Kiss X2を買ってからは,新しいカメラの動向などはチェックしていない。今年も猫写真をメインに撮っていく方針で,たまに気が向いたらフィルムカメラ(ペンタSP,学研二眼レフ)で遊びたいと考えている。安いフィルムスキャナが出ていてちょっと食指が動いたが,冷静に考えてそんなにバンバン黒白フィルムを自家現像(ダークレス)するか疑問だったので,今のところ保留にしている。
【猫部門】
記事で紹介するのを忘れていたが,木工工作を少しやって猫ケージをグレードアップした。これはデルタが家族になってから2年越しの懸案だったので,ちょっとすっきりしている。理想を言えば作り付けの大型ケージ(というか猫部屋)が欲しいところだが,狭いマンションではなかなか難しい。かんな氏の猫ブログは更新が遅いので,猫たちの近況についてはソウヘイ航宙記の方を見てもらいたい。
【読書部門】
読書はこの1年くらい少し悩んでいる。SFの新刊で「これはぜひ読みたい」と思うものがほとんどないのだ。これは自分の嗜好が変わってきたのか,出版の傾向が変わってきたのか,まだ判断できないでいる。新刊の情報はハヤカワとAmazonから送られてくるメルマガを参考にしているが,その3行ほどの紹介記事だけで,なんだか読んでも仕方がないような気がしてしまうわけだ。「なんでも読んでやろう」という気力が衰えたのは認めるけれど,出版の傾向としてもソフトな冒険モノばかりで,バリバリのハードSFって最近少なくないですか?
ミステリの方も森博嗣氏が表舞台から降りてしまって文庫新刊のペースが落ちているので,今年も再読や図書館の利用が増えそうな気がする。
とはいえ,読書そのものはやめられない(移動中や空き時間に活字が読めないと落ち着かない)ので,何らかの本は常に読み続けると思う。
【音楽・楽器部門】
2年目に入ったギター教室通いがどうなるかが自分でも注目である。こういうものは始めたばかりの頃は上達が目に見えて楽しい。それが1年も経つと弾ける曲は増えているが,練習量に比較して上達のペースは遅くなるし,ちょっとサボるとすぐに弾けなくなる。モチベーションを維持し続けられるかどうかがポイントだろう。
【技術・工作部門】
猫部門のところに書いたように,猫ケージの改造をするのに木工をやった。これは大型のホームセンタで材料を買って,そのホームセンタ内にある工作室を借りて行ったもので,使うときに名前を書けば利用料はタダである。大雑把な切断は1カット50円で大型の切断機(?)でお願いして,その後は工作室で自分でやる。曲線のカットは電動ジグソーを使い,切断面と角の仕上げは電動サンダーでやった。ジグソーなんて久しぶりに使ったが,さほど精度を気にしないのなら糸鋸よりも速いし便利。
旋盤とフライス以外の電動/手動工具はたいてい揃っているので,ここを使えばたいていの木工はいけるんじゃないだろうか。自宅も汚れないし。
ということで,今年もまた何か思いついたら自作するかもしれない。
【車部門】
昨年末にキューブからポロに乗り換えたので,たまにポロ関係の記事を書きたいと思う。といっても改造とかをするつもりはないので,燃費とかトラブル関係のネタくらいしか書くことがないかも。
【パソコン・ネット部門】
長期計画では今年末にWebmasterのPowerBookG4のリプレースとなっている(購入後5年経過)。今のところMacにするかWindowsにするか決めていないし,本当に買い替えられるかどうかも直前にならないと判断できないだろう。
EOS Kiss X2 / EF50mm F1.4 USM
2009年,何といっても大きなトピックはアコースティックギター弾き語りの教室(先生つきのクラブ)に通い始めたことだろう。上達のペースはゆっくりだが,なんとか1年間挫折せずに続けることができた。これに関連してかんな氏と自分用のギターの購入や,音の比較の記事が多くなった。ブログのビジターも比較的ギター関係のキーワード検索で来る方が多いようで,多少なりとも参考になっていれば幸いである。
ギターを始めたのと引き換えに,フルートはすっかりサボりモードになってしまった。たまに音を出してみると,あっという間にくちびるが疲れて吹けなくなってしまうし,音も安定しない。今のところギターとフルートを両方とも練習する余裕はとてもないので,フルートはまだしばらくお休みすることになりそう。
5月には実験的な試みとして,アメーバブログの方に猫写真をメインにした軽いノリのブログを作った。1記事あたり写真1枚,本文1行として,1日1回以上の更新を目標とした。ケータイのメールによる更新が可能という利便性もあり,今のところ7ヶ月間毎日更新のペースを維持している。写真ってblogの長文がうざったい向きにはオススメである。が,いつまで続けるかは微妙なところ。
写真関係のトピックとしては,昨年末にEOS Kiss X2を買って,フィルムのEOS2台を処分したことなどがあった。逆に学研二眼レフカメラを作ってフィルムカメラが増えたりもした。Kiss X2で撮ったピートとデルタの写真がフォトコンテストで優秀賞を取ったことも素直に喜びたい。
車をキューブからポロに乗り換えたが,ポロについて独立したコンテンツを設ける計画は今のところない。何かあればこのブログで紹介していくつもり。
読書の方は興味を引くSFの新刊が最近あまりないので,再読が増えている。図書館でアガサクリスティーを借りて読んだりもするようになった。
【SF】
時間封鎖(R.C.ウィルスン)
虚構機関—年刊日本SF傑作選(大森望,日下三蔵[編])
万物理論(G.イーガン)(再読)
シュレディンガーのチョコパフェ(山本弘)
祈りの海(G.イーガン)(再読)
デカルトの密室(瀬名秀明)
フリーランチの時代(小川一水)
反逆者の月3ー皇子と皇女ー(D.ウェーバー)
スカイ・イクリプス(森博嗣)
ウォー・ゲーム(D.ビショフ)(再読)
ディアスポラ(G.イーガン)(再読)
神は沈黙せず(山本弘)
第九の日(瀬名秀明)
闇が落ちる前に、もう一度(山本弘)
アイの物語(山本弘)
無限記憶(R.C.ウィルスン)
超弦領域—年刊日本SF傑作選(大森望,日下三蔵[編])
レインボーズ・エンド(V.ヴィンジ)
犬は勘定に入れません—あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎(C.ウィリス)
猫語の教科書(P.ギャリコ)
サマーウォーズ(岩井恭平)
順列都市(G.イーガン)(再読)
【ミステリ】
どきどきフェノメノン(森博嗣)
探偵伯爵と僕(森博嗣)
レタス・フライ(森博嗣)
オリエント急行の殺人(A.クリスティー)
そして誰もいなくなった(A.クリスティー)
牧師館の殺人(A.クリスティー)
ハロウィーン・パーティ(A.クリスティー)
予告殺人(A.クリスティー)
εに誓って(森博嗣)
【ノンフィクション】
フェルマーの最終定理(S.シン)
暗号解読(S.シン)
脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ (V.S.ラマチャンドラン)
「順列都市」(G.イーガン)を再読。
定期的に再読したくなるイーガンのSF。本書も座右の書となりつつある。早く新作が読みたいけれど,逆に今までの長編を上回るものになるのかどうか,もし上回るとしたら「どっち方向に」上回るのか,などなど不安と期待が半々。
「猫語の教科書」(P.ギャリコ)読了。
かんな氏が買った本だが,設定(猫がタイプライターで書いた)がSFっぽいのでSFということで。
マクドナルドで読んでいるときに不覚にも落涙してしまった。
別にお涙ちょうだいというわけじゃないし,感動巨編でもないのだが,あまりにも見事に猫に支配される人間の姿が自分と重なってしまって,笑えてくるし泣けてくる。
基本的に猫が猫のために書いた教科書なので,ピートに読んでもらいたいところだ。特にマナーのところとか。
この戦いの目的は何だったか、忘れないでください。欲しい食べ物を勝ちとるだけでなく、人間の精神をたたき直して、猫のために食事を用意させていただきます、というところまでもっていくのです。
「犬は勘定に入れません—あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎(上・下)」(C.ウィリス)読了。
この人の本も初めて読んだ。猫が出てくるタイムトラベルものということで,「夏への扉」が頭に浮かぶけれど,本作はもっとドタバタで楽しい感じ。大団円のラストも良かった。個人的には歴史が苦手なので,そういう意味ではタイムトラベルものの面白さが100%味わえていないなと自分で思う。
犬のシリルと猫のプリンセス・アージュマンドがとても良い味を出しているので,犬猫好きな人にはオススメ。
リンクはあえてプリンセス・アージュマンドが表紙の下巻を貼ってみた。
以下は内容とは関係のない話。ついにハヤカワ文庫のトールサイズを買うはめになってしまった。手持ちのブックカバーに入らないじゃないか。なんで勝手にこういうことするのかなぁ。以前トールサイズで出したダニエルキィス文庫は不評じゃなかったのか?
いや,地デジみたいに「今後○年かけて文庫本はすべてこのサイズになります。他社もすべて同じです」というなら良いですよ。ブックカバーだって本棚だってその規格に合わせてすべて変わるだろうから。
そうじゃなくてハヤカワさんが勝手にやってるだけなんでしょう。他社の文庫本はこれからも従来サイズのまま。こっちは他社文庫用とハヤカワ文庫専用2つのブックカバーを用意しなけりゃいけない。本棚に並べた時の見た目だってデコボコ。
まあ,本屋でもらう紙のブックカバーを使うライトな読書家にはそもそも関係のない話だし,お気に入りのブックカバーをわざわざ買って使うような人は結局ハヤカワ用にブックカバーを新調するだけだろうから,ハヤカワの商売的には何も問題ないのかもしれないけれど...何となく釈然としない。
写真は陽だまり堂さんで新調したブックカバー。ハヤカワ文庫トールサイズもギリギリ入ります。あぁ,完全にハヤカワの思うツボだなこりゃ。
「レインボーズ・エンド(上・下)」(V.ヴィンジ)読了。
この著者の作品は初めて読んだ。まあまあだったけれど,ちょっと冗長だったかも。
この作品にしても電脳コイルにしても同じだけれど,超小型,高機能のウェアラブルへの電源供給という技術的課題をどうやってクリアしているのだろう?どちらの作品もウェアラブルを充電したりする描写はなかった。
いくら省電力化が進んでいるとはいえ,無線通信をしている以上それなりの電力消費はあるはずで,仮に朝から夕方までの半日程度の装用であっても,外部からの電力供給なしで稼働できるとしたら,ネットワークや拡張現実感(AR)よりもずっとすごいテクノロジーだと思う。
電源をどうするのか,という問題は地味かもしれないけれど,SFに登場する技術を実現する上では避けて通れない現実的な課題だと思う。
「超弦領域—年刊日本SF傑作選」(大森望,日下三蔵[編])読了。
「虚構機関」に続く年刊日本SF傑作選の2年目。普段なかなか手に取らない作家の作品が多く,新しいお気に入りを探す手掛かりになるので助かっている。できれば長く続いてほしいものだ。
気に入ったのはノックスの十戒(探偵小説のルール)をネタにした「ノックス・マシン」(法月綸太郎),A.C.クラーク追悼の「青い星まで飛んでいけ」(小川一水),007パロディの「From the Nothing, With Love.」(伊藤計劃)あたり。やっぱり自由意志を否定するリベットの実験は多くの作家にインスピレーションを与えているようだ。
バカバカしいけれど「アキバ忍法帖」も楽しめたし,マンガの「全てはマグロのためだった」も良かった。
伊藤計劃氏の訃報は同年代なだけにショック。ご冥福をお祈りしたい。
【収録作品】
・ノックス・マシン(法月綸太郎)
・エイミーの敗北(林巧)
・ONE PIECES(樺山三英)
・時空争奪(小林泰三)
・土の枕(津原泰水)
・胡蝶蘭(藤野可織)
・分数アパート(岸本佐和子)
・眠り課(石川美南)
・幻の絵の先生(最相葉月)
・全てはマグロのためだった(Boichi)
・アキバ忍法帖(倉田英之)
・笑う闇(堀晃)
・青い星まで飛んでいけ(小川一水)
・ムーンシャイン(円城塔)
・From the Nothing, With Love.(伊藤計劃)
アメーバのアカウントを取って,ブログを書くようになってから3ヶ月経った。
この写真ってblogとは差別化するという方針で,アメブロの方は1エントリーにつき写真1枚と文章1行程度に絞り,できるだけ気楽な話を書くようにして,更新頻度を上げる(1日1回以上)ことを心掛けた。
アメブロは携帯の写真付きメールでの更新も簡単なので,外出先からも更新するようにした結果,3ヶ月のエントリーは約200件,平均2.2エントリー/日という結果だった。その分情報量は少ないので,役に立つような話は何も書いていない。猫の写真を見て和んで頂ければ幸いである。
アメブロを更新する分,どうしても写真ってblogの更新頻度は落ちている。ちょっとしたギターの話などはアメブロの方が書きやすいし。
アメーバで可能性を感じるのはやはりピグ(Pigg)ではないだろうか。サマーウォーズのオズ,ディアスポラのポリスのような世界が,機能はまだまだ劣っているとはいえ,原型としては見えているのがすごいと思う。セカンドライフというのもあるけれど,見た目がかわいくないと日本人にはウケないかも。
ただ,現状では単なるチャットエリアがあるだけで,購入できるものもピグが身に付けるものと,ピグの部屋に置く家具類,ピグのアクション(笑うとか踊るとか)にとどまっていて,新しいエリアは次々とオープンするものの,飽きられるのも早い。
せっかくの良いサービスなので,さらに機能を拡充していったらピグがオズ化する日が来るかもしれない。
リンク:ソウヘイ航宙記
「無限記憶」(R.C.ウィルスン)読了。原題は"AXIS"
時間封鎖の続編。時間封鎖と比べるとSF色があまりなくて,第3部へつなげただけという感じでちょっと物足りない。
第3部が出るのは当分先になりそうだし,その間に内容を忘れてしまいそう。
かんな氏に誘われて,何を観るのか聞かされないままレイトショーに連れていかれて鑑賞。
恥ずかしながらこんな映画が作られていることすら知らなかった。
というわけで予備知識ゼロで観たけれど,思わず夢中で見入ってしまった。最近観たアニメ・映画の中ではピカいち。
これ以上はネタバレになってしまうので書かないけれど,これは燃える!
参考リンク:サマーウォーズ公式サイト
「アイの物語」(山本弘)読了。
「神は沈黙せず」ほどの情報量はないけれど,物語としてはとても洗練されていて,読後感も爽やか。SFはハッピーエンドが良い,って常々Webmasterが書いているのは,つまりこういうこと。
スタイルとしては連作短編のような感じだけど,この本は長編として通して読んだ方が幸せだと思うので,収録作品は書かないでおく。
とりあえずラノベ以外で読める山本氏の文庫作品はすべて消化。どの作品も面白かったので,MM9の文庫化待ち。
「闇が落ちる前に、もう一度」(山本弘)読了。
「神は沈黙せず」が結構面白かったので,山本氏の文庫本を何冊か入手した。この「闇が〜」は短編集。単行本時のタイトルは「審判の日」。
「神は〜」と共通するネタも多いが,短編集として素直に楽しめた。ホラーとSFの境界的作品ということで,うまく狙い通りの効果が出ていると思う。
最後に収録されている「審判の日」という短編は,ちょっとドキっとした。Webmasterも同じような妄想が好きなので。
【収録作品】
・闇が落ちる前に、もう一度
・屋上にいるもの
・時分割の地獄
・夜の顔
・審判の日
「第九の日」(瀬名秀明)読了。
「デカルトの密室」の続編になるけれど,親切にも前日潭の「メンツェルのチェスプレイヤー」が冒頭に収録されているので,本書を買ってメンツェル〜を読んでから,デカルト〜を読み,本書に戻って続きを読むのが良いかもしれない。
ロボットの知能テーマは面白いけれど,ちょっと軽すぎて物足りない感じはある。Brain Valleyの頃のハードさが好みだった。
【収録作品】
・メンツェルのチェスプレイヤー
・モノー博士の島
・第九の日
・決闘
「神は沈黙せず(上・下)」(山本弘)読了。
面白かったし,いろいろ考えさせられた。しかもUFO,超能力,超常現象などの情報量がものすごいし,ニセ科学やカルト宗教にハマる心理も勉強になる。さすがは「と学会」会長。そういえばファフロツキーズは最近も話題になったばかり。
旧約聖書(小説版)を読んだときはまさに本作の主人公と同じ感想を抱いたWebmasterである。
未読本がとりあえず片付いたので,「ディアスポラ」(G.イーガン)を再読。4回目になるかな。
やっぱりイーガンは良いなぁ。早く新しい長編が読みたい。
「ウォー・ゲーム」(D.ビショフ)を再読。4年ぶりの再読になる。
元々映画版が好きで,テレビで放送されたのを録画して何度も見返した作品。録画テープを捨ててしまったので,古本屋で見つけたこの小説版だけが手元にある。
技術的にはどうしようもなく古い内容だが,たまに読み返したくなる不思議な魅力がある。
「スカイ・イクリプス」(森博嗣)読了。
スカイ・クロラシリーズの短編集。謎を読み解くヒントがあるような感じだが,今までのストーリーをほとんど忘れてしまったので,また時間を見つけてまとめて再読したいところ。
「反逆者の月3ー皇子と皇女ー(上・下)」(D.ウェーバー)読了。
ダハク3部作も完結。このシリーズは正直言ってすごく楽しめたのだが,あまりこの手の娯楽性の強い作品(必ずしもハードSFではない)に手を広げてしまうと,収拾がつかなくなるということで控えている。
この作品はたまたま1作目を手に取ってしまった上に,AIのダハクが非常に良い味を出していたのでハマってしまった。久しぶりに「読み終えるのがもったいない」という気分になった。ダハクが活躍するという点では2作目が一番好きかもしれない。
「デカルトの密室」(瀬名秀明)読了。
前作にあたる「メンツェルのチェスプレイヤー」(「21世紀本格」所収)の内容をすっかり忘れてしまっていたので,できれば読み返してからの方が良かったかも。でもいろいろ考えさせられて面白かった。できればメンツェル〜も含めてじっくりと再読したい。
偶然だが産総研からリアルなヒューマノイドが発表されたりして,今後知能面でもこの小説のように進歩していくとしたら,いろいろな問題が起きるだろうことは容易に想像できる。できるけれど,やっぱりそんなロボットが見てみたいと思うのだ。
「祈りの海」(G.イーガン)を再読。
イーガンは短編ももちろんいろいろ考えさせられて面白いのだが,やはり長編が読みたい。Teranesiaはまだかな。
小説の未来を考えようとするすべての人に、グレッグ・イーガンはある。ーー瀬名秀明(本書解説より)
偶然だが次は超難解と評判の「デカルトの密室」(瀬名秀明)に挑戦。単行本が出たときから気になっていたのだが,いつの間にか文庫化されていたようだ。イーガンと方向性が近い日本人作家としてはやはり瀬名氏が思い浮かぶ。
【収録作品】
・貸金庫
・キューティ
・ぼくになることを
・繭
・百光年ダイアリー
・誘拐
・放浪者の軌道
・ミトコンドリア・イヴ
・無限の暗殺者
・イェユーカ
・祈りの海
「シュレディンガーのチョコパフェ」(山本弘)読了。
未読本の在庫が切れた状態なので,書店に寄ったときはSFの棚をチェックするようにしている。なんとなくタイトルが目に留まったのが本書。
この人の作品は読んだことがないな,と思っていたが,先日読んだアンソロジー「虚構機関」に収録された「七パーセントのテンムー」の人だった。
本書は短編集で,〜テンムーも収録されている。むしろテンムーよりも好みの作品が多くて良かった。「メデューサの呪文」「奥歯のスイッチを入れろ」あたりが個人的な好み。
長編では「MM9」が気になっているけれど,まだ文庫化はされていないようだ。先に「神は沈黙せず」を読むべきかな?
【収録作品】
・シュレディンガーのチョコパフェ
・奥歯のスイッチを入れろ
・バイオシップ・ハンター
・メデューサの呪文
・まだ見ぬ冬の悲しみも
・七パーセントのテンムー
・闇からの衝動
「万物理論」(G.イーガン)を再読。
未読本のストックがなくなってしまったので,「困ったときのイーガン頼み」。
順列都市やディアスポラと比較すると最初読んだときの印象は少し地味(※)だった万物理論だが,読めば読むほど心に染みるという感じ。イーガン作品で共通するのはとにかく情報量が多すぎて,一回読んだだけではお腹いっぱいでゲップが出るだけで,時間をかけて徐々に消化しながら何度も読むうちに,その素晴らしさがわかる(ような気がする)ことだろう。
万物理論もまだ2回しか読んでいないので,まだまだ消化不良なところが多い。またしばらく時間を置いてからじっくり再読したい。
※あくまでも前2冊と比較して。恒星間空間に出たり永遠の仮想現実世界が出てきたりはしない,という意味において。
「SFが読みたい! 2009年版—発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)」(SFマガジン編集部編)を購入。
いつものことだが上位を占めているのは単行本ばかり。今回ありがたいのは1997年以降のランキングが再掲されていること。ランキング上位の作品が文庫化されるのは3年後とかなので,最新のランキングよりもむしろ数年前のランキングの方が参考になる。過去の版もそのために保管していたが,これで処分できる。
何度も書いている気がするけれど,単行本と文庫本を同時発売にできないものかなぁ。単行本の方にだけ解説や著者あとがきでプレミアムを付ければ好きな人は買うだろう。せめてDVDの販売とレンタルくらいのタイムラグ(半年程度)にならないものか。現状だと「文庫読者は蚊帳の外」という感じで,せっかく作家や出版社を支えようという気があってもなんだか空しくなる。
【ご参考】SFが読みたい! 2008年版
「虚構機関—年刊日本SF傑作選」(大森望,日下三蔵[編])読了。
2007年に発表された短編SFから,選りすぐりのものを収録したベスト集成的な本。言われてみればこの手のアンソロジーってありそうでなかった。以前読んだ筒井康隆編のベスト集成以来だとか。
特に注目していた作品があったわけではなく,普段読まない著者の作品とか,いろんなサブジャンルのSFを読むことで視野を広げていきたいと思って買った。新しく好みの著者なりジャンルが見つけられたらラッキーである。
全体的にはまずまず楽しめたけれど,「この著者のほかの作品もぜひ読みたい」と思うようなことはなかった。その時代の旬の作家が書いているので,もし毎年出るならレファレンスとして読んでおくのもいいだろう。先日も書いたことだが「自分の立ち位置を知る」というのも社会では必要なことだ。
個別の作品でまあまあ面白いと感じたのは,「靄の中」「開封」「うつろなテレポーター」「自己相似荘」「大使の孤独」あたり。しかしテッド・チャンみたいな話を書く(書ける)日本人はいないのかなぁ。
【収録作品】
当ブログでは種々雑多なネタを取り扱っており,タイトルと内容がマッチしないことも多くご迷惑をおかけしている。年初に当たり,各カテゴリ別に少し状況を整理しておきたい。
【写真部門】
デジカメを新調したので,しばらくはこのネタが増えそうである。ただ,撮っているのは猫ばかりなので【猫部門】とカブることが多いと思われる。ペンタSPに関しては露出計が不調なこともあって,出番が減りそうな予感がしているが,安売りのフィルムを仕入れてある(DNPのCENTURIA)ので,遠出する機会があったら持っていきたい。お遊びとして,マウントアダプタを買ってペンタSPのレンズをEOS Kiss X2に付けるというのも構想している。ただし,くれぐれも「道具揃えの沼」にはまらぬように注意したい。
【猫部門】
カメラが新しくなってかんな氏が(今のところ)やる気を出しているので,最近の猫情報に関しては「にゃんこーず」の方を参照願いたい。こちらではFlickrにアップした大きなサイズの写真(基本的に補正・トリミングなし)を紹介するので,壁紙に使うなりカメラの作例として細部を確認するなりして活用してもらえたらと思う。ブログで紹介しなかった写真についてもPhotostreamの画面からすべて見ることができる。
【読書部門】
読書の傾向は昨年同様に,SF文庫新刊と再読,森博嗣氏の文庫新刊が出たら読む,ということで変わりない。読みたいと思っていた未読の古典や既刊はあらかた片付いた感があるので,もう少し幅を広げたいという思いもあるが,ベストセラーは読む気がしないし,マイナーな良書を知る手がかりも今のところないので,今までのWebmasterの読書歴から「こんなのがオススメ」というのがあったら教えていただけると助かる。ただし,「薦められたから読んだけどつまらなかった」という結論になっても怒らないでほしい。
【音楽・楽器部門】
新しい試みとしてギター教室に通い始めたので,どの程度続くか(あるいは挫折するか)が自分でも気になっている。フルートを習う予定は今年もない。時間と月謝の関係でフルートは敷居が高いため。あまり良くないとわかってはいるが,自己流で続けていくつもり。長期間ブランクが空かないように意識して吹くようにしたい。消耗品や道具揃えとは無縁という点でフルートは偉いと思う。置き場所も取らないし。
【技術・工作部門】
長期プランとしては,「快適な猫ケージの製作」というテーマがあるが,正月休み中にはコンセプトを詰めきれなかった。素人のスキルで中途半端なものを作ってしまうと美観を損ねるし,材料を調達してしまうと後戻りもできないので,なかなか踏み出せない。
キット工作ものは今までいくつか作ったが,財政難の折,「簡単に作れてちょっと遊んだらおしまい」という刹那的なものについては出来るだけ手を出さないようにしたい。
【車部門】
車検も通したし,追加出費を最小化しつつキューブを維持する,というのが車部門の最大の使命である。
【パソコン・ネット部門】
とりあえずかんな氏のWindowsパソコンだけは手当できたし,写真保存用の外付けHDDも買ったので,WebmasterのPC新調はまだ先延ばしできそうである。固定費としてはレンタルサーバの1,500円/年と,Flickrの$24.95/年がかかっている。回線費用はマンションの共益費に含まれている。
EOS Kiss X2 / EF50mm f1.4 USM
「時間封鎖(上・下)」(R.C.ウィルスン)読了。原題は"SPIN"。
この著者の作品は初読になるが,面白かった。この一作でも充分物語として完成されていると思ったけれど,なんと3部作の計画らしい。
空から星が消える,という設定はどうしても宇宙消失を連想してしまうが,「どうせイーガンの二番煎じでしょ」と思わずに読んでみることをオススメしたい。
2008年はWebサイト開設10周年の記念すべき年だった。ブログの更新頻度も意識して多めにしたが,日記ではないので,さすがに毎日更新するのは難しい。Webサイト/ブログがらみでは写真データをFlickrに置くようになったのが大きな変化だ。Flickrの会費は当ブログ本体を置いているレンタルサーバの会費よりも高額である。
かんな氏のpyon*webも含めたcheb.sakura.ne.jpのアクセスは,1日平均約300ビジターというところ。検索エンジンのキーワードが月にだいたい2000〜3000件ヒットしている。12月時点でのキーワードの上位は"vb6 正規表現","グレイコード 変換","フルート 初心者","ミラコスタ ウェディング"という感じ。様々な言葉の組合わせを含めたトータルではやはりミラコスタウェディング関係と,パジェロ関係,あとはPowerBookG4のキーボード交換がかなり検索されているようだ。多少でも皆様のお役に立っていれば幸いである。
ネット以外のイベントとして,なんといっても嬉しかったのが和泉宏隆トリオのライブを生でしかも特等席でたっぷり拝聴できたことだ。
読書については再読を多めにしたこともあって,少しペースダウン。SF31作品(うち再読18作品),ミステリィ3作品。ミステリィは森博嗣氏の文庫新刊を待つ状況が続いている。ノンフィクションをぜんぜん読めなかったのは素直に反省したい。
【SF】
逆境戦隊バツ「×」<1>(坂本 康宏)
ディアスポラ(G.イーガン)(再読)
逆境戦隊バツ「×」〈2〉(坂本 康宏)
銀河北極〜レヴェレーション・スペース2〜(A.レナルズ)
記憶汚染(林譲治)
フラッタ・リンツ・ライフ(森博嗣)
順列都市(上・下)(G.イーガン)(再読)
反逆者の月2—帝国の遺産—(D.ウェーバー)
パンドラ(1〜4)(谷甲州)
ファウンデーション —銀河帝国興亡史〈1〉(I.アシモフ)(再読)
啓示空間(A.レナルズ)(再読)
ファウンデーション対帝国—銀河帝国興亡史〈2〉(I.アシモフ)(再読)
第二ファウンデーション—銀河帝国興亡史〈3〉(I.アシモフ)(再読)
宇宙叙事詩(上・下)(光瀬 龍,萩尾 望都)
鋼鉄都市(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションの彼方へ(上・下)(I.アシモフ)(再読)
都市と星(A.C.クラーク)(再読)
夜明けのロボット(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ロボットと帝国(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションと地球(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションへの序曲(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションの誕生(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションの危機(上・下)(G.ベンフォード)(再読)
ファウンデーションと混沌(上・下)(G.ベア)(再読)
ファウンデーションの勝利(上・下)(D.ブリン)(再読)
量子真空(A.レナルズ)
神様のパズル(機本伸司)
黎明の星(上・下)(J.P.ホーガン)
クレィドゥ・ザ・スカイ(森博嗣)
ディファレンス・エンジン(上・下)(W.ギブスン,B.スターリング)
ZOKU(森博嗣)(再読)
【ミステリィ】
町でいちばん賢い猫(R.M.ブラウン,S.P.ブラウン)
θは遊んでくれたよ(森博嗣)
τになるまで待って(森博嗣)
「ZOKU」(森博嗣)を再読。
森氏の本で再読したのはZOKUが初めてかもしれない。この本はかんな氏もお気に入りで,リリーダビリティ(再読性)は抜群に良いと言える。
続編も出ているが,文庫化を楽しみに待っている状況。単行本⇒ノベルス⇒文庫という段階を踏むのでかなり待たされる。
「ディファレンス・エンジン(上・下)」(W.ギブスン,B.スターリング)読了。
90年代を代表する傑作SFという評判だが今まで未読だった。復刊フェアで入手。
しかし実はWebmasterはギブスンがあまり得意ではない。サイバーは好きだけどパンクは苦手,と言ったらいいだろうか。ニューロマンサーなんかもいまいち肌に合わなかった。
で,本書はスターリングとの共著ということで,多少はとっつきやすいかな,と思ったわけだ。
結果は,まあつまらなくはないけれど,やっぱりドロドロした感じで,あまり好みではないな,というのが正直なところ。歴史改変モノなので,歴史とか文化という背景がある程度わかっていないと楽しめない,というのもあるかもしれない。もし電気ではなく蒸気機関が発達し続けたら,という想像は楽しいので,もっと淡白に,ドライに,清潔に,いやらしくないスチームパンクがあれば読んでみたい。
世間の評価と自分の評価はやっぱりズレているな,と確認できる一冊だった。
「クレィドゥ・ザ・スカイ」(森博嗣)読了。
前作「フラッタ・リンツ・ライフ」を読んでからしばらく経つので,煙に巻かれた感に拍車がかかってしまった。できれば時間を取ってナ・バ・テアから一気に再読した方が良さそう。
公式見解によると,
Q 『スカイ・イクリプス』を読んでも、まだ読み解けない読者のために 何か少しヒントをいただけないでしょうか。 A 無理に読み解かない方が良いと思います。 ヒントとしては、以下のとおり。 ・シリーズ5作では、主人公(一人称)はそれぞれ1名。 ・クローン(特に短時間で人間を再生する)や記憶移植といった非科学的 なものはこの世界にはない。 ・「スカイ・クロラ」から読むから難しく感じるかもしれない。 たとえば、草薙瑞季は、水素の娘だと思っている人が多いですが、土岐野 がそう言っただけです。このように、何を信じるべきか、ということが重 要だと思います。
とされているので,矛盾のない合理的な解釈が存在すると思いたい。が,今の段階では混乱している。かんな氏は仮説を持っているようだが...
いつか天啓のように「そういうことだったのか!」と納得できる日が来るのだろうか。森氏の作品はいろいろな意味で驚かされることが多い。
「黎明の星(上・下)」(J.P.ホーガン)読了。
ハードSF3部作開幕!といって「揺籃の星」が出たのが2004年。ようやくの第2部である。
理想的に描かれるクロニアの政治システム。通貨は存在せず,各人の「貢献」に応じてその評価が決まる。こんな社会が実現したら,自分はきちんと社会に対して認められる貢献ができるだろうか?
そんなことを考えてしまう作品だった。完結編の第3部は2012年頃になるのだろうか...。
直接関係はないけれど,新型インフルエンザの対応冊子というのが会社で配られた。Q&Aによると,
Q.パンデミック(爆発的流行)は必ず起きるのですか?
A.いつかは必ず起こります。
そりゃあ,たいていのことはいつかは必ず起きるだろう。震度7の巨大地震は起きますか?いつかは必ず起こります。巨大隕石は落ちてきますか?いつかは必ず落ちてきます。地球は滅びるのですか?いつかは必ず滅びます。私は死ぬのですか?いつかは必ず死にます。
という具合だ。こんな回答は何の意味もない。多くの人が知りたいのは,それが果たしていつ頃なのか,せめて○年以内に○%の確率とか,そういう予測を出してもらわないと対策もどうしたらいいかわからないだろう。
「神様のパズル」(機本伸司)読了。
久々のハルキ文庫。第3回小松左京賞受賞作品。
実写映画化もされているが未見(スカイ・クロラを観に行った頃に上映していた)。あまり評判にならなかったのは,作中でマスコミに関してかなり嫌味な批判的描写がされているため...というのは邪推だろうか。
ツンデレ系美少女と落ちこぼれ大学生が主人公の学園モノでありながら,テーマは「宇宙創生」というギャップが楽しい。読後感も爽やかで,日本人作家の本では久々に当たりだった。他の作品もいずれ読んでみたい。
穂瑞(ほみず)と綿(わた) さんがホームズとワトソンの語呂だというのは巻末解説を読んで初めて気付いた。なるほど。
宇宙は無から生まれた。「無」なら身の回りにいくらでもある。それなら人間の手で宇宙を生み出すことはできるのか——
「量子真空」(A.レナルズ)読了。
再読キャンペーンの途中から,寝る前にコツコツと読み進めてようやく読了。とにかくどういうわけかレナルズの長編は分冊されることがなく,超分厚い1冊の文庫本として出るため,ブックカバーも着けられないし重いので外出先に持って行くこともできない(しかし長編が出るたびに同じ文句を書いているな...)。今回は特に歴代最厚の1200ページである。
訳者あとがきによると,新開発の糊(のり)で閉じていて分厚くても装丁崩れがないとか,分冊にするよりも割安だと書いてあるが,文庫本の手軽さを完全にスポイルしていると思う。
お話はレヴェレーション・スペースもので,「啓示空間」の直接的な続編になる。短編集や「カズムシティ」からの登場人物や設定も多く,一通り読んでおいた方が良いかもしれない。
このシリーズは明確な主人公が決められていない。超光速航行が不可能という設定で,数十光年,数百年単位の物語なので当然といえば当然か。あとがきには続刊の情報は書いていないが,Amazonを見るとインヒビターものの完結編らしい"Absolution Gap"が出ている。どのくらいの分厚さになるのか少々不安だが,ここまで来たら是非読みたい。
「ファウンデーションの勝利(上・下)」(D.ブリン)を再読。
4月から始めたファウンデーション・ロボットもの再読キャンペーンもこれで終了。ほぼ半年がかりで文庫20冊を再読したことになる。未読の新刊がたまっているときは半年も再読に費やすわけにはいかないので,良いタイミングだった。
最後の「〜勝利」はちょっと詰め込みすぎた感じもあるが,フィナーレを飾るという意味では良かったと思う。
「ファウンデーションと混沌」(G.ベア)を再読。
新ファウンデーション3部作の第2部。ベアはうまくアシモフ作品の雰囲気を汲んでいると思う。アシモフが書いた続編です,と言われても違和感がない感じ。いや,ベンフォードの第1部が違和感ありすぎだったということかもしれないが。
次の「〜勝利」で,今年4月からはじめた「アシモフのファウンデーションとロボットもの再読キャンペーン」は終了。ようやく未読本もたまってきたので,安心して新刊に取組める。
「ファウンデーションの危機(上・下)」(G.ベンフォード)を再読。
アシモフの遺志を継いだ3人のSF作家(G.ベンフォード,G.ベア,D.ブリン)が書いた新ファウンデーション3部作の1作目。
4年ぶりの再読だったが,読み始めてすぐに思い出した。新3部作の中ではこれが一番つまらない。冗長だし,退屈。ほとんど斜め読みしてしまった。
確かにアシモフの世界に新しい要素を持ち込むという導入部の役割は一番難しかったと思うが,模造人格の長ったらしい会話やらサルの世界に精神接続してのあれこれなど,ぜんぜんアシモフテイストがないし,とにかく長すぎた。
ベンフォードって他の作品は読んだことがないけれど,みなこんな感じなんだろうか?それとも訳が悪いだけ?
読書では初見から何年も経ってから再読すると,初めて意味がわかるところがあったり,最初はつまらないと感じたところが面白く読める(あるいはその逆の)ことがよくある。再読までに経験した事柄で自分が成長したり変わったことによる効果だが,本作については4年前とほぼ同じ感想。自分がほとんど成長していないということだろうか...
「ファウンデーションの誕生(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
アシモフ最期の長編小説にして遺作。すべての始まりであり,終わりでもある。
感動的だが,ラストはもちろんのこと悲しいエピソードが多く切ない気分で読み終えた。
そしてこの気分のままアシモフの遺志を継いで3人のSF作家が書いた新三部作の再読に進む。んー,なんという贅沢。
アニメ映画化の発表があって以来楽しみにしていた「スカイ・クロラ」。公開2日目に早速鑑賞。
想像通り,空中戦のシーンはカッコいい。もっとたくさんあってもいいのに。
ストーリーは原作をなぞりつつ,押井風にアレンジしてある感じだろうか。原作は小説5冊(+短編集1冊?) のシリーズなので断片的に挿入される逸話が映画だけ見て意味が通るかどうかは意見が分かれそう。
とりあえず映画バージョンの表紙に変わる前に5冊入手しておいて良かった。クレイドゥ〜は未読だが,もう一度ナ・バ・テアから通して再読してみたい感じ。
「ポニョ」と公開時期がかぶった割には結構お客さんが入っていた。が,さすがにちびっこは皆無で押井監督ということで若干オタクっぽい客層?だったかも。見終わった途端にウンチク垂れずにはいられない的な。カップルは少なかった。女性だけのグループ少々。年配の男性も多かったがモデラ関係か?
【参考リンク】映画スカイ・クロラ公式サイト
「ファウンデーションへの序曲(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
ハリ・セルダンがトランターで心理歴史学の研究を始めるまでの冒険譚。
さすがにこのあたりになるとストーリーもだいたい記憶に残っているので伏線にニヤリとしつつ読み進めた。
「ファウンデーションと地球(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
アシモフ自身が描くファウンデーション未来史としてはこれがもっとも遠い将来ということになる。この後の「〜序曲」「〜誕生」は時代を遡り,ファウンデーション誕生までの経緯が描かれる。
「ロボットと帝国(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
いわゆるロボット・シリーズはこれにて完結。しかしファウンデーション・シリーズに合流する形でロボット達の物語は続いていくことになる。
イライジャ・ベイリとダニールの最後の別れとなる回想シーンは泣ける。
「夜明けのロボット(上・下)」(I.アシモフ) を再読。
ロボットシリーズ側から見たファウンデーションシリーズへの橋渡しとなる作品。R・ジスカルド・レベントロフが初登場。
このラストシーンはシリーズでも好きな場面のひとつ。
「都市と星」(A.C.クラーク)を再読。
クラーク追悼ということで,実家から持ってきて氏の偉業を噛み締めつつじっくりと再読。
"No machine may contain any moving parts."
<<機械は,いかなる可動部分も持ってはならない。>>
「ファウンデーションの彼方へ(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
新刊もぽつぽつ買ってはいるが,もうしばらく再読キャンペーンが続きそう。
「〜彼方へ」は第一,第二ファウンデーションに,ガイアとロボットという新たな要素が登場するお話。そしてロボットシリーズと合流していく転換点でもある。
写真のしおりはエジプトのお土産に頂いたもの。文字の発明によって人類は自らの歴史を(ある程度)正確に後世に残せるようになった。それ以前にも歴史はあったわけだが,記録が存在しないということは歴史そのものが存在しないというのと同じことになってしまう。また,記録は単なる情報なので,ねつ造・改ざん・消去が可能であるし,故意でなくとも偏向・誇張・歪曲があることを常に意識しなくてはいけない。コンピュータの出現によって記録できる情報量は格段に増えたが,地球と人類の「客観的で正確な歴史」の記録はいつになったら実現するだろうか。
野田-宇宙大元帥-昌宏氏が逝去。ご冥福をお祈りしたい。
著書や訳書はあまり読んだことがなかったけれど,SF界に大きな貢献をされた方だということは知っている。しばらく前にNHKの人間大学か何かで見たのが個人的な唯一の思い出。
宇宙モノのSFを読んでいると,長い距離の単位がいろいろ出てくるので,少しまとめておこう。
■天文単位[Astronomical Unit; AU]
地球から太陽までの平均距離のこと。地球の公転半径と言ってもいい。1[AU] = 149,597,870[km](1億5千万キロメートル。ちなみに地球から月までの距離は38万キロメートル)
■光年[light year; ly]
光が1年間かけて進む距離。1[ly] = 63,241[AU] = 9,460,730,000,000[km](9兆5千億キロメートル)
■パーセク[PARallax SECond; pc]
地球から年周視差1秒角となる距離。地球は公転しているので,軌道の両端では恒星の見かけ上の位置がわずかに変わる(年周視差)。この視差(の半分)が1秒角(=1/3600°)になる恒星までの距離。1[pc] = 3.26[ly] = 206,265[AU] = 30,856,800,000,000[km](31兆キロメートル)。ちなみにtan(1") = 1[AU]/1[pc]の関係となる。
地球からいちばん近い恒星(プロキシマ・ケンタウリ)までは1.3パーセク(40兆キロメートル)。銀河系の直径は3万パーセク(900京キロメートル)。この途方もない距離を舞台に物語を書こうとすると,どうしても千年,万年単位の時間をかけるか,あるいは何らかの超光速航法を考えだす必要がある。
もしも銀河間空間を股にかけて活躍するような話を書こうとしたら,パーセクでも値が大きくなりすぎるので,新しい単位を発明する必要があるかもしれない。銀河系の直径を基線に使った年周視差1分角=Gparmin(ジーパーミン)なんてどうだろう。1[Gparmin] = 1.7億光年。
とまあ,長い距離の方はだいたい想像できたと思うが,アメリカ人のSFで何が困るって,マイルとかフィートである。感覚的には3パーセクと3マイルは同じくらい想像が困難だし,身長6フィートのロボットは大きいのか小さいのかとっさに判断できない。
「鋼鉄都市」(I.アシモフ)を再読。
SFミステリの元祖であり,伝説のベイリとR.ダニールの出発点。そう考えて再読したらもの凄く面白かった。
ところでベイリが妻のジェシィと出会ったのは「今は昔の2002年」と書いてあったが,これは西暦だろうか?だとしたらベイリはなんとWebmasterと同年代ということになってしまうが...さすがにそれはないか。
「宇宙叙事詩(上・下)」(光瀬 龍,萩尾 望都)読了。
「百億の昼と千億の夜」での,光瀬ー萩尾コラボが良かったので買ってみたのだが,挿絵が多くて通勤時に読むのがちょっと恥ずかしいという理由で買ったままお蔵入りになっていたもの。本棚を整理していたら見つけたので,寝る前に読んでみた。
叙情的というのか,寂寥感を感じるというのか,なんとなく物悲しい感じの短編と中編。「百億〜」と比べると物足りなかった。
「第二ファウンデーション—銀河帝国興亡史〈3〉」(I.アシモフ)を再読。
ミュールと第一ファウンデーションによる,第二ファウンデーションの探索。旧3部作はここで一旦幕を閉じる。
結末がわかっていても,ラストの大どんでん返しはやはり面白い。ここまで再読してみて,最初は「〜彼方へ」まで読んでからロボットシリーズかな,と思っていたけれど,先に「鋼鉄都市」が読みたくなったのでロボットシリーズに移ることにしよう。
「ファウンデーション対帝国—銀河帝国興亡史〈2〉」(I.アシモフ)を再読。
ミュールの登場と第2ファウンデーション探索開始まで。ゴールデンウィーク中に読むのをサボっていたら中だるみでテンションが下がってしまって良くなかった。
実家からロボットシリーズも持ってきたし,当分はアシモフの再読で楽しめそう。面白そうな新刊があればその都度読むつもり。
「啓示空間」(A.レナルズ)を再読。約2年半ぶりの再読になる。「啓示空間宇宙史(レヴェレーション・スペース・ユニヴァース)」シリーズの第1弾。
この辞書のような文庫本は気軽には持ち歩けないので,寝る前に少しずつ2ヶ月くらいかけてゆっくりと再読した。
同じ宇宙史の短編(火星の長城と銀河北極)が出たので,そろそろ長編の続編("Redemption Ark";未訳)が読みたいけれど,やっぱり1000ページ超の文庫になるんだろうか。短編集は分冊だったのだから続編も分冊でお願いしたいところ。荷物が重くなるし手が疲れる。
いわゆる「しゃべるコンピュータ」が登場するが,このシリーズでは人間の脳神経をスキャンした「アルファレベルシミュレーション」(コピー),その人間の反応を学習させた「ベータレベルシミュレーション」("宝石"方式),そして単なる疑似人格の「ガンマレベル知性」(AI)と区分されている。面白い設定だが,これが主題ではなくてんこ盛りのガジェットのひとつとしてサラっと描かれるだけ。
「ファウンデーション —銀河帝国興亡史〈1〉」(I.アシモフ)を再読。
未読本は消化してしまったし,文庫の新刊でめぼしいものがないので再読キャンペーン。
「ファウンデーション」シリーズは大好きだが,読み始めると長くなるのでなかなか機会がなかった。「ロボット」シリーズは実家に置いてあるのでこれも持ってこなくてはいけない。どういう順番で読むかは思案のしどころ。「第二〜」まで読んでからロボットシリーズに移って「〜と帝国」まで読み,「〜彼方へ」以降という感じがいいだろうか。
やっぱり最初の頃の話は「伝説のハリ・セルダン」「心理歴史学」といった主要なキーワード以外はすっかり忘れていて,また新鮮な気持ちで楽しめる。よく「擦り切れるほど何度も読んですっかり覚えてしまった」という人がいるが,Webmasterはそういう読み方がなかなかできない。新しく読みたい本が次々と出てきて過去を振り返る時間がないからだ。
以前はせっかく買った本はすべて取っておこう,という方針だったが,小さい本棚もいっぱいになってきて考えを改め,少なくとも「再読の価値なし」と判断した本については処分することにした。面白かった本についても「読みたくなったらまた買えば良い」という考え方もあるのだが,現実的には経済的な問題とか流通(絶版)の問題があって難しい。
近所の図書館に寄贈してしまう手もあるな,と最近思いついた。きちんと分類して蔵書してくれるなら,保管スペースと再読性の問題が一挙に解決する上に社会貢献にもなる。蔵書してもらうことを前提として寄贈が可能かどうかそのうち調べてみよう。
「パンドラ4」(谷甲州)読了。
4分冊の最終巻。最後までまじめに,ファーストコンタクトの困難さを淡々と描いて終わってしまった。
考えさせられることが多いという点では収穫だったが,もう少し明るい方が個人的には好み。つかの間の休息すら許されない過酷な環境に主人公が立たされる展開がこれでもかと続くと気が滅入ってしまう。
小説を読んでいるときくらいは現実逃避したいのに,逃避した先が余計過酷だった,みたいな感じ。ドラマのERなんかもそうだったけれど,「面白いんだけど感情移入すると疲れる」系だ。
通して読んでみて,『ハードSFの極北』か?と言われたらやっぱり違うと思う。極北の定義は人それぞれだと思うが,Webmasterが読んだ中ではそれに相応しいのは今のところイーガンくらいではなかろうか。
これでとりあえず手持ちのSF未読本は全消化。読みたいと思う作品は結構あるけれど,いずれも単行本なので文庫化されるまで待ち。新刊は全部文庫でも同時発売してくれたらいいのに,といつも思う。電子出版(電子書籍)というのはしばらく前から実用化されているらしいけれど,まだまだ文庫本並みに手軽なものではないと思う(欲しい本が出てないし)。
OHPと同じように,「ああ,そういえば紙の本なんてもう何年も読んでないね」という会話ができるのは何年後になるのだろう。自分たちが生きている間にそうなるだろうか?出版業界はいろいろと因習がありそうだから難しいかな?
「パンドラ3」(谷甲州)読了。
4分冊の3冊目。舞台は宇宙に。
あくまでもまじめに描かれる,現在の技術の延長としての宇宙戦闘(戦争)の描写が面白い。
そして人類滅亡の危機を前にしても,相変わらず国家間のいがみ合いを続けているあたりは,実際にも大いにありそうな話で暗澹たる気分に。
クライマックスでどんな風に盛り上がるのかが楽しみ。
SF作家のA.C.クラーク氏が死去。ご冥福をお祈りしたい。
ずっとずっと生き続けて,人類の,地球の,科学技術と未来を見届けて欲しかったな,なんて考えてしまった。
「パンドラ2」(谷甲州)読了。
4分冊の2冊目。まじめSFだけあって,突拍子もないアイテムはあまり登場しないが,腕時計型の携帯端末が便利そう。熱帯雨林の過酷な使用環境に耐え,衛星を使って世界中でテレビ電話・通信が可能,しかも何日も充電なしで運用できる。このどれかひとつ(あるいはふたつ)の機能であれば現在の技術でも実現可能かすでに実現しているものだけれど,すべてを備えたものは2008年現在ではまだ登場していない。特に小型化と長時間駆動の両立が困難だろう。
後半2冊で明るい展開になるのを期待。
「パンドラ1」(谷甲州)読了。
重量級4分冊の1冊目。谷甲州というと航空宇宙軍史とか山岳小説のイメージだろうか。いずれも未読なので谷作品で読むのはパンドラが初めて。
「ハードSFの極北」との評を見かけたが,少なくとも1冊目ではそんな感じでもない。地に足のついた感じのお話で,Webmaster的には「まじめSF」とでも呼びたいところ。もちろん今後の展開でどうなるかわからないが。
先が楽しみだが,災厄が続くような話だと個人的にはちょっと辛い。明るい未来に向かってくれることを期待したい。
「反逆者の月2—帝国の遺産—」(D.ウェーバー)読了。
「ダハク3部作」の2作目。訳者解説に「エンターテインメントの王道」と書いてある通り,もう予定調和的と言おうか水戸黄門的と言おうか,まさに期待を裏切らない展開と結末。だいたい先が読めてしまうので,どんでん返しが好きな人には物足りないかもしれないが,Webmasterは結構好きである。「そろそろくるぞ,くるぞ,・・・やっぱりきたー!」的な流れが随所に。
1作目と比べて,しゃべる巨大戦艦「ダハク」の活躍シーンが多いのもうれしい。一部では萌えAIと呼ばれているとか?
D.ウェーバーといえば,ミリタリスペオペの「オナー・ハリントン」シリーズが有名だが,既刊が8作(すべて上下巻)とかなり重量級なのでまだ手が出せずにいる。ネコ?が出てくるらしいので気にはなっているのだが...
「順列都市(上・下)」(G.イーガン)を再読。
1999年に購入した本(原著は1994年)だが,いまだにお気に入りの一冊。
物理宇宙との関係を完全に断ち切って引きこもってしまうお話なのに,スケールは果てしなく大きい。
「SFが読みたい! 2008年版—発表!ベストSF2007国内篇・海外篇 」(SFマガジン編集部編) 購入。
自分の中で文庫以外に購入しても良いと決めているのは毎年発刊されるこの本だけ。本の性格上文庫化はされないし,図書館に並ぶとも思えないため。
ここで発表されるベストSFを見て,今後買う本の参考にしたり(上位はたいてい単行本なので文庫化されるのを待つのだが),世の中における自分の好みの位置付けを把握できたりする。自分がいくら面白いと感じてもランク外の作品もあるし,その逆もある。
しかしミステリ関係の同様の趣旨の企画本はどの書店でも目立つところに積んであるけれど,この本は何軒か本屋を回ってやっと見つけた。しかも文芸コーナの目立たないところにひっそりと立ててあって,そもそもSFというジャンルの世間での位置付けを思い知らされた。
【ご参考】SFが読みたい! 2007年版
「フラッタ・リンツ・ライフ」(森博嗣)読了。
「 スカイ・クロラ」シリーズ第4作。2008年2月時点で読める文庫の最新刊。単行本とノベルスでは5作目が出ており,それで完結らしい。
ちょっとSF的なネタも出てくるけれど,それはこのシリーズの本筋ではないだろう。
「記憶汚染」(林譲治)読了。
出張中に読みかけの本が終わってしまったので,仙台駅前のジュンク堂書店で購入。タイトルからちょっとホラーっぽい内容を想像していたのだが,良い意味で裏切られた。
目もくらむようなスケール感とか,そういうものではないけれど,地に足のついた感じのSF。
携帯電話から発展した超高性能なウェラブルコンピュータ「ワーコン」がキーデバイスとして登場するが,現在のウェラブルコンピュータのイメージから考えると,ずばり「メガネ型」ということになるだろうか。すべての個人がワーコンを持っている,つまりみんなメガネっ子というステキな未来のお話である。
「銀河北極〜レヴェレーション・スペース2〜」(A.レナルズ)読了。
「啓示空間宇宙史(レヴェレーション・スペース・ユニヴァース)」の話を集めた中短編集2分冊の後編(前編は火星の長城)。面白かったがちょっとホラーっぽいかな,という印象。個人的にはSFはもっと明るいハッピーエンドなのが好みだ。
設定やキャラクターは良いと思うのでもっとこの宇宙史の話を読んでみたいけれど,続刊の予定はあるのだろうか?
【収録作品】
・時間膨張睡眠
・ターコイズの日々
・グラーフェンワルダーの奇獣園
・ナイチンゲール
・銀河北極
逆境戦隊バツ「×」〈2〉(坂本 康宏 )読了。
2巻で完結。さわやかな読後感,ハッピーエンドで良かった。
ただ,個人的には戦隊ヒーローものにはあまり思い入れというのがないので,設定が「宇宙刑事」ものだったらもっと嬉しかったかも。
「ディアスポラ」(G.イーガン)を再読。
年末から寝る前にゆっくりじっくり味わって読み進めて3周目の再読了。やっぱりいいなぁイーガンは。
今のところWebmasterの中ではイーガンが過去も含めて最高の(ハード)SF作家という評価。今後,イーガンを超える作家が果たして現れるのか,もし現れたとき,その「超え方」はどんな方向なのか,とても楽しみである。
ただ,Amazonの評価を見てもらえばわかるように,万人に勧められる本ではないのが残念。
逆境戦隊バツ「×」〈1〉(坂本 康宏 )読了。
年明け最初の読書は軽めの作品で。本当は同じ作者の「歩兵型戦闘車両OO(ダブルオー) 」というのが読んでみたかったのだが,まだ文庫化されていないので先にこちらを。
ハードSFがやっぱり好きだけれど,たまにはこういう娯楽作品も悪くない。オタクでモテない青年が,そのコンプレックス(逆境)によってヒーローに変身するという設定。幸せになってしまうとその力が失われてしまうというなんとも悲劇的な論理。しっかり2巻も買ってある。
このブログのスタイルに移行してから3年が経った。MovableTypeはバージョン4が出ているが,今のレンタルサーバのプランだとデータベース利用に制限がある関係で3.35のまま使い続けている。
コンテンツの更新は,今年もほとんどブログのみ。そのブログのネタに対して検索エンジンからのビジターが増えている。このブログはランキングサイトへの登録など,宣伝活動はまったくしていないのだが,それでも3年もするとある程度検索エンジンに認知されるということだろうか。
アクセスが多いネタは「VB6で正規表現を使う」で,2007年12月現在,googleで「VB6 正規表現」で検索するとマイクロソフトよりも上(というかトップ)に表示されてしまう。「グレイコード変換cgi」もかなりのアクセスがあり,技術系のネタが参考にされているのは名誉なことではあるものの,内容に気を使ってしまう。
肝心の写真ネタとしては,ダークレスによる自家現像に初挑戦したくらいで,あまりたいしたトピックはなかった。本当はデジタル一眼レフが欲しいと思っているが,予算的に厳しいという事情が第一で,現在使っているFinePix S5000も修理後は順調に動いているし,手軽に動画が撮れるのも便利(デジタル一眼は構造上ムービーは撮れない)だし,300万画素という解像度もファイルサイズ的に軽くて助かっている。
今年のはじめにフルートを買ったのも個人的には大きなトピックだった。ときどき公開している録音を聴いてもらえばわかる通り,1年経ってもあまり上達していない。いずれ教室にでも通って短期間でもちゃんと教えてもらえたら,という考えもあるが経済的・時間的に実現できるかどうかは微妙なところか。
あとは工作ネタがけっこうあったかもしれない。軽量かみねんどだとか,手作りスピーカ,そして年末の真空管アンプキットなど。
そして恒例の読書。SFは25作品(再読1冊を含む),ミステリ16作品,ノンフィクションが2作品。SFはゴールデンエイジ3部作が印象に残っている。反逆者の月も今後の展開が楽しみ。ミステリは森作品がVシリーズから四季シリーズときて,Gシリーズの文庫最新刊に追いついた。あとは森博嗣以外のミステリとして東野圭吾を初めて読んだ。
【SF】
ニュートンズ・ウェイク(K.マクラウド)
ゴールデン・エイジ 1 幻覚のラビリンス(J.C.ライト)
ひとりっ子(G.イーガン)
グラン・ヴァカンス 廃園の天使I(飛浩隆)
アイアン・サンライズ(C.ストロス)
反逆者の月(D.ウィーバー)
忘却の船に流れは光(田中啓文)
バビロニア・ウェーブ(堀晃)
ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔(J.C.ライト)
沈黙のフライバイ(野尻抱介)
スカイ・クロラ(森博嗣)
ナ・バ・テア(森博嗣)
天の向こう側(A.C.クラーク)
ZOKU(森博嗣)
ウェットウェア(R.ラッカー)
時をかける少女(筒井康隆)
フリーウェア(R.ラッカー)
ダウン・ツ・ヘヴン(森博嗣)
魔法使いとランデヴー 〜ロケットガール4〜(野尻抱介)
火星の長城 〜レヴェレーション・スペース1〜(A.レナルズ)
ウォー・サーフ(上・下)(M.M.バックナー)
遺跡の声(堀晃)
ゴールデン・エイジ3 マスカレードの終焉(J.C.ライト)
あなたの人生の物語(T.チャン)(再読)
時砂の王(小川一水)
【ミステリィ】
朽ちる散る落ちる—Rot off and Drop away(森博嗣)
赤緑黒白—Red Green Black and White(森博嗣)
女王の百年密室(森博嗣)
そして二人だけになった—Until Death Do Us Part(森博嗣)
虚空の逆マトリクスーINVERSE OF VOID MATRIX)(森博嗣)
迷宮百年の睡魔(森博嗣)
探偵ガリレオ(東野圭吾)
四季 春(森博嗣)
今夜はパラシュート博物館へ(森博嗣)
四季 夏(森博嗣)
四季 秋(森博嗣)
四季 冬(森博嗣)
予知夢(東野圭吾)
まどろみ消去—MISSING UNDER THE MISTLETOE(森博嗣)
地球儀のスライスーA SLICE OF TERRESTRIAL GLOBE(森博嗣)
Φは壊れたね(森博嗣)
【ノンフィクション】
ローバー、火星を駆ける—僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢(S.スクワイヤーズ)
生物と無生物のあいだ(福岡 伸一)
「時砂の王」(小川一水)読了。
時間SFは考え始めると混乱するのだが,時空を超えた出会いや別れというのはSFならではのテーマと言えるのではないだろうか。
時間戦略知性体のカッティ・サークがいい味を出しており,「しゃべるコンピュータ」好きのWebmasterは採点が甘くなるが,読みやすいし面白かったと思う。
我々すべて,滅びる時間枝に属するすべての平行人類の希望を託して,君たちに命じる。伝えろ,勝て。さらばだ
「あなたの人生の物語」(T.チャン)を再読。もう何度目の再読になるだろう。3,4回目か。特にハードSFというわけでもない(半分くらいはファンタジーに分類してもおかしくない)のだが,なんとなく引き込まれてしまうのがチャンの魅力である。
ゲシュタルトがわたしを呼んでいる
「ゴールデン・エイジ3 マスカレードの終焉」(J.C.ライト)読了。
3部作の完結編。遠未来のお話だが,設定がしっかりしていて読み応えがあった。流行のシンギュラリティものとは似ているようでちょっと違うかも。
数万年単位の未来というのはどのような世界だろう。人類は絶滅しているだろうか。もしこのまま繁栄を続けたとしたらこの作品の世界のようになるのか,あるいはまったく似ても似つかないような形態になっているのか...
温暖化の予測などで話題になるのはせいぜい数十年〜百年のオーダー。政府というか役所が考える未来は年金問題なんかでいいところ30年くらい?(まあ真面目に将来のことを考えているかどうか怪しいという話もあるが)。民間企業だとそれこそ半年とか1,2年先というスパンでしか未来のことを考えない(真剣に10年後のことを考えて投資するところが勝つということだろうけど)。
不死化技術というのはもちろん憧れるが,それより何より自分が死んだ後,ずっと未来の世界というのを見てみたいものだ。
「遺跡の声」(堀晃)読了。
短編集「太陽風交点」を読んだのはずいぶん前で,太陽風交点がシリーズものだということは今回初めて知った。さらに文庫版出版を巡る裁判のゴタゴタもまったく知らず。出版社が利益追求するのは結構だが,まずは作家と読者の利益を考えてほしいものである。
この『宇宙遺跡調査員』シリーズというのはかなり渋くて地味な設定で,娯楽的な要素は少ないが,なんともいえない切ない味わいがあって好きである。
かんな氏がiTunesで買った歌を覚えようとしている。近々カラオケに行くつもりらしい。
横で聞いていると,1万何千年前から愛してるとか,そんな風な歌詞である。なんかのアニメの主題歌らしい。
現人類の寿命はせいぜい100年で,ひとりの人を愛することができる期間といったら80年くらいが限度だろう。1万数千年愛しているということは,
(1)異星から来た長命人種である。当然現人類は彼らの奴隷として設計された。ナディア風。
(2)ウラシマ効果による。つまり亜光速宇宙船内での恋愛を地球時間で語っている。トップ風。
(3)シミュレーションによる。つまり電脳空間へアップロードされ不死化した。イーガン風。
(4)機械知性の恋愛である。アシモフ,ラッカーあたり?
というようなパターンが思い浮かぶ。たった4パターンとは発想が貧困だが,このアニメはどれかに当てはまっているだろうか(たぶんいない)。
近所のプラネタリウムで「宇宙エレベータ 〜科学者の夢見る未来〜」という番組が始まったので,早速鑑賞。
以前観て良かった「銀河鉄道の夜」と同じシステム(リブラのHAKONIWA)を使っての全天周映像ということで,迫力は満点。没入感がありすぎて酔いそうだった。
宇宙エレベータ(軌道エレベータ)を代表とする夢のような技術が実現した未来社会の描写。技術的なブレークスルーがあったとしても,ここで描かれているような理想社会への道は遠い気がする。本当に全人類がこんな明るい未来に暮らすことができれば最高だが,今の人口増加率ではとても厳しいのではないか。あれはあくまでも地球でごく一部の超上流階級の人の暮らしであって,他の大部分は酷い生活を強いられているとしたら...
とはいえ,思い描く未来はもちろん明るい方がいい。子供たちがこういう未来を指向して,実現するように努力してくれれば不可能ではないはずだ。ただ,土曜の昼間だというのにプラネタリウムはガラガラ。やはり未来は暗いのだろうか....
【参考リンク】日本科学未来館の「宇宙エレベータ」紹介ページ
「四季 春」(森博嗣)読了。
S&Mシリーズで宿敵として登場した真賀田四季の活躍(?)を描く「四季」4部作の1作目。S&MシリーズとVシリーズの橋渡しとしても重要な位置付けとなりそうな感じ。
フィクションに登場する「天才」はたくさんいるだろうが,四季嬢はかなりのハイレベル天才と言えるのではないか。SFだと「アルジャーノンに花束を」(D.キイス)のチャーリーとか,「理解」(T.チャン;あなたの人生の物語収録)の主人公などが思い浮かぶが,彼らは後天的,人為的に造られた天才であった。四季嬢は生来の天才ということで,その思考の描写(文字を書いたことがない,等)はなかなか興味深い。
ということで,ミステリというよりもSFっぽいシリーズと言えるかもしれない。
「ウォー・サーフ(上・下)」(M.M.バックナー)読了。
八戸に行ったときに読む本がなくなって,八戸駅の書店で調達したモノ。品揃えのない店だったのであまり選択肢はなかったのだが,そういうときに買った本というのはやはり今ひとつ。
アメリカの新鋭女流作家だそうだが,この中身で上下分冊は冗長という感じ。訳の問題もあろうが,全編田舎方言の会話が続くのもちょっとアレだ。これだけ引っ張ってラストの盛り上がりもたいしたことがなかったように思う。
ぶつぶつ言いつつも途中で投げ出さずに読めたので,並というところか。
「魔法使いとランデヴー 〜ロケットガール4〜」(野尻抱介)読了。
「ロケットガール」は富士見ファンタジア文庫(いわゆるラノベのレーベル)で唯一買っているシリーズ。「女子高生、リフトオフ!」「天使は結果オーライ」「私と月につきあって」の3作に続く4作目。
ラノベと思ってバカにしてはいけない。本作でも小惑星探査機「はやぶさ」をネタにした力作と,さわやかな感動のある短編が収録されている。と,一生懸命説明したのだが,表紙を見たかんな氏に「魔女っ子モノだ!」と言われてしまった。
確かに書店でおっさんが買うには恥ずかしい表紙ではある。
映画「トランスフォーマー」を鑑賞。仕事柄「変圧器」を連想してしまうがもちろん違う。
まったく予備知識なしで観に行ったのだが,昔テレビアニメでやっていたものの実写映画化版だった。「いいもの」のサイバトロンと「わるもの」のデストロンが戦うアレである。
この手のハリウッド映画は「SF映画」と銘打っていてもSFとして見てはいけないというルールがある。基本的には頭をカラッポにしてその迫力のある映像を楽しむのが正しい見方だ。
それにしても,人型に変形したときの造形と動きが有機的すぎてちょっと馴染めない。あくまでも「生命体」という設定なのであれはあれでいいのかもしれないが,ガンダムに馴染んだ世代としてはロボットはやはりもう少しロボットらしく(?)してもらった方が好みだ。あるいは車のままで喋るナイトライダーが素敵である。
ヱヴァンゲリヲンの新作劇場版もやっていたが,今回は見送り。以前DVDで観た劇場版があまりにもアレでちょっとトラウマになっている。自分の中ではガイナックス作品の最高傑作はいまだに「トップをねらえ!」である。
【参考リンク】「トランスフォーマー」公式サイト
「ダウン・ツ・ヘヴン」(森博嗣)読了。
「スカイ・クロラ」シリーズの第3作。今のところ文庫で読めるのはここまで。
不思議なパラレルワールド感がよく出ている。「戦闘機よりもジェットコースタの方が(乗り心地が)酷い」というような会話が出てきたが,これは本当だろうか。まあ試そうとも思わないし,望んでも試せないだろうが。
飛行機の各部名称みたいなページを見て予習はしたつもりだったが,まだまだ機動のイメージが頭に描けない。これがわかるようになると,おそらくこのシリーズの面白さは何倍にも感じられるのではないか。
「フリーウェア」(R.ラッカー)読了。題名だけだとパソコン用のフリーソフトを集めた本かと思われる方もいるかもしれないが(いないか),ラッカーの「ウェア」シリーズ第3作。
マッドSFというのはなかなか認知されないジャンルのようで,前作ウェットウェアは長らく絶版が続いているし,シリーズ完結編の第4作「Realware」はいまだに邦訳されていない。
後半のファーストコンタクトネタは結構面白かったと思う。とにかく,ずっと「積読」になっていた本書を読了できてスッキリしている。
DVD「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」をレンタルで鑑賞。
STAND ALONE COMPLEXシリーズのオリジナル続編。原作1巻の聖庶民救済センタネタを現代風(?)にアレンジしたようなストーリィ。
総集編とはいえシリーズを通して観て,よくぞここまでやった,という賞賛は惜しまないが,それでもマンガ版の原作を超えることはなかったな,というのが個人的な感想。攻殻を語るならマンガを読んでおけば充分(暴言?)。
つまり,マンガ版を読んで考えさせられたこと,想起されたイメージ以上のものをアニメ版から感じることはなかったということ。
「時をかける少女」(筒井康隆)読了。
3作のジュブナイルを収めた短編集。映画の原作が短編だと驚く人が多いが,映画化するなら短編がちょうどいい長さだ。長編小説を映画にしようとすると,あちこち省略して短くする必要があって,「原作の方が良かったね」という話になることが多い(個人的見解)。
アニメの方を先に観てしまったのだが,アニメで主人公の相談役として登場する「魔女おばさん」が,原作での主人公(の20年後)ということになっている。
1967年の作品ということもあって言葉遣いが古いのが,今読むと逆に面白い。
当然1日で読める分量だが,これまで読んでいなかった理由は,この強烈な表紙。かんな氏が保管していてくれたので,タイムリーに日の目を見ることになった。
【収録作】
時をかける少女
悪夢の真相
果てしなき多元宇宙
DVD「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG Individual Eleven」をレンタルで鑑賞。
テレビシリーズ2ndシーズンの総集編。「笑い男」編よりもちょっと堅い政治のお話。
最後にタチコマがいいところを全部持っていく,というのがSTAND ALONE COMPLEXのパターンなのだろうか?
原作からそのまま引いてきたシーンが目立つのは原作ファンへの配慮か。サイバースペースの描写は原作2巻のもの。
それより何より,Webmasterは完全に認識を誤っていた事実が判明。なんとタチコマとフチコマが別AIとしてちゃんと描かれていたこと。テレビアニメ化にあたってフチコマをデザイン変更して名前もタチコマに変えちゃったのか,と思っていたが完全に誤解だった。
・・・というのもじつは誤解で,Wikiによると最後に出てきたアレは「ウチコマ」という別戦車らしい。うーむ。
DVD「時をかける少女」をレンタルで鑑賞。
恥ずかしながら原作は未読だが,このアニメはその原作から20年後という設定らしい。ちなみに有名な原田知世の映画も未見だ。
清々しい青春映画。時間SFモノとして見て矛盾点を突っ込んだりするのは無粋というものだろう。
自由に時間を遡れる(未来へは行けない)タイムリープ能力を手に入れたら,どこに戻るだろうか。たいていの人はこんな妄想をしたことがあるだろう。不毛な男子校ではなく共学の高校に進学するとか,いやもっと遡って小学生のときから女子に優しくしてればさらにモテモテじゃないかとか...。まあそれは冗談としても,悲惨な事故や病気を事前に警告するとか,値上がりする株を買って大もうけするとか。
しかしある程度の年齢になってみると,実際にはそういうことにはタイムリープは使わない気がする。そもそも受験勉強だとか期末テストだとかをもう一度やるのは甚だ面倒だと思いません?せいぜい,盆休み最終日に,初日まで遡って休みを延ばすとか,その程度ではないだろうか。
それはともかく,アニメ版「時かけ」はなかなかの名作だと思う。
【参考リンク】劇場版アニメーション 時をかける少女 公式Website
DVD「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man」をレンタルで鑑賞。
これはCSでやっていた攻殻テレビシリーズ1stシーズンの総集編的なお話。Webmasterはテレビシリーズは一切未見で,こういう総集編があると1本1本見る手間が省けるので助かる。
押井監督の劇場版に対して,このテレビシリーズでは思考戦車タチコマ(原作ではフチコマ)が原作に近いコミカルな性格で活躍するということで,どんより暗い劇場版よりも好きという人は多いと思う。
内容は結構ハードで,CSとはいえよくこれをテレビシリーズでやったな,という印象。アップルシードのランドメイドのような動甲冑が出てきたりして,士郎正宗ファンも楽しめるのではないだろうか。
「ZOKU」(森博嗣)読了。
仙台の日帰り出張で読み終えてしまった。また明日から出張で,読む本を思案中。読み応えのあるSF新刊が出るまではしばらく再読キャンペーンということになりそう。
ZOKUもスカイ・クロラ同様,ミステリではない。舞台は現代なのでSFか,と言われると微妙かもしれないが,充分にSFテイストを感じたのでSFということで。
ラノベ的なノリで悪くない,いや嫌いではない,というかむしろ好きである。なんといっても悪の秘密結社ZOKU(Zionist Organuzation of Karma Underground)と,その悪行を阻止せんとする科学技術禁欲研究所(TAI; Technological Abstinence Institute)の闘い(?),その秘密基地は真っ黒なジェット機と真白な機関車!となれば手に取らずにはいられない。
ヒロインの野乃ちゃんと揖斐さんの掛け合いも楽しい。続編も楽しみ。
「いえ,正確には,半破壊工作というか,非破壊工作というのか,今のところ呼び方も決まっていません」
「天の向こう側」(A.C.クラーク)読了。
1984年に刊行された邦訳の新装版。収録されているのは1947〜1958年に書かれた短編。
やはり「そのSFが想定した未来」よりも,さらに未来の時点でこれを読むというのが贅沢というか,なんとも言えない味わいがある。
収録作の「月に賭ける」は人類最初の月面探査の話だが,もちろんアポロ11号の月着陸(1969年)よりも10年以上前の1956年に書かれている。実際のNASAの仕事や現在の宇宙開発の状況と比べて読むことができるわけで,とても楽しい。
例えば現代の最先端SF作家(例えばイーガンとか)の作品を,50年後,100年後に未来の技術と比較しながら読んだとしたらどう感じるだろうか,そんなことを考えてしまう。
【収録作品と原題】
・90億の神の御名(The Nine Billion Name of God)
・密航者(Refugee)
・天の向こう側(The Other Side of the Sky)
・暗黒の壁(The Wall of Darkness)
・機密漏洩(Security Check)
・その次の朝はなかった(No Morning After)
・月に賭ける(Venture to the Moon)
・宣伝キャンペーン(Publicity Campaign)
・この世のすべての時間(All Time in the World)
・宇宙のカサノヴァ(Cosmic Casanova)
・星(The Star)
・太陽の中から(Out of the Sun)
・諸行無常(Transience)
・遥かなる地球の歌(The Songs of Distant Earth)
先日めずらしくテレビを眺めていたら,情報番組の1コーナーとしてUFO写真の特集をしていた。
矢追順一氏のUFO特番や,TVタックルの超常現象バトルが好きで楽しみにしていたWebmasterだが,なぜか1999年を境にこれらの番組がめっきり減ってしまったように思う。最近勢力を伸ばしているのがオーラだとかスピリチュアルだとかいったくだらない番組。
さて,冒頭に挙げたUFO写真特集で,UFO写真とされるものを撮影したおばちゃんは,「これは絶対にUFOだと思います」などとわけのわからないことを言っている。UFO特番が減ったおかげで日本人の常識はここまで地に落ちたのかと愕然としてしまった。
はっきりさせておこう。何であるか特定できない飛行物体,それがUFO(Unidentified Flying Object;未確認飛行物体)である。
なので,「これは絶対に飛行機ではないと思います」とか,「絶対にレンズのゴミではないと思います」というなら問題はないが,「これは絶対UFOです」という言い方は的外れも甚だしい。
UFOが存在する,あるいは多数の目撃情報があるということと,それがエイリアンクラフト(宇宙人の乗り物)である,ということの間にはもの凄く大きな壁があって,まるで別の問題であることを認識すべきである。
UFO特番が衰退せずに健全に発展すれば,もっと科学的な面白い議論が期待できたであろうに,本当に残念でならない。
「ナ・バ・テア」(森博嗣)読了。
スカイ・クロラシリーズの第2作目。時系列的には「スカイ・クロラ」の前日譚にあたる。今のところ文庫で読めるのは,第3作の「ダウン・ツ・ヘブン」まで。
空中戦の描写は,飛行機の動きをイメージできればより楽しめそう。古い映画だがトップ・ガンが観たくなった。
キレイな作品だが,ミステリのような「やられた」感はないので,好みは分かれるかもしれない。
「スカイ・クロラ」(森博嗣)読了。
ミステリで未読のシリーズがまだまだ残っている森作品だが,それらを後回しにしてスカイ・クロラを選んだのは,もちろん押井守監督によるアニメ映画化の話が出たからだ。
押井監督といえば,「パトレイバー」「攻殻機動隊」と,Webmasterの好きなSF作品を選んでいるかのように映画化してくれるなぁ,と思っていたが,今回は森博嗣ということで,ちょっと驚いている。
ということで,本作もジャンルとしてはSFに分類。レビューを見ると純文だとか寓話とか哲学書だとかいう感想も見かける。そもそもジャンル分けなど無意味だと森氏なら言いそう。
原作の感想としては,ライトな印象で,シリーズをもう少し読んでみたいというところ。空中戦のシーンなどはアニメ化でどうなるのか楽しみではある。
「迷宮百年の睡魔」(森博嗣)読了。
仕事ばかりしていて読書ネタくらいしか書くことがない。「女王の百年密室」を読んだときに,読み切りの長編と書いてしまったが,じつは誤りで,本作が続編となる(じつはシリーズもの?)。
舞台が22世紀ということで,SFミステリと言えるだろう。ロボット(ウォーカロン)の活躍も見逃せない。特に主人公のパートナであるロイディはいい味を出している。
SF全般に共通する点だが,エネルギー問題を解決している未来社会において,変圧器などの送変電機器がどうなっているのかが気になる。発電はまあ,太陽電池なり核融合なりのブレークスルーで事実上無尽蔵に使えるようになったとして,基本的に電力を使うという点は現代と変わらないわけだ。
電力を使うとすれば,当然輸送(送電)と変換(変圧)の必要が出てくるわけで,送電線だとか油の入った巨大な変圧器というような機器は,電磁気学が変わらない以上は必ず必要になると思うのだが,その点を詳しく書いたSFというのは読んだことがない。
作品によっては,各家庭や機械そのものに,超高効率な太陽電池(と何らかの電力貯蔵装置)を内蔵してしまうケースもあるが,今回読んだ作品では「世界のエナジィ問題は解決した」としながらも,ロボットのエナジィは「コンセントにつないで充電」する必要があるとされている。仮に街単位である程度の規模の発電設備があるとしても,各家庭まで電力を引く配電網は必要なわけで,その辺の描写がきちんとされているSFを読んだら,(本筋とは関係ないところで)ちょっと感動するかもしれない。
またもや仙台のホテルから書き込み。出張が多いと読書が進むのはいいが,休日に現地作業というのは勘弁してもらいたいものだ。
「沈黙のフライバイ」(野尻抱介)読了。
非常に良質なハードSF短編集。さわやかな読後感,未来に希望が持てるストーリで,このへんは他の野尻作品でも共通している。
こういう話をひとつ中学校の国語の教科書に載せてみたら,理系離れを減らす効果が見込めるのではないだろうか。いや,Webmasterが知らないだけでもう載っているのかもしれないが。Webmasterの頃は星新一の「繁栄の花」とか「おーいでてこい」を教科書で読んだ記憶がある。
休日なのに出張で,ホテルのロビーのパソコンで書いている。便利だが,書いている最中にIEが飛んでひどい目に遭った。MacBookが置いてあった前のホテルの方がよかったなぁ。
「ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔」(J.C.ライト)読了。
感想をいろいろ書いたのだが,上述のようにIEが飛んで戦意喪失した。とりあえず面白い。完結編の3作目が楽しみである。
「バビロニア・ウェーブ」(堀晃)読了。久しぶりに日本人作家の超硬派なハードSF。どのくらい硬派かというと,登場人物の色恋沙汰が一切,まったく,一行たりとも出てこない。やはりハードSFはこうでなくては。
人物描写が浅薄だとか言ってハードSFを批判する向きもあるが,純粋で清廉なSFには,色恋沙汰もサービスシーンも,場合によっては人間すらも不要なのだ。
エネルギーが無尽蔵に使える環境というのは,生活にどんな変化をもたらすだろうか。SFでは度々いろいろな背景技術で描かれる状況だが,いつもそんな世界を夢想してしまうWebmasterである。
エネルギーがタダで使い放題となれば,基本的に人間の競争や争いは一切不要となる。極言すれば,今の人類の問題は全て,技術的に利用可能なエネルギーが有限であることから生じていると言ってもいい。
サミットで話題の,温暖化を筆頭とする地球環境問題も,資源を消費しない無尽蔵なエネルギーがあれば一発解決だ。
ちなみに「地球環境問題」とかいう回りくどい呼称だから,センスのない人には他人ごとのように感じられるのであって,いっそのこと「人類生存環境問題」とか,もっとはっきりと「茨城県民生存環境問題」とか言ってあげればいいんじゃないか。少なくとも珍走団と同じレベルの話として自覚できると思う。
「忘却の船に流れは光」(田中啓文)読了。
タイトルとあらすじからすると硬派な宗教SFかと思うが,そこは著者が田中啓文ということで,そうストレートにはいかない。なんといっても「UMAハンター馬子」の田中氏である。下品でグロいが,それを乗り越えたところにキラリと光るSFが見えてくるのだ。
「反逆者の月」(D.ウィーバー)読了。読みかけの本を出張先で読了してしまったため,上野駅の書店で急いで選んだのが本書。著者の作品としては「オナー・ハリントン」シリーズが有名だが未読。ミリタリーSFの新御三家と呼ばれている。
手に取ってあらすじを読んでしゃべるコンピュータものらしいという点が購入のきっかけ。「"月"というのはじつは超弩級宇宙戦艦でした」というブっとんだ設定もグー。
ただ,読了してみると物語の序盤で終わってしまった感があって,解説を読んだらじつは三部作の第1巻だった。しゃべる超巨大宇宙戦艦"ダハク"の活躍は続刊に期待したい。
「アイアン・サンライズ」(C.ストロス)読了。シンギュラリティ・スカイの続編。前作よりも読みやすい感じはするし,テンポもよく読後感もなかなか。ちょっと誤植(単純なてにおはの間違い)が多すぎる気がするが,初版だとこんなものなのだろうか。
さほどハードではないけれど,最近のネオスペオペを読むなら,FTLだとか光円錐についての知識は常識として知っておいた方が楽しめると思う。
§光円錐
光速で伝搬する信号によって時空のある特定の点から到達しうる、あるいはその点に到達しうる点からなる集合が形成する、四次元空間内の超円錐のこと。
なんて巻末のひとこと解説を読んだだけでイメージできるだろうか?
「グラン・ヴァカンス 廃園の天使I」(飛浩隆)読了。
人間(ゲスト)の訪れなくなった仮想リゾート空間で取り残されたAI達が繰り広げる物語。永遠に続くかに思われた夏の日々に異変が・・・。という背景(プロット)は著者あとがきにあるように新味は無いかもしれないが嫌いではない。話も面白いと思うのだが,描写が痛々しくてホラーかと思うような残酷な場面が多かったのが個人的には辛かった。
現実(リアル)で出来ないことが実現できる仮想リゾート空間という成り立ちを考えれば,現代の残虐系ゲームの例を挙げるまでもなく,残酷なシーンが出てくるのはある意味必然なのかもしれないが,それを正面から描かれるとやはり辛い。
さて,生身の人間の場合,与えられる苦痛のレベルがある程度大きくなると感覚遮断(意識喪失)が起きてそれ以上の苦痛は感じずに済む(たぶん)。一方AIはソフトウェア的に感覚遮断が禁止されてしまうと,痛みの変数(?)の上限値まで苦痛を感じ続けなければいけない。ここで仮に,ネコに噛まれた痛さが100,骨折の痛みが10,000だったとしよう。変数がintで宣言されていれば痛みの上限は骨折の時の3倍で済む。しかしこれがlongだったりdoubleだったりしたら...
考えるだけで痛くなってくる。
著者のノート(あとがき)より引用
ここにあるのはもしかしたら古いSFである。ただ,清新であること,残酷であること,美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。
「ひとりっ子」(G.イーガン)[bk1]読了。
日本オリジナルの第3短編集。イーガンの新刊とあれば無条件で買わねばなるまい。
読んでいるときは(情けないことに)気付かなかったが,訳者あとがきを読んで,あの作品とこの作品がじつはつながっていた(ネタバレのため詳しくは書けない),という事実に鳥肌が立った。短編集でもこんな大技ができるとは素晴らしい。
イーガンは短編も面白いが,やはり長編の新作が読みたいところ。
収録作品
・行動原理
・真心
・ルミナス
・決断者
・ふたりの距離
・オラクル
・ひとりっ子
「SFが読みたい! 2007年版 発表!ベストSF2006〈国内篇・海外篇〉」(SFマガジン編集部編)[bk1]購入。
内容が特に面白いというわけではないが,SF読みとしての自分のポジションを確認するために毎年買っている。ランキング上位の作品は文庫化されていないものが多いので,1〜2年前くらいの版をたまに見返して,当時のランキング上位作品が文庫化されているかどうか調べたりしている。
ご参考:SFが読みたい!2006年版
「ゴールデン・エイジ 1 幻覚のラビリンス」(J.C.ライト)[bk1]読了。
全3巻の第1巻ということで,全体を通した感想は保留としたいが,なかなか楽しめそうな予感。続刊が楽しみ。
冒頭から目くるめく遠未来の描写で,初心者(?)にはちょっと取っ付きづらいかもしれない。純粋なサイバースペース(仮想現実環境)から,テレプレゼンスユニット(遠隔操作体)による現実世界とのインタラクション,ソフォテク(支援AI)の視覚へのオーバーラップなどは,攻殻機動隊(マンガの方)2巻の描写をイメージすると理解しやすいと思う(技術レベルは桁違いだが)。
「ニュートンズ・ウェイク」(K.マクラウド)[bk1]読了。
ワームホールゲート,超光速航行(FTL),時系列保護推定(CPC),精神のバックアップ・アップロード・ダウンロードなどなど,胸躍るSFガジェットが満載だが,ハードSFというわけではなく,軽めのスペースオペラ。
「時系列保護トラップさ。出現した位置はこっちの攻撃するには遠すぎて,しかもFTLで残りの距離を詰めるには,自分自身が存在できる光の円錐の外に出るか,時間を遡らなくちゃなんない。敵がいわば自分自身が追いついてくんのを待ってる間に,こっちは核ミサイルで——」
2006年は完全にブログの更新のみに終始してしまった感がある。その他のコンテンツは検索エンジンからのビジター用に残してあるような状態。検索して来てくれた方がわずかでも有用だと感じてくれれば幸いである。
ブログでは音楽・楽器ネタが急速に増えたのが大きな変化だった。関連してmixiからのお客様も増えた。
写真ネタは,ペンタSPでの撮影とメンテナンスが大きなイベントと言えるのではないか。携帯電話にもそこそこ写るデジカメが付いてくる時代,「写真ってたのしいねっ」などと大それたタイトルを冠して続けていくにはマニュアル機械式カメラのペンタSPの活用は必須とも言える。
読書ネタは相変わらず大部分を占めた。例によって今年読んだ本を以下にまとめておく。ノンフィクションを全然読まなかったのは猛省に値する。代わりに楽器練習など,他の趣味に割く時間が増えたということで自分を納得させている。SFは19作品(再読2冊を含む),ミステリィ(森博嗣のみだが)16作品ということで,森博嗣をずいぶん読んだ年でもあった。
【SF】
マジック・キングダムで落ちぶれて(C.ドクトロウ)
マッカンドルー航宙記(C.シェフィールド)
ハル(瀬名秀明)
太陽レンズの彼方へ(C.シェフィールド)
老ヴォールの惑星(小川一水)
象られた力(飛浩隆)
タウ・ゼロ(P.アンダースン)[再読]
宇宙消失(G.イーガン)[再読]
フレーム・シフト(R.J.ソウヤー)
シンギュラリティ・スカイ(C.ストロス)
火星縦断(G.ランディス)
竜の卵(R.L.フォアード)
スタープレックス(R.J.ソウヤー)
コラプシウム(W.マッカーシイ)
リングワールド(L.ニーヴン)
神の目の小さな塵(L.ニーヴン&J.パーネル)
敵は海賊・海賊版(神林長平)
カズムシティ(A.レナルズ)
ゴールデン・フリース(R.J.ソウヤー)
【ミステリィ】
笑わない数学者(森博嗣)
詩的私的ジャック(森博嗣)
封印再度(森博嗣)
幻惑の死と使途(森博嗣)
夏のレプリカ(森博嗣)
21世紀本格(島田荘司編)
今はもうない(森博嗣)
数奇にして模型(森博嗣)[再読]
有限と微小のパン(森博嗣)
人形式モナリザ(森博嗣)
月は幽咽のデバイス(森博嗣)
夢・出逢い・魔性(森博嗣)
魔剣天翔(森博嗣)
恋恋蓮歩の演習(森博嗣)
六人の超音波科学者(森博嗣)
捩れ屋敷の利鈍(森博嗣)
【ご参考】2005年の総括
「ゴールデン・フリース」(R.J.ソウヤー)[bk1]読了。
ソウヤーの処女長編をようやく読むことができた。SFミステリ(ミステリSF?)としての評価も高い本作品。文句なしに面白い。かなり特異な倒叙ミステリ(犯行方法も犯人も冒頭で明かされ,すべてが犯人による一人称の独白で進む)で,これはSFというジャンルでなければ絶対に書くことができない話だと思う。ボリュームもちょうど良く,程よいハードさ。
宇宙船の全機能を支配するAI,しかも人間に対して秘密を持っていて反抗までするというと,どうしても「2001年宇宙の旅」(A.C.クラーク)のHAL9000を連想してしまうが,その辺はソウヤーも充分承知しているところらしい。
今まで読んだソウヤー作品とは違いハッピーエンドとは言い切れない終わり方だった(殺人事件が起こっているのであたりまえだ)が,読後感は良く,ソウヤーにハズレなしの格言は今回も守られた。
「敵は海賊・海賊版」(神林長平)[bk1]読了。
シリーズものなのでなかなか手が出なかった作品。ネコが活躍する話ということで思い切って1作目を買ってみた。
著述支援システムで書かれたという設定や人工知能搭載の宇宙戦艦,カッコいい戦闘シーンはSFっぽいが,ストーリーはファンタジーのようで,評価が難しい。神林作品の「味」と言われればそんな気もする。シリーズを読み進めるかどうかは今後の気分しだいか。
ノウンスペース(既知宙域)というシリーズ物の集大成的な位置付けと聞いており,シリーズの他の作品が入手難ということもあって敬遠していたのだが,本作があまりにも有名な上,リングワールド自体が独立してシリーズ化されているということでようやく読む決心がついた。
とはいえ,やはりいきなり読んでも背景に関する知識がないので異星人の名前やエピソードがポンポン出てくると混乱する。まあそういう部分を抜きにしてもリングワールドの途方もないスケールの描写は充分にSF好きの心を満足させてくれるものだと思う。
ネコに似た好戦的な異星人「クジン人」が出てくると,なんとなくピートを思い浮かべてしまう...。
SFとしては結構ハードなガジェット満載で,ストーリーはスペオペ宮廷ヒーローもの(?)で表紙は萌え系という不思議な作品。
表紙に釣られて買った人,逆に表紙で拒絶したマジメな人,両方ともある意味裏切られる内容だと思う。マッカンドルー航宙記と似た雰囲気を感じた。
続編が4作も刊行されているらしいがいったいどういう方向に向かうのだろう。とりあえず次回作からは表紙だけは普通にしてもらいたい(店頭で手に取るのが恥ずかしくてネットで買った)。
ソウヤーにハズレなし!である。痛快娯楽ハードSF。やはりSFはハッピーエンドに限る。未来は明るい方が良いに決まっているのだ。
ハードSFといえば必ず挙げられるのが本書。直径20km,表面重力670億Gという極限環境の中性子星の上に進化した知的生命(生活速度は人間の100万倍)とのファーストコンタクト。
その設定は確かにこの上もなくハードだが,中性子星人の社会描写があまりにも人類と似ているのにはちょっと違和感。まあ似ていて悪いということではないのだが,もっと突拍子もない社会の方が"リアリティ"があるよなぁ,などと思ってみたり。最近のハードSF異星人モノはそのあたりの描写で差別化する傾向があるかもしれない。
リアルな火星サバイバルのお話で,ハードSFといえばハードSFだが,普段読んでいるブっとんだ展開の作品と比べると,地に足のついたSFと言えるかもしれない。
短い章立ての構成は毎日少しずつ読み進めるWebmasterとしては読みやすかった。
しかしときには,いくら頑張っても,いくら勇気を奮っても,追いつかないこともある。 宇宙は冷たく,空っぽで,非情で,人間の悲劇も土壇場の英雄的行為も際立った操縦技術も,一顧だにしない。 ときには,まにあわないこともあるのだ。
「シンギュラリティ・スカイ」(C.ストロス)[bk1]読了。久々に新鋭作家の作品に挑戦。ハードなガジェット満載でなかなか楽しめた。時代遅れ(?)の宇宙軍の懲りない面々もいい味を出している。宇宙艦隊戦の描写は燃える(萌える?)人も多いのでは。
ナノテクが避けられない時代の流れ,というのは理解できるが,ナノテクさえあれば何でもアリという風潮は,ファンタジーにおける魔法みたいなもので,何か一定の縛りを設けないとハードSFとしての面白味が失われてしまうような気がしている。
そういえば同じく英国新鋭作家A.レナルズの啓示空間の続編が出ているが,さらに殺人的な厚さになっていた。とりあえず持ち帰るのは断念。通販で買うにしても読むためには持ち歩かなくてはいけないし,ブックカバーには入らないし,悩ましいところ。
「フレームシフト」(R.J.ソウヤー)[bk1]読了。そろそろSFも読まなければと,危機感に駆られて近所のスーパーの書店に行った。わずかに(本当にごくわずかに)置いてあるハヤカワ青背の中から,未読かつ読む価値のありそうな本を探して,本書を手に取った。ハードSFでは無さそうだが,今までに読んだソウヤーでハズレはなかったし,SFに復帰するにはちょうどいいリハビリになるだろう。
テレパス(近くにいる人間の言語思考が読める)が少しだけアクセントになっている程度で,SFよりは理系ミステリという趣き。ハードSF好きにはちょっと物足りない展開だが,解説にもあるように「地に足の着いた小説」という感じだろうか。
「宇宙消失」(G.イーガン)[bk1]を再読。最初読んだときはあまり感じなかったのだが,イーガンの一連の作品を読んだ後に再読すると,本作にも「自分とは何なのか」というテーマが強く現れている。波動関数が収縮する際に,拡散中の自分たちが消滅するという概念は「順列都市」序盤の思考実験にも似ている(ような気がする)。
クライマックスの盛り上がりは個人的には今ひとつ(ブラッドミュージックっぽくないですか?)で,後の作品の方が好みだが,本作の魅力はやはり近未来の目くるめくようなナノテク,特に脳のニューロンを再結線して任意のソフトウェアとして機能させる「モッド」の描写であろう。
最近,新刊/既刊に関わらず新しいSF本を買っていない。いくつかシリーズ物で続編待ちという作品はあるが,買ってまで読みたいと思うSFがなかなか無い。最近第3部が出たニーブンの「リングワールド」シリーズや,超有名な「ハイペリオン」シリーズなど,気になるものがいくつかあるにはあるが,新たなシリーズ物に挑むのはかなりの気合が必要だ。ハードSFに関してはもう,イーガンさえ読んでいれば幸せという感じで,「イーガンよりつまらないだろうことが判っている,未読のSF作品」を読むモチベーションをいかに高めていくか,というのが現在の課題である。
NHK-FMの青春アドベンチャーで「太陽の簒奪者」をやっているというので,何年ぶりかでラジオドラマを聴いてみた。
ラジオドラマというのはSF向きのメディアという点で小説と似ていると思う。あまりにもスケールが壮大すぎてテレビドラマや映画では映像化不可能か,莫大な予算が必要な作品でも,「音だけ」ならなんとかなる(映像はリスナが頭の中で創造する)からだ。
もう10年以上前になるが,青春アドベンチャーは欠かさず聴いていた時期があって,SFに限らず名作が多かったという記憶がある。内容は忘れてしまったが「皇帝の密使」なんていうタイトルだけ記憶に残っている。マージャン合体ロボ「サンバイマン」なんていうのもあった。
青春アドベンチャーは平日夜の15分番組で,2週間で10話というのが多かったと思うが,土曜にはFMシアターという1時間番組もあって,こちらもたまに聴いていた。今でも気になっているのは,「宇宙船で金(キン)の採掘に出掛けて,長い年月の末に帰還してみたら金が化学合成出来るようになっており,せっかく採掘してきた金が無価値になり途方に暮れていたが,なぜか大量に積んでいた昔のビール瓶が物凄い価値になっていて...」というような話。うろ覚えでタイトルもわからないが,面白かったという記憶がある。ラジオドラマになったということは,小説などの原作が存在すると思うので,ご存知の方がおられたらご一報いただきたい。
たまにだが,ダミーヘッド録音の番組もあった。これはヘッドフォンで聴くと大変豊かな臨場感が得られる技術で,夏の夜に必ずやる怪談話など,まさに身の毛もよだつ恐ろしさだった。当時はダミーヘッド録音が何のことかわからなかったが,なんのことはない,マネキンの頭部(つまりダミーヘッド)の耳の中にマイクを仕込んで録音するということだった。バイノーラル録音と言ったりもする。最近は多チャンネルのソースとスピーカで臨場感を演出する映画も多いが,肝心の画が正面にしか見えない点で違和感が大きい。臨場感という点ではダミーヘッド録音+ヘッドフォン+暗い部屋(or目隠し)には敵わない。アミューズメントのオバケ屋敷等でこれを応用しているところもある。
今はどうか知らないが,実力派の声優さんが出ていることも多く,声フェチの人にもオススメである。
「タウ・ゼロ」(P.アンダースン)[bk1]読了。4年ぶりの再読になる。減速装置が破壊され,光速に向かって限りなく加速しつづける宇宙船がその先に見るものは・・・。という設定のハードSFの金字塔。
1992年のベストSF海外編の第1位に選ばれているが,原著が書かれたのは1970年。しかしその輝きは今読んでも色褪せることがない。スケールの壮大さで言えば,これを超えるのは文字通りの「永久」とか「無限」というテーマを扱ったいくつかの作品に限られるだろう。巻末に金子隆一氏の科学解説も付いており,とってもお得。
ちなみにP.アンダーソンは「永劫」のG.ベアの義理の父親なのだそうだ。これにはちょっと驚いた。
▼「中学生はこれを読め」 書店主が推薦リスト、全国波及(asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0506/003.html
札幌の本屋のオヤジは気がついた。「最近の中学生は本を読まないと言うが、うちには彼らのコーナーがなかった」。オヤジは500冊のお薦めをリストアップし、専用の棚を作って、こんなキャンペーンを始めた。(以下略)
500冊のリストは「これ読め」のホームページで見ることが出来る。
いくら今どきの中学生が読書しないからといって,「これを読め」って押し付けがましくリストアップされてもどうなんだろうか。おせっかいというか余計なお世話というか。どうでもいいけどSF少なすぎません?ざっと眺めても「アルジャーノンに花束を」,「夏への扉」,「ジュラシックパーク」くらい。同じフィクションでもファンタジー作品はけっこうリストに挙っているのになんか偏ってるなと。どうせリストアップして全国展開するなら,おやじ一人の独断じゃなくてもうちょっとなんとかならなかったものかと。つまりSFが少ないとWebmasterは言いたい。
そういうWebmasterの中学時代の読書はどうだったのかというと,じつはまだSFには目覚めていなかった。中学生の頃に小遣いをファミコンやマンガなどに無駄遣いせずコツコツとSFを買ったり図書館で借りたりしていれば今頃1000冊くらいは楽勝で読めていただろうにと後悔することしきりである。
当時何を読んでいたかと言えば,フィクションは図書室でホームズをたまに借りていた程度で,あとはブルーバックス(ハヤカワ青背ではなく,講談社の新書の方)の宇宙モノをちょっと背伸びして読んだり,MSXの雑誌(ゲームのプログラムリストが載っていて打ち込んで遊ぶ)を買っていた程度。いずれにしてもヒマがあった割に読書量は極端に少なかった。
友達には毎週毎週図書室で10冊ずつ借りるような強者も居たが,だからといって大人になっても読書好きかどうかというのはまた別問題のような気がする。
とにかく何が言いたいかというと,500冊のリストにもっとSFを入れてはどうか。(しつこい)
象られた力(飛浩隆)[bk1]読了。SFが読みたい! 2005年版国内編で1位となった中短編集。
この著者の作品は初めて読んだが ,初読の日本人作家で中短編集という点で共通する「老ヴォールの惑星」(小川一水)と比べるとちょっとインパクトが弱かった気がする。どの作品もなかなか面白いのだが,読後の感動は薄かった。あくまでも個人的感想であって,冒頭の短編「デュオ」などはSFとしては異色の音楽(ピアノ)モノだったりして,ハマる人はハマるかもしれない。「グラン・ヴァカンス」という長編も出ている(文庫化はまだ)らしく,電脳空間/AIモノらしいのでWebmasterの好みにはそちらの方が合いそうなので文庫化を楽しみにしている。
収録作品のテーマがわりと広いジャンルにまたがっていて全体の感想が書きにくいので個別に少し。
・デュオ
上述のように音楽モノ。ミステリ的な楽しみもある。
・呪界のほとり
クラークの第3法則「充分に発達した科学技術は,魔法と見分けが付かない」の究極の姿。こういう設定はキライではない。
・夜と泥の
地球化(テラフォーミング)組織「リットン&ステインズビー協会」が出てくる,表題作と共通の世界観。
・象られた力
図形のもつ力と物理宇宙のインフラストラクチャへのアクセス系の話。ジャンル的には神林長平に近いかもしれない(偏見)。この表題作が一番ボリュームがあり読み応えもある。
「21世紀本格」(島田荘司編)[bk1]読了。2006年版「SFが読みたい!」で国内編2位の評価をされているがWebmasterは未読の「デカルトの密室」(瀬名秀明)という作品があって,本書にその前のお話である「メンツェルのチェスプレイヤー」が収録されているというので買ってみた。森博嗣のバーチャルリアリティーテーマの作品もちょっと期待していたのだが...久しぶりにハズレの読書をしてしまった感がある。
「21世紀的なミステリ」ということで,ライフサイエンスやコンピュータテーマなど,SFっぽい話が必然的に多くなっている。そこでこれをSFとして読んでしまうと,大変チープでSF的には時代遅れという感想を抱いてしまった。もしかしたらミステリばかり読んでいる人にとってはこういう話が新鮮なのかもしれないが,どうなのだろう。
肝心のメンツェル〜にしても,ロボットを小道具にした軽いミステリという程度で,突っ込みが足りずなんとなく物足りない。これは難解と評判のデカルト〜に期待するしかない。
「トロイの木馬」(森博嗣)は設定には萌えるモノがあるがこれはミステリ...なのか?
まったく21世紀的でない「交換殺人」(麻耶雄嵩)が素直にミステリを読む気で読んだためか,一番面白かったような気がする。
当然かもしれないが,SF読みとしては「ミステリ作家が書いたSFっぽい話」よりも「SF作家が書いたミステリっぽい話」の方が性に合うらしい,ということを確認できた1冊。
【収録作品】
神の手(響堂新)
ヘルター・スケルター(島田荘司)
メンツェルのチェスプレイヤー(瀬名秀明)
百匹めの猿(柄刀一)
AUジョー(氷川透)
原子を裁く核酸(松尾詩朗)
交換殺人(麻耶雄嵩)
トロイの木馬(森博嗣)
SFが読みたい! 2006年版 発表!ベストSF2005[bk1]購入。2001年版からは毎年買うようにしている。ランキング上位の作品が自分にとっても高評価となるわけでは必ずしもないが,自分の好みが世間(といってもSFファンダムだが)の評価とどの程度ズレているかの目安にはなる。もちろん紹介記事は今後読む本を決めるときの参考にもなる。
今年は海外編1位が「ディアスポラ」,国内編1位は「老ヴォールの惑星」。その他の上位作品は文庫化されていない関係で未読のものも多く判断を保留したいところだが,国内外とも1位に関しては文句なく同意のWebmasterである。ディアスポラはWeb上の感想を読むと「絶賛の嵐」か,「難しすぎて読み進めることすら苦痛」かという両極端な評判が目立つが,これはそのまま読者のハードSF耐性を示していると思う。ディアスポラのハードさは飛び抜けているので,正直SFファンダムが対象のランキングでも評価が分かれるのではないかと想像していたWebmasterである。しかし1位になったところを見ると,読者の平均的な好みがハードSF寄りになってきた,ということかもしれない。
これでディアスポラには「海外編1位!」の新しい帯が付いて重版が書店に並ぶことと思うが,ハードSFと聞いてピンとこない読者の方は,手に取る前に覚悟が必要である。ハードSFを求めている読者にとってこの作品は全ての欲求を満たし,さらに想像すらしていないレベルに到達させてくれる極上の一冊だが,そうでない読者にはまるで情報理論か数学の教科書でも読んでいるように感じられるかもしれない。
ディアスポラに比べれば老ヴォールの惑星は万人にオススメできる作品。タイプの違う中篇が収められているので,どの作品が気に入るかで,自分好みのSFのサブジャンルが見えてくるのではないだろうか。
「老ヴォールの惑星」(小川一水)[bk1]読了。小川一水は第六大陸や復活の地で高評価を受けている新進の作家だが,Webmasterはいずれも未読だ。好みに合う作風かわからないのに長編をいきなり買うのはどうかと思い躊躇していたのだ。老ヴォールの惑星は中篇集ということで作風を見るにはちょうどいいと思って最初に選んでみた。
ところが読んでみるとこの中篇がいずれも素晴らしい。ハードではないのだが,思索的で読後感が良い。雰囲気はテッド・チャンに似ているだろうか。Webmasterと同年代ということもあり,今後も注目したい。
個々の収録作品については以下。
ギャルナフカの迷宮
異世界モノ。バビロンの塔(テッドチャン「あなたの人生の物語」収録)を思い出してしまった。自分が投宮刑にされたらどんな行動を取るだろうかと考えながら読むと楽しい。
老ヴォールの惑星
(人類にとっては)過酷な環境の惑星で発生・進化した知的種族の考察とファーストコンタクト。
幸せになる箱庭
コピー,ビジター,アルファレベルシミュレーション,マトリックス界,リング界,そしてトランザウト。自意識の連続性。現実と仮想現実の境界。
漂った男
これも自分がこんな目に遭ったらと考えてしまう。設定は遠未来。
「太陽レンズの彼方へーマッカンドルー航宙記(C.シェフィールド)」[bk1]読了。現在絶版にならずに入手可能なシェフィールドの作品は前作と本書しかないそうで,復刊と未訳作品の翻訳を切に希望するWebmasterである。しかもシェフィールド自身は2002年に六十七歳の若さで他界されているのだそうで,残念でならない。訳者あとがきにもある通り,ハードSFの面白さと小説としての読みやすさをここまで高次元でバランスさせる業を持った作家は,そうは居ないと思う。
「ハル」(瀬名秀明)読了。ロボットテーマの連作集。瀬名氏の作品はSFはSFなんだけど,ホラーっぽい生々しさがあるというか,他の作家とはちょっと違う感じがする(表現が貧困で申し訳ない)。
個人的には「夏への扉」へのオマージュ「亜季への扉」が良かった。
「マッカンドルー航宙記」(C.シェフィールド)読了。ハードSF好きといいながら,最近「太陽レンズの彼方へ—マッカンドルー航宙記」という続編が出るまでシェフィールドの名は知らなかったWebmasterである。解説にもある通り,1991年にこの文庫が出た当時ですら,シェフィールドの作品はすでに手に入りにくい状態だったようだ。マッカンドルー航宙記以前の作品となると,Amazonのユーズドでかろうじて何点か出ている程度である。
で,内容なのだが,ハードSFのお手本,あるいは入門書といってもいいだろうか。イーガンなどには拒絶反応が出る読者でも,シェフィールドなら「ハードSFとはこんな感じ」という雰囲気をつかむのにちょうど良いかもしれない。
巻末に相当なボリュームを割いて著者による科学解説があるあたり,にくい演出である。ここを読むだけでワクワクしてくる。アインシュタインの一般相対性理論からホーキングまでの科学史がまるでSFのように思えてくるから不思議だ。
前書きから「ハードSFの定義」を引用しておこう。
「科学や科学的考察を取り除いてしまっても深刻なダメージを受けない小説は,もともとハードSFではなかったのだ」
ちなみに,この本に関しては最初bk1で「2〜3日で発送」になっていたので,送料無料になるように他の本と合わせて発注したところ,これ以外の本が全部届いた後で,「やっぱり在庫切れだったのでキャンセルにします」と一方的に注文が無効にされてしまった。同じことは今までにも何度かあって,印象が悪いので最近書籍へのリンクはAmazonのものを貼っている。その後すぐにAmazonで注文したら何の問題もなく新品がすぐに届いた。しかしこれ一冊だけでは送料無料にならない。こんなことなら最初から全部Amazonで買えば良かったと思いつつ,Kinoppyが欲しがっていた本を一冊追加して送料無料にしたという経緯がある。
「マジック・キングダムで落ちぶれて」(C.ドクトロウ)読了。今年最初のSF読書は不死テーマにしてディズニーものという異色作。260ページと薄いし軽めの話でサクサク読める。
記憶(人格)のバックアップとクローン身体の促成培養を組み合わせた技術により,実質的な不死を実現している社会。フリーエネルギーも実現されているため,人間はもはや「生きるために働く」必要はなくなっている。
ストーリーはタイトル通りひたすら「落ちぶれて」いく話でなかなか切ない。最近年に1度は東京ディズニーリゾートに行っているWebmasterであるが,これからはキャストメンバーに対する見方が変わってくるかもしれない。
i,RobotのDVDをレンタル。アシモフのロボットシリーズは,こんな安っぽい話じゃなーい!と,ファンの人は皆思ったであろう。ロボット工学3原則,(スーザン・)キャルビン博士,USロボット社,陽電子頭脳など,おなじみの要素が登場して期待を持たせるだけに,失望も大きい。
まず,ストーリーは原作のi,Robot(邦題:われはロボット )に収録されているいずれの短編とも無関係だ。ロボットが明らかにロボットだと判る外見をしている点,キャルビン博士が若い(原作では確か美人という設定ではなかった...)点から,彼女が研究を始めて間もない時代という背景設定だと思うが,第1法則(ロボットは人間を傷つけてはならない)の解釈の問題に踏み込むあたりは後半のシリーズから上っ面だけ持ってきたような感じだろうか。
安易に人間に暴力を振るうロボットが登場するのは大問題である。第1法則を回避することが非常に困難だからこそ,伝説のR.ダニールとイライジャ・ベイリが活躍する傑作SFミステリとそれに続く物語が生まれたわけで,「じつはこのロボットには3原則が組み込まれていませんでした」というオチは安易すぎるし卑怯だ。アシモフに少しでも敬意を表す気持ちがあるのなら,サニーやNS-5シリーズは重度の機能不全に陥らなければウソである。
とはいえ,どの話にしろ原作に忠実に映画化するとしたら,多少の演出は入れるとしても極めて地味な映画になることは目に見えている。ロボットの見た目は人間と区別できないのでCGを使う必要はない(せいぜいC3POレベルで良い)し,そもそもロボットは絶対に暴力など振るわないし,その高度な運動能力の発露によって偶然にでも人間に危害が及ぶ可能性のあるような動作は厳に慎むため,アクションシーンも皆無である。そう考えるとこの映画はこういう感じでも仕方がなかったのかなぁ,とも思う。
現実世界のロボットはアシモにしろアイボにしろ3原則は組み込まれていない。「重いと転んだときに人にぶつかってケガをさせてしまうから軽くしよう」とか,「カドは丸くして柔らかい素材で作ろう」程度の消極的なレベルである。3原則を実現するには人工知能分野のブレイクスルーが必要であり,今も盛んに研究が行われていると思う。「ロボット心理学」がまじめに議論されるのはいつの日だろうか。
The Day after TomorrowをレンタルDVDで観た。直訳すると「あさって」だろうか。そのまま邦題にしても何の映画だかわからない(英語でもわからないが・・・)。
地球温暖化が大変だと言っておきながら,反対に氷河期に突入してしまう設定はニーブンの「天使墜落」でも描かれていたがなかなか皮肉なものである。暑くなってきたらCO2削減,寒くなったら温室効果促進のためにどんどん火を燃やしてCO2を出さなくてはいけない。
それにしても観ているだけで寒くなってしまった。冬に観る映画ではない。
今年もたくさんSFを読みたいと思っているのだが,手持ちの未読本が底をついている。一時期20冊以上「積ん読」状態だったのだが,ここ2,3年の間に自分の志向が明確化し,帯やネットの書評を見るだけである程度その作品が自分にとって「ツボ」かどうかをかなり正確に見極めることが可能になった。そのため最近は無駄に多くの本を買い漁ることがなくなり,未読本の消化が進んだわけである。
今日は近所の書店の中でも比較的SFの品揃えが充実している店に,新しい本を調達に行ったのだが,残念ながら意欲をそそられるようなSFは発見できなかった。まあ地方の書店など所詮この程度のレベルである。休日でも暖をとるために立ち読みをしているような客ばかりで,本屋さんの経営も大変だろうと思う。
そこでいつものようにネットで調査をして,bk1で発注となる。とりあえず5冊ほど注文してみた。だいたい2〜3ヶ月で読める量だろうか。今年はSFの間にKinoppy(奥様)から借りて森博嗣のミステリーも,もう少し読みたいところだ。
気付いたらbk1で買った本が累計でちょうど100冊になった。この分野ではAmazonが強く,いいところには人が集まり,ユーザが多いとサービスも良くなるし,参考になる書評の数も増え,より人が集まるという一人勝ちパターンになりつつある。bk1はサービス開始当初から使っているので贔屓したい気持ちもあるのだが,Amazonなら同じアカウントでCDもDVDも買える(最近は家電の通販までやっている)し,最近は「Amazonで検索してbk1で買う」ような状態になっている。
ブックリスト更新。啓示空間(A.レナルズ)読了。一冊の文庫本で1040ページの大作。正直上下分冊にしてほしいと思った。持ち歩くにはかさばって重いし,愛用の文庫カバーは使えないし,読むときも指が疲れる。上下分冊にしなかった意図は不明だが,啓示空間という何やら謎めいた雰囲気をその厚さで表現しようと考えたのだろうか...。
ハードSF的なガジェットは満載だが,ライトな雰囲気で読みやすいと思う(上述のようにスタミナは必要だが)。これだけの分量でも詳しく描かれなかった歴史背景や小ネタ(超啓蒙時代とか連接脳派とか融合疫などなど)が気になるところだが,巻末解説によると原著では続編,続々編まで出ているというから今後が楽しみである。
出てくるガジェットのひとつに,人格のアルファレベルシミュレーションとベータレベルシミュレーションというのがあって,これについて考えるのもなかなか楽しい。
作中では前者には人間としての権利が認められているが,後者は単なるプログラムとして扱われ権利などはないとされている。それは一見合理的に思えるかもしれないが,作中で触れられているように,ベータレベルシミュレーションだって,「あなたに自意識はあるか?」と問われれば当然「ある」と答えるし,チューリングテストにも合格する(元になった人物と同じ反応を返せるように学習させるのだから当然だ)。この場合,アルファレベルとベータレベルは同等のものとして考えていいのだろうか...。もちろん技術的に可能かどうかという問題はあるが,思考実験としては楽しめる。
ブックリスト更新。ハイブリッド(R.J.ソウヤー)読了。ホミニッド,ヒューマンに続くネアンデルタールパララックス三部作完結編。人類の恥ずべき醜悪さをこれでもかと並べたてる自虐的三部作もようやく完結である。とりあえずはハッピーエンドで良かった。往復8時間の日帰り出張の移動中に疲れた頭で読んでいたせいか,ラストの盛り上がりはいまひとつという感じがした。
何度も書くが人工知能インプラント(アリバイ履歴機能つき)はかなり欲しい。少なくとも自分が装備すれば,自身の冤罪の防止と,自分を狙う犯罪者に対する抑止にはなるだろう。まあ裁判で無罪になるような精神疾患患者の他害行為はどうしようもないが…。つくづくこの世界には不条理なことが多い。
今年中に読みたいSFがあと2冊控えている(うち一冊は1,030ページの大作「啓示空間」だし...)のだが,まずは「ディアスポラ」(G.イーガン)の2周目である。現在の人間とは文字通り次元が違うソフトウエア知性たちの話なのに,読み終えたときのこの静かな感動はどこからくるのだろう。
数学描写は残念ながらさっぱり理解できないが,その突き放され具合もまた気持ちいい。
ブックリスト更新。ディアスポラ(G.イーガン)読了。待望のグレッグ・イーガン新作長編。むさぼるように読んでしまった。急いで読んでもったいなかったのでじっくり味わいながら再読を始めたところである。巻末の大森望氏の解説に付け加えることは何もない。これぞハードSFの中のハードSF。ウルトラ・スーパー・ハードSFである。
あらゆる文学形式の中で,SFだけが与えうる深い感動。そのもっとも純粋なかたちがここにある。
(巻末解説より)
ブックリスト更新。日本SFベスト集成 '73(筒井康隆編)読了。ハードSF好きのWebmasterとしては取り立てて注目するような作品はなし。退屈で半分寝ながら読み終えた。資料的価値としては,野田-宇宙大元帥-昌宏氏の「コレクター無残!」などは,日本SFおよびファンダム黎明期の雰囲気を知る上で貴重かもしれない。
収録作品一覧
昨日紹介した「順列都市」の中で描かれる近未来の世界では,脳をスキャンしてその人の「人格」をコンピュータシミュレーションとして仮想現実の中で「走らせる」ことが出来る。同じ仮想現実モノでも,映画「マトリックス」では身体への入出力を仮想現実で代用して,処理そのものは生体脳で行うので根本的に違う技術だ。順列都市の作品中では,生体脳を必要とせず仮想空間の中でのみ生きる前者を「コピー」,生身の人間が仮想現実空間を訪問する後者を「ビジター」と呼んでいる。
ビジターについては現実にいろいろな研究が進んでおり,視力を失った人のために視神経に信号を乗せて物が見えるようにするだとか,運動神経をモニタして「考えたとおりに動く義手」などは実現が間近らしい。簡単なところではHMDやデータグローブというものもあるし,極端なことを言えばテレビゲームのRPGなどもビジターの一種だろう。
コピーは,生身の肉体が不治の病や老衰などで,もはやコピー以外に生き延びる可能性がないときの最終手段として描かれる。仮想空間は現実の世界に似せてあるといっても,プロセッサの能力的限界から,シミュレーションできる範囲は限られているし,同様の理由で現実世界よりも「遅い」速度でしか走らせることができない。作中では最も裕福で自前のスーパーコンピュータを持っているコピーでも,その速度は現実世界の17分の1に「減速」されている。
コピーが実現するかどうかは,脳科学や神経生理学が進歩して,「人間の意識というのは大変複雑ではあるが,脳のシナプスがこのように結合して,こんな風に信号を伝達する一連の流れの中で発生するものである」という結論を下せるかどうかにかかっている。どんなに複雑であろうとも,それが神経細胞の接続と物質や電流の伝達で成り立っているのなら,原理的にはそれをコンピュータのモデルで置き換えることは可能であろう。
私たちは自分に意識があることを知っている。他人はどうか知らないが自分に意識があることは自分のことだから断言できる。「我思う,故に我有り」というわけだ。コンピュータの中のコピーはどうだろうか。「そんなものに意識が宿るわけはない」という意見もあるだろう。しかし,コピーに問いかけてみたら「私には意識がある」と言ったとしたらどうだろうか。当然チューリングテストも合格したとしよう。「そんなのは入力に対してプログラムされた回答をしているに過ぎない」というかもしれないが,それを言ったら人間だって同じようなものである。外界からの入力に対して,どうするか考え,何らかの反応を返す。コンピュータの中のコピーと同じではないか。
コピーの「意識」はどこで発生しているのだろうか。コピーを走らせるコンピュータのクロックを落としていったとする。外界から見ているとコピーの動作はどんどん鈍くなっていくが,コピーから見たら外界の速度が加速されているように見えるだろうが,同じ処理が走っていることには変わらないのだから,同じように自分に意識があると感じることができるだろう。
さて,コンピュータは計算機である。猛烈なスピードで計算を実行することができるが,つまるところ0,1の足し算引き算をやっているにすぎない。ということは,コンピュータで走っているコピーの演算を,電卓でやったらどうだろうか。時間は果てしなくかかるだろうが「筆算」でやったらどうだろう。上に書いたようにコピーの立場からすれば同じように処理されればどんなハードウェアで走ろうと変わりはないはずだ。果たして紙に鉛筆で書かれた計算式に意識は宿っていると言えるのか...。
「そろばんで計算されるコピーにも意識があると言えるのか」という意味のセリフは作品中にも登場する。どうだろうか。順列都市を読んでみようという気にはならないだろうか。少なくともWebmasterは相当シビれた。
しかも上のような話はすべて序盤で出てくるネタである。この後さらに驚天動地の物語が展開される。SFって素晴らしい!
ブックリスト更新。UMAハンター馬子 完全版2(田中啓文)読了。面白かったが下品なので人に勧めるときは注意が必要。UMAを扱っているが,不老不死テーマの伝奇でもある。いつものダジャレも満載で,この人はマジメなんだか不真面目なんだかよくわからない。まあそこが魅力ではあるのだが。
ブックリスト更新。UMAハンター馬子 完全版1(田中啓文)読了。思惑通り,夏休みのリラックス読書としては最適だった。脱力系の面白さはもちろん,ミステリー仕立てで2巻が気になる。ということで早速2巻も購入してしまった。ダジャレSFで脱力したい人には銀河帝国の弘法も筆の誤りもオススメ。
ブックリスト更新。ヒューマン(R.J.ソウヤー)読了。ホミニッドの続編であり,ネアンデルタール・パララックス3部作の第2部になる。完結編「ハイブリッド」が待ち遠しいが出るのは2005年秋とのことでしばらくはお預けとなる。
前作に引き続き,人類(ホモ・サピエンスの方の)社会の不完全さ・醜さがこれでもか,というくらい強調されており読んでいて辛い。個人的にはコンパニオン・インプラントによるアリバイ履歴システムと遺伝子プールの浄化は(技術的に可能かどうかは別として)大いに賛成だが,現地球の限られた資源と既に増えすぎた人口,制御不能になりつつある気候・環境を前にしてはそれをもってしても軌道修正できるかどうか疑問である。なんとなく「逆襲のシャア」(映画の方)のシャアのセリフ「今すぐ愚民ども全てに叡智を授けて見せろ」というのを思い出してしまった。
とりあえず,完結編ではソウヤーらしいハードSF的な大仕掛けが用意されているのを期待して待つことにしよう。
次はリラックスするため(?)に「UMAハンター馬子 完全版1」(田中啓文)を購入。
ブックリスト更新。「ホミニッド」(R.J.ソウヤー)読了。出張の車内で一気に読んでしまった。ジャンルはハードではなく痛快娯楽SFというところか。好みの話ではないが楽しめた。その証拠に続編の「ヒューマン」も既に入手済みである。この三部作は今年の海外ベストSFランキングで上位に入ってくると予言しておこう。
こういうストーリー展開だと、途中で主人公を苦しめる苦難が大きければ大きいほど、または悪役が憎たらしければ憎たらしいほど,ラストのハッピーエンドが劇的に盛り上がるものだ。それはわかっているのだが,Webmasterはどうも途中の辛い場面で感情移入してしまって切ない気持ちになってしまう。「それがいいんじゃないの」と読書家な人は言うだろう。しかしそう言われても苦手なものは苦手なのである。誰も苦しい思いをしなければそれに越したことはない(それでは小説にならないが…)。しばしば人物描写が浅いと批判されるハードSFが好きなのもそういうことが関係しているかもしれない。この作品に関して言えば,人類の醜さを面と向かって指摘される辛さもある。
そして更なる苦難が主人公に降りかかるだろうと暗澹たる気持ちになりつつも,続編の表紙をめくってしまうWebmasterであった。
あ,しゃべるコンピュータ好きのWebmasterであるからして,インプラント『ハク』は当然ツボである。ほしいなぁ。
ブックリスト更新。「ウォー・ゲーム」(D.ビショフ)読了。1983年公開の同名映画の原作というかノベライズだろうか。表紙には映画のシーンが使われているが詳しい経緯はわからない。ストーリーは映画も小説も同じ。
映画はテレビ放映されたものを観ただけだが,気に入ってしまいビデオに録って何度も見返した記憶がある。DVDも出ているがまだ買っていない。Webmasterは人間と会話を交わすことの出来るコンピュータ(人工知能)が出てくる作品が好きで,ウォー・ゲームでは北米防空司令部(NORAD)で核戦争の戦略を練っているWOPRというスーパーコンピュータがいい味を出している。
ネタバレになるがコンピュータWOPRはラストで戦争の無益さを悟る。心のないコンピュータですら理解できることを,互いを思いやる能力を持った人間がいつまでたっても理解できないとはなんとも悲劇的である。まあこの小説(映画)の楽しみはそういう道徳的な部分ではなくて,主人公の少年ハッカーが音響カプラを駆使して学校のコンピュータをハッキングして自分の成績を書き換えたり,電話会社の課金を無効にしつつ,ゲーム会社のモデムが応答するまでその地区の電話番号に総当りをかけるプログラムを走らせる(大迷惑!)場面だろう。日本でパソコン通信「ニフティーサーブ」のサービスが開始されたのが1987年だから,かなり時代を先取りした作品だったと思う。というよりアメリカが進んでいたのか。
ブックリスト更新。「ホミニッド」(R.J.ソウヤー)購入。ハヤカワ文庫SFの1500番刊行記念作品。「ネアンデルタール・パララックス」という副題が付いており3部作の第1作らしい。ソウヤーの作品は今のところハズレがないので楽しみである。
ちなみにこの本は,オンライン書店ビーケーワンのブリーダープログラムで貯まったポイントで購入した。写真ってたのしいねっ経由でビーケーワンから本を買った場合に,購入金額の3%がポイントバックされるのだが,そのポイントが今回文庫本1冊買えるだけ貯まったのだ。ポイントは自分で買った分にも付くが,それだけでは到底文庫本を買える金額には届かないので,本サイトをご覧になってくださる皆様が本を注文してくださったということである。この場を借りて御礼申し上げたい。
ブックリスト更新。「ソラリスの陽のもとに」(S.レム)読了。帯には日本SF作家クラブ員が選んだ 海外SFオールタイムベスト第3位
とある。コンタクトものではあるが,(人類が望む形での)コンタクトが成立しないという点が珍しい類型かもしれない。というかこの作品がそういうパターンの始祖ということで高い評価がされているのだろうか。
古典SFを読む場合,未来科学・技術の予言(予測)としてどうかという楽しみ方がある。この作品の場合は建物は素粒子の消滅エネルギーによって作動する重力調節機を使って,海面から五百メートルの中空に浮かんでいた
という描写があることから,対消滅機関が実用化されている一方,コンピュータを使うためには電源を入れてから真空管が温まるまで待たなければいけないという具合だ。
哲学的なお話が好きな方にはオススメの作品だが,近い年代の作品なら「都市と星」(A.C.クラーク;1956年)を推したいWebmasterである。
ブックリスト更新。「復活の日」(小松左京)読了。またまた古い作品だが不覚にも電車の中で泣いてしまった。タイトルからわかる通り、希望のあるラストなので「渚にて」のような人類完全滅亡モノではないが,ほとんどそれに近い悲壮感がある。もう40年も前にこれほどわかりやすい形で警鐘が鳴らされているというのに、人類は未だに核兵器の全廃すら出来ずにいる(それどころか新たに開発している国すらある有様だ)。世界中の軍事予算を医学や宇宙進出に振り向けることができたら、人類はずっと短期間に遥かな高みに達することができるだろう。逆にそうしなければいつまで経っても一瞬で自分達の滅亡を招く危険性と共に暮らしていくことになる。何度も同じようなことを書いている気がするが、子供が悪いことをして叱る親御さんは、その子から「なぜ核兵器が必要なのか?」「大人だって殺し合いをしているじゃないか?」と問われたらなんと答えるつもりだろうか。子供にはわからない大人の世界とでも言うのか。果たしてそんな世界に子供たちは夢を抱けるのか…。それはともかく風邪に罹るのが怖くなる作品である。
ブックリスト更新。「ソラリスの陽のもとに」(S.レム)購入。これまた古い作品(原著は1961年)だが,オールタイムベストSFに必ず挙がってくる有名作なので,そのうち読まねばと思っていたもの。最近国産SFばかり読んでいたのでバランスを取る意味もある。
ブックリスト更新。「'72日本SFベスト集成」(筒井康隆 編)読了。'71から一転して(個人的には)凡作揃い。というか71年のレベルが高すぎたのかもしれない。SFとして楽しめたのは第4回星雲賞受賞作の「結晶星団」(小松左京)くらいで,「おれに関する噂」(筒井康隆)や「門のある家」(星新一)もお話としては面白いと思うが,これらをSFと言われてしまうと違和感がある。編者の解説によればニューウェーブということらしいが,だとしたらWebmasterはニューウェーブ系SFは苦手ということになる。
ブックリスト更新。「'71日本SFベスト集成」(筒井康隆 編)読了。以前Kinoppyに寄贈して頂いたうちの一冊。半村良,小松左京,広瀬正,光瀬龍,星新一ら豪華な顔ぶれによる短編集。光瀬龍の時代劇SF「多聞寺討伐」が良かった。
ブックリスト更新。「太陽の簒奪者」(野尻抱介)読了。第34回星雲賞受賞作。Webmasterにしてはすごい勢いで読破してしまった。あまり早く読み終えてしまうと娯楽としてのコストパフォーマンスが低くなってしまうのだが面白いものは仕方がない。ファーストコンタクトものの直球ハードSF。日本の現役SF作家でこのような宇宙ものハードSFが書ける人は実はすごく少ない(と思う)。
ブックリスト更新。「タイムマシンのつくり方」(広瀬正)読了。日本SF史に残る不朽の名作「マイナス・ゼロ」の広瀬正が,マイナス・ゼロ以前に書いたショートショートを集めた本らしい。時間テーマの作品が多い。ショートショートなので気楽に読める。集英社文庫版は1982年第1刷。
ブックリスト更新。「太陽の簒奪者」(野尻抱介)購入。小説は文庫しか買ってはいけないという縛りを自らに課しているWebmasterである。本書もようやく文庫化されたことを知り,購入しようと思って大手の書店を回ったのだが置いていない。新刊といえどもSFには厳しい世の中である。まあそんな扱いには慣れているのでネットで買おうかと思い始めた頃,新居の近所に小さい書店があるのを発見した。文庫の書架を見てみると(Webmasterは入ったことのない書店を見つけると,とりあえずSFの品揃えはチェックすることにしている),ラッキーなことに上記の本が置いてあるではないか。他にも数点気になる本があり,思わぬ発見であった。
ブックリスト更新。「コンタクト(上)」「コンタクト(下)」(C.セーガン)読了。ジョディ・フォスター主演の映画はDVDを持っているが,原作の方は未読だったのだ。映画は派手さを抑えた硬派な出来で,SF映画の中ではWebmasterお気に入りのひとつである。原作はハードSFといっても良いくらい刺激的で,これを読んだ後に映画を観たら(肝心な見せ場が端折られていて)ちょっとガッカリするかもしれない。特にハデン(ハッデン)の野望,異星人が語る宇宙の秘密などの描写は素晴らしい。充分に妄想系SFである。SETI@homeで200ユニットほど計算に協力したところで中断しているWebmasterだが,これを読んでまた再開したい気分になった。2005年現在,地球外知的生命からの電波を捉えたという報告は聞かない。また(少しネタバレだが),円周率πの計算記録は1012桁程度であるが,その中にメッセージが見つかったという話も聞かない("01234567890"や"111111111111"のような面白い数列はいくつか見つかっているようだ)。生きているうちに本当のコンタクトが実現することを切に願っている。
「あなたの人生の物語」(T.チャン)を再読。収録作の「理解」をもう一度読みたくて手に取ったところ,思わず全部通して読んでしまった。設定はファンタジーだが雰囲気はSFという絶妙な作品(バビロンの塔,72文字,地獄とは神の不在なり 等)などは,SFが苦手な人にも楽しめると思う。とにかく全編ハズレなしの素晴らしい短編集である。チャンを読まずしてSFを語るなかれ
-G.ベア-
ブックリスト更新。「奇術師(ハヤカワ文庫 FT 357)」(C.プリースト)読了。買ったときに書いたように輝かしい実績をもつ作品。読んで損はないと思う。SF的仕掛け(ガジェット)も多少登場するものの,Webmaster的にはミステリー,あるいはホラーのように感じた。ファンタジーとSFの境界的作品という評価をよく見かけるが,まさにそんな感じである。Webmasterの好みのジャンルではないが,それでも続きが気になってグイグイ引き込まれたということは,小説としての完成度がそれだけ高いということかもしれない。
ブックリスト更新。「奇術師(ハヤカワ文庫 FT 357)」(C.プリースト)購入。名古屋駅構内を少しウロウロしてみたのだが,大型の書店は発見できず。駅ビルの高島屋が開店すればその中には入っていたかもしれないが,朝は残念ながら閉まっていた。仕方がないので新幹線車中は寝て過ごした。上野駅での乗り継ぎの待ち時間は15分ほどしかなかったが,その間にいつものブックガーデン ディラ上野店に寄って,すかさず手にとったのが本書。ファンタジーレーベルからの出版でありながら,先日買った「SFが読みたい!2005年版」で,ベストSF2004海外篇の2位に選ばれており,さらに1996年の世界幻想文学大賞受賞作であり,その上「このミステリーがすごい!2005年版」の海外篇10位にランクインしているという凄まじい作品である。いくら受賞作やランキングの結果にこだわらないWebmasterでも,これだけの実績を無視するわけにはいかない。むしろこれほど話題になっている作品(しかも文庫)を昨年中に読めなかったことを恥ずべきであろう。
ブックリスト更新。「非(ナル)Aの傀儡(創元SF文庫)」(A.E.ヴァン・ヴォークト)読了。うっかり出張に向かう往路の新幹線の中で読み終わってしまった。ということは帰りの電車で読む本がない・・・。名古屋駅構内に大きい書店あるだろうか。というのはともかく,非Aの傀儡は「非(ナル)Aの世界(創元SF文庫)」の続編であり,非A二部作の後編となる。非(ナル)Aというのはあとがきから引用すると,『非A』つまり『非アリストテレス的思考体系』とは,コージブスキーがつけた一般意味論の別名である。~中略~ 要するに,アリストテレス論理学の三大法則,(1)AはAである(同一の法則),(2)すべてのものはAであるか,非(ナル)Aであるかのいずれかである(中間除外の法則),(3)Aであり,同時に非Aであるものは存在しない(矛盾の法則),――を根本的に打破するところから出発する。~後略~
なのだそうだ。とにかく古い出版(雑誌連載の初出は1948年)ということで古典もいいところである。たまには
SFが読みたい!2005年版を購入。購読しても読むヒマがないのでSFマガジンは買っていないWebmasterである。従って新刊SFの情報はWebとこの「SFが読みたい!」に頼っている状況だ。単にランキング上位の作品を買えばいいというものでもない,という話は前にも書いたとおりで,この中の解説や書評を精読して,自分のツボにハマりそうな作品を厳選していくわけである。また,ランキングに入っている作品はハードカバーのものも多く,地道に文庫化されるまで待つという苦労もある。
ブックリスト更新。「過負荷都市(ハヤカワ文庫 JA 544)」(神林長平)読了。タイトルにつられて買った作品である。神林氏が新潟出身ということも関係しているのだと思うが,作中で新潟市の描写が出てくる(しかも異世界として描かれる)のには同じ新潟出身者として不思議な感覚であった。主人公がターゲットを追って鳥屋野潟にかかる弁天橋を渡るシーンなどはその様子がリアルに想像できる。そういう楽しみはあったものの,氏の作品で個人的にツボにはまるのは本作のように「言葉」や「想い」をテーマにした話よりも,雪風シリーズや魂の駆動体のような機械を扱ったお話の方である。
ブックリスト更新。「前哨(ハヤカワ文庫 SF 607)」(A.C.クラーク)読了。全11編の短編集であり,表題作は「2001年宇宙の旅」の元ネタになったお話である。全体的に読みやすく読後感も良い。このあたりはアシモフ,クラーク,ハインラインの3巨頭に共通する要素ではなかろうか。