●SF本読了 ダイナミックフィギュア
「ダイナミックフィギュア(上・下)」(三島浩司)を読了。Kindle版。
内容の割にボリュームがありすぎた感じ。そして長かった割にちょっと首を傾げたくなる結末。
ファーストコンタクトものなのにそっち方面へはほとんど向かわず,リアル巨大ロボ(?)とそれを管制する組織のゴタゴタの話に終始していて,とはいってもエンターテインメントにも徹しきれず...。
ということでちょっと好みの方向性ではなかったです。
「ダイナミックフィギュア(上・下)」(三島浩司)を読了。Kindle版。
内容の割にボリュームがありすぎた感じ。そして長かった割にちょっと首を傾げたくなる結末。
ファーストコンタクトものなのにそっち方面へはほとんど向かわず,リアル巨大ロボ(?)とそれを管制する組織のゴタゴタの話に終始していて,とはいってもエンターテインメントにも徹しきれず...。
ということでちょっと好みの方向性ではなかったです。
「プランク・ダイヴ」(G.イーガン)を再読了。2年ぶりかな。
イーガンの文庫化された本はすべて所有しているはずだが,震災後の混乱でどこに埋もれたかよくわからない本もある。Kindle化されたら全部買い直してしまいそう。(2013年7月現在,イーガンの書籍はまだ一冊もKindle化されていない)
「ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper」(森博嗣)を読了。Kindle版。
ヴォイド・シェイパシリーズの2作目。主人公は人を斬る。理由はどうあれ現代では認められないことだけれど,時代劇なら「あり」の展開。森氏の作品はSFっぽいところが好きだと思っていたけれど,これはこれで大変面白い。続きが楽しみ。
Kindleの読書にもだいぶ慣れてきた。Kindle Paperwhite3Gの電池は,スペック通りの8週間は厳しいとしても,1日1〜2時間程度の利用なら2週間くらいは充分使えそう。うっかり充電を忘れていて外出中にバッテリーが切れても,Kindle本はiPhoneでも読めるので安心感はある。
こうなってくると新刊がKindle化されているかはけっこう重要な問題で,読みたい新刊が複数あるときには,どうしてもKindle化されているものから買ってしまう。今でもまだKindle化されないアンソロジーなどはけっこうあるけれど,確実に客を逃していると思う。
「百億の昼と千億の夜」(光瀬龍)を再読。Kindle版。
小説版もマンガ版も持っているけれど,実家に置いたままで最後に読んだのは(自分のWebサイトの記録に残っていないということは)15年以上前ということになる。
日本SFの金字塔と呼ぶにふさわしい名作。「マイナス・ゼロ」とともにオールタイムベストに必ず入ってくる作品。ついKindle版も買ってしまった。
「機龍警察 暗黒市場」(月村了衛)を読了。Kindle版。
まだ文庫化されていないのでKindle版の価格も高かったけれど,文庫化なら二分冊になりそうなボリュームだったし,まあ仕方がないか。
ヘヴィな話だったけれど,楽しく一気に読めた。まだまだ続きそうな感じ。
「ヴォイド・シェイパ」(森博嗣)を読了。Kindle版。
新シリーズ。ヴォイド・シェイパシリーズということで良いのかな。装丁が美しいという評判だけれど,残念ながら単行本を並べておく場所はないのでKindleで。
ミステリというジャンルに入れていいものかどうかわからないが,SFかミステリか,と言ったらミステリかなぁ。侍が主人公の時代小説風。とても面白かったので,続きが楽しみ。
「盤上の夜」(宮内悠介)を読了。Kindle版。
将棋や囲碁などを題材とした異色のSF。大変面白かった。
将棋の電王戦なんていう話題もあったし、囲碁はまだまだコンピュータが人間の棋士に勝てるところまではいかない、そんな背景もあって楽しめた。
「目薬αで殺菌します」(森博嗣)を読了。文庫版。
Gシリーズ第7作。続きが楽しみだけれど,一方で早く読んでしまうともったいない,という気持ちもある。
「フランケンシュタイン 野望」(D.クーンツ)を読了。
瀬名秀明さんの本を読んでいると必ず目にするD.クーンツの名前だけれど,ホラーっぽいのかなと思って敬遠していて,読んだのは初めて。
けっこうSF系の話で素直に楽しめた。日本だと伝奇という感じのジャンルかも。かなり長いシリーズもののようで,紙の本で買い続けるか,Kindle版が出るのを待つか迷うところ。Kindle化の予定などもわかると便利なんだけど(紙の買い控えが起きるから無理かな?)。
「天冥の標VI 宿怨PART3」(小川一水)を読了。
第6巻の完結編。この第6巻の3冊は非常にヘヴィな展開だった。この後どうなっていくのか,楽しみに待ちたい。
現在はKindle版も出ているけれど,買い始めたときは紙版しかなかったので,行きがかり上ずっと紙版を買っている。途中からKindleにしてしまうと中途半端な気がして。
「量子怪盗」(H.ライアニエミ)を読了。Kindle版。
かなりボリュームがあったように思うけれど,Kindle版だと「厚み」というものがないのでよくわからない。
文庫縛りのために今までは読めなかった新しい作品が読めるのは嬉しい。ものすごく面白い,というほどではなかったけれど,デビュー作だそうなので今後に期待かな。
「日本ミステリー名作選(III) (お風呂で読む文庫 87)」を読了。
お風呂で読む文庫シリーズでミステリーっぽいものは読んでしまったかな。IIIはI,IIと比べるとイマイチだったかも。
【収録作品】
失楽園殺人事件(小栗虫太郎)
絶景万国博覧会(小栗虫太郎)
謎の街(松本泰)
宝石の序曲(松本泰)
彼は誰を殺したか(浜尾四郎)
夢の殺人(浜尾四郎)
「MM9-invasion-」(山本弘)を読了。
MM9の続編。まだ文庫化されていないけれど,Kindle版で読むことができた。ラノベ的展開がなかなか良い感じ。さらに続くようなので楽しみ。
文庫化されていない作品が読めるというのは大変助かるのだけれど,価格設定はちょっと納得しがたいものがある。文庫化されている作品ならば,Kindle版は文庫と同等かちょっと安いくらいの価格がついている。しかし文庫化されていない作品は,単行本よりも若干安いが文庫よりもかなり高い。単行本が高いのはまあわかる。装丁が立派だしコレクション的な意味もあるからだ。しかしKindle本はそういうプレミアムはないし,解説も省かれているし,ちょっとねぇ,という感じ。
「ペルセウス座流星群」(R.C.ウィルスン)を読了。
なかなか面白かったと思うけれど、この人の作品は長編も短編もあと一歩という感じ。途中まではすごくわくわくするけれど、オチがちょっと残念とか。どっちかというと散々引っ張った仮定体3部作よりも、短編の方が好みかな。
それにしても昨年末に買ったKindle PW3Gでまだ1冊しか読んでいない。紙の文庫本で先に出てしまうと買ってしまうからなぁ。出版時に「これは1ヶ月後にはKindle版が出ます」とかアナウンスでもあれば待つんだけど。
ペルセウス座流星群といえば,以前観察したのがペルセウス座流星群だった(2007年,2009年)。
【収録作品】
アブラハムの森
ペルセウス座流星群
街の中の街
観測者
薬剤の使用に関する約定書
寝室の窓から月を愛でるユリシーズ
プラトンの鏡
無限による分割
パール・ベイビー
「日本ミステリー名作選(II) (お風呂で読む文庫 86) 」を読了。
お風呂で読む文庫シリーズももう4冊目かな。著作権切れの作品ばかりなので古いのだが,その古さが逆に新鮮で面白い。
「月にいくらあったらやっていけるもんかなあ?」
「いくらもかからないと思うのよ。間借りでもしてゆけば」と光子はうつむきながら答えた。
「三十円位なら僕でも出せるがなあ。君さえかまわなければ」
「だってそんなことをしていただいちゃすまないわ」
----山吹町の殺人(平林初之輔)より
「山吹町の殺人」の初出は昭和2年(1927年)。その頃の三十円が現在のどの程度の価値に相当するかは,日銀の企業物価指数でだいたいわかる。昭和2年の企業物価戦前基準指数は1.099,2011年は686.4。なので昭和2年の三十円は現在の一万九千円くらいに相当するだろうか。
【収録作品】
悪魔の舌(村山槐多)
殺人行者(村山槐多)
愚人の毒(小酒井不木)
恋愛曲線(小酒井不木)
山吹町の殺人(平林初之輔)
地図にない街(橋本五郎)
「キリストのクローン/覚醒(上・下)」(J.ボーセニュー)を読了。
3部作の完結編。途中「おっ?」と思う展開もあったものの,あまりSF分がないまま終わってしまった。エンタメとしてはまあアリかもしれないけれど,〜クローンという言葉からもっとSFな展開を期待した割にはちょっと残念な終わり方。
解説で,アメリカ出版界には「クリスチャン・フィクション」というジャンルが確立していて,かつそれらはほとんど日本には入ってきていない,というのが一番勉強になったかな。
日本ミステリー名作選 (お風呂で読む文庫 85)を読了。
大阪圭吉も甲賀三郎も初めて知って読んだけれど,戦前の暮らしなどの描写が面白かった。
【収録作品】
デパートの絞刑吏(大阪圭吉)
幽霊妻(大阪圭吉)
ニッケルの文鎮(甲賀三郎)
血液型殺人事件(甲賀三郎)
3.11の東日本大震災から1年9ヶ月。波はあるものの余震は続いていて,今月も一回津波注意報が出たりした。原発事故の放射線は,2012年12月末現在で0.055〜0.060uSv/hくらい。昨年の半分以下,1/3近くに下がってきている。事故前に比べると2倍くらいの値。
トピックスとしてはアマチュア無線関係が多かった。開局した当初は災害時に安心かな,という程度だったのが,うっかりCW(モールス通信)を試してみたところが,これがけっこう面白くてハマってしまった。オールモードの無線機FT-817を買ったり,ハムフェアにも出掛けてみたし,コンテストに参加して海外とも交信することができた。
新しいことに挑戦するのは楽しいし,これからもアマチュア無線は少しずつ続けていければ良いと思っている。ただし,1年間やってみてそんなにのめり込むようなことはないだろうと踏んでいる。なぜかといえばアマチュア無線は所詮「金がないと極められない/金さえあればそこそこ極められる」趣味だとわかったから。もちろんCWをはじめとしてPhoneでもオペレートのスキルに依存する部分はあるし,アンテナだとか電波伝搬を勉強することは必要だ。でも,いくらスキルを磨いたって無線機が買えなければ交信できないし,アンテナを建てる場所だって要る。そして無線機や道具類はいちいち高価。お金のない人は私のようにQRP(低出力)と移動運用で慎ましくやるのが精一杯。この1年で無線関係に20万円くらい使っても,だ。
そういう意味ではアマチュア無線というのは楽器やスポーツよりも,車だとかカメラに近い趣味ではないだろうか。そしてつぎ込んだ金額で満足度が変わるような趣味にはそれほど夢中になることはできない。これから続けていくにしても,投資は最小限に,スキルと知識を伸ばす方向で楽しみたいと思っている。
アコースティックギターの弾き語りは,無線とは対照的に90%はスキル依存であり,こっちの方こそ末永く楽しめる気がしている。とはいえスキルに依存するということは常に練習していないと上達はないということで,忙しいとなかなか厳しいのが実態。かろうじて年2回の発表会(春と秋)だけは参加するようにしている。
猫のピートは7歳,デルタは5歳になった。今年はいつものフォトコンテストで,かんなさんの撮った写真が特別賞を受賞した。日々の写真はアメブロの方に載せている。
読書は年末になってついにKindleが発売され,私も早速PaperWhite 3Gを購入した。今後紙の本と電子書籍の読書比率がどのように変わっていくのかは予測できないけれど,1年後の総括ではある程度方向性が見えてくるかもしれない。保管場所のことを考えるとKindle優位なので,購入を迷っている本が複数ある場合はKindle版が出ている方を優先する可能性は高い。
ということで今年読んだ本は下記。
【SF】
キリストのクローン/新生(上・下)(J.ボーセニュー)
キリストのクローン/真実(J.ボーセニュー)
南極点のピアピア動画(野尻抱介)
希望(瀬名秀明)
連環宇宙(R.C.ウィルスン)
天冥の標6 宿怨 PART1(小川一水)
白鹿亭綺譚(A.C.クラーク)
銀河ヒッチハイク・ガイド(D.アダムス)
拡張幻想 ー年刊日本SF傑作選ー(大森望・日下三蔵 編)
宇宙の果てのレストラン(D.アダムス)
機龍警察 自爆条項(上・下)(月村了衛)
天冥の標6 宿怨 PART 2(小川一水)
宇宙クリケット大戦争(D.アダムス)
去年はいい年になるだろう(上・下)(山本弘)
フェッセンデンの宇宙(E.ハミルトン)
さようなら、いままで魚をありがとう(D.アダムス)
ほとんど無害(D.アダムス)
小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団(瀬名 秀明, 藤子 ・F・不二雄)
【ミステリ】
工学部・水柿助教授の逡巡(森博嗣)
工学部・水柿助教授の解脱(森博嗣)
四季 春(森博嗣)(再読)
タカイ×タカイ(森博嗣)
朽ちる散る落ちる(森博嗣)(再読)
シャーロック・ホームズ作品集(I) お風呂で読む文庫(C.ドイル)
シャーロックホームズ作品集(II) お風呂で読む文庫(C.ドイル)
【ご参考】
2011年総括
2010年総括
2009年総括
2008年総括
2007年総括
2006年総括
2005年総括
「小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」(瀬名 秀明, 藤子 ・F・不二雄)を読了。
Kindle Paperwhite 3Gで初読書。
作品についてはこれはもう瀬名氏だけに間違いはない。懐かしいやら素晴らしいやら,マンガでは描かれなかった細部までフォローされている上,瀬名氏のオリジナルエピソードも心憎い。同時にあらためて原作の素晴らしさを再確認できる。
四次元空間に道具を配置することで、省スペース化と物質の劣化対策がなされている。ただしユーザーの状況によってはタグとの記号接地問題がうまく解決されず、無関係な道具が次々に選択されてしまうというプログラム上の欠陥も抱えているようだった。
Kindleについては,紙と比べるとちょっと読みづらいように思った。e-inkの特性なのか表面処理のせいなのか,コントラストが低いというか,黒が黒くないというか,エッジが眠いというかそんな感じ。ただ便利な点は多いし,集中していれば気にならないかな。充分に「読書」はできると思う。
何より本作のように文庫になってない単行本を,保管スペースを気にせず購入できる点は素敵だ。ワンクリックで瞬時に購入して読み始められるので,「そろそろ今の本が読み終わりそうだから,次に読む本を買っておかないとな」という心配もしなくて済む。
写真はKindle(ライトの設定は真ん中くらい)と紙の本を並べたところ。肉眼で見た印象とはやはり違うので,kindleを検討している方は実物を見てみることをオススメしたい。
kindle Paperwhite 3Gを購入。
電子書籍(電子ブック)については2008年や2010年にもちょっと話題に出したことがあったけれど,とにかく日本では出版業界の慣習(因習)のために当分普及はしないだろうと思っていた。
まだまだ読みたい本がすべて電子化されるには程遠い状態だけれども,こんなに早くkindleでこれだけ電子書籍が読めるようになったことは素直に喜びたい。
「読書」がしやすいかどうかはしばらく使ってみないとなんとも言えないところ。とりあえずこれまで文庫落ちしていなくて買えず,かつkindle版が出ている本を買って読んでみようと思っている。
Amazonで購入したので,アカウント情報など設定済みの状態で届けられた。Wi-Fiは設定する必要があったけれど,これはHomeSpotのパスワードを入れただけでつながった。
Wi-Fi接続状態なら一応ブラウザが使えて,白黒で描画も遅いけれど一応ウェブを閲覧することもツイッターでつぶやくこともできる。
安いWi-Fi版でなく3G版を買ったのは明確な使い方を想定したわけではないけれど,限定した使い方しかできないとはいえ,3G接続が無料でできるというのはなんとなくお得かな,と思ったため。
カバーは純正よりちょっと安いBuffaloのものを一応付けてみた。
いずれにしろ紙でしか読めない本は今後もしばらく出続けるだろうから,紙書籍とkindle本を交互に持ち歩くような感じになるかな。
「ほとんど無害」(D.アダムス)読了。
銀河ヒッチハイクガイドシリーズの5作目で完結編。いやに読みやすいし良くまとまっている素直な話だなと思いながら読み進めていったらこのラストですか。やっぱりマーヴィンが出てくる話の方が好きかな。
「さようなら、いままで魚をありがとう」(D.アダムス)読了。
銀河ヒッチハイクガイドシリーズの4作目。マーヴィンがあまり出てこないのでイマイチかな。訳者解説にあるエピソードの方が面白い。
原著はKindle版が当然のようにある。
「シャーロックホームズ作品集(II) お風呂で読む文庫」(C.ドイル)読了。
お風呂で読む文庫シリーズで2冊出ているホームズものの2冊目。青空文庫で無料で読めるお話だけれど,お風呂でフニャフニャになるのを気にせずに読めるのは助かる。Kindleをジップロックに入れてお風呂で読むこともできるらしいけれど,もしも壊れたら痛いよなぁ。
【収録作品】
グロリア・スコット号
黄色な顔
株式仲買店店員
入院患者
白銀の失踪
「フェッセンデンの宇宙」(E.ハミルトン)読了。
表題作はSFのサブジャンルとして確立された概念であまりにも有名であるが、恥ずかしながら未読だった。
とりあえずこの表題作さえ読めれば良いかな、という思いで読み始めたけれど、どの作品も素晴らしかった。フェッセンデンの宇宙をはじめ、現在のSFはだいたいハミルトンが考えたプロットを現代風のガジェット(電脳とか)で焼き直しただけなんじゃないか、という気さえしてくる。もちろんそれが悪いということではなくて、ハミルトンの想像力が素晴らしかったということだ。
【収録作品】
フェッセンデンの宇宙
風の子供
向こうはどんなところだい?
帰ってきた男
凶運の彗星
追放者
翼を持つ男
太陽の炎
夢見る者の世界
世界の外のはたごや
漂流者
フェッセンデンの宇宙(1950年版)
「シャーロック・ホームズ作品集(I) お風呂で読む文庫」(C.ドイル)読了。
入浴中の過ごし方については人それぞれ流儀があると思う。寮住まいの頃は風呂は共同だったし、結婚してからもアパート住まいではゆっくりくつろげるほど広いお風呂ではなかったので、せいぜい防水スピーカーを持ち込んで音楽を聞く程度だった。マンションに移って、わりと快適なお風呂になったので、最近は旅行のパンフレットやら家電のカタログやらCQ誌など、濡れてフニャフニャになって捨てても構わないものを持ち込んで読むのが習慣になっている。
どうせなら小説でも読んだらいいのではないかと、検索して見つけたのがこのシリーズ。古典を中心に100冊ほど揃えているようだ。ミステリとしてはシャーロックホームズ、日本のミステリが何冊か。SFだと海野十三とかタイムマシン,ガリバー旅行記くらいかな。
塩ビで出来ているので、濡れてもふにゃふにゃになったり滲んだりせず、やはり専用のものは違う。
もっとホームズを読みたかったのだが、今のところ2冊しか出ていないようだ。
【収録作品】
ブルー・カーバンクル
ノーウッドの建築家
悪魔の足
チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン
「去年はいい年になるだろう(上・下)」(山本弘)を読了。
素直に面白かった。今後も山本氏のSF新刊は買いたいと思う。そういえばAmazonのKindleストアが日本でもはじまって,山本氏の新刊もKindle版で買えるようだ。
電子書籍についてはいろいろと問題もありそうだが,住居スペースが狭く,購入するのを文庫本だけに縛っていてすら置き場所に苦労している現状を考えると,さっさとKindleに移行してしまった方が良いのかもしれない。なんといっても文庫落ちしていない単行本もKindle版なら気にせず買える。
「宇宙クリケット大戦争」(D.アダムス)読了。
銀河ヒッチハイクシリーズの第3作。そもそもクリケットがどんなスポーツかわからないので,というかそれが原因かどうかもよくわからないけれど,前2作と比べるとちょっと微妙だった。
でもここまで読むと一応最後まで読んでおかないと気持ちが悪いので,残り2作も買ってある。
「天冥の標6 宿怨 PART 2」(小川一水)読了。
現在一番楽しみにしているシリーズ。なかなか恐くて悲しい展開が続いているけれど,個人的にはハッピーエンドに向かってほしい。でもここまで悲劇を書いてしまうと厳しいかなぁ。
いずれにしても続刊が待ち遠しい。
「機龍警察 自爆条項(上・下)」(月村了衛)読了。
「機龍警察」で中途半端な終わり方だと感じた通り,シリーズだったようだ。だったらそう書いておいてくれないと。
格段に面白くなってきていて,でもまだ肝心のところが伏せられていたりするので,今後が楽しみ。
「拡張幻想 ー年刊日本SF傑作選ー」(大森望・日下三蔵 編)読了。
アンソロジーにはちょっと食傷気味で,NOVAの方は買うのをやめてしまったけれど,こちらは一応「年間傑作選」を謳っているので買い続けている。
「今まで知らなかった好みの作家の発見」については今回も特になかったけれど,個別に好みの作品はけっこう多かった。特に「5400万キロメートル彼方のツグミ」は非常にクサいネタではあるが,不覚にも落涙。歳のせいか涙もろくなっている。他にも「巨星」,「美亜羽へ贈る拳銃」,「黒い方程式」,「超動く家にて」,「結婚前夜」,「絵里」なども良かった。既読だが「ふるさとは時遠く」も好き。「〈すべての夢|果てる地で〉」もこれがデビュー作ということで凄いと思った。
【収録作品】
小川一水「宇宙でいちばん丈夫な糸 ――The Ladies who have amazing skills at 2030.」
庄司 卓「5400万キロメートル彼方のツグミ」
恩田 陸「交信」
堀 晃「巨星」
瀬名秀明「新生」
とり・みき「Mighty TOPIO」
川上弘美「神様 2011」
神林長平「いま集合的無意識を、」
伴名 練「美亜羽へ贈る拳銃」
石持浅海「黒い方程式」
宮内悠介「超動く家にて」
黒葉雅人「イン・ザ・ジェリーボール」
木々津克久「フランケン・ふらん ―OCTOPUS―」
三雲岳斗「結婚前夜」
大西科学「ふるさとは時遠く」
新井素子「絵里」
円城 塔「良い夜を持っている」
理山貞二「〈すべての夢|果てる地で〉」(第3回創元SF短編賞受賞作)
「銀河ヒッチハイク・ガイド」(D.アダムス)を読了。
スラップスティックSFって普段あまり読まないけれど,そもそも書いている人が少ないのかもしれない。他にはラッカーとか?
人生,宇宙,すべての答えが知りたい人は読んでおいた方がいいだろう。
続編もあるようなので,最近他に新刊も買っていないし,読んでみようかどうするか。
「白鹿亭綺譚」(A.C.クラーク)読了。
久しぶりのクラーク。最近疲れているので軽めの作品でちょうど良かった。
軽いけれどさすがの切れ味。やっぱり巨匠というのはすごい。
「天冥の標6 宿怨 PART1」(小川一水)を読了。
早いものでもうシリーズ6巻目。まだ最初に戻って再読はしていない。今回劇中の年表が巻末についているが,案の定かなり忘れている。そろそろ未読本もなくなりそうだし再読してみても良いけれど,震災後にばらばらになってしまったので発掘するのが大変そう。
「連環宇宙」(R.C.ウィルスン)読了。
前作「無限記憶」の感想で,「第3部が出るのは当分先になりそうだし,その間に内容を忘れてしまいそう。」と書いたけれど,3年経って本当にすっかり忘れてしまっていた。共通する登場人物のことも名前くらいしか思い出せない。
それでもまあ,3部作の完結編ということで,最後の方は割と楽しめたかな。
「朽ちる散る落ちる」(森博嗣)を再読了。5年ぶりかな。
震災の片付けで納戸に押し込んでしまって見当たらなかったものを,なんとか発掘した。
さすがに5年ぶりに読むといろいろと忘れている。
「タカイ×タカイ」(森博嗣)を読了。
Xシリーズ3作目。マジシャンものということで,過去の作品とも関係がありそうだけれど,記憶力が悪くてどこがどう関係していたのか思い出せない。
「希望」(瀬名秀明)を読了。
パラサイトイヴ以来の作品の中で,SFっぽいものはだいたい読んでいるつもり。でも正直に言ってBrain Valleyより後の作品は今ひとつピンとこない。
美しい文体で,なんとなーく深いことを書いているんだろうなぁ,とは思うけれど,ちょっと難しいというかわかりづらいと思う。こんなことを書くと「おまえの読解力が不足しているだけ」と言われそうだ。
まあ個人の好みの問題であって,解説にもBrain Valley以降こそ瀬名氏の真髄だ,みたいなことが書いてあったので,たぶん非常に高尚すぎてSFとミステリをちょっと読むだけの私には理解できないだけなのだろう。
【収録作品】
・魔法
・静かな恋の物語
・ロボ
・For a breath I tarry
・鶫(つぐみ)と鷚(ひばり)
・光の栞
・希望
「南極点のピアピア動画」(野尻抱介)読了。
尻Pの作品は短編を除くと「魔法使いとランデブー」以来5年ぶり。
寡作なのがもったいないけれど,国内SF作家でお気に入りの一人。やはり読後暗い気分になるような作品よりは,明るいものが好きだ。
今のところボーカロイドには興味はなくて,初音ミクは買っていないし歌を聴くこともない。DTMは中学生くらいまでは興味があったけれど,現在は自分で楽器を演奏するスキルを磨く方が楽しい。
「キリストのクローン/真実」(J.ボーセニュー)読了。
3部作の2作目。今のところまだ第3部は出ていないようなので,しばらく待ち。
キリスト教の知識としては,W.ワンゲリンの小説聖書(旧約編,新訳編)程度しかないけれど,けっこう頷ける内容が多い。結末がどこに向かうのか楽しみ。
「キリストのクローン/新生(上・下)」(J.ボーセニュー)読了。
この人の本は初読。そもそも創元推理文庫なのだが,宗教SFはけっこう好きなジャンルなので未読本もなくなったことだし買ってみた。
3部作ということでお話はまだ途中。SFかどうかはともかく,けっこう引き込まれる感じ。
「四季 春」(森博嗣)を再読了。
天才もの,というサブジャンルはありそうな気がする。アルジャーノンとか。これまでで一番感銘を受けたのはやっぱりT.チャンの「理解」かな。と,初読のときと同じことを書くあたり,完全に凡人である。
「工学部・水柿助教授の解脱」(森博嗣)読了。
Mシリーズ完結編。森氏の小説で現時点で文庫化されているものはだいたい全部読んでしまったかも。
SFの新刊も買っていないし,このままだとまた再読キャンペーンを始めなくてはいけない。
いっそのこと水柿君のように小説でも書くか。というのはフィクションです。
「工学部・水柿助教授の逡巡」(森博嗣)を読了。
Mシリーズ第2弾。やはり須摩子さんあっての水柿君だな,という感じとでも言うのだろうか。あにはからんや。
「そんなものさ、小説のファンとのことを心配するんだったら、今までどうして、女子学生との不倫を疑わなかったわけ?」
「うっわ、いやらしい!」須摩子さん、明るく笑う。
「いやらしくないと思うよ。大学生って、四年生だったらもう立派な大人だし......」
「立派な大人」
「院生だと、三十近い子もいるんだから」
「歳をとっていれば、いやらしくないの?」
2011年,やはり311の東日本大震災のインパクトは大きかった。幸い我が家は人的・猫的な被害はなかったし,マンションは揺れがひどくて家財はずいぶんダメになったが,住むところがなくなったわけではない。インフラが復旧するまで2週間に及ぶかんなさんの実家での避難生活も大変ではあったがとにかく家族がみな無事だったことを感謝したい。当時の日記を読み返すと,なかなか生々しい。給水車に3時間並んだこと,わずかしか品物のないスーパーに入店するのに2時間並んだこと,福島原発の状態を注視しつついざというときに逃げるためのガソリンを温存して徒歩で行動したこと,10日間シャワーも浴びられなかったこと,一日に何度も沢に水汲みに通ったこと…。できればもう二度と経験せずに済ませたいものだ。
震災後も余震が続き,9ヶ月以上経った現在でも1日か2日に一回くらいは体感できる揺れがある。そんな状況なので狭い部屋の中は備蓄の水や食料品などが所狭しと並び,倒れたり落ちて危険なものはすべて撤去するか床置きにしてあり,とても人様にお見せできる状態ではない。こんな体制をいつまで続ければいいのか,難しいところだ。
原発事故の放射線だが,2011年の12月現在で,事故前の5倍くらいの値(0.14uSv/hくらい)で推移している。ちなみに5月は0.2uSv/hくらいだった。
震災以外の話題としては,iPod touchを買って日記(プライベートな方)をEvernoteに移行したこと,盆栽を買ったこと,かんなさんのパソコン更新,そしてアマチュア無線の免許(3アマ)を取って,無線局を開局したことなどがあった。
アコースティックギターの弾き語りは現在ほとんど教室には通っておらず,コードを忘れない程度に気が向いたときにちょっと弾くくらい。アコギは手軽な楽器ではあるが,本当に忙しいとやはり手が付かない。ただ,来年も発表会だけは出ようと思うので,何か課題曲を考えなければいけない。
猫のピートは6歳,デルタは4歳になった。猫のネタはいちいち書いていないけれど,それは安定した日常ということで幸せなことだ。写真はアメブロの方に載せている。
読書は淡々と文庫新刊SFを読んだり再読したり。
【SF】
スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選(山岸真編)
さよならペンギン(大西科学)
ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>(大森望編)
アンブロークンアロー戦闘妖精・雪風(神林長平)
青い星まで飛んでいけ(小川一水)
地球移動作戦(上・下)(山本弘)
天獄と地国(小林泰三)
天冥の標IV: 機械じかけの子息たち(小川一水)
ねじまき少女(上・下)(P.バチガルピ)
あなたのための物語(長谷敏司)
結晶銀河 ー年刊日本SF傑作選ー(大森望・日下三蔵 編)
プランク・ダイヴ(G.イーガン)
ZOKURANGER(森博嗣)
究極のドグマ―穂瑞沙羅華の課外活動(機本伸司)
冷たい方程式(T.ゴドウィン他)
天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河(小川一水)
【ミステリ】
黒猫の三角(森博嗣) 再読
人形式モナリザ(森博嗣) 再読
月は幽咽のデバイス(森博嗣) 再読
夢・出逢い・魔性(森博嗣) 再読
魔剣天翔(森博嗣) 再読
恋恋蓮歩の演習(森博嗣) 再読
六人の超音波科学者(森博嗣) 再読
キラレ×キラレ(森博嗣)
捩れ屋敷の利鈍(森博嗣) 再読
赤緑黒白(森博嗣) 再読
工学部・水柿助教授の日常(森博嗣)
【その他】
吾輩は猫である(夏目漱石) 電子ブック
「天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河」(小川一水)読了。
シリーズ折り返し地点。ますます続きが楽しみに。復習の意味でそろそろ最初から再読するかどうか迷うところ。ちなみに今回はエロくありませんのでご安心を。
「冷たい方程式」(T.ゴドウィン他)を読了。
またまたアンソロジーだが,これはまあ別格かな。SF入門的な傑作揃い。
表題作は有名な短編だが,恥ずかしながらこれまで未読だった。震災を経験した後ではよりいっそう重いテーマである。
辺境の人間は遠いむかしに、自分たちを滅ぼそうとする力を呪うことの無益さを悟った。なぜなら、それらの力は盲目で聞く耳を持たないからだ。そしてまた、彼らは天にむかって慈悲を請うことの無益さを悟った。なぜなら銀河系の星でさえ、憎しみも哀れみもない法則によって冷酷に支配され、二億年という長い長い周期でその軌道を運行しているにすぎなかったからだ。 ーー「冷たい方程式」より
【収録作品】
徘徊許可証 R.シェクリイ
ランデブー J.クリストファー
ふるさと遠く W.S.テヴィス
信念 I.アシモフ
冷たい方程式 T.ゴドウィン
みにくい妹 J.ストラザー
オッディとイド A.ベスター
危険! 幼児逃亡中 C.L.コットレル
ハウ=2 C.D.シマック
「究極のドグマ―穂瑞沙羅華の課外活動」(機本伸司)読了。
前2作を読んで,面白いけど少し自分の好みとはズレているかなぁ,と思っていたのだが,今回はネコSFという噂を聞いたので購入。
まあ終わり方なんかはまずまずだったと思うけれど,ネコ分が不足していたように思う。あとキャラ萌えを狙うにしてももう少しかなぁ,という感じ。と言いつつつい買ってしまうということで,タイトルとかテーマの選び方はうまいのかな,と思う。
「工学部・水柿助教授の日常」(森博嗣)読了。
M(水柿君)シリーズ。ミステリのカテゴリか?とちょっと疑問は感じつつも,他のカテゴリは作っていないのでミステリで。
面白くて読んでいて楽しかったけれど,これって独身のときに読んだらちょっと辛かったかもしれない。おのろけ満載。
「赤緑黒白」(森博嗣)を再読。
順番からすると「朽ちる散る落ちる」なのだが,311の震災で本棚が崩れてしまい,蔵書をすべて納戸に押し込んでしまった関係で,見つからない本があるのだ。まあ一度読んではいるので,順番が前後するのは問題ない。
「プランク・ダイヴ」(G.イーガン)読了。
待望のイーガン新刊。本当はガチガチハードな内容の長編をふーふー言いながら読みたいところだが,本書は短編集でもハードSF分がかなり濃厚なのでオススメ。逆にハードSFが苦手な人にはまったくオススメできない。
とにかくもう全編オススメなのだが,イーガン好きとしては「ワンの絨毯」は外せないだろう。ディアスポラの4章との違いを比較しながら読み返したい。
「暗黒整数」もイーガンが初めて続編を書いた作品という意味で,「ルミナス」とともに再読したいところ。ダークインテジャ。シビれる。
long int i1, i2, i3;
dark d1, d2, d3;
"long int" は長整数型、通常の二倍のビットで表現される量のことだ。この年代物のマシンでは、それはたぶん合計六十四ビットのことだろう。「"dark"ってのは、なんなんだ」詰問口調になった。ふだんなら初対面の相手にそんな口のききかたはしないが、いまは冷静を装う気はなかった。
キャンベルは笑いながら、「暗黒整数」ですよ。わたしが定義した型です。四千九十六ビットあります」
----「暗黒整数」より
【収録作品】
クリスタルの夜
エキストラ
暗黒整数
グローリー
ワンの絨毯
プランク・ダイヴ
伝播
「結晶銀河 ー年刊日本SF傑作選ー」(大森望・日下三蔵 編)読了。
この年刊傑作選も4冊目。最近日本SFはアンソロジーばかり元気でちょっと辟易しているのだが,注目している作家の新刊がなかなか出ずに読むものもないので買ってみた。
何度か書いていることだけれど,ある程度長くSFを読んでいると,アンソロジーを読んで「すごい,こんな作家がいたのか!」という発見はほとんどない。未読の作家さんは単に好みじゃなくて読んでいないか,新人ということだ。
なので今回もそのことを確認しただけにとどまった。元々好きで文庫の新刊が出れば買っている小川一水(アリスマ王の愛した魔物),山本弘(アリスへの決別)が一番好みに合って,他の作品はまあそれなり。アリス~は短編集で既読だったので,ほとんどアリスマ王~のために買ったようなものだ。
たぶん一般の評価が高いのは長谷さんのallo,toi,toiだと思うけれど,「あなたのための物語」と同様,ちょっとヘヴィすぎて楽しめなかった。
初読の作家さんの作品の中からあえて面白かったものを選ぶとしたら「ゼロ年代の臨界点」かなぁ。ただこれはこういう企画の中で面白いという話で,この人の書く小説を今後も読んでみたいと思わせるほどのものではなかった。
あと,別のアンソロジーのNOVAからの収録(五色の船)があったけれど,読者層の重なるアンソロジー間で融通するのってなんか水増しっぽい感じを受けた。NOVAは書き下ろし,こちらは年刊傑作選だから...という理屈だと思うんだけど,それならNOVAの方は読む必要は感じない。どうせ面白い話は年刊傑作選にも収録されるんでしょ?という意味で。実際NOVAは収録作のばらつきが大き過ぎて,2以降は買ってない。
とはいえ,今後もSF界の定点観測という意味で貴重な企画なので,続いてほしいと思っている。
【収録作品】
冲方 丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
上田早夕里「完全なる脳髄」
津原泰水「五色の舟」
白井弓子「成人式」
月村了衛「機龍警察 火宅」
瀬名秀明「光の栞」
円城 塔「エデン逆行」
伴名 練「ゼロ年代の臨界点」
谷 甲州「メデューサ複合体」
山本 弘「アリスへの決別」
長谷敏司「allo, toi, toi」
眉村 卓「じきに、こけるよ」
酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)
「吾輩は猫である」(夏目漱石)の青空文庫版を読了。
リーダーのi文庫はiPod touchを買ってすぐに入れてあったのだが,普段はSFの文庫本を持ち歩いているし,気が向いたときに少しずつ読む程度だったので時間がかかってしまった。
SFじゃない古典作品なんてほとんど読んだことがなかったけれど,どうなんだろう。猫の視点,というのは面白いかもしれないけれど,ストーリーは淡々とした日常描写で,特に盛り上がりとかオチもなくて,文学作品というのはそういう中に何か(風刺とか?)を見いだしておもしろがるような読み方をしないといけないのかな。
とにかく青空文庫はすごい数があって,タイトルを眺めているだけでも圧倒されるけれど,使える時間は有限なのでなかなか思うようには読めない。
吾輩はこれで読心術を心得ている。いつ心得たなんて、そんな余計な事は聞かんでもいい。ともかくも心得ている。人間の膝の上へ乗って眠っているうちに、吾輩は吾輩の柔かな毛衣(けごろも)をそっと人間の腹にこすり付ける。すると一道の電気が起って彼の腹の中のいきさつが手にとるように吾輩の心眼に映ずる。
「あなたのための物語」(長谷敏司)読了。
この人の本は初読。なんというか,読んでるだけで体調が悪くなるような生々しい感じ。ちょうどラストを読んでいるときに本当に体調を崩してしまった。
このテーマでよく描ききったなと感心するけれど,個人的には何度も書いているようにSFはハッピーエンドが好きなので,ちょっとキツかった。
「ねじまき少女(上・下)」(P.バチガルピ)読了。
SF賞総なめと聞くと,どうしても「あ,これは自分の好みではないな」と判断してしまう。
今回もまあほぼその予想通り。ただ,石油枯渇後の世界ということで,エネルギーの描写は興味深かった。今はとにかく便利なので何にでも電気が使われるけれど,確かにぜんまいとかフライホイールというのはもっと見直されても良いエネルギー蓄積手段かもしれない。
「天冥の標IV: 機械じかけの子息たち」(小川一水)読了。
これは...エロい。ほとんどエロ本と言っても良い。電車で読めないという評判を見たことがあるけれど,既婚者が自宅で読むのもなかなか勇気が必要だと思う(奥さんの見てる前でエロビデオやエロ本を堂々と見られる人はあまりいないでしょう?)。
ただ,お話としては面白いし,シリーズの重要なパーツではある。そしてこれだけエロい話をしておきながら,最後はちゃんとさわやかに持っていくあたりが素晴らしい。
「天獄と地国」(小林泰三)読了。
短編のアイデアを長編化したものらしい。小林氏にしてはグロさもそれほどでもなく,素直なSFだと感じた。
いろいろと明かされていない謎などもあって,もし続編が書かれるなら読んでみたい。s
「地球移動作戦」(山本弘)読了。
面白かったけれど,放射線障害,大地震,津波,竜巻などなどあまりにもタイムリーなネタ満載で驚いた。そして作中で起きる大災害で想定された大地震のマグニチュードを,311の地震は超えてしまったという事実もまたすごい。事実は小説を超えるというのはこういうことだ。
でもやっぱり,SFも現実もハッピーエンドの方が良い。
ちなみに山本氏のブログによると,この文庫版の印税はすべて義援金として寄付されるそうだ。
「捩れ屋敷の利鈍」(森博嗣)を再読。
3月11日の地震で本棚は倒れなかった(不十分ながら耐震対策をしていた)けれど,中の文庫本はほとんど飛び出して床に散乱してしまった。このままだとまた地震が来たら動線を塞いでしまって危ないということで,本棚は撤去して,大量にある文庫本はすべて納戸の隅に積み重ねてある。
しかしこれでは読みたい本がすぐ探せないし,とても不便。どうしたものか悩んでいるところ。そうこうしているうちにも新しい本を買ってしまったり...
「よくあるパズルだが、このメビウスの帯の中央、つまりセンタ・ラインにハサミを入れて、これを二つの細いリングに切り離そうとすると、どうなるか、という問題はご存じかな?」
「青い星まで飛んでいけ」(小川一水)を読了。
最近の日本人SF作家の中では,一番波長が合う感じがするのが小川一水。次が山本弘と野尻抱介あたり。
ハードすぎず,読後感も爽やか。解説にもあったけれど,クラーク的な感じ。
ストレートな「都市彗星のサエ」や表題作「青い〜」ももちろん良いけれど,間に「占職術師の希望」なんかが入っているあたりも嫌いではない。チャンの短編集みたいな雰囲気。
天冥の標シリーズの続きが本当に楽しみ。
【収録作品】
・都市彗星のサエ
・グラスハートが割れないように
・静寂に満ちていく潮
・占職術師の希望
・守るべき肌
・青い星まで飛んでいけ
「アンブロークンアロー戦闘妖精・雪風」(神林長平)を読了。
前作「グッドラック」を読んだのが2002年ということで,正直に言って大まかなプロットくらいしか記憶になく,しかも意識とか言葉の話に入り込んでいってしまうために読み切るのが大変だった。
雪風<改>からグッドラック,そして本作と間を置かずに読んだ方が楽しめるかもしれない。雪風が好きだったので続編も買っているわけで,そのうち最初から再読したいけれど,雪風(無印)は実家だったかなぁ。
いずれにしろ神林作品を一番読んでいたのは2001年前後で,その頃の(文庫の)作風の方が好みというのは間違いない。魂の駆動体とか。
「キラレ×キラレ」(森博嗣)読了。
Gシリーズと並行していることもあって,なかなかシリーズの展開が見えてこない。まあそれは今後のお楽しみということかな。
「六人の超音波科学者」(森博嗣)を再読了。
震災による物流の停滞もようやく改善しつつあり,アマゾンに頼んでいた新刊文庫も届きつつある。ということで次は久しぶりに新刊の読書に取りかかる。
「そうじゃなくて、ムーミンってさ、顔が恐くない? スヌーピーとかも、僕恐いなあ。なんかのっぺりしててさ、本当に生きてて、呼吸とかしてたら、むちゃくちゃ恐いと思うけど。あ、ペコちゃんも恐いよね」
「いんや。ただのカバとか犬コロやないの。ペコちゃんなぁ、あれは、首が据わってへんだけに、ちょいやばいかもしれん」
「恋恋蓮歩の演習」(森博嗣)を再読了。
3月11日の大地震とその後の状況については,ツィッターとアメブロ,かんなさんのブログの方に近況を書いているので参照いただきたい。
避難生活中の水汲みなどの合間に読書。マンションで本棚から崩れ落ちた文庫本の山から,次に読む本を一冊だけサルベージしてきた。
ツィッター(@hsohei)
アメブロ(ソウヘイ航宙記)
かんなさんのブログ(にゃんこーず)
「君もな、はよ、ちゃんとした相手を見つけてやね......」
「綺麗なドレス着て踊りたいなぁ」
「それは......、うん、ちゃんとした相手じゃ無理かもしれん」
「魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge」(森博嗣)を再読了。5年ぶり。
森氏は模型飛行機のページを見ても判る通りのマニアなので,小説に飛行機の描写はたまに出てくる。スカイ・クロラもあるし。でも鉄道模型や鉄道はあまり出てこないですね。
「ほらあれ。今の、下から宙返りをすると見せかけて、ループの半分のところで、半ロールをしたでしょう。あのまま水平飛行をする。あれが、有名なインメルマン・ターンよ」
「インメルマン・ターンだよ」練無は紫子に顔を寄せて耳打ちする。「知ってる? 有名なんだって」
「隠元豆ロール? 知ってる知ってる」紫子が囁く。
「夢・出逢い・魔性」(森博嗣)を再読了。
そうかそうか,こんなお話もありましたね。という程度の記憶力なのが悲しい。
「なんでヒヨコの形してなあかんのって、思わへん?」紫子が振り向いて練無に尋ねた。「可哀想やとか、思わへん?」
「じゃあ、ヒヨコの形をした石ころだと思えば?」練無がにこにことして言い返す。
「なんで、石ころなんか食わなあかんの? もっと嫌やん」
「じゃあね…、ヒヨコみたいな形の石ころのようなお饅頭だと思えば?」
「ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>」(大森望編)読了。
結局買ってしまったアンソロジー。確かにどれも読み応えのある傑作だと思うけれど,それってつまり自分で短編集を買っている作家の本なんだよなぁ。ということで半分くらい(5作品)は既読の作品だった。
【収録作品】
野尻抱介「大風呂敷と蜘蛛の糸」
小川一水「幸せになる箱庭」
上遠野浩平「鉄仮面をめぐる論議」
田中啓文「嘔吐した宇宙飛行士」
菅 浩江「五人姉妹」
上田早夕里「魚舟・獣舟」
桜庭一樹「A」
飛 浩隆「ラギッド・ガール」
円城 塔「Yedo」
伊藤計劃+新間大悟「A.T.D Automatic Death■ EPISODE:0 NO DISTANCE, BUT INTERFACE」
神林長平「ぼくの、マシン」
「ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル」(T.チャン)読了。
文庫本化はされていないのだが,図書館でSFマガジン2011年1月号を借りて読んだ。SFマガジンはずいぶん前に購読してみようかと2ヶ月ほど買ってみたことがある。しかしブックカバーを付けて持ち歩くことができないし,他に読みたい文庫本があるのに連載まではとてもフォローできないよ,と思って早々に諦めた思い出がある。
今回のように図書館で借りて部分的にチェックするなら,お金もかからないしゴミも出ないので良いかもしれない。何よりチャンの次の文庫が出るのを待ってたらいつになるかわからない。
話の内容はストレートなAIもので,ちょっと意外だった。枚数の割に他のチャンの短編ほどのインパクトはなかったかな。
「SFが読みたい! 2011年版—発表!ベストSF2010国内篇・海外篇」(SFマガジン編集部編)を購入。
SF界の定点観測のために毎年買っている。
個人的には2010年は海外,国内ともにあまりぱっとした印象がない(小川一水の天冥の標を除く)。
何度も書いたがアンソロジーは豊富に出たけれど,長編で好みのハードSFがほとんど読めなかった。ランキングでもハードSFと言える作品は入っていないんじゃないかな。もちろんアンソロジーだって悪くはないし,何も出ないよりは遥かにマシだけど,「売れるSF=短編」みたいな風潮にはなってほしくない。
「月は幽咽のデバイス」(森博嗣)を再読了。ほぼ5年ぶり。
SFは結局アンソロジーをまた一冊注文したところ。それからテッド・チャンの中編が載っているというのでSFマガジン2011年1月号を図書館で借りてきた。雑誌の方で読んでしまうと,未読/既読の管理というかチェックが混乱するのであまり読まないようにしているのだが,中途半端な長さだといつ文庫本化されるかわからないので仕方がない。
「何の仕事?」紫子が眉を顰めてきく。
「骨董屋だよ」森川は答えた。
「そういう名前のスナックじゃなくて?」
「人形式モナリザ」(森博嗣)を再読了。
まだ新刊SFを買っていないので再読キャンペーンを継続。でもiPod touch用に青空文庫リーダーの「i文庫」を買ったので,古典の名作を挟むかもしれない。
「知らなかった?」保呂草は口もとを僅かに上げる。「僕ね、美大出てるんだよ。途中で出たんだけど・・・」
「うわぁ、それホンマに? お初お初」
「言わなかったかなあ」
「備中大学とかじゃなくて?」
「さよならペンギン」(大西科学)読了。
まったく存じ上げない作家さんだったのだが,偶然ツィッターで大西氏をフォローしてみたら,茨城ネタをけっこうつぶやいておられて,身近に感じられたのがきっかけで購入してみた。
なんとなく普段のつぶやきが面白い作家さんの本は気になるもので,ある程度の販促効果はあると思う。
普段読むジャンルの作品ではないけれど,良いお話だった。
「スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)」(山岸真編)読了。
最近このようなアンソロジーがたくさん出て,文庫と言えども安くはないので少々うんざりしているところだが,本邦初訳のイーガンの短編が収録されているとあっては買わざるを得ない。あざとい商売である。
で,やっぱり良かったのはイーガンの表題作,個人的にハズレなしと思っているソウヤー,あとは元々日本で人気のあるブリンの3作という無難な感想に。まだ買っていない新作SFアンソロジーが何冊かあるけれど,お金がもったいないのでしばらくは再読キャンペーンとしたい。とにかくイーガンの新作長編が早く読みたい。
【収録作品】
死がふたりをわかつまで(G.A.ランディス)
技術の結晶(R.C.ウィルスン)
グリーンのクリーム(M.G.コーニイ)
キャサリン・ホイール[タルシスの聖女](I.マクドナルド)
ローグ・ファーム(C.ストロス)
引き潮(M.S.リー)
脱ぎ捨てられた男(R.J.ソウヤー)
ひまわり(C.A.グーナン)
スティーヴ・フィーヴァー(G.イーガン)
ウェディング・アルバム(D.マルセク)
有意水準の石(D.ブリン)
見せかけの生命(B.W.オールディス)
2010年といえばSF読みにとっては意義深かったけれど,現実にはこれと言って大きなトピックのなかった年だったかもしれない。カメラ店のフォトコンテストで最優秀賞をもらったのと,5年ぶりにパソコンを買い換えたのがうれしかったかな。
日常のネタはツィッターでつぶやくことが多くなって,ブログの更新が停滞するようになったのも今年の特徴。これはネット界全体に共通する話で,何年も更新を続けてきた日記やブログが今年からぱったり更新されなくなったという人を何人も見ている。これが一過性の現象なのか来年以降も継続するのか,さらに新しい何かが出てくるのか注目である。
アコースティックギターの弾き語りは継続して習っているが,2年目に入って多少音の違いが判るようになってきたというのか,弦やギターのパーツが気になった年でもあった。サドルを買って削ったり,アンプを買ってピックアップを付けたりもした。ただこれは反省点でもあって,つい器材の方に興味がいってしまいがちになるのだが,いくら器材が充実しても腕が上がるわけではないので,演奏の練習に力を入れるべきだろう。
アメーバの猫写真ブログの方はとうとう惰性で今年も1年間毎日更新を続けてしまった。小さいサイズの写真をアップするようにしているので,無料の2GBを使い切るまでには50年くらいかかる計算である。忙しかったり旅行中でも毎日更新できるのは,事前に公開する日時を指定して記事を書いておける予約機能のおかげだ。
車(ポロ)のネタはあまり書いていないが,想像よりもトラブルが少ないためである。今後トラブルが増えてきたら記事にする機会が増えるかもしれない。(できれば増えないでもらいたいが)
読書も文庫新刊SFは低調で,なんだか最近はアンソロジーばかり出て食傷気味。商売的に売りやすいのだろうか?唯一の収穫は小川一水の「天冥の標」シリーズで,まあこのシリーズが始まったことだけでも2010年は価値があったかも。
【SF】
NOVA1(大森望 責任編集)
ZOKU(森博嗣) 再読
メシアの処方箋(機本伸司)
虐殺器官(伊藤計劃)
Self-Reference ENGINE(円城塔)
ラギッド・ガール(飛浩隆)
ゼロ年代SF傑作選(SFマガジン編集部編)
天冥の標<1> メニー・メニー・シープ(上・下)(小川一水)
天冥の標II 救世群(小川一水)
微睡みのセフィロト(冲方丁)
アードマン連結体(N.クレス)
機龍警察(月村了衛)
地球最後の野良猫(J.ブレイク)
パズルの軌跡 穂瑞沙羅華の課外活動(機本伸司)
MM9(山本弘)
NOVA2(大森望 責任編集)
天冥の標 3 アウレーリア一統(小川一水)
スペースプローブ(機本伸司)
量子回廊—年刊日本SF傑作選(大森望,日下三蔵[編])
アリスへの決別(山本弘)
神狩り2 リッパー(山田正紀)
天体の回転について(小林泰三)
ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (大森望編)
ディアスポラ(G.イーガン) 再読
ハーモニー(伊藤計劃)
【ミステリ】
Φは壊れたね(森博嗣) 再読
θは遊んでくれたよ(森博嗣) 再読
τになるまで待って(森博嗣) 再読
すべてがFになる(森博嗣) 再読
冷たい密室と博士たち(森博嗣) 再読
λに歯がない(森博嗣)
そして二人だけになった(森博嗣) 再読
笑わない数学者(森博嗣) 再読
詩的私的ジャック(森博嗣) 再読
封印再度(森博嗣) 再読
ηなのに夢のよう(森博嗣)
ゾラ・一撃・さようなら(森博嗣)
幻惑の死と使途(森博嗣) 再読
夏のレプリカ(森博嗣) 再読
今はもうない(森博嗣) 再読
イナイ×イナイ(森博嗣)
数奇にして模型(森博嗣) 再読
有限と微小のパン(森博嗣) 再読
「ハーモニー」(伊藤計劃)読了。
虐殺器官ほどではないが,こちらもなかなか怖いお話。
さすがにこの世界みたいになったら極端すぎるとは思うけれど,身近な人を病気で亡くすと,WatchMeみたいなテクノロジーがもしあれば,みたいに考えることはある。
あー,なんかクリスマスくらい素直なハッピーエンドの作品を読んで迎えるようにしたかったな。
「ディアスポラ」(G.イーガン)を再読。たぶん5回目。
最近買っても良いかな,と思うSF新刊(の文庫)はアンソロジーばかりという気がする。短編もまあ悪くはないけれど,たまにはヘヴィ級のハードSF長編が読みたい。
「有限と微小のパン」(森博嗣)を再読。
どういうわけか最近新刊の文庫SFがアンソロジーばかりで,ヘヴィ級のハードSF長編が読みたいと思っているのになかなか買いたい本がない。ということで再読キャンペーンが続いている。
「そんなの、知らない人なんていないわ」愛が澄まして言った。彼女のそのしゃべり方は、第三次キャット・カバー・モードである。エネルギィを消費するので滅多に使わないモードだった。
「数奇にして模型」(森博嗣)を再読。
萌絵ちゃんのコスプレと,金子くんの活躍。
未読SFが底をついた状態なので,このまま再読キャンペーンを続けることにする。
「お前は見ていない」喜多が言った。「俺は見た。この際な、これをはっきりさせておこう。朝の借りは、これでちゃらだからな」
「ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 」(大森望編)読了。
テッド・チャンの短編が読めればいいや,と思って買ったら,他の作品も面白くて当たりのアンソロジーだったと思う。特に好みなのは「彼らの障害の最愛の時」「昨日は月曜日だった」「旅人の憩い」「12:01PM」「しばし点の祝福より遠ざかり」,表題作の「ここがウィネトカなら・・・」と,そしてもちろんテッド・チャン「商人と錬金術師の門」。またバビロンの塔が読みたくなった。
【収録作品】
商人と錬金術師の門(T.チャン)
限りなき夏(C.プリースト)
彼らの生涯の最愛の時(I.ワトスン&R.クアリア)
去りにし日々の光(B.ショウ)
時の鳥(G.A.エフィンジャー)
世界の終わりを見にいったとき(R.シルヴァーバーグ)
昨日は月曜日だった(T.スタージョン)
旅人の憩い(D.I.マッスン)
いまひとたびの(H.B.パイパー)
12:01PM(R.A.ルポフ)
しばし天の祝福より遠ざかり…(S.スチャリトクル)
夕方、はやく(I.ワトスン)
ここがウィネトカなら、きみはジュディ(F.M.バズビイ)
「イナイ×イナイ」(森博嗣)読了。
新シリーズ(Xシリーズ)の開幕。文庫版しか読んでいないのでわからないが,元々Gシリーズと平行して出版されたのかな?
「天体の回転について」(小林泰三)読了。
これもなかなかに恥ずかしい表紙だが,あの初音ミクのイラストレーターさんの仕事らしい。
表紙と中身のギャップが激しいというか,表題作はイラストのイメージ通りのさわやかな感じなのだが,そこは小林泰三。他の作品は例によってかなりキテいる。
でも,多少グロい描写を我慢(?)すれば,内容は面白い。思わず読み返してしまったのは「銀の舟」。あとはアシモフのロボット三原則を扱ったロボットもの「灰色の車輪」も良かった。
あくまでも全体を通しての読後感は小林泰三なので,注意が必要。
【収録作品】
天体の回転について
灰色の車輪
あの日
性交体験者
銀の舟
三〇〇万
盗まれた昨日
時空争奪
「今はもうない」(森博嗣)を再読。
この作品などはまさに,初めて読んだときに受けた戦慄と感動を,二度と味わうことが出来ないという典型だと思う。もちろん何度読んでも楽しめるのだが,それは結末を知らずに読むあの幸せ感とは違うものだ。
と,いうような話は森氏の作品に関してはもう何度も書いた気がするなぁ...。
「君、歳を取ったね」
「先生。それ……、もう……。普通、女性に向かって言いますか?」
「成長したという意味だよ」
「じゃあ、そうおっしゃって下さいよ」
「誰でも歳を取れば成長する」
「酷い! 全然フォローになっていません」
「神狩り2 リッパー」(山田正紀)読了。
宗教SFは割と好きなジャンルだけれど,前作を読んだのがあまりにも昔すぎてまったく覚えておらず。
お話としては良かったし,「想像できないものを想像する」と言う以上,即物的な結論にはもちろんならないというのも理解できるところだけれど,ちょっと説明がくどいというか文体が好みじゃなかったのが残念なところ。
脳のバージョンアップの話としては,神は出てこないけど「理解」(T.チャン『あなたの人生の物語』所収)が今のところ最高。
「夏のレプリカ」(森博嗣)を再読了。
盲目の詩人,蓑沢素生が登場。
持っているのは文庫版の3刷だが,「茨城」のルビが「いばらぎ」になっていた(P268)。これは茨城県民としては看過するわけにはいかない。
「先生、ホットコーヒーを頼みましょう。それとも、ビュッフェまで行きますか?」
「西之園君」
「はい?」
「おやすみ」犀川は目を瞑った。ノートパソコンのスリープより素早かった。
新幹線にまだビュッフェがあった時代のお話である。
「幻惑の死と使途」(森博嗣)を再読。
すっかり忘れていたけれど,Gシリーズの加部谷恵美ちゃんが初登場。
「あの、どっちにしても、不幸な役回りですね、僕」
「確かに」
「先生、肯定しないで下さいよ」
「しかし、否定するような理由がない」
「先生……」
「ゾラ・一撃・さようなら」(森博嗣)読了。
天使の演習が登場するということで,他の森作品読者ならピーンとくるはず。おそらくいろいろと伏線がちりばめられているのだとは思うけれど...。いずれじっくり再読せねばなるまい。
未読本はこれで一旦すべて消化。しばらくは再読キャンペーンとなる。
「アリスへの決別」(山本弘)読了。
山本氏の文庫新刊が出ると買ってしまうようになった。今の日本人SF作家の中では割と好きなタイプ。
表紙と表題作はなかなか恥ずかしいけれど,まあAmazonで買えば問題ない。
好きなのは「七歩跳んだ男」(NOVA1からの再掲載),「地球から来た男」あたり。「地獄はここに」「リトルガールふたたび」も怖くて面白い。オルダーセン〜夢幻潜航艇も,設定の割にごちゃごちゃせずに良かった。要するにハズレはなかった。
長編が読みたいけれど,文庫化待ち。
【収録作品】
アリスへの決別
リトルガールふたたび
七歩跳んだ男
地獄はここに
地球から来た男
オルダーセンの世界
夢幻潜行艇
「ηなのに夢のよう」(森博嗣)読了。
Gシリーズ第6作。いつものように内容については何も書かない。他の人のレビューも読まない。今回は裏表紙の作品紹介をつい読んでしまって後悔した。
「量子回廊—年刊日本SF傑作選」(大森望,日下三蔵[編])読了。
「虚構機関」「超弦領域」に続く第3弾。今回も初めて読む作家が多かった。しかしなかなか「これはツボ」という作品なり作家には出会えないものだ。
個人的に面白かったのは,2編のマンガ「日下兄妹」「無限登山」と,「夜なのに」「確認済飛行物体」「雨ふりマージ」「バナナ剥きには最適の日々」「星魂転生」あたり。第1回創元SF短編賞受賞作の「あがり」も良かった。
【収録作品】
上田早夕里「夢見る葦笛」
高野史緒「ひな菊」
森奈津子「ナルキッソスたち」
皆川博子「夕陽が沈む」
小池昌代「箱」
最果タヒ「スパークした」
市川春子「日下兄妹」
田中哲弥「夜なのに」
北野勇作「はじめての駅で 観覧車」
綾辻行人「心の闇」
三崎亜記「確認済飛行物体」
倉田タカシ「紙片50」
木下古栗「ラビアコントロール」
八木ナガハル「無限登山」
新城カズマ「雨ふりマージ」
瀬名秀明「For a breath I tarry」
円城 塔「バナナ剥きには最適の日々」
谷 甲州「星魂転生」
松崎有理「あがり」(第1回創元SF短編賞受賞作)
「スペースプローブ」(機本伸司)読了。
宇宙ネタだけど話のほとんどがカラオケボックスでの会話,というのは斬新だったかもしれない。けれどちょっと中途半端かなぁ。
機本氏の本は一貫して「人間とは何か?なんのために生まれてきたのか?」的なテーマで,毎回期待してしまうのだけれど,少し肩すかしというか違う方向に行ってしまう感じがある。それが味といえば味なのかも。神様のパズルシリーズの続編とか,今後に期待したい。
「天冥の標 3 アウレーリア一統」(小川一水)読了。
新刊が出るのが楽しみなシリーズ。次のサブタイトルは「機械じかけの〜」とあるので,魅力的なAIたちの活躍に期待。
10年くらい前には海外SFばかり読んでいたけれど,最近は日本人作家のSFを読む比率が高い。イーガンやチャンなど,極めてハイレベルな海外作家は別として,それ以外に新刊が楽しみな作家がいないというか,いなくなってしまった。アシモフやクラークが逝き,J.P.ホーガンも逝ってしまった。
「NOVA2」(大森望 責任編集)を読了。
NOVA1が出てからまだあまり経っていないような気がする。割と早い刊行ペース。
神林作品は久しぶりに読んだ。「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」(倉田タカシ)は未だに読めず。頭が固いのかも。なので完全読了とは言えない。
好みとしては「バベルの牢獄」,「衝突」,「クリュセの魚」,「五色の舟」,「聖痕」あたり。結構楽しめたけれど,「この人の他の作品もぜひ読んでみたい」と思わせるほどのインパクトはなかったかな。
【収録作品】
・かくも無数の悲鳴(神林長平)
・レンズマンの子供(小路幸也)
・バベルの牢獄(法月綸太郎)
・夕暮にゆうくりなき声満ちて風(倉田タカシ)
・東京の日記(恩田陸)
・てのひら宇宙譚(田辺青蛙)
・衝突(曽根圭介)
・クリュセの魚(東浩紀)
・マトリカレント(新城カズマ)
・五色の舟(津原泰水)
・聖痕(宮部みゆき)
・行列(西崎憲)
「封印再度」(森博嗣)を再読。
S&Mシリーズ前半の山場と言えるかな。
ニフティーサーブのフォーラムというのは若いヒトには何のことだかわからないと思うけれど,今で言うSNSのようなもの。会員制の掲示板みたいな感じで,発言を監視して不適当なものを削除したりするシスオペがいたのが最近のインターネットとは違うところ。
「一度おききしたいと思ってたんですけど、先生は、どんな女性がお好きです?後学のために聞かせていただけないかしら」
「エンジニアリングのためかな? それともオプティクス?」
「MM9」(山本弘)読了。
山本氏のSFも今のところハズレなしで,どれも面白い。本書は「怪獣モノ」なのにちゃんとSFになっているのがすごい。
「パズルの軌跡 穂瑞沙羅華の課外活動」(機本伸司)読了。
「神様のパズル」の続編。著者あとがきにもあるが,沙羅華ちゃんが思いがけずツンデレ萌えな人々にウケてしまったということで,続編の本作ではそのあたりのサービス(?)に力が入っている。
読後感は前作同様さわやかで,こんな感じのお話は嫌いではないけれど,好きってわけじゃないんだからねっ。
「詩的私的ジャック」(森博嗣) を再読。
SFの未読本が落ち着いているときに,少しずつ再読を進めている。
「F1のドライバだってさ、ちょっとくらいマシンがいうことをきかなくなっても、騙し騙し走るだろう? それがプロというものだ。別に、君のコードにけちをつけているわけじゃない。それとも、あのマシンを捨てろというのかい?」
「そうです」国枝は答える。「たとえコードを直したって、エラーが出なくなるだけで、精度の保証はまったくありません。今から、パワーPC用に移植すべきです。新しいマックなら、ワークステーションよりフロートは高速です」
昔,マックにはPowerPCっていうCPUが使われていたんだよ,なんてそろそろ言われそう。
「地球最後の野良猫」(J.ブレイク)読了。
タイトルを見てポチっと予約してしまった。でも猫SFとしてはイマイチかなぁ。
「夏への扉」を読んでいたので,最初に飼う猫の名前は「ピート」にしようと思ったけれど,次に別な猫を飼ったとしても名前を「フィーラ」にしようとは思わないだろうな,という程度の作品。これなら「犬は勘定に入れません」のプリンセス・アージュマンドの方が良いと思う。
「機龍警察」(月村了衛)読了。
えっと,パトレイバーですよねこれ?という感想を抱いたのは私だけではあるまい。もしくはアップルシードとか。まあくどくどと類似性を述べるのは無粋だと思うのでそれ以外のことを。
なんとなく中途半端なところで終った印象がある。特に龍機兵開発の秘密とか。これはシリーズとして続くということなのだろうか。あとがきも解説もなかったのでよくわからない。何の説明もなく「特別高性能な機甲兵装が特捜部にだけ与えられました」というのではちょっと必然性がない。極端に言えば,「主人公にだけ魔法が使えるのです。その力は神様が与えてくれたもので,悪者には魔法は使えません」というのと一緒だろう。こういうお話を書く上で守らなくてはいけない大前提は,「自分(味方)の入手できるテクノロジーは相手(敵)も入手可能である」ということではないだろうか。その上で,作戦とか,個人のスキルとかで見せ場を作るわけだ。
月村さんって,なんか見たことのある名前だな,と思ったらアニメの脚本とかやっておられた方らしい。「ノワール」は独身時代に観ていた。それで上で書いたような「アニメ的展開」なのだろうか。
「笑わない数学者」(森博嗣)を再読。
シリーズを通して読んでからまた再読すると,いろいろと伏線があって楽しい。
「そして二人だけになった」(森博嗣)を再読。
シリーズ外なので好き勝手やってるなぁ,というお話。相対性理論の引用が効果的。
”光を伝える媒質”に対する地球の相対的な速度を確かめようとして、結局は失敗に終ったいくつかの実験をあわせ考えるとき、力学ばかりでなく電気力学においても、絶対静止という概念に対応するような現象はまったく存在しないという推論に到達する.いやむしろ次のような推論に導かれる.すなわち、どんな座標系でも、それを基準にとったとき、ニュートンの力学の方程式が成りたつ場合、そのような座標系のどれから眺めても、電気力学の法則および光学の法則はまったく同じであるという推論である.(動いている物体の電気力学/A.Einstein)
「アードマン連結体」(N.クレス)読了。
「プロバビリティ」シリーズや「ベガーズ・イン・スペイン」の方が有名だが未読。アードマン連結体はタイトルに惹かれたので買ってみた。
退屈せずに読めたけれど,冬樹さんの解説にあるように地に足がついた感じで,悪く言えばスケールが小さい話。「いまのSFには,小難しくてついてゆけないよ」という,むしろその小難しいSFが読みたい。
好みとしては表題作と,オレンジの値段,初飛行あたりかな。
【収録作品】
・ナノテクが町にやってきた
・オレンジの値段
・アードマン連結体
・初飛行
・進化
・齢の泉
・マリゴールド・アウトレット
・わが母は踊る
「微睡みのセフィロト」(冲方丁)読了。
話題の冲方さん。本作を読んでからマルドゥックシリーズを買うかどうか考えようと思っていたけれど,うーん,ちょっと微妙。
お話としては面白いし,ハッピーエンドなのも良いけれど,SFっていうよりファンタジーですよねこれ。
「天冥の標II 救世群」(小川一水)読了。
シリーズ2作目。いやー,こういう展開で来るか。これは続きがますます楽しみ。
「天冥の標<1> メニー・メニー・シープ(上・下)」(小川一水)読了。
全十巻の大作の幕開け。いろいろと面白そうな伏線が張ってあって続きが楽しみ。
移民船シェパード号の記述にもまだまだ伏せられているところや,虚偽の伝承があるかもしれないけれど,上巻に書かれていたことをそのまま信じるとして,生き残っている発電炉の最大出力が5,000万キロワット。これで植民地全土の電力をまかなっている。これはなかなかすごい設定ではないだろうか。
100万キロワットの原発50基分(日本の全原子力発電所出力と同等)の発電出力を宇宙船一機で発生させるというのもすごいけれど,送電や負荷追従の制御はどうやっているのだろう。交流なのか直流なのか,電圧は何ボルトなのか,などなど気になってしまう。
「λに歯がない」(森博嗣)読了。
例によって内容については何も書かない。何度も書くようだが森氏の本に関しては何の予備知識も入れずに読むことが最高の贅沢である。
森邸の新築工事はだいぶ進んでいる様子。ジャイロモノレールの研究も素晴らしい。
【参考サイト】Construction in Waterloo
「ゼロ年代SF傑作選」(SFマガジン編集部編)読了。
初めて読む作家の作品が多かった。マルドゥック〜はなかなか面白そうなので,未読本がなくなったらシリーズを読んでみてもいいかもしれない。
まあまあ面白かったのはアンジー〜と,アリスの心臓,おれはミサイルあたり。
【収録作品】
・マルドゥック・スクランブル"104"(冲方丁)
・アンジー・クレーマーにさよならを(新城カズマ)
・エキストラ・ラウンド(桜坂洋)
・デイドリーム、鳥のように(元長柾木)
・Atmosphere(西島大介)
・アリスの心臓(海猫沢めろん)
・地には豊穣(長谷敏司)
・おれはミサイル(秋山瑞人)
「ラギッド・ガール」(飛浩隆)読了。
痛々しい描写は苦手だけれど,なんとなく引き込まれてしまうのは世界の描写が魅力的だからだろうか。まだ続くようなので楽しみ。
「Self-Reference ENGINE」(円城塔)読了。
これは,なんと表現していいのか良くわからないが,難解?ギャグ?不思議系?
他に類を見ないとか,そんな意味では確かに突出した作品だとは思うけど,イーガンとかが突出してるのとはぜんぜん別の方向であって,正直この方向に行かれてしまうとついていけない。感性が古いのかな。
「 虐殺器官」(伊藤計劃)読了。
怖いタイトルだが日本SF界の各種アワードを受賞した話題作。
タイトルがタイトルなら内容も内容で,かなり悲壮な感じ。個人的にはこういう話を読み続けるのは辛い。
ただ,伊藤氏が素晴らしいSFを書く作家だったことは間違いないので,早すぎる死が本当に惜しまれる。
「冷たい密室と博士たち」(森博嗣)を再読。
4年半ぶりに読んだら,犯人もトリックもすっかり忘れてしまっていて,新鮮な気持ちで楽しめた。これってもう新しい本を買う必要はなくて,手持ちの本をぐるぐる再読すれば良いということ?
「二十四歳ぃ!」犀川は思わず大声になる。「だめだめだめだめ、十歳も違うじゃないか!けしからん!」
「SFが読みたい! 2010年版」を購入。
「ハーモニー」(伊藤計劃)と「地球移動作戦」(山本弘)は気になるなぁ。文庫化が楽しみ。
今月に入って話題作が何冊か文庫化されて買ったけれど,これは2006年から2007年版で上位になった作品。文庫読みは最先端から3〜4年くらい遅れていることになる。
洋書はKindleで読めるらしいけれど,日本ではいつになることやら。もし電子ブック化するならSFほどそれに相応しいジャンルはないと思うけれど...
「メシアの処方箋」(機本伸司)読了。
「神様のパズル」を読んだときに,いずれ他の作品も読みたいと書きつつ忘れていた。Amazonのオススメで表示されたのでそのまま購入。こうして考えるとAmazonの戦略は非常に効果的。逆にAmazonのオススメに表示されないと発売されたことすら気付かないという感じ。
内容は割と面白かったけれど,期待した方向とはちょっと違ったかも。
「すべてがFになる」(森博嗣) を再読。
未読本も何冊か仕入れたけれど,平行してちょっとずつS&Mシリーズの再読を進めようと思っている。
この衝撃のデビュー長編で「はじめから完成していた作家」と評された森氏だが,改めて読み返すとキャラクタの性格などがまだ完全には確立されていないことがわかる。例えば犀川先生の口数が多いとか,国枝先生の言葉遣いなどの点で違和感がある(些細なことだが)。
「ZOKU」(森博嗣)を再読。
ついに,とうとう,ようやく,満を持して,「ZOKUDAM」の文庫版が発売された。
ZOKURANGERが文庫化されるのはさらにまた数年先だろうから,ZOKUとZOKUDAMを大切に読んで行きたい。
「NOVA1」(大森望 責任編集)を読了。
書き下ろしのSF短編アンソロジー。解説にも書いてあるが,今まであまりなかったスタイル。
ただ,「ど真ん中のSF」というほどにはSFっぽさが感じられなかったのは,やっぱりWebmasterの嗜好が世間とズレているためだろうか。
まあそんな中でも良かったと思ったのは,「忘却の侵略」,「エンゼルフレンチ」,「七歩跳んだ男」あたり。伊藤計劃氏の絶筆となった「屍者の帝国」も面白そうだったのに,残念である。
【収録作品】
・社員たち(北野勇作)
・忘却の侵略(小林泰三)
・エンゼルフレンチ(藤田雅矢)
・七歩跳んだ男(山本弘)
・ガラスの地球を救え!(田中啓文)
・隣人(田中哲弥)
・ゴルコンダ(斉藤直子)
・黎明コンビニ血祭り実話SP(牧野修)
・Beaver Weaver(円城塔)
・自生の夢(飛浩隆)
・屍者の帝国(伊藤計劃)
「τになるまで待って」(森博嗣)を再読。
出張先で読み終わってしまったので,最初に戻って続けて2度も読んでしまった。
Amazonで今年3月まで,代金に関わらず送料無料のキャンペーンをやっている。本1冊でも送料無料なので,気になる本がある方はこの機会にどうぞ。
当ブログでは種々雑多なネタを取り扱っており,タイトルと内容がマッチしないことも多くご迷惑をおかけしている。年初にあたり,各カテゴリ別に少し状況を整理しておきたい。
【写真部門】
EOS Kiss X2を買ってからは,新しいカメラの動向などはチェックしていない。今年も猫写真をメインに撮っていく方針で,たまに気が向いたらフィルムカメラ(ペンタSP,学研二眼レフ)で遊びたいと考えている。安いフィルムスキャナが出ていてちょっと食指が動いたが,冷静に考えてそんなにバンバン黒白フィルムを自家現像(ダークレス)するか疑問だったので,今のところ保留にしている。
【猫部門】
記事で紹介するのを忘れていたが,木工工作を少しやって猫ケージをグレードアップした。これはデルタが家族になってから2年越しの懸案だったので,ちょっとすっきりしている。理想を言えば作り付けの大型ケージ(というか猫部屋)が欲しいところだが,狭いマンションではなかなか難しい。かんな氏の猫ブログは更新が遅いので,猫たちの近況についてはソウヘイ航宙記の方を見てもらいたい。
【読書部門】
読書はこの1年くらい少し悩んでいる。SFの新刊で「これはぜひ読みたい」と思うものがほとんどないのだ。これは自分の嗜好が変わってきたのか,出版の傾向が変わってきたのか,まだ判断できないでいる。新刊の情報はハヤカワとAmazonから送られてくるメルマガを参考にしているが,その3行ほどの紹介記事だけで,なんだか読んでも仕方がないような気がしてしまうわけだ。「なんでも読んでやろう」という気力が衰えたのは認めるけれど,出版の傾向としてもソフトな冒険モノばかりで,バリバリのハードSFって最近少なくないですか?
ミステリの方も森博嗣氏が表舞台から降りてしまって文庫新刊のペースが落ちているので,今年も再読や図書館の利用が増えそうな気がする。
とはいえ,読書そのものはやめられない(移動中や空き時間に活字が読めないと落ち着かない)ので,何らかの本は常に読み続けると思う。
【音楽・楽器部門】
2年目に入ったギター教室通いがどうなるかが自分でも注目である。こういうものは始めたばかりの頃は上達が目に見えて楽しい。それが1年も経つと弾ける曲は増えているが,練習量に比較して上達のペースは遅くなるし,ちょっとサボるとすぐに弾けなくなる。モチベーションを維持し続けられるかどうかがポイントだろう。
【技術・工作部門】
猫部門のところに書いたように,猫ケージの改造をするのに木工をやった。これは大型のホームセンタで材料を買って,そのホームセンタ内にある工作室を借りて行ったもので,使うときに名前を書けば利用料はタダである。大雑把な切断は1カット50円で大型の切断機(?)でお願いして,その後は工作室で自分でやる。曲線のカットは電動ジグソーを使い,切断面と角の仕上げは電動サンダーでやった。ジグソーなんて久しぶりに使ったが,さほど精度を気にしないのなら糸鋸よりも速いし便利。
旋盤とフライス以外の電動/手動工具はたいてい揃っているので,ここを使えばたいていの木工はいけるんじゃないだろうか。自宅も汚れないし。
ということで,今年もまた何か思いついたら自作するかもしれない。
【車部門】
昨年末にキューブからポロに乗り換えたので,たまにポロ関係の記事を書きたいと思う。といっても改造とかをするつもりはないので,燃費とかトラブル関係のネタくらいしか書くことがないかも。
【パソコン・ネット部門】
長期計画では今年末にWebmasterのPowerBookG4のリプレースとなっている(購入後5年経過)。今のところMacにするかWindowsにするか決めていないし,本当に買い替えられるかどうかも直前にならないと判断できないだろう。
EOS Kiss X2 / EF50mm F1.4 USM
「θは遊んでくれたよ」(森博嗣)を再読。
森氏といえば,欠伸軽便鉄道の次なるプロジェクトのブログがスタートしている。もしもお金持ちになったらこんな使い方ができたら素敵だ。
「すぐ迎えにきていただけますか?」
「メールを読んでからにしようかな」
「駄目です」
「Φは壊れたね」(森博嗣)を再読。
今のところ気になる新刊がないので,Gシリーズの再読を開始。ミステリの再読はネタがわかっているのでつまらないような気がするかもしれないが,これが意外と楽しめる。
「一度でいいから、私ね、海月君と膝を割って話がしたい」
「腹を割るか、膝を交えて、だね、普通は」
2009年,何といっても大きなトピックはアコースティックギター弾き語りの教室(先生つきのクラブ)に通い始めたことだろう。上達のペースはゆっくりだが,なんとか1年間挫折せずに続けることができた。これに関連してかんな氏と自分用のギターの購入や,音の比較の記事が多くなった。ブログのビジターも比較的ギター関係のキーワード検索で来る方が多いようで,多少なりとも参考になっていれば幸いである。
ギターを始めたのと引き換えに,フルートはすっかりサボりモードになってしまった。たまに音を出してみると,あっという間にくちびるが疲れて吹けなくなってしまうし,音も安定しない。今のところギターとフルートを両方とも練習する余裕はとてもないので,フルートはまだしばらくお休みすることになりそう。
5月には実験的な試みとして,アメーバブログの方に猫写真をメインにした軽いノリのブログを作った。1記事あたり写真1枚,本文1行として,1日1回以上の更新を目標とした。ケータイのメールによる更新が可能という利便性もあり,今のところ7ヶ月間毎日更新のペースを維持している。写真ってblogの長文がうざったい向きにはオススメである。が,いつまで続けるかは微妙なところ。
写真関係のトピックとしては,昨年末にEOS Kiss X2を買って,フィルムのEOS2台を処分したことなどがあった。逆に学研二眼レフカメラを作ってフィルムカメラが増えたりもした。Kiss X2で撮ったピートとデルタの写真がフォトコンテストで優秀賞を取ったことも素直に喜びたい。
車をキューブからポロに乗り換えたが,ポロについて独立したコンテンツを設ける計画は今のところない。何かあればこのブログで紹介していくつもり。
読書の方は興味を引くSFの新刊が最近あまりないので,再読が増えている。図書館でアガサクリスティーを借りて読んだりもするようになった。
【SF】
時間封鎖(R.C.ウィルスン)
虚構機関—年刊日本SF傑作選(大森望,日下三蔵[編])
万物理論(G.イーガン)(再読)
シュレディンガーのチョコパフェ(山本弘)
祈りの海(G.イーガン)(再読)
デカルトの密室(瀬名秀明)
フリーランチの時代(小川一水)
反逆者の月3ー皇子と皇女ー(D.ウェーバー)
スカイ・イクリプス(森博嗣)
ウォー・ゲーム(D.ビショフ)(再読)
ディアスポラ(G.イーガン)(再読)
神は沈黙せず(山本弘)
第九の日(瀬名秀明)
闇が落ちる前に、もう一度(山本弘)
アイの物語(山本弘)
無限記憶(R.C.ウィルスン)
超弦領域—年刊日本SF傑作選(大森望,日下三蔵[編])
レインボーズ・エンド(V.ヴィンジ)
犬は勘定に入れません—あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎(C.ウィリス)
猫語の教科書(P.ギャリコ)
サマーウォーズ(岩井恭平)
順列都市(G.イーガン)(再読)
【ミステリ】
どきどきフェノメノン(森博嗣)
探偵伯爵と僕(森博嗣)
レタス・フライ(森博嗣)
オリエント急行の殺人(A.クリスティー)
そして誰もいなくなった(A.クリスティー)
牧師館の殺人(A.クリスティー)
ハロウィーン・パーティ(A.クリスティー)
予告殺人(A.クリスティー)
εに誓って(森博嗣)
【ノンフィクション】
フェルマーの最終定理(S.シン)
暗号解読(S.シン)
脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ (V.S.ラマチャンドラン)
「順列都市」(G.イーガン)を再読。
定期的に再読したくなるイーガンのSF。本書も座右の書となりつつある。早く新作が読みたいけれど,逆に今までの長編を上回るものになるのかどうか,もし上回るとしたら「どっち方向に」上回るのか,などなど不安と期待が半々。
「予告殺人」(A.クリスティー)読了。図書館で借りたもの。
マープルもので,タイトルどおり殺人を予告する広告が新聞に掲載されるのが面白いはじまり方。
屋敷の電灯が消えるところで,「ヒューズが飛んだ」という描写があるけれど,若い読者だとイメージがつかめないかもしれない。もちろん現在でもヒューズは使われているけれど(車など),少なくとも家庭の電灯線の過電流・漏電対策は小型の遮断器(ブレーカ)になっている。
ヒューズというのは普段は導体で,大きな電流が流れるとヒューズ自身の発熱(ジュール熱)により溶けて,電流を遮断するもの。溶けてしまうので一度作動すると復旧させるためには別のヒューズと交換しなくてはいけない。
どっちにしろ最近は停電時にはバッテリー内蔵の非常灯が自動的に点くご家庭も多いと思うし,人が集まるような建物なら間違いなくあるだろう。犯人はブレーカに細工するだけでなく,非常灯を無効にする手段も講じなくてはいけない。
「ハロウィーン・パーティ」(A.クリスティー)読了。図書館で借りたもの。
ポアロものでクリスティー79歳のときの作品だそうで,それだけでも驚き。
1969年の作品だが,ポアロの頭脳はコンピュータのようだという比喩が出てくる。ミステリのトリックに新しい科学理論や技術を取り入れるためには常に勉強が必要だ。そういう意味でもクリスティーはたいしたものだと思う。
「牧師館の殺人」(A.クリスティー)読了。
ミス・マープルものの長編では最初の作品(ということになるのかな?)。
アニメの影響というのは大きくて,それほど熱心に見ていたわけでもないのに,ミス・マープルの科白が八千草さんの声に変換されて頭に入ってきた。
おばさんがうわさ話と陰口好きというのは,いつの時代でもどこの国でも共通なのだろうか?
図書館にはアガサ・クリスティーの文庫本は比較的たくさん蔵書されているけれど,すべて揃っているわけではないので,読んでいく順番が難しいところだ。刊行順はあまり気にしないことにしよう。
「そして誰もいなくなった」(A.クリスティー)読了。
もうしばらく古典ミステリに親しんでみようと思う。この作品はポアロなどのシリーズ物ではないが,タイトルくらいは誰でも聞いたことがあるのではないだろうか。(原題が"Ten little nigger"というのはちょっと驚いた)
こいつがアヤシイ,と思った人は真っ先に殺されたりして,ミステリ脳への道はまだまだ遠い。
読みながら「おや?」と思ったのは殺人のトリックではなくて,電灯の描写。舞台は港から1マイル以上離れた小さな島で,島内には金持ちが建てた屋敷がひとつあるだけ。しかし照明は「電灯」とハッキリ書いてある。陸からの送電はないだろうし,どうやって電化しているのだろう。と思ったら中盤で召使いが「モーター」を回している描写があった。この場合のmotorは発動機のことだろうから,発動発電機による自家発電であることがわかる。1930年代の発発がどんなシロモノかわからないが,エンジニアでもない召使いがひとりでメンテ・維持できるようなものだったのだろうか?
というようなことが気になって謎解きに集中できなかった。というわけでもないのだが,古典作品のテクノロジィ描写を気にして読むとSFと同じような面白さが出てくると思う。
「オリエント急行の殺人」(A.クリスティー)読了。
最低限の教養として,アガサ・クリスティーくらいは読んでおかないとなぁ,と長年思いつつも,新刊を消化するのに手一杯でなかなか実現しなかった。今回ようやく未読本を一掃して,気になる新刊発行も一段落しているということで,図書館でオリエント急行の殺人を借りてきた。選んだ理由はポアロもので一番有名そうだったから。
いくら昔の作品でもミステリのネタバレはまずいと思うので内容については触れないが,なかなか面白かった。
元々謎解きをしながら読むのが苦手で,すぐに思考停止してしまうのだが,古典をもう少し読めばミステリ脳になるだろうか。図書館にはコナン・ドイルが少なくてそれがちょっと残念。
「猫語の教科書」(P.ギャリコ)読了。
かんな氏が買った本だが,設定(猫がタイプライターで書いた)がSFっぽいのでSFということで。
マクドナルドで読んでいるときに不覚にも落涙してしまった。
別にお涙ちょうだいというわけじゃないし,感動巨編でもないのだが,あまりにも見事に猫に支配される人間の姿が自分と重なってしまって,笑えてくるし泣けてくる。
基本的に猫が猫のために書いた教科書なので,ピートに読んでもらいたいところだ。特にマナーのところとか。
この戦いの目的は何だったか、忘れないでください。欲しい食べ物を勝ちとるだけでなく、人間の精神をたたき直して、猫のために食事を用意させていただきます、というところまでもっていくのです。
「犬は勘定に入れません—あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎(上・下)」(C.ウィリス)読了。
この人の本も初めて読んだ。猫が出てくるタイムトラベルものということで,「夏への扉」が頭に浮かぶけれど,本作はもっとドタバタで楽しい感じ。大団円のラストも良かった。個人的には歴史が苦手なので,そういう意味ではタイムトラベルものの面白さが100%味わえていないなと自分で思う。
犬のシリルと猫のプリンセス・アージュマンドがとても良い味を出しているので,犬猫好きな人にはオススメ。
リンクはあえてプリンセス・アージュマンドが表紙の下巻を貼ってみた。
以下は内容とは関係のない話。ついにハヤカワ文庫のトールサイズを買うはめになってしまった。手持ちのブックカバーに入らないじゃないか。なんで勝手にこういうことするのかなぁ。以前トールサイズで出したダニエルキィス文庫は不評じゃなかったのか?
いや,地デジみたいに「今後○年かけて文庫本はすべてこのサイズになります。他社もすべて同じです」というなら良いですよ。ブックカバーだって本棚だってその規格に合わせてすべて変わるだろうから。
そうじゃなくてハヤカワさんが勝手にやってるだけなんでしょう。他社の文庫本はこれからも従来サイズのまま。こっちは他社文庫用とハヤカワ文庫専用2つのブックカバーを用意しなけりゃいけない。本棚に並べた時の見た目だってデコボコ。
まあ,本屋でもらう紙のブックカバーを使うライトな読書家にはそもそも関係のない話だし,お気に入りのブックカバーをわざわざ買って使うような人は結局ハヤカワ用にブックカバーを新調するだけだろうから,ハヤカワの商売的には何も問題ないのかもしれないけれど...何となく釈然としない。
写真は陽だまり堂さんで新調したブックカバー。ハヤカワ文庫トールサイズもギリギリ入ります。あぁ,完全にハヤカワの思うツボだなこりゃ。
「レインボーズ・エンド(上・下)」(V.ヴィンジ)読了。
この著者の作品は初めて読んだ。まあまあだったけれど,ちょっと冗長だったかも。
この作品にしても電脳コイルにしても同じだけれど,超小型,高機能のウェアラブルへの電源供給という技術的課題をどうやってクリアしているのだろう?どちらの作品もウェアラブルを充電したりする描写はなかった。
いくら省電力化が進んでいるとはいえ,無線通信をしている以上それなりの電力消費はあるはずで,仮に朝から夕方までの半日程度の装用であっても,外部からの電力供給なしで稼働できるとしたら,ネットワークや拡張現実感(AR)よりもずっとすごいテクノロジーだと思う。
電源をどうするのか,という問題は地味かもしれないけれど,SFに登場する技術を実現する上では避けて通れない現実的な課題だと思う。
「超弦領域—年刊日本SF傑作選」(大森望,日下三蔵[編])読了。
「虚構機関」に続く年刊日本SF傑作選の2年目。普段なかなか手に取らない作家の作品が多く,新しいお気に入りを探す手掛かりになるので助かっている。できれば長く続いてほしいものだ。
気に入ったのはノックスの十戒(探偵小説のルール)をネタにした「ノックス・マシン」(法月綸太郎),A.C.クラーク追悼の「青い星まで飛んでいけ」(小川一水),007パロディの「From the Nothing, With Love.」(伊藤計劃)あたり。やっぱり自由意志を否定するリベットの実験は多くの作家にインスピレーションを与えているようだ。
バカバカしいけれど「アキバ忍法帖」も楽しめたし,マンガの「全てはマグロのためだった」も良かった。
伊藤計劃氏の訃報は同年代なだけにショック。ご冥福をお祈りしたい。
【収録作品】
・ノックス・マシン(法月綸太郎)
・エイミーの敗北(林巧)
・ONE PIECES(樺山三英)
・時空争奪(小林泰三)
・土の枕(津原泰水)
・胡蝶蘭(藤野可織)
・分数アパート(岸本佐和子)
・眠り課(石川美南)
・幻の絵の先生(最相葉月)
・全てはマグロのためだった(Boichi)
・アキバ忍法帖(倉田英之)
・笑う闇(堀晃)
・青い星まで飛んでいけ(小川一水)
・ムーンシャイン(円城塔)
・From the Nothing, With Love.(伊藤計劃)
「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ 」(V.S.ラマチャンドラン )読了。
図書館で有名な前作「脳の中の幽霊」を探したのだが,端末では貸出し可になっていたのに書架に見当たらず,続編のこちらを借りてきた。
かんな氏から「脳神経科学の本を読むなんて珍しいのでは?」と突っ込まれたが,これは普段Webmasterが宇宙とか物理とかIT方面ばかり興味を持っていて,生物とかはちょっとニガテであるということで無理もない。
しかし,最近SFを読んでいると意識とかアイデンティティテーマがひとつの流れであるように思うので,少し勉強しておくのも悪くないと思う。
「自由意志は幻だ」という話(体を動かそうとしたとき,意識よりも先に準備電位が生じる)というのは「七パーセントのテンムー」にも出てきたけれど,なかなか興味深い現象だと思う。
結局心は脳(というハードウェア)に宿るという話で,オーラとかスピリチュアルな人でなくとも,信心深い人はどんな風に読むんだろうか。
「無限記憶」(R.C.ウィルスン)読了。原題は"AXIS"
時間封鎖の続編。時間封鎖と比べるとSF色があまりなくて,第3部へつなげただけという感じでちょっと物足りない。
第3部が出るのは当分先になりそうだし,その間に内容を忘れてしまいそう。
「暗号解読」(S.シン)読了。
「フェルマーの最終定理」がなかなか面白かったので,こちらも単行本を図書館で借りた。規定の2週間では読み切れず,延長して3週間強で読了。
暗号作成者と解読者(コードブレーカー)の駆け引きという視点で,紀元前の換字式暗号からはじまって,頻度分析による解読法,エニグマの誕生,古代文字(ヒエログリフ)の解読,インターネット時代には欠かせない公開鍵暗号(RSA,PGP),未来の量子暗号などを,歴史的エピソードと人間ドラマを織り交ぜて描いていて読みやすい。
普段はコナンくんに出てくる暗号がぜんぜん解読できずに途方に暮れるWebmasterだが,本書を読んだからにはぜひかんな氏よりも先に解読したいと心に誓うのであった。
PGPはMacでも使えるようなので,一度くらい試してみたいけれど,よく考えたら暗号化するような危ないメールは送らないなぁ。
「アイの物語」(山本弘)読了。
「神は沈黙せず」ほどの情報量はないけれど,物語としてはとても洗練されていて,読後感も爽やか。SFはハッピーエンドが良い,って常々Webmasterが書いているのは,つまりこういうこと。
スタイルとしては連作短編のような感じだけど,この本は長編として通して読んだ方が幸せだと思うので,収録作品は書かないでおく。
とりあえずラノベ以外で読める山本氏の文庫作品はすべて消化。どの作品も面白かったので,MM9の文庫化待ち。
「闇が落ちる前に、もう一度」(山本弘)読了。
「神は沈黙せず」が結構面白かったので,山本氏の文庫本を何冊か入手した。この「闇が〜」は短編集。単行本時のタイトルは「審判の日」。
「神は〜」と共通するネタも多いが,短編集として素直に楽しめた。ホラーとSFの境界的作品ということで,うまく狙い通りの効果が出ていると思う。
最後に収録されている「審判の日」という短編は,ちょっとドキっとした。Webmasterも同じような妄想が好きなので。
【収録作品】
・闇が落ちる前に、もう一度
・屋上にいるもの
・時分割の地獄
・夜の顔
・審判の日
「第九の日」(瀬名秀明)読了。
「デカルトの密室」の続編になるけれど,親切にも前日潭の「メンツェルのチェスプレイヤー」が冒頭に収録されているので,本書を買ってメンツェル〜を読んでから,デカルト〜を読み,本書に戻って続きを読むのが良いかもしれない。
ロボットの知能テーマは面白いけれど,ちょっと軽すぎて物足りない感じはある。Brain Valleyの頃のハードさが好みだった。
【収録作品】
・メンツェルのチェスプレイヤー
・モノー博士の島
・第九の日
・決闘
「フェルマーの最終定理」(S.シン)読了。
久々のノンフィクション。図書館では単行本だけが置いてあったのでそれを借りてじっくりと読んだ。
日常よく使うのは本書の中で「美しくない」と数学者からは嫌われているコンピュータによる力技の解法だったり遺伝的アルゴリズムだったりするわけで,純粋数学からは遠いところで生きているWebmasterだけれど,本書は楽しめた。特にイーガンを再読した後だったりしたのでなおさら。
つまるところ、すべては数学なのだ。—G.イーガン(ディアスポラより)
「神は沈黙せず(上・下)」(山本弘)読了。
面白かったし,いろいろ考えさせられた。しかもUFO,超能力,超常現象などの情報量がものすごいし,ニセ科学やカルト宗教にハマる心理も勉強になる。さすがは「と学会」会長。そういえばファフロツキーズは最近も話題になったばかり。
旧約聖書(小説版)を読んだときはまさに本作の主人公と同じ感想を抱いたWebmasterである。
気になっているノンフィクションを探しに図書館へ行った。今住んでいるところは徒歩5分で(市立にしては)そこそこ大きな図書館がある恵まれた環境だ。
普段読むのは文庫のSF(フィクション)で,新刊がすぐに読みたいときもあるから購入することが多いが,それ以外のノンフィクションやハウツー本などは図書館で借りることが多い。
なんといってもタダだし。いや,実際は住民税で運営されているのだから,利用しないと損である。
目当ての書籍はすぐに見つかったが,自然科学の書架には面白そうな本がたくさんあって危険である。フラフラとパソコン関係の書架の前に行ったら,ruby on railsの解説本があったりしてこちらも危険だ。
タダだからとあれこれ借りても,期限の2週間で読めるわけがないし(延長は可能だが),一日中読書ばかりしているわけにはいかない。他にもやらなくてはいけないことが山ほどあって,ノンフィクションの読書に割ける時間は寝る前の20分ほどしかないのだ。
図書館には書籍の他にも各種雑誌,CD(クラシック,朗読,落語などなど)や,ビデオ(子供向け,教育番組など)もある。マンガは少ないけれど,普段読書の習慣がない人でも結構楽しめるのではないだろうか。実際,何時間も閲覧スペースに陣取ってマンガや新聞を読んでいる大人も多い。
以前不要になった文庫本を寄贈して蔵書してもらいたい,と書いたことがあったが,誰でも考えることは同じらしく,各地の図書館には寄贈の申し出が多くて困っているような話を何かで読んだ。蔵書データベースへの登録はさすがにISBNもあるし簡単だろうが,表紙に透明ビニールをかける作業とか分類シールを作って貼る作業は人がやるので大変なのだろう。
しかし文庫SFの品揃えを見ると,これはちょっと酷いんじゃない?という感じで,せめて御三家(アシモフ,クラーク,ハインライン)の青背くらいは一通り揃えておいてほしいな,という思いはある。
未読本がとりあえず片付いたので,「ディアスポラ」(G.イーガン)を再読。4回目になるかな。
やっぱりイーガンは良いなぁ。早く新しい長編が読みたい。
昔のことを思い出すシリーズをもう少し続けてみよう。例えば小さい頃に好きだった絵本なんて覚えているだろうか。Webmasterがよく覚えているのは下に挙げたような作品。これらはその後の人格形成に少なからず影響しているだろう。
・しょうぼうじどうしゃじぷた
ポンプ車くんやはしご車くんにいつもバカにされるちびすけのじぷただけど,山火事では大活躍!泣ける。
・どろんここぶた
どろ沼を楽しんでしまうあ〜るくんの元ネタ(ウソ)。
・ほらふきだんしゃくのぼうけん
ホラだとわかっているのに手に汗握る。くじらにだって飲まれちゃうぞ。
・3まいのおふだ
とっぴんぱらりのぷう。
・3びきのこぶた
木造建築の否定。
・かさじぞう
これは定番か。
読んでもらった絵本はもっとたくさんあったと思うけれど,他はあまり印象に残っていない。
超長編小説グイン・サーガの著者としても有名な栗本薫氏の訃報。
グイン・サーガは未読なのだが,現在126巻まで出ていて未完だそうで,ご本人はもちろん無念だったろうし,読者の落胆も相当なものだと思う。
世界観のしっかりした作品だと,読んでいて安心感というか,現実を離れてその作品世界に没入(トリップ)しているような心地良さがあって,長いシリーズものになればその傾向がより顕著になる。100巻超のグイン・サーガが愛されたのもそういった良さがあったからではないだろうか。ご冥福をお祈りしたい。
「ウォー・ゲーム」(D.ビショフ)を再読。4年ぶりの再読になる。
元々映画版が好きで,テレビで放送されたのを録画して何度も見返した作品。録画テープを捨ててしまったので,古本屋で見つけたこの小説版だけが手元にある。
技術的にはどうしようもなく古い内容だが,たまに読み返したくなる不思議な魅力がある。
「レタス・フライ」(森博嗣)読了。
短編集。ファンタジィからシリーズものの話まで,ヴァリエィションに富んでいる。
【収録作品】
・ラジオの似合う夜
・檻とプリズム
・証明可能な煙突掃除人
・皇帝の夢
・私を失望させて
・麗しき黒髪に種を
・コシジ君のこと
・砂の街
・刀之津診療所の怪
・ライ麦畑で増幅して
「スカイ・イクリプス」(森博嗣)読了。
スカイ・クロラシリーズの短編集。謎を読み解くヒントがあるような感じだが,今までのストーリーをほとんど忘れてしまったので,また時間を見つけてまとめて再読したいところ。
「反逆者の月3ー皇子と皇女ー(上・下)」(D.ウェーバー)読了。
ダハク3部作も完結。このシリーズは正直言ってすごく楽しめたのだが,あまりこの手の娯楽性の強い作品(必ずしもハードSFではない)に手を広げてしまうと,収拾がつかなくなるということで控えている。
この作品はたまたま1作目を手に取ってしまった上に,AIのダハクが非常に良い味を出していたのでハマってしまった。久しぶりに「読み終えるのがもったいない」という気分になった。ダハクが活躍するという点では2作目が一番好きかもしれない。
「デカルトの密室」(瀬名秀明)読了。
前作にあたる「メンツェルのチェスプレイヤー」(「21世紀本格」所収)の内容をすっかり忘れてしまっていたので,できれば読み返してからの方が良かったかも。でもいろいろ考えさせられて面白かった。できればメンツェル〜も含めてじっくりと再読したい。
偶然だが産総研からリアルなヒューマノイドが発表されたりして,今後知能面でもこの小説のように進歩していくとしたら,いろいろな問題が起きるだろうことは容易に想像できる。できるけれど,やっぱりそんなロボットが見てみたいと思うのだ。
「祈りの海」(G.イーガン)を再読。
イーガンは短編ももちろんいろいろ考えさせられて面白いのだが,やはり長編が読みたい。Teranesiaはまだかな。
小説の未来を考えようとするすべての人に、グレッグ・イーガンはある。ーー瀬名秀明(本書解説より)
偶然だが次は超難解と評判の「デカルトの密室」(瀬名秀明)に挑戦。単行本が出たときから気になっていたのだが,いつの間にか文庫化されていたようだ。イーガンと方向性が近い日本人作家としてはやはり瀬名氏が思い浮かぶ。
【収録作品】
・貸金庫
・キューティ
・ぼくになることを
・繭
・百光年ダイアリー
・誘拐
・放浪者の軌道
・ミトコンドリア・イヴ
・無限の暗殺者
・イェユーカ
・祈りの海
「探偵伯爵と僕」(森博嗣)読了。
シリーズ外(と決めてしまって良いのか,森氏の場合微妙だが)の長編。
何人もの「名探偵」を,そして度肝を抜くトリックを自分で生み出しておきながらなお,これが書けるというのが森氏のすごさだと思う。
そういえば「SFが読みたい〜」を買ったとき,横にあった「このミステリーがすごい」も立ち読みしてみたけれど,案の定森博嗣の作品はまったく取り上げられていないようだ。まあ世間の評価なんてそんなものである。自分が払った代金の一部が,欠伸軽便鉄道やその他森氏の工作に生かされることを喜びとして,これからも買っていきたい(文庫だけだけど)。
ネットで書評を読んだら,これって児童向け(ジュブナイル)なのか...ますますすごい。
「シュレディンガーのチョコパフェ」(山本弘)読了。
未読本の在庫が切れた状態なので,書店に寄ったときはSFの棚をチェックするようにしている。なんとなくタイトルが目に留まったのが本書。
この人の作品は読んだことがないな,と思っていたが,先日読んだアンソロジー「虚構機関」に収録された「七パーセントのテンムー」の人だった。
本書は短編集で,〜テンムーも収録されている。むしろテンムーよりも好みの作品が多くて良かった。「メデューサの呪文」「奥歯のスイッチを入れろ」あたりが個人的な好み。
長編では「MM9」が気になっているけれど,まだ文庫化はされていないようだ。先に「神は沈黙せず」を読むべきかな?
【収録作品】
・シュレディンガーのチョコパフェ
・奥歯のスイッチを入れろ
・バイオシップ・ハンター
・メデューサの呪文
・まだ見ぬ冬の悲しみも
・七パーセントのテンムー
・闇からの衝動
「万物理論」(G.イーガン)を再読。
未読本のストックがなくなってしまったので,「困ったときのイーガン頼み」。
順列都市やディアスポラと比較すると最初読んだときの印象は少し地味(※)だった万物理論だが,読めば読むほど心に染みるという感じ。イーガン作品で共通するのはとにかく情報量が多すぎて,一回読んだだけではお腹いっぱいでゲップが出るだけで,時間をかけて徐々に消化しながら何度も読むうちに,その素晴らしさがわかる(ような気がする)ことだろう。
万物理論もまだ2回しか読んでいないので,まだまだ消化不良なところが多い。またしばらく時間を置いてからじっくり再読したい。
※あくまでも前2冊と比較して。恒星間空間に出たり永遠の仮想現実世界が出てきたりはしない,という意味において。
「SFが読みたい! 2009年版—発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)」(SFマガジン編集部編)を購入。
いつものことだが上位を占めているのは単行本ばかり。今回ありがたいのは1997年以降のランキングが再掲されていること。ランキング上位の作品が文庫化されるのは3年後とかなので,最新のランキングよりもむしろ数年前のランキングの方が参考になる。過去の版もそのために保管していたが,これで処分できる。
何度も書いている気がするけれど,単行本と文庫本を同時発売にできないものかなぁ。単行本の方にだけ解説や著者あとがきでプレミアムを付ければ好きな人は買うだろう。せめてDVDの販売とレンタルくらいのタイムラグ(半年程度)にならないものか。現状だと「文庫読者は蚊帳の外」という感じで,せっかく作家や出版社を支えようという気があってもなんだか空しくなる。
【ご参考】SFが読みたい! 2008年版
「どきどきフェノメノン」(森博嗣)読了。
ミステリというかラブコメ。普段こういうジャンルは読まないけれど,森博嗣が理系に味付けすると読めてしまう。
でも個人的にこういう酒癖の悪い人はちょっと嫌だ。
「虚構機関—年刊日本SF傑作選」(大森望,日下三蔵[編])読了。
2007年に発表された短編SFから,選りすぐりのものを収録したベスト集成的な本。言われてみればこの手のアンソロジーってありそうでなかった。以前読んだ筒井康隆編のベスト集成以来だとか。
特に注目していた作品があったわけではなく,普段読まない著者の作品とか,いろんなサブジャンルのSFを読むことで視野を広げていきたいと思って買った。新しく好みの著者なりジャンルが見つけられたらラッキーである。
全体的にはまずまず楽しめたけれど,「この著者のほかの作品もぜひ読みたい」と思うようなことはなかった。その時代の旬の作家が書いているので,もし毎年出るならレファレンスとして読んでおくのもいいだろう。先日も書いたことだが「自分の立ち位置を知る」というのも社会では必要なことだ。
個別の作品でまあまあ面白いと感じたのは,「靄の中」「開封」「うつろなテレポーター」「自己相似荘」「大使の孤独」あたり。しかしテッド・チャンみたいな話を書く(書ける)日本人はいないのかなぁ。
【収録作品】
当ブログでは種々雑多なネタを取り扱っており,タイトルと内容がマッチしないことも多くご迷惑をおかけしている。年初に当たり,各カテゴリ別に少し状況を整理しておきたい。
【写真部門】
デジカメを新調したので,しばらくはこのネタが増えそうである。ただ,撮っているのは猫ばかりなので【猫部門】とカブることが多いと思われる。ペンタSPに関しては露出計が不調なこともあって,出番が減りそうな予感がしているが,安売りのフィルムを仕入れてある(DNPのCENTURIA)ので,遠出する機会があったら持っていきたい。お遊びとして,マウントアダプタを買ってペンタSPのレンズをEOS Kiss X2に付けるというのも構想している。ただし,くれぐれも「道具揃えの沼」にはまらぬように注意したい。
【猫部門】
カメラが新しくなってかんな氏が(今のところ)やる気を出しているので,最近の猫情報に関しては「にゃんこーず」の方を参照願いたい。こちらではFlickrにアップした大きなサイズの写真(基本的に補正・トリミングなし)を紹介するので,壁紙に使うなりカメラの作例として細部を確認するなりして活用してもらえたらと思う。ブログで紹介しなかった写真についてもPhotostreamの画面からすべて見ることができる。
【読書部門】
読書の傾向は昨年同様に,SF文庫新刊と再読,森博嗣氏の文庫新刊が出たら読む,ということで変わりない。読みたいと思っていた未読の古典や既刊はあらかた片付いた感があるので,もう少し幅を広げたいという思いもあるが,ベストセラーは読む気がしないし,マイナーな良書を知る手がかりも今のところないので,今までのWebmasterの読書歴から「こんなのがオススメ」というのがあったら教えていただけると助かる。ただし,「薦められたから読んだけどつまらなかった」という結論になっても怒らないでほしい。
【音楽・楽器部門】
新しい試みとしてギター教室に通い始めたので,どの程度続くか(あるいは挫折するか)が自分でも気になっている。フルートを習う予定は今年もない。時間と月謝の関係でフルートは敷居が高いため。あまり良くないとわかってはいるが,自己流で続けていくつもり。長期間ブランクが空かないように意識して吹くようにしたい。消耗品や道具揃えとは無縁という点でフルートは偉いと思う。置き場所も取らないし。
【技術・工作部門】
長期プランとしては,「快適な猫ケージの製作」というテーマがあるが,正月休み中にはコンセプトを詰めきれなかった。素人のスキルで中途半端なものを作ってしまうと美観を損ねるし,材料を調達してしまうと後戻りもできないので,なかなか踏み出せない。
キット工作ものは今までいくつか作ったが,財政難の折,「簡単に作れてちょっと遊んだらおしまい」という刹那的なものについては出来るだけ手を出さないようにしたい。
【車部門】
車検も通したし,追加出費を最小化しつつキューブを維持する,というのが車部門の最大の使命である。
【パソコン・ネット部門】
とりあえずかんな氏のWindowsパソコンだけは手当できたし,写真保存用の外付けHDDも買ったので,WebmasterのPC新調はまだ先延ばしできそうである。固定費としてはレンタルサーバの1,500円/年と,Flickrの$24.95/年がかかっている。回線費用はマンションの共益費に含まれている。
EOS Kiss X2 / EF50mm f1.4 USM
「時間封鎖(上・下)」(R.C.ウィルスン)読了。原題は"SPIN"。
この著者の作品は初読になるが,面白かった。この一作でも充分物語として完成されていると思ったけれど,なんと3部作の計画らしい。
空から星が消える,という設定はどうしても宇宙消失を連想してしまうが,「どうせイーガンの二番煎じでしょ」と思わずに読んでみることをオススメしたい。
2008年はWebサイト開設10周年の記念すべき年だった。ブログの更新頻度も意識して多めにしたが,日記ではないので,さすがに毎日更新するのは難しい。Webサイト/ブログがらみでは写真データをFlickrに置くようになったのが大きな変化だ。Flickrの会費は当ブログ本体を置いているレンタルサーバの会費よりも高額である。
かんな氏のpyon*webも含めたcheb.sakura.ne.jpのアクセスは,1日平均約300ビジターというところ。検索エンジンのキーワードが月にだいたい2000〜3000件ヒットしている。12月時点でのキーワードの上位は"vb6 正規表現","グレイコード 変換","フルート 初心者","ミラコスタ ウェディング"という感じ。様々な言葉の組合わせを含めたトータルではやはりミラコスタウェディング関係と,パジェロ関係,あとはPowerBookG4のキーボード交換がかなり検索されているようだ。多少でも皆様のお役に立っていれば幸いである。
ネット以外のイベントとして,なんといっても嬉しかったのが和泉宏隆トリオのライブを生でしかも特等席でたっぷり拝聴できたことだ。
読書については再読を多めにしたこともあって,少しペースダウン。SF31作品(うち再読18作品),ミステリィ3作品。ミステリィは森博嗣氏の文庫新刊を待つ状況が続いている。ノンフィクションをぜんぜん読めなかったのは素直に反省したい。
【SF】
逆境戦隊バツ「×」<1>(坂本 康宏)
ディアスポラ(G.イーガン)(再読)
逆境戦隊バツ「×」〈2〉(坂本 康宏)
銀河北極〜レヴェレーション・スペース2〜(A.レナルズ)
記憶汚染(林譲治)
フラッタ・リンツ・ライフ(森博嗣)
順列都市(上・下)(G.イーガン)(再読)
反逆者の月2—帝国の遺産—(D.ウェーバー)
パンドラ(1〜4)(谷甲州)
ファウンデーション —銀河帝国興亡史〈1〉(I.アシモフ)(再読)
啓示空間(A.レナルズ)(再読)
ファウンデーション対帝国—銀河帝国興亡史〈2〉(I.アシモフ)(再読)
第二ファウンデーション—銀河帝国興亡史〈3〉(I.アシモフ)(再読)
宇宙叙事詩(上・下)(光瀬 龍,萩尾 望都)
鋼鉄都市(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションの彼方へ(上・下)(I.アシモフ)(再読)
都市と星(A.C.クラーク)(再読)
夜明けのロボット(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ロボットと帝国(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションと地球(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションへの序曲(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションの誕生(上・下)(I.アシモフ)(再読)
ファウンデーションの危機(上・下)(G.ベンフォード)(再読)
ファウンデーションと混沌(上・下)(G.ベア)(再読)
ファウンデーションの勝利(上・下)(D.ブリン)(再読)
量子真空(A.レナルズ)
神様のパズル(機本伸司)
黎明の星(上・下)(J.P.ホーガン)
クレィドゥ・ザ・スカイ(森博嗣)
ディファレンス・エンジン(上・下)(W.ギブスン,B.スターリング)
ZOKU(森博嗣)(再読)
【ミステリィ】
町でいちばん賢い猫(R.M.ブラウン,S.P.ブラウン)
θは遊んでくれたよ(森博嗣)
τになるまで待って(森博嗣)
「τになるまで待って」(森博嗣)読了。
Gシリーズ第3弾。森氏は今後の長編執筆本数をすべて決めておられて,どのシリーズがあと何作出るかはもう決まっている。また,ブログなどで表に出るのは今年(2008年)で最後,ということでMORI LOG ACADEMYの更新を楽しみにしていたWebmasterはちょっと残念である。
ブログや近況報告は今年2008年で終了します。また、雑誌などの取材を受けるのも今年が最後です。来年からは、表に出ることはファン倶楽部関連のもの以外にありません。――浮遊工作室(近況報告)より引用
「ZOKU」(森博嗣)を再読。
森氏の本で再読したのはZOKUが初めてかもしれない。この本はかんな氏もお気に入りで,リリーダビリティ(再読性)は抜群に良いと言える。
続編も出ているが,文庫化を楽しみに待っている状況。単行本⇒ノベルス⇒文庫という段階を踏むのでかなり待たされる。
「ディファレンス・エンジン(上・下)」(W.ギブスン,B.スターリング)読了。
90年代を代表する傑作SFという評判だが今まで未読だった。復刊フェアで入手。
しかし実はWebmasterはギブスンがあまり得意ではない。サイバーは好きだけどパンクは苦手,と言ったらいいだろうか。ニューロマンサーなんかもいまいち肌に合わなかった。
で,本書はスターリングとの共著ということで,多少はとっつきやすいかな,と思ったわけだ。
結果は,まあつまらなくはないけれど,やっぱりドロドロした感じで,あまり好みではないな,というのが正直なところ。歴史改変モノなので,歴史とか文化という背景がある程度わかっていないと楽しめない,というのもあるかもしれない。もし電気ではなく蒸気機関が発達し続けたら,という想像は楽しいので,もっと淡白に,ドライに,清潔に,いやらしくないスチームパンクがあれば読んでみたい。
世間の評価と自分の評価はやっぱりズレているな,と確認できる一冊だった。
「クレィドゥ・ザ・スカイ」(森博嗣)読了。
前作「フラッタ・リンツ・ライフ」を読んでからしばらく経つので,煙に巻かれた感に拍車がかかってしまった。できれば時間を取ってナ・バ・テアから一気に再読した方が良さそう。
公式見解によると,
Q 『スカイ・イクリプス』を読んでも、まだ読み解けない読者のために 何か少しヒントをいただけないでしょうか。 A 無理に読み解かない方が良いと思います。 ヒントとしては、以下のとおり。 ・シリーズ5作では、主人公(一人称)はそれぞれ1名。 ・クローン(特に短時間で人間を再生する)や記憶移植といった非科学的 なものはこの世界にはない。 ・「スカイ・クロラ」から読むから難しく感じるかもしれない。 たとえば、草薙瑞季は、水素の娘だと思っている人が多いですが、土岐野 がそう言っただけです。このように、何を信じるべきか、ということが重 要だと思います。
とされているので,矛盾のない合理的な解釈が存在すると思いたい。が,今の段階では混乱している。かんな氏は仮説を持っているようだが...
いつか天啓のように「そういうことだったのか!」と納得できる日が来るのだろうか。森氏の作品はいろいろな意味で驚かされることが多い。
「黎明の星(上・下)」(J.P.ホーガン)読了。
ハードSF3部作開幕!といって「揺籃の星」が出たのが2004年。ようやくの第2部である。
理想的に描かれるクロニアの政治システム。通貨は存在せず,各人の「貢献」に応じてその評価が決まる。こんな社会が実現したら,自分はきちんと社会に対して認められる貢献ができるだろうか?
そんなことを考えてしまう作品だった。完結編の第3部は2012年頃になるのだろうか...。
直接関係はないけれど,新型インフルエンザの対応冊子というのが会社で配られた。Q&Aによると,
Q.パンデミック(爆発的流行)は必ず起きるのですか?
A.いつかは必ず起こります。
そりゃあ,たいていのことはいつかは必ず起きるだろう。震度7の巨大地震は起きますか?いつかは必ず起こります。巨大隕石は落ちてきますか?いつかは必ず落ちてきます。地球は滅びるのですか?いつかは必ず滅びます。私は死ぬのですか?いつかは必ず死にます。
という具合だ。こんな回答は何の意味もない。多くの人が知りたいのは,それが果たしていつ頃なのか,せめて○年以内に○%の確率とか,そういう予測を出してもらわないと対策もどうしたらいいかわからないだろう。
「θは遊んでくれたよ」(森博嗣)読了。
Gシリーズ第2弾。例によって感想は書かない。ネットで評判を調べたりもしない。下にアマゾンへのリンクを貼っているが,自分ではクリックしないし,もしこれから森氏の小説を読もうとする人は,クリックしない方が良いだろう。出来る限り先入観を入れないで読むことが,最高の贅沢である。
「神様のパズル」(機本伸司)読了。
久々のハルキ文庫。第3回小松左京賞受賞作品。
実写映画化もされているが未見(スカイ・クロラを観に行った頃に上映していた)。あまり評判にならなかったのは,作中でマスコミに関してかなり嫌味な批判的描写がされているため...というのは邪推だろうか。
ツンデレ系美少女と落ちこぼれ大学生が主人公の学園モノでありながら,テーマは「宇宙創生」というギャップが楽しい。読後感も爽やかで,日本人作家の本では久々に当たりだった。他の作品もいずれ読んでみたい。
穂瑞(ほみず)と綿(わた) さんがホームズとワトソンの語呂だというのは巻末解説を読んで初めて気付いた。なるほど。
宇宙は無から生まれた。「無」なら身の回りにいくらでもある。それなら人間の手で宇宙を生み出すことはできるのか——
「量子真空」(A.レナルズ)読了。
再読キャンペーンの途中から,寝る前にコツコツと読み進めてようやく読了。とにかくどういうわけかレナルズの長編は分冊されることがなく,超分厚い1冊の文庫本として出るため,ブックカバーも着けられないし重いので外出先に持って行くこともできない(しかし長編が出るたびに同じ文句を書いているな...)。今回は特に歴代最厚の1200ページである。
訳者あとがきによると,新開発の糊(のり)で閉じていて分厚くても装丁崩れがないとか,分冊にするよりも割安だと書いてあるが,文庫本の手軽さを完全にスポイルしていると思う。
お話はレヴェレーション・スペースもので,「啓示空間」の直接的な続編になる。短編集や「カズムシティ」からの登場人物や設定も多く,一通り読んでおいた方が良いかもしれない。
このシリーズは明確な主人公が決められていない。超光速航行が不可能という設定で,数十光年,数百年単位の物語なので当然といえば当然か。あとがきには続刊の情報は書いていないが,Amazonを見るとインヒビターものの完結編らしい"Absolution Gap"が出ている。どのくらいの分厚さになるのか少々不安だが,ここまで来たら是非読みたい。
「ファウンデーションの勝利(上・下)」(D.ブリン)を再読。
4月から始めたファウンデーション・ロボットもの再読キャンペーンもこれで終了。ほぼ半年がかりで文庫20冊を再読したことになる。未読の新刊がたまっているときは半年も再読に費やすわけにはいかないので,良いタイミングだった。
最後の「〜勝利」はちょっと詰め込みすぎた感じもあるが,フィナーレを飾るという意味では良かったと思う。
「ファウンデーションと混沌」(G.ベア)を再読。
新ファウンデーション3部作の第2部。ベアはうまくアシモフ作品の雰囲気を汲んでいると思う。アシモフが書いた続編です,と言われても違和感がない感じ。いや,ベンフォードの第1部が違和感ありすぎだったということかもしれないが。
次の「〜勝利」で,今年4月からはじめた「アシモフのファウンデーションとロボットもの再読キャンペーン」は終了。ようやく未読本もたまってきたので,安心して新刊に取組める。
「ファウンデーションの危機(上・下)」(G.ベンフォード)を再読。
アシモフの遺志を継いだ3人のSF作家(G.ベンフォード,G.ベア,D.ブリン)が書いた新ファウンデーション3部作の1作目。
4年ぶりの再読だったが,読み始めてすぐに思い出した。新3部作の中ではこれが一番つまらない。冗長だし,退屈。ほとんど斜め読みしてしまった。
確かにアシモフの世界に新しい要素を持ち込むという導入部の役割は一番難しかったと思うが,模造人格の長ったらしい会話やらサルの世界に精神接続してのあれこれなど,ぜんぜんアシモフテイストがないし,とにかく長すぎた。
ベンフォードって他の作品は読んだことがないけれど,みなこんな感じなんだろうか?それとも訳が悪いだけ?
読書では初見から何年も経ってから再読すると,初めて意味がわかるところがあったり,最初はつまらないと感じたところが面白く読める(あるいはその逆の)ことがよくある。再読までに経験した事柄で自分が成長したり変わったことによる効果だが,本作については4年前とほぼ同じ感想。自分がほとんど成長していないということだろうか...
「ファウンデーションの誕生(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
アシモフ最期の長編小説にして遺作。すべての始まりであり,終わりでもある。
感動的だが,ラストはもちろんのこと悲しいエピソードが多く切ない気分で読み終えた。
そしてこの気分のままアシモフの遺志を継いで3人のSF作家が書いた新三部作の再読に進む。んー,なんという贅沢。
「ファウンデーションへの序曲(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
ハリ・セルダンがトランターで心理歴史学の研究を始めるまでの冒険譚。
さすがにこのあたりになるとストーリーもだいたい記憶に残っているので伏線にニヤリとしつつ読み進めた。
「ファウンデーションと地球(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
アシモフ自身が描くファウンデーション未来史としてはこれがもっとも遠い将来ということになる。この後の「〜序曲」「〜誕生」は時代を遡り,ファウンデーション誕生までの経緯が描かれる。
「ロボットと帝国(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
いわゆるロボット・シリーズはこれにて完結。しかしファウンデーション・シリーズに合流する形でロボット達の物語は続いていくことになる。
イライジャ・ベイリとダニールの最後の別れとなる回想シーンは泣ける。
「夜明けのロボット(上・下)」(I.アシモフ) を再読。
ロボットシリーズ側から見たファウンデーションシリーズへの橋渡しとなる作品。R・ジスカルド・レベントロフが初登場。
このラストシーンはシリーズでも好きな場面のひとつ。
「都市と星」(A.C.クラーク)を再読。
クラーク追悼ということで,実家から持ってきて氏の偉業を噛み締めつつじっくりと再読。
"No machine may contain any moving parts."
<<機械は,いかなる可動部分も持ってはならない。>>
「ファウンデーションの彼方へ(上・下)」(I.アシモフ)を再読。
新刊もぽつぽつ買ってはいるが,もうしばらく再読キャンペーンが続きそう。
「〜彼方へ」は第一,第二ファウンデーションに,ガイアとロボットという新たな要素が登場するお話。そしてロボットシリーズと合流していく転換点でもある。
写真のしおりはエジプトのお土産に頂いたもの。文字の発明によって人類は自らの歴史を(ある程度)正確に後世に残せるようになった。それ以前にも歴史はあったわけだが,記録が存在しないということは歴史そのものが存在しないというのと同じことになってしまう。また,記録は単なる情報なので,ねつ造・改ざん・消去が可能であるし,故意でなくとも偏向・誇張・歪曲があることを常に意識しなくてはいけない。コンピュータの出現によって記録できる情報量は格段に増えたが,地球と人類の「客観的で正確な歴史」の記録はいつになったら実現するだろうか。
「鋼鉄都市」(I.アシモフ)を再読。
SFミステリの元祖であり,伝説のベイリとR.ダニールの出発点。そう考えて再読したらもの凄く面白かった。
ところでベイリが妻のジェシィと出会ったのは「今は昔の2002年」と書いてあったが,これは西暦だろうか?だとしたらベイリはなんとWebmasterと同年代ということになってしまうが...さすがにそれはないか。
「宇宙叙事詩(上・下)」(光瀬 龍,萩尾 望都)読了。
「百億の昼と千億の夜」での,光瀬ー萩尾コラボが良かったので買ってみたのだが,挿絵が多くて通勤時に読むのがちょっと恥ずかしいという理由で買ったままお蔵入りになっていたもの。本棚を整理していたら見つけたので,寝る前に読んでみた。
叙情的というのか,寂寥感を感じるというのか,なんとなく物悲しい感じの短編と中編。「百億〜」と比べると物足りなかった。
「第二ファウンデーション—銀河帝国興亡史〈3〉」(I.アシモフ)を再読。
ミュールと第一ファウンデーションによる,第二ファウンデーションの探索。旧3部作はここで一旦幕を閉じる。
結末がわかっていても,ラストの大どんでん返しはやはり面白い。ここまで再読してみて,最初は「〜彼方へ」まで読んでからロボットシリーズかな,と思っていたけれど,先に「鋼鉄都市」が読みたくなったのでロボットシリーズに移ることにしよう。
「ファウンデーション対帝国—銀河帝国興亡史〈2〉」(I.アシモフ)を再読。
ミュールの登場と第2ファウンデーション探索開始まで。ゴールデンウィーク中に読むのをサボっていたら中だるみでテンションが下がってしまって良くなかった。
実家からロボットシリーズも持ってきたし,当分はアシモフの再読で楽しめそう。面白そうな新刊があればその都度読むつもり。
「啓示空間」(A.レナルズ)を再読。約2年半ぶりの再読になる。「啓示空間宇宙史(レヴェレーション・スペース・ユニヴァース)」シリーズの第1弾。
この辞書のような文庫本は気軽には持ち歩けないので,寝る前に少しずつ2ヶ月くらいかけてゆっくりと再読した。
同じ宇宙史の短編(火星の長城と銀河北極)が出たので,そろそろ長編の続編("Redemption Ark";未訳)が読みたいけれど,やっぱり1000ページ超の文庫になるんだろうか。短編集は分冊だったのだから続編も分冊でお願いしたいところ。荷物が重くなるし手が疲れる。
いわゆる「しゃべるコンピュータ」が登場するが,このシリーズでは人間の脳神経をスキャンした「アルファレベルシミュレーション」(コピー),その人間の反応を学習させた「ベータレベルシミュレーション」("宝石"方式),そして単なる疑似人格の「ガンマレベル知性」(AI)と区分されている。面白い設定だが,これが主題ではなくてんこ盛りのガジェットのひとつとしてサラっと描かれるだけ。
「ファウンデーション —銀河帝国興亡史〈1〉」(I.アシモフ)を再読。
未読本は消化してしまったし,文庫の新刊でめぼしいものがないので再読キャンペーン。
「ファウンデーション」シリーズは大好きだが,読み始めると長くなるのでなかなか機会がなかった。「ロボット」シリーズは実家に置いてあるのでこれも持ってこなくてはいけない。どういう順番で読むかは思案のしどころ。「第二〜」まで読んでからロボットシリーズに移って「〜と帝国」まで読み,「〜彼方へ」以降という感じがいいだろうか。
やっぱり最初の頃の話は「伝説のハリ・セルダン」「心理歴史学」といった主要なキーワード以外はすっかり忘れていて,また新鮮な気持ちで楽しめる。よく「擦り切れるほど何度も読んですっかり覚えてしまった」という人がいるが,Webmasterはそういう読み方がなかなかできない。新しく読みたい本が次々と出てきて過去を振り返る時間がないからだ。
以前はせっかく買った本はすべて取っておこう,という方針だったが,小さい本棚もいっぱいになってきて考えを改め,少なくとも「再読の価値なし」と判断した本については処分することにした。面白かった本についても「読みたくなったらまた買えば良い」という考え方もあるのだが,現実的には経済的な問題とか流通(絶版)の問題があって難しい。
近所の図書館に寄贈してしまう手もあるな,と最近思いついた。きちんと分類して蔵書してくれるなら,保管スペースと再読性の問題が一挙に解決する上に社会貢献にもなる。蔵書してもらうことを前提として寄贈が可能かどうかそのうち調べてみよう。
「町でいちばん賢い猫」(R.M.ブラウン,S.P.ブラウン)読了。
「トラ猫ミセス・マーフィ」というシリーズ物の第1作。ちなみに共著者のスニーキー・パイ・ブラウンはネコ。
何年か前の東京出張の際に,ネコ好きかんな氏のお土産にと買ってきた小説。ハヤカワ文庫なのでSFの棚と近くてたまたま目についたという感じ。
「しゃべる動物モノ」とでも言ったらいいのだろうか。動物は動物同士で人間並みの会話をしている(ただし人間にはニャオニャオとしか聞こえない)という背景設定のミステリ。なんともメルヘンだが,見た目的には物理法則を完全無視した某少年探偵のマンガほどには不自然ではない。
まあ設定を聞いただけでほぼストーリィは想像できると思うが,飼い主とペットが協力して殺人事件のナゾを解くというもので,ネコの言葉は人間に通じないので物を散らかして注意を引いたり,行動によってヒントというか考え方を伝えようとするわけだ。
やはり見所はネコのミセス・マーフィやピュータの仕草だろう。ネコ好きなら「あー,あるある」という感じではないだろうか。当たり前だが著者は無類のネコ好きに違いない。
SFと森博嗣以外の小説はものすごく久しぶりに読んだ気がする。ミステリはただでさえ登場人物が多いのに,それが外国人名になると3分の1くらい読み進めるまでは誰が誰だか把握できない。
「パンドラ4」(谷甲州)読了。
4分冊の最終巻。最後までまじめに,ファーストコンタクトの困難さを淡々と描いて終わってしまった。
考えさせられることが多いという点では収穫だったが,もう少し明るい方が個人的には好み。つかの間の休息すら許されない過酷な環境に主人公が立たされる展開がこれでもかと続くと気が滅入ってしまう。
小説を読んでいるときくらいは現実逃避したいのに,逃避した先が余計過酷だった,みたいな感じ。ドラマのERなんかもそうだったけれど,「面白いんだけど感情移入すると疲れる」系だ。
通して読んでみて,『ハードSFの極北』か?と言われたらやっぱり違うと思う。極北の定義は人それぞれだと思うが,Webmasterが読んだ中ではそれに相応しいのは今のところイーガンくらいではなかろうか。
これでとりあえず手持ちのSF未読本は全消化。読みたいと思う作品は結構あるけれど,いずれも単行本なので文庫化されるまで待ち。新刊は全部文庫でも同時発売してくれたらいいのに,といつも思う。電子出版(電子書籍)というのはしばらく前から実用化されているらしいけれど,まだまだ文庫本並みに手軽なものではないと思う(欲しい本が出てないし)。
OHPと同じように,「ああ,そういえば紙の本なんてもう何年も読んでないね」という会話ができるのは何年後になるのだろう。自分たちが生きている間にそうなるだろうか?出版業界はいろいろと因習がありそうだから難しいかな?
「パンドラ3」(谷甲州)読了。
4分冊の3冊目。舞台は宇宙に。
あくまでもまじめに描かれる,現在の技術の延長としての宇宙戦闘(戦争)の描写が面白い。
そして人類滅亡の危機を前にしても,相変わらず国家間のいがみ合いを続けているあたりは,実際にも大いにありそうな話で暗澹たる気分に。
クライマックスでどんな風に盛り上がるのかが楽しみ。
「パンドラ2」(谷甲州)読了。
4分冊の2冊目。まじめSFだけあって,突拍子もないアイテムはあまり登場しないが,腕時計型の携帯端末が便利そう。熱帯雨林の過酷な使用環境に耐え,衛星を使って世界中でテレビ電話・通信が可能,しかも何日も充電なしで運用できる。このどれかひとつ(あるいはふたつ)の機能であれば現在の技術でも実現可能かすでに実現しているものだけれど,すべてを備えたものは2008年現在ではまだ登場していない。特に小型化と長時間駆動の両立が困難だろう。
後半2冊で明るい展開になるのを期待。
「パンドラ1」(谷甲州)読了。
重量級4分冊の1冊目。谷甲州というと航空宇宙軍史とか山岳小説のイメージだろうか。いずれも未読なので谷作品で読むのはパンドラが初めて。
「ハードSFの極北」との評を見かけたが,少なくとも1冊目ではそんな感じでもない。地に足のついた感じのお話で,Webmaster的には「まじめSF」とでも呼びたいところ。もちろん今後の展開でどうなるかわからないが。
先が楽しみだが,災厄が続くような話だと個人的にはちょっと辛い。明るい未来に向かってくれることを期待したい。
「反逆者の月2—帝国の遺産—」(D.ウェーバー)読了。
「ダハク3部作」の2作目。訳者解説に「エンターテインメントの王道」と書いてある通り,もう予定調和的と言おうか水戸黄門的と言おうか,まさに期待を裏切らない展開と結末。だいたい先が読めてしまうので,どんでん返しが好きな人には物足りないかもしれないが,Webmasterは結構好きである。「そろそろくるぞ,くるぞ,・・・やっぱりきたー!」的な流れが随所に。
1作目と比べて,しゃべる巨大戦艦「ダハク」の活躍シーンが多いのもうれしい。一部では萌えAIと呼ばれているとか?
D.ウェーバーといえば,ミリタリスペオペの「オナー・ハリントン」シリーズが有名だが,既刊が8作(すべて上下巻)とかなり重量級なのでまだ手が出せずにいる。ネコ?が出てくるらしいので気にはなっているのだが...
「順列都市(上・下)」(G.イーガン)を再読。
1999年に購入した本(原著は1994年)だが,いまだにお気に入りの一冊。
物理宇宙との関係を完全に断ち切って引きこもってしまうお話なのに,スケールは果てしなく大きい。
「SFが読みたい! 2008年版—発表!ベストSF2007国内篇・海外篇 」(SFマガジン編集部編) 購入。
自分の中で文庫以外に購入しても良いと決めているのは毎年発刊されるこの本だけ。本の性格上文庫化はされないし,図書館に並ぶとも思えないため。
ここで発表されるベストSFを見て,今後買う本の参考にしたり(上位はたいてい単行本なので文庫化されるのを待つのだが),世の中における自分の好みの位置付けを把握できたりする。自分がいくら面白いと感じてもランク外の作品もあるし,その逆もある。
しかしミステリ関係の同様の趣旨の企画本はどの書店でも目立つところに積んであるけれど,この本は何軒か本屋を回ってやっと見つけた。しかも文芸コーナの目立たないところにひっそりと立ててあって,そもそもSFというジャンルの世間での位置付けを思い知らされた。
【ご参考】SFが読みたい! 2007年版
「フラッタ・リンツ・ライフ」(森博嗣)読了。
「 スカイ・クロラ」シリーズ第4作。2008年2月時点で読める文庫の最新刊。単行本とノベルスでは5作目が出ており,それで完結らしい。
ちょっとSF的なネタも出てくるけれど,それはこのシリーズの本筋ではないだろう。
「知能の謎—認知発達ロボティクスの挑戦ー」(けいはんな社会的知能発生学研究会編)読了。
近所の図書館に蔵書していなかったのでリクエストしたら,県立図書館の蔵書を取り寄せてくれた。
人間と同じような知能を持った知能ロボットの実現の鍵は「身体性」にある,というようなお話で,そうするとHAL9000のようなAIは実現性が低いということになってしまうのだろうか...。しゃべるコンピュータ好きとしてはちょっと残念な感じ。
ヒューマノイド型の知能ロボットから,手足や視聴覚以外の入力デバイスを除去したら...確かにまともな思考はできそうもない。いや,人間だってもっと重度の身体障害でも明晰な思考をしている方もいるのだからそうとは言い切れないような...?
ちょっと難しいところは斜め読みしてしまったけれど,序論のフレーム問題の話とか,テレビにもよく出ている茂木健一郎氏の「クオリア」のお話,ロボット三原則と積層アーキテクチャのところなんかは結構わくわくして読むことができた。
「記憶汚染」(林譲治)読了。
出張中に読みかけの本が終わってしまったので,仙台駅前のジュンク堂書店で購入。タイトルからちょっとホラーっぽい内容を想像していたのだが,良い意味で裏切られた。
目もくらむようなスケール感とか,そういうものではないけれど,地に足のついた感じのSF。
携帯電話から発展した超高性能なウェラブルコンピュータ「ワーコン」がキーデバイスとして登場するが,現在のウェラブルコンピュータのイメージから考えると,ずばり「メガネ型」ということになるだろうか。すべての個人がワーコンを持っている,つまりみんなメガネっ子というステキな未来のお話である。
「銀河北極〜レヴェレーション・スペース2〜」(A.レナルズ)読了。
「啓示空間宇宙史(レヴェレーション・スペース・ユニヴァース)」の話を集めた中短編集2分冊の後編(前編は火星の長城)。面白かったがちょっとホラーっぽいかな,という印象。個人的にはSFはもっと明るいハッピーエンドなのが好みだ。
設定やキャラクターは良いと思うのでもっとこの宇宙史の話を読んでみたいけれど,続刊の予定はあるのだろうか?
【収録作品】
・時間膨張睡眠
・ターコイズの日々
・グラーフェンワルダーの奇獣園
・ナイチンゲール
・銀河北極
逆境戦隊バツ「×」〈2〉(坂本 康宏 )読了。
2巻で完結。さわやかな読後感,ハッピーエンドで良かった。
ただ,個人的には戦隊ヒーローものにはあまり思い入れというのがないので,設定が「宇宙刑事」ものだったらもっと嬉しかったかも。
「ディアスポラ」(G.イーガン)を再読。
年末から寝る前にゆっくりじっくり味わって読み進めて3周目の再読了。やっぱりいいなぁイーガンは。
今のところWebmasterの中ではイーガンが過去も含めて最高の(ハード)SF作家という評価。今後,イーガンを超える作家が果たして現れるのか,もし現れたとき,その「超え方」はどんな方向なのか,とても楽しみである。
ただ,Amazonの評価を見てもらえばわかるように,万人に勧められる本ではないのが残念。
逆境戦隊バツ「×」〈1〉(坂本 康宏 )読了。
年明け最初の読書は軽めの作品で。本当は同じ作者の「歩兵型戦闘車両OO(ダブルオー) 」というのが読んでみたかったのだが,まだ文庫化されていないので先にこちらを。
ハードSFがやっぱり好きだけれど,たまにはこういう娯楽作品も悪くない。オタクでモテない青年が,そのコンプレックス(逆境)によってヒーローに変身するという設定。幸せになってしまうとその力が失われてしまうというなんとも悲劇的な論理。しっかり2巻も買ってある。
このブログのスタイルに移行してから3年が経った。MovableTypeはバージョン4が出ているが,今のレンタルサーバのプランだとデータベース利用に制限がある関係で3.35のまま使い続けている。
コンテンツの更新は,今年もほとんどブログのみ。そのブログのネタに対して検索エンジンからのビジターが増えている。このブログはランキングサイトへの登録など,宣伝活動はまったくしていないのだが,それでも3年もするとある程度検索エンジンに認知されるということだろうか。
アクセスが多いネタは「VB6で正規表現を使う」で,2007年12月現在,googleで「VB6 正規表現」で検索するとマイクロソフトよりも上(というかトップ)に表示されてしまう。「グレイコード変換cgi」もかなりのアクセスがあり,技術系のネタが参考にされているのは名誉なことではあるものの,内容に気を使ってしまう。
肝心の写真ネタとしては,ダークレスによる自家現像に初挑戦したくらいで,あまりたいしたトピックはなかった。本当はデジタル一眼レフが欲しいと思っているが,予算的に厳しいという事情が第一で,現在使っているFinePix S5000も修理後は順調に動いているし,手軽に動画が撮れるのも便利(デジタル一眼は構造上ムービーは撮れない)だし,300万画素という解像度もファイルサイズ的に軽くて助かっている。
今年のはじめにフルートを買ったのも個人的には大きなトピックだった。ときどき公開している録音を聴いてもらえばわかる通り,1年経ってもあまり上達していない。いずれ教室にでも通って短期間でもちゃんと教えてもらえたら,という考えもあるが経済的・時間的に実現できるかどうかは微妙なところか。
あとは工作ネタがけっこうあったかもしれない。軽量かみねんどだとか,手作りスピーカ,そして年末の真空管アンプキットなど。
そして恒例の読書。SFは25作品(再読1冊を含む),ミステリ16作品,ノンフィクションが2作品。SFはゴールデンエイジ3部作が印象に残っている。反逆者の月も今後の展開が楽しみ。ミステリは森作品がVシリーズから四季シリーズときて,Gシリーズの文庫最新刊に追いついた。あとは森博嗣以外のミステリとして東野圭吾を初めて読んだ。
【SF】
ニュートンズ・ウェイク(K.マクラウド)
ゴールデン・エイジ 1 幻覚のラビリンス(J.C.ライト)
ひとりっ子(G.イーガン)
グラン・ヴァカンス 廃園の天使I(飛浩隆)
アイアン・サンライズ(C.ストロス)
反逆者の月(D.ウィーバー)
忘却の船に流れは光(田中啓文)
バビロニア・ウェーブ(堀晃)
ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔(J.C.ライト)
沈黙のフライバイ(野尻抱介)
スカイ・クロラ(森博嗣)
ナ・バ・テア(森博嗣)
天の向こう側(A.C.クラーク)
ZOKU(森博嗣)
ウェットウェア(R.ラッカー)
時をかける少女(筒井康隆)
フリーウェア(R.ラッカー)
ダウン・ツ・ヘヴン(森博嗣)
魔法使いとランデヴー 〜ロケットガール4〜(野尻抱介)
火星の長城 〜レヴェレーション・スペース1〜(A.レナルズ)
ウォー・サーフ(上・下)(M.M.バックナー)
遺跡の声(堀晃)
ゴールデン・エイジ3 マスカレードの終焉(J.C.ライト)
あなたの人生の物語(T.チャン)(再読)
時砂の王(小川一水)
【ミステリィ】
朽ちる散る落ちる—Rot off and Drop away(森博嗣)
赤緑黒白—Red Green Black and White(森博嗣)
女王の百年密室(森博嗣)
そして二人だけになった—Until Death Do Us Part(森博嗣)
虚空の逆マトリクスーINVERSE OF VOID MATRIX)(森博嗣)
迷宮百年の睡魔(森博嗣)
探偵ガリレオ(東野圭吾)
四季 春(森博嗣)
今夜はパラシュート博物館へ(森博嗣)
四季 夏(森博嗣)
四季 秋(森博嗣)
四季 冬(森博嗣)
予知夢(東野圭吾)
まどろみ消去—MISSING UNDER THE MISTLETOE(森博嗣)
地球儀のスライスーA SLICE OF TERRESTRIAL GLOBE(森博嗣)
Φは壊れたね(森博嗣)
【ノンフィクション】
ローバー、火星を駆ける—僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢(S.スクワイヤーズ)
生物と無生物のあいだ(福岡 伸一)
「Φは壊れたね」(森博嗣)読了。
Gシリーズ第1弾。文庫で既発刊のシリーズ(で読もうと思っているもの)を全部読んでしまったので,ここからは新刊を待つ体制となる。
これまでの教訓から,内容について何か書くのは控えよう。とりあえず続巻が楽しみである。
年内にあと1冊くらい小説が読めるだろうか。
「生物と無生物のあいだ」(福岡 伸一)読了。
図書館で借りたもの。テレビで紹介されたりしてかなり人気になった本らしく,予約を入れて順番待ちをしてようやく貸出してもらえた。また自分の後にも予約が入っていたため,2週間の期限で急いで読んだ。
一般に受ける本というのはたいていそういうものだが,読みやすいけれど内容が薄い。「生物と無生物のあいだ」というタイトルから,最近SFでよく読むことが多いシミュレーションによる知性だとか人格のダウンロードといったネタに関して何か面白い関係がないかと思って読んでみたというわけ(このチョイスがかなり的外れ?)。
まあその方面での収穫はあまりなかったけれど,砂上の楼閣の例えで,人間の体を構成している分子も,想像よりずっと早い周期で入れ替わっており,それは脳細胞に関しても同様である,という部分は少し面白かった。つまり,人格を形作っているのは物質ではなく動的平衡というシステムによって維持されているパターンなのだという事実。
「地球儀のスライスーA SLICE OF TERRESTRIAL GLOBE」(森博嗣)読了。
森氏の第2短編集。S&Mシリーズの完結後に出されたもの。「石塔の屋根飾り」「マン島の蒸気鉄道」の2編がS&Mシリーズ,「気さくなお人形、19歳」はVシリーズの練無ちゃんが登場する(Vシリーズとの発行順の関係については調べていないのでわからない)。
Webmasterとしてはやはり,上記の長編シリーズものと絡む作品以外は特にこれといった感想はない。
そうそう,解説はあの冨樫義博氏。この解説のためだけに本書を買った(冨樫氏の)ファンがかなりいるのではないかと予想。
【収録作品】
・小鳥の恩返し
・片方のピアス
・素敵な日記
・僕に似た人
・石塔の屋根飾り
・マン島の蒸気鉄道
・有限要素魔法
・河童
・気さくなお人形、19歳
・僕は秋子に借りがある
「まどろみ消去—MISSING UNDER THE MISTLETOE」(森博嗣)読了。
短編集。文庫の発行順でいうとS&Mシリーズの「封印再度」と「幻惑の死と使途」の間になる。
「ミステリィ対戦の前夜」と「誰もいなくなった」の2編がS&Mシリーズ。これはまあシリーズ物のコンプリートという意味で外せないところ。犀川先生は相変わらずチラ見せでもシビれる。
残りの作品はまあ,意外性を楽しむということならいいけれど,とりたてて感動するとかそういった類いの内容ではない気がした。Webmasterは「森博嗣萌え」というわけではないので,全般的にシリーズもの以外の短編に対する評価は低い。
【収録作品】
・虚空の黙祷者
・純白の女
・彼女の迷宮
・真夜中の悲鳴
・やさしい恋人へ僕から
・ミステリィ対戦の前夜
・誰もいなくなった
・何をするためにきたのか
・悩める刑事
・心の法則
・キシマ先生の静かな生活
「時砂の王」(小川一水)読了。
時間SFは考え始めると混乱するのだが,時空を超えた出会いや別れというのはSFならではのテーマと言えるのではないだろうか。
時間戦略知性体のカッティ・サークがいい味を出しており,「しゃべるコンピュータ」好きのWebmasterは採点が甘くなるが,読みやすいし面白かったと思う。
我々すべて,滅びる時間枝に属するすべての平行人類の希望を託して,君たちに命じる。伝えろ,勝て。さらばだ
「予知夢」(東野圭吾)読了。
湯川助教授シリーズの連作短編集の第2弾。ちょうどドラマと同時進行で読んだ(ミーハーだ)ので,トリックの視覚的理解はしやすかったが,逆にイメージがドラマの方で固定されてしまうので,想像して楽しむという読み方はできなかったように思う。
ドラマのストーリーは少しアレンジしてあるが,視覚的インパクトを狙いすぎてちょっと不自然というか強引な展開が目立つかもしれない。
あとはいろいろなところで突っ込まれていると想像するが,あの「ひらめいた」ときに数式を書き散らす演出。いくらギャグとはいえ,ちょっとどうかと思う。確かに単なる決めゼリフ(じっちゃんの名にかけて的な)では今どきインパクトが弱い,というのもわからなくはないけれど...
でも,そんな福山氏がちょっとカッコよく見えてしまうので,Webmasterもとっさのときに難しげな数式のひとつもスラスラと書けるようにしておいた方がいいだろうか。二次方程式の解の公式なんてのは誰でも知っていてすぐバレてしまうから,特殊相対性理論の一定加速度運動する物体の式なんてどうだろう。いや,どうせなら偏微分とか重積分の記号がちりばめられていた方が絵面的に見栄えがするか...
「ローバー、火星を駆ける—僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢」(S.スクワイヤーズ)読了。
収納スペースの関係から,自らに「文庫縛り」を課しているWebmasterは,このようなハードカバーの本を買うことができない。そこで今回は近所の図書館でリクエストしてみた。出たばかりの新刊だったのでその場では「入荷するかどうかわかりません」という回答だったが,間もなく連絡が来てあっさりと入荷。一番で借りることができた。しかも読むのに時間がかかって延長してもらい1ヶ月くらい借りた。
2,600円もする本を新品で発売間もなく読むことができるのだから,図書館も使いようだ。年に何冊か注文したら高い住民税の10%くらいは元が取れるかもしれない。
もっとも,本書は図書館に置くべき良書であることは間違いない。華々しい惑星探査機の成果の裏には途方もない苦労と挫折が隠れているということを思い知らされる一冊。また,いま現在も火星の上ではスピリットとオポチュニティという人類の手による無人探査機(ローバー)が稼働中であるという感動を味あわせてくれる。
正直,次から次へとトラブルが発生する状況を読んでいると,自分の仕事と重なる部分もあって読むのが辛い場面もあった。事前にどれだけの不測の事態を想定し,それに対処できるようにシステムを作り込むか,という大変頭の痛い問題である。無限に開発時間をかけられればいくらでも信頼性の高いものが造れるが,納期と予算という非情な制約がある中で,可能な限り実現しなくてはいけないのだ。
この件を通じていちばん感じ入ったのは,システムにINIT_CRIPPLED(ポンコツの初期化)コマンドが組みこまれていたのが解決の決め手になったことだった。探査機が火星で通常の状態にあれば,まさか使うとは夢にも思わないコマンドだ。それにもかかわらず,グレンはプロジェクト始動後まもないころに,フラッシュファイルシステムが壊れたときに対処できるものが必要だと判断し,INIT_CRIPPLEDコマンドを組みこんでおいた。そして,異常事態が発生したときにこのコマンドがミッションを救ったのだ。
「あなたの人生の物語」(T.チャン)を再読。もう何度目の再読になるだろう。3,4回目か。特にハードSFというわけでもない(半分くらいはファンタジーに分類してもおかしくない)のだが,なんとなく引き込まれてしまうのがチャンの魅力である。
ゲシュタルトがわたしを呼んでいる
「ゴールデン・エイジ3 マスカレードの終焉」(J.C.ライト)読了。
3部作の完結編。遠未来のお話だが,設定がしっかりしていて読み応えがあった。流行のシンギュラリティものとは似ているようでちょっと違うかも。
数万年単位の未来というのはどのような世界だろう。人類は絶滅しているだろうか。もしこのまま繁栄を続けたとしたらこの作品の世界のようになるのか,あるいはまったく似ても似つかないような形態になっているのか...
温暖化の予測などで話題になるのはせいぜい数十年〜百年のオーダー。政府というか役所が考える未来は年金問題なんかでいいところ30年くらい?(まあ真面目に将来のことを考えているかどうか怪しいという話もあるが)。民間企業だとそれこそ半年とか1,2年先というスパンでしか未来のことを考えない(真剣に10年後のことを考えて投資するところが勝つということだろうけど)。
不死化技術というのはもちろん憧れるが,それより何より自分が死んだ後,ずっと未来の世界というのを見てみたいものだ。
「四季 冬」(森博嗣)読了。
わかった。森氏の作品について,読み終わった感想をブログに書こうなどと思うのがそもそも間違いである。
これから森作品を読もうとする人も,あるシリーズを読んで次は何を読もうか迷っている人も,事前にネットで書評やネタバレサイトは見ない方が良い。自分ももう森作品についてネットで調べることはしないようにしよう。あらゆる事前情報は邪魔であり有害と言える。予備知識はいっさい排除した状態から読み始めることこそが最高の贅沢だ。オビや裏側のあらすじもできれば見ない方が良い。
読む順番については,森氏は「どんな順番で読んでも構わない」と言っているが,やはり発行順に読むのがお勧めかと思う。が,それは自分の経験の話であって,新しいものから順に古い作品に遡って読んでいくことでのみ得られる感動というのもあると思うので,確かに「どんな順番で読んでも構わない」が真なのかもしれない。
文庫化がまだされていない未読シリーズはあるが,ここまででも充分に驚愕すべき読書体験であった。非常に月並みな感想で恐縮だが,森氏の頭の中ではどのようにストーリィが構築されているのか,それを覗いてみたい。
「四季 秋」(森博嗣)読了。「有限と微小のパン」の後のお話...くらいは書いても大丈夫だろうか。面白かった,満足した,驚いた,感動した,とか抽象的なことしか書けない。
「四季 夏」(森博嗣)読了。
四季シリーズ第2弾。事件が起きてその謎を解く,というスタイルではないのでミステリとは言えないかもしれないが,四季嬢の謎に満ちた過去を解き明かすという意味でのミステリィということで。
S&MシリーズとVシリーズに関わるかなり重大なネタバレがあって,内容に関してはほとんど何も書けない。両シリーズが好きな人にとってはたまらない内容。逆に,先に本書を読んでしまうと両シリーズの楽しみは半減してしまうかもしれない。全体としては,「すべてがFになる」で少しだけ描かれた四季嬢が起こした過去の"事件"についてのお話となっている。
森氏の文庫で出ているシリーズものについては,読書のペースがもう少しで最新の出版に追いついてしまうため,四季シリーズと未読の短編集をクリアしたらS&Mシリーズを再読してみるのも悪くないな,と思っている。
「遺跡の声」(堀晃)読了。
短編集「太陽風交点」を読んだのはずいぶん前で,太陽風交点がシリーズものだということは今回初めて知った。さらに文庫版出版を巡る裁判のゴタゴタもまったく知らず。出版社が利益追求するのは結構だが,まずは作家と読者の利益を考えてほしいものである。
この『宇宙遺跡調査員』シリーズというのはかなり渋くて地味な設定で,娯楽的な要素は少ないが,なんともいえない切ない味わいがあって好きである。
「今夜はパラシュート博物館へ」(森博嗣)読了。
四季シリーズを読み進める前にちょっと寄り道をして短編集。「どちらかが魔女」「双頭の鷲の旗の下に」がS&Mシリーズ,「ぶるぶる人形にうってつけの夜」がVシリーズの登場人物による短編で,ほとんどこの3編のために読んだようなもの。
国枝先生のだんな様登場の「双頭〜」と,S&Mシリーズとのリンクが垣間見える「ぶるぶる人形〜」はキャラ萌えの方は必読かと。
「ゲームの国」に登場するアナグラム,リリおばさんの事件簿の回文よりは簡単だが面白かった。(主人公の探偵の名前もアナグラムになっていたのは気付かなかった)
「素敵な模型屋さん」はしんみりするファンタジィ。「自分には無理だ」「どうせ出来ない」と,いかに多くの夢を忘れて(諦めて)生きてきたことか。そんなことを考えさせられてしまった。
【収録作品】
・どちらかが魔女
・双頭の鷲の旗の下に
・ぶるぶる人形にうってつけの夜
・ゲームの国
・私の崖はこの夏のアウトライン
・卒業文集
・恋之坂ナイトグライド
・素敵な模型屋さん
「四季 春」(森博嗣)読了。
S&Mシリーズで宿敵として登場した真賀田四季の活躍(?)を描く「四季」4部作の1作目。S&MシリーズとVシリーズの橋渡しとしても重要な位置付けとなりそうな感じ。
フィクションに登場する「天才」はたくさんいるだろうが,四季嬢はかなりのハイレベル天才と言えるのではないか。SFだと「アルジャーノンに花束を」(D.キイス)のチャーリーとか,「理解」(T.チャン;あなたの人生の物語収録)の主人公などが思い浮かぶが,彼らは後天的,人為的に造られた天才であった。四季嬢は生来の天才ということで,その思考の描写(文字を書いたことがない,等)はなかなか興味深い。
ということで,ミステリというよりもSFっぽいシリーズと言えるかもしれない。
「探偵ガリレオ」(東野圭吾)読了。
東野圭吾という作家はずいぶんたくさん本が出ているが,まったく知らなかった。SF以外興味がないのがバレバレだ。
八戸駅の小さな書店で本を物色中に,平積みしてあったのが本書。どうやらドラマ化されるとかで話題になっているようだ。ガリレオというタイトルが気になって紹介文を読んだら,天才物理学者が探偵役で不可思議な事件を科学で解決〜,的な内容らしい。
かんな氏も読んでみたいとご所望だったので買ってみたという次第。
スタイルは連作の短編なので,科学ネタを使ったトリックのアイデア一発勝負という感じ。犯人が誰か,という推理よりも,どんな物理現象,道具を使ってそのトリックを実行したか,という部分に重点が置かれている。
学部は違えど国立大の助教授という意味では同じ設定の犀川先生(森博嗣 S&Mシリーズ)とどうしても比べてしまう。淡白さという点では似ている部分もあるが,やはり別物。湯川助教授(ガリレオ)の方が多少人間くささがあるように思う。が,大学での日常が描かれておらず,刑事に見せる面白い実験をいつも準備していたりして,「こんな先生はいないだろう」という感じでリアリティがないのも事実(短編なので仕方ないかもしれないが)。
やはり長編を読んでみないと評価できないな,というのが感想だが,探偵ガリレオについてはギャグとして読むのが正解ではないだろうか。おそらくドラマもコメディタッチになるのでは?
「ウォー・サーフ(上・下)」(M.M.バックナー)読了。
八戸に行ったときに読む本がなくなって,八戸駅の書店で調達したモノ。品揃えのない店だったのであまり選択肢はなかったのだが,そういうときに買った本というのはやはり今ひとつ。
アメリカの新鋭女流作家だそうだが,この中身で上下分冊は冗長という感じ。訳の問題もあろうが,全編田舎方言の会話が続くのもちょっとアレだ。これだけ引っ張ってラストの盛り上がりもたいしたことがなかったように思う。
ぶつぶつ言いつつも途中で投げ出さずに読めたので,並というところか。
「まんがサイエンスX」(あさりよしとお)購入。
最近本を読んだとか映画を観たとかいう記事ばかりで恐縮だが,ネタがないときはこんなものである。
学習まんがとしては異例の長寿連載であるまんがサイエンスは,ぜひオススメしたいマンガのひとつ。子供向けと思ってバカにする人もいるかもしれないが,おとなが読んでも大変ためになる(その上面白い)。
なかなか置いてある書店がないのが難点だが,今はネットでも買うことができるし,お子様の理科離れが心配だとか,理科はちょっと苦手,という大人の皆様にもぜひオススメ。
「魔法使いとランデヴー 〜ロケットガール4〜」(野尻抱介)読了。
「ロケットガール」は富士見ファンタジア文庫(いわゆるラノベのレーベル)で唯一買っているシリーズ。「女子高生、リフトオフ!」「天使は結果オーライ」「私と月につきあって」の3作に続く4作目。
ラノベと思ってバカにしてはいけない。本作でも小惑星探査機「はやぶさ」をネタにした力作と,さわやかな感動のある短編が収録されている。と,一生懸命説明したのだが,表紙を見たかんな氏に「魔女っ子モノだ!」と言われてしまった。
確かに書店でおっさんが買うには恥ずかしい表紙ではある。
「ダウン・ツ・ヘヴン」(森博嗣)読了。
「スカイ・クロラ」シリーズの第3作。今のところ文庫で読めるのはここまで。
不思議なパラレルワールド感がよく出ている。「戦闘機よりもジェットコースタの方が(乗り心地が)酷い」というような会話が出てきたが,これは本当だろうか。まあ試そうとも思わないし,望んでも試せないだろうが。
飛行機の各部名称みたいなページを見て予習はしたつもりだったが,まだまだ機動のイメージが頭に描けない。これがわかるようになると,おそらくこのシリーズの面白さは何倍にも感じられるのではないか。
「フリーウェア」(R.ラッカー)読了。題名だけだとパソコン用のフリーソフトを集めた本かと思われる方もいるかもしれないが(いないか),ラッカーの「ウェア」シリーズ第3作。
マッドSFというのはなかなか認知されないジャンルのようで,前作ウェットウェアは長らく絶版が続いているし,シリーズ完結編の第4作「Realware」はいまだに邦訳されていない。
後半のファーストコンタクトネタは結構面白かったと思う。とにかく,ずっと「積読」になっていた本書を読了できてスッキリしている。
「時をかける少女」(筒井康隆)読了。
3作のジュブナイルを収めた短編集。映画の原作が短編だと驚く人が多いが,映画化するなら短編がちょうどいい長さだ。長編小説を映画にしようとすると,あちこち省略して短くする必要があって,「原作の方が良かったね」という話になることが多い(個人的見解)。
アニメの方を先に観てしまったのだが,アニメで主人公の相談役として登場する「魔女おばさん」が,原作での主人公(の20年後)ということになっている。
1967年の作品ということもあって言葉遣いが古いのが,今読むと逆に面白い。
当然1日で読める分量だが,これまで読んでいなかった理由は,この強烈な表紙。かんな氏が保管していてくれたので,タイムリーに日の目を見ることになった。
【収録作】
時をかける少女
悪夢の真相
果てしなき多元宇宙
「ZOKU」(森博嗣)読了。
仙台の日帰り出張で読み終えてしまった。また明日から出張で,読む本を思案中。読み応えのあるSF新刊が出るまではしばらく再読キャンペーンということになりそう。
ZOKUもスカイ・クロラ同様,ミステリではない。舞台は現代なのでSFか,と言われると微妙かもしれないが,充分にSFテイストを感じたのでSFということで。
ラノベ的なノリで悪くない,いや嫌いではない,というかむしろ好きである。なんといっても悪の秘密結社ZOKU(Zionist Organuzation of Karma Underground)と,その悪行を阻止せんとする科学技術禁欲研究所(TAI; Technological Abstinence Institute)の闘い(?),その秘密基地は真っ黒なジェット機と真白な機関車!となれば手に取らずにはいられない。
ヒロインの野乃ちゃんと揖斐さんの掛け合いも楽しい。続編も楽しみ。
「いえ,正確には,半破壊工作というか,非破壊工作というのか,今のところ呼び方も決まっていません」
「天の向こう側」(A.C.クラーク)読了。
1984年に刊行された邦訳の新装版。収録されているのは1947〜1958年に書かれた短編。
やはり「そのSFが想定した未来」よりも,さらに未来の時点でこれを読むというのが贅沢というか,なんとも言えない味わいがある。
収録作の「月に賭ける」は人類最初の月面探査の話だが,もちろんアポロ11号の月着陸(1969年)よりも10年以上前の1956年に書かれている。実際のNASAの仕事や現在の宇宙開発の状況と比べて読むことができるわけで,とても楽しい。
例えば現代の最先端SF作家(例えばイーガンとか)の作品を,50年後,100年後に未来の技術と比較しながら読んだとしたらどう感じるだろうか,そんなことを考えてしまう。
【収録作品と原題】
・90億の神の御名(The Nine Billion Name of God)
・密航者(Refugee)
・天の向こう側(The Other Side of the Sky)
・暗黒の壁(The Wall of Darkness)
・機密漏洩(Security Check)
・その次の朝はなかった(No Morning After)
・月に賭ける(Venture to the Moon)
・宣伝キャンペーン(Publicity Campaign)
・この世のすべての時間(All Time in the World)
・宇宙のカサノヴァ(Cosmic Casanova)
・星(The Star)
・太陽の中から(Out of the Sun)
・諸行無常(Transience)
・遥かなる地球の歌(The Songs of Distant Earth)
「ナ・バ・テア」(森博嗣)読了。
スカイ・クロラシリーズの第2作目。時系列的には「スカイ・クロラ」の前日譚にあたる。今のところ文庫で読めるのは,第3作の「ダウン・ツ・ヘブン」まで。
空中戦の描写は,飛行機の動きをイメージできればより楽しめそう。古い映画だがトップ・ガンが観たくなった。
キレイな作品だが,ミステリのような「やられた」感はないので,好みは分かれるかもしれない。
「スカイ・クロラ」(森博嗣)読了。
ミステリで未読のシリーズがまだまだ残っている森作品だが,それらを後回しにしてスカイ・クロラを選んだのは,もちろん押井守監督によるアニメ映画化の話が出たからだ。
押井監督といえば,「パトレイバー」「攻殻機動隊」と,Webmasterの好きなSF作品を選んでいるかのように映画化してくれるなぁ,と思っていたが,今回は森博嗣ということで,ちょっと驚いている。
ということで,本作もジャンルとしてはSFに分類。レビューを見ると純文だとか寓話とか哲学書だとかいう感想も見かける。そもそもジャンル分けなど無意味だと森氏なら言いそう。
原作の感想としては,ライトな印象で,シリーズをもう少し読んでみたいというところ。空中戦のシーンなどはアニメ化でどうなるのか楽しみではある。
「迷宮百年の睡魔」(森博嗣)読了。
仕事ばかりしていて読書ネタくらいしか書くことがない。「女王の百年密室」を読んだときに,読み切りの長編と書いてしまったが,じつは誤りで,本作が続編となる(じつはシリーズもの?)。
舞台が22世紀ということで,SFミステリと言えるだろう。ロボット(ウォーカロン)の活躍も見逃せない。特に主人公のパートナであるロイディはいい味を出している。
SF全般に共通する点だが,エネルギー問題を解決している未来社会において,変圧器などの送変電機器がどうなっているのかが気になる。発電はまあ,太陽電池なり核融合なりのブレークスルーで事実上無尽蔵に使えるようになったとして,基本的に電力を使うという点は現代と変わらないわけだ。
電力を使うとすれば,当然輸送(送電)と変換(変圧)の必要が出てくるわけで,送電線だとか油の入った巨大な変圧器というような機器は,電磁気学が変わらない以上は必ず必要になると思うのだが,その点を詳しく書いたSFというのは読んだことがない。
作品によっては,各家庭や機械そのものに,超高効率な太陽電池(と何らかの電力貯蔵装置)を内蔵してしまうケースもあるが,今回読んだ作品では「世界のエナジィ問題は解決した」としながらも,ロボットのエナジィは「コンセントにつないで充電」する必要があるとされている。仮に街単位である程度の規模の発電設備があるとしても,各家庭まで電力を引く配電網は必要なわけで,その辺の描写がきちんとされているSFを読んだら,(本筋とは関係ないところで)ちょっと感動するかもしれない。
「虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX) 」(森博嗣)読了。
手持ちの未読SF本が品切れのため,しばらく森作品が続く。これは短編集。
最初に出てくる「トロイの木馬」はアンソロジー「21世紀本格」にも収録されていた,SFっぽいお話。かんな氏は「同じ本をまた買っちゃったかも〜」と慌てていた。何しろ二人とも,すでに持っているのを忘れてもう一冊同じ本を買った前科があるので気をつけないといけない。
この短編集で脱帽なのは何といっても「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)」だろう。リリおばさんの披露する「回文」がとにかく凄い。ほのぼの感も好みである。
あとはやはりS&Mシリーズの短編「いつ入れ替わった?」。久しぶりに犀川先生と萌絵ちゃんの掛け合いが読めて大満足。
【収録作品】
・トロイの木馬
・赤いドレスのメアリィ
・不良探偵
・話好きのタクシードライバ
・ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)
・探偵の孤影
・いつ入れ替わった?
「そして二人だけになった—Until Death Do Us Part」(森博嗣)読了。
冒頭の引用がA.Einsteinの「相対性理論」ではじまるあたり,SF読みとしてはかなりシビれる。舞台も極秘裏に建造された超凝った構造の核シェルタだったりして,理系要素満点である。
ラストについては賛否あるようだが,森氏のブログを読んでいて思うのは,氏は「こんな風に書いたら読者の何割かは怒るだろう」「こんな書き方をすれば何割かが勘違いするはず」というようなことをすべて計算して書いており,本書のように賛否分かれる結末も,当然計算の上だろうということだ。
森氏の作品を読む上で大切なのは,そういった「手の上で踊らされる感」を楽しめるかどうか,という点である。
あと,本書では森作品にしては(たぶん)珍しいベッドシーンが描かれている。
またもや仙台のホテルから書き込み。出張が多いと読書が進むのはいいが,休日に現地作業というのは勘弁してもらいたいものだ。
「沈黙のフライバイ」(野尻抱介)読了。
非常に良質なハードSF短編集。さわやかな読後感,未来に希望が持てるストーリで,このへんは他の野尻作品でも共通している。
こういう話をひとつ中学校の国語の教科書に載せてみたら,理系離れを減らす効果が見込めるのではないだろうか。いや,Webmasterが知らないだけでもう載っているのかもしれないが。Webmasterの頃は星新一の「繁栄の花」とか「おーいでてこい」を教科書で読んだ記憶がある。
休日なのに出張で,ホテルのロビーのパソコンで書いている。便利だが,書いている最中にIEが飛んでひどい目に遭った。MacBookが置いてあった前のホテルの方がよかったなぁ。
「ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔」(J.C.ライト)読了。
感想をいろいろ書いたのだが,上述のようにIEが飛んで戦意喪失した。とりあえず面白い。完結編の3作目が楽しみである。
「バビロニア・ウェーブ」(堀晃)読了。久しぶりに日本人作家の超硬派なハードSF。どのくらい硬派かというと,登場人物の色恋沙汰が一切,まったく,一行たりとも出てこない。やはりハードSFはこうでなくては。
人物描写が浅薄だとか言ってハードSFを批判する向きもあるが,純粋で清廉なSFには,色恋沙汰もサービスシーンも,場合によっては人間すらも不要なのだ。
エネルギーが無尽蔵に使える環境というのは,生活にどんな変化をもたらすだろうか。SFでは度々いろいろな背景技術で描かれる状況だが,いつもそんな世界を夢想してしまうWebmasterである。
エネルギーがタダで使い放題となれば,基本的に人間の競争や争いは一切不要となる。極言すれば,今の人類の問題は全て,技術的に利用可能なエネルギーが有限であることから生じていると言ってもいい。
サミットで話題の,温暖化を筆頭とする地球環境問題も,資源を消費しない無尽蔵なエネルギーがあれば一発解決だ。
ちなみに「地球環境問題」とかいう回りくどい呼称だから,センスのない人には他人ごとのように感じられるのであって,いっそのこと「人類生存環境問題」とか,もっとはっきりと「茨城県民生存環境問題」とか言ってあげればいいんじゃないか。少なくとも珍走団と同じレベルの話として自覚できると思う。
「忘却の船に流れは光」(田中啓文)読了。
タイトルとあらすじからすると硬派な宗教SFかと思うが,そこは著者が田中啓文ということで,そうストレートにはいかない。なんといっても「UMAハンター馬子」の田中氏である。下品でグロいが,それを乗り越えたところにキラリと光るSFが見えてくるのだ。
「女王の百年密室」(森博嗣)読了。読み切りの長編。シリーズものと違って,読み切りの場合は何が起きるかわからない(自由度が高い)ので,かなり身構えて読み進めなくてはいけない。
つまり,シリーズものなら当然の前提条件やお約束といった制約が一切ないわけである。もっとも森作品の場合はシリーズものでもそれは怪しいことが多いのだけれども。
本作に関しては,未来が舞台のSFであるため,最後に残された大ネタなどはSF読みの人なら途中から予想がつくだろう。
なかなか面白かったが,冒頭に書いたように読み切りは疲れる。SFなら読み切りでも平気なのに不思議だ。
「反逆者の月」(D.ウィーバー)読了。読みかけの本を出張先で読了してしまったため,上野駅の書店で急いで選んだのが本書。著者の作品としては「オナー・ハリントン」シリーズが有名だが未読。ミリタリーSFの新御三家と呼ばれている。
手に取ってあらすじを読んでしゃべるコンピュータものらしいという点が購入のきっかけ。「"月"というのはじつは超弩級宇宙戦艦でした」というブっとんだ設定もグー。
ただ,読了してみると物語の序盤で終わってしまった感があって,解説を読んだらじつは三部作の第1巻だった。しゃべる超巨大宇宙戦艦"ダハク"の活躍は続刊に期待したい。
「アイアン・サンライズ」(C.ストロス)読了。シンギュラリティ・スカイの続編。前作よりも読みやすい感じはするし,テンポもよく読後感もなかなか。ちょっと誤植(単純なてにおはの間違い)が多すぎる気がするが,初版だとこんなものなのだろうか。
さほどハードではないけれど,最近のネオスペオペを読むなら,FTLだとか光円錐についての知識は常識として知っておいた方が楽しめると思う。
§光円錐
光速で伝搬する信号によって時空のある特定の点から到達しうる、あるいはその点に到達しうる点からなる集合が形成する、四次元空間内の超円錐のこと。
なんて巻末のひとこと解説を読んだだけでイメージできるだろうか?
「赤緑黒白—Red Green Black and White」(森博嗣)読了。紅子さんと愉快な仲間たちが活躍するVシリーズの完結編。感想はもう何を書いてもネタバレになってしまうので,何も書けない。結構衝撃的だったので,しばらくSFでも読んで冷却しよう。
「朽ちる散る落ちる—Rot off and Drop away」(森博嗣)読了。紅子さんと愉快な仲間たちが活躍するVシリーズ第9弾。
未読SFの消化が進んできたので,ちょっと気分を変えて久しぶりに森ミステリィ。六人の超音波科学者と同じ超音波研究所が舞台で,続編という位置付け。
Vシリーズも終盤で,終わり方が気になってきた。読み進めるに連れてシリーズの行方が気になってしまう,優良読者のWebmasterであった。
「グラン・ヴァカンス 廃園の天使I」(飛浩隆)読了。
人間(ゲスト)の訪れなくなった仮想リゾート空間で取り残されたAI達が繰り広げる物語。永遠に続くかに思われた夏の日々に異変が・・・。という背景(プロット)は著者あとがきにあるように新味は無いかもしれないが嫌いではない。話も面白いと思うのだが,描写が痛々しくてホラーかと思うような残酷な場面が多かったのが個人的には辛かった。
現実(リアル)で出来ないことが実現できる仮想リゾート空間という成り立ちを考えれば,現代の残虐系ゲームの例を挙げるまでもなく,残酷なシーンが出てくるのはある意味必然なのかもしれないが,それを正面から描かれるとやはり辛い。
さて,生身の人間の場合,与えられる苦痛のレベルがある程度大きくなると感覚遮断(意識喪失)が起きてそれ以上の苦痛は感じずに済む(たぶん)。一方AIはソフトウェア的に感覚遮断が禁止されてしまうと,痛みの変数(?)の上限値まで苦痛を感じ続けなければいけない。ここで仮に,ネコに噛まれた痛さが100,骨折の痛みが10,000だったとしよう。変数がintで宣言されていれば痛みの上限は骨折の時の3倍で済む。しかしこれがlongだったりdoubleだったりしたら...
考えるだけで痛くなってくる。
著者のノート(あとがき)より引用
ここにあるのはもしかしたら古いSFである。ただ,清新であること,残酷であること,美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。
「ひとりっ子」(G.イーガン)[bk1]読了。
日本オリジナルの第3短編集。イーガンの新刊とあれば無条件で買わねばなるまい。
読んでいるときは(情けないことに)気付かなかったが,訳者あとがきを読んで,あの作品とこの作品がじつはつながっていた(ネタバレのため詳しくは書けない),という事実に鳥肌が立った。短編集でもこんな大技ができるとは素晴らしい。
イーガンは短編も面白いが,やはり長編の新作が読みたいところ。
収録作品
・行動原理
・真心
・ルミナス
・決断者
・ふたりの距離
・オラクル
・ひとりっ子
「SFが読みたい! 2007年版 発表!ベストSF2006〈国内篇・海外篇〉」(SFマガジン編集部編)[bk1]購入。
内容が特に面白いというわけではないが,SF読みとしての自分のポジションを確認するために毎年買っている。ランキング上位の作品は文庫化されていないものが多いので,1〜2年前くらいの版をたまに見返して,当時のランキング上位作品が文庫化されているかどうか調べたりしている。
ご参考:SFが読みたい!2006年版
「ゴールデン・エイジ 1 幻覚のラビリンス」(J.C.ライト)[bk1]読了。
全3巻の第1巻ということで,全体を通した感想は保留としたいが,なかなか楽しめそうな予感。続刊が楽しみ。
冒頭から目くるめく遠未来の描写で,初心者(?)にはちょっと取っ付きづらいかもしれない。純粋なサイバースペース(仮想現実環境)から,テレプレゼンスユニット(遠隔操作体)による現実世界とのインタラクション,ソフォテク(支援AI)の視覚へのオーバーラップなどは,攻殻機動隊(マンガの方)2巻の描写をイメージすると理解しやすいと思う(技術レベルは桁違いだが)。
「ニュートンズ・ウェイク」(K.マクラウド)[bk1]読了。
ワームホールゲート,超光速航行(FTL),時系列保護推定(CPC),精神のバックアップ・アップロード・ダウンロードなどなど,胸躍るSFガジェットが満載だが,ハードSFというわけではなく,軽めのスペースオペラ。
「時系列保護トラップさ。出現した位置はこっちの攻撃するには遠すぎて,しかもFTLで残りの距離を詰めるには,自分自身が存在できる光の円錐の外に出るか,時間を遡らなくちゃなんない。敵がいわば自分自身が追いついてくんのを待ってる間に,こっちは核ミサイルで——」
2006年は完全にブログの更新のみに終始してしまった感がある。その他のコンテンツは検索エンジンからのビジター用に残してあるような状態。検索して来てくれた方がわずかでも有用だと感じてくれれば幸いである。
ブログでは音楽・楽器ネタが急速に増えたのが大きな変化だった。関連してmixiからのお客様も増えた。
写真ネタは,ペンタSPでの撮影とメンテナンスが大きなイベントと言えるのではないか。携帯電話にもそこそこ写るデジカメが付いてくる時代,「写真ってたのしいねっ」などと大それたタイトルを冠して続けていくにはマニュアル機械式カメラのペンタSPの活用は必須とも言える。
読書ネタは相変わらず大部分を占めた。例によって今年読んだ本を以下にまとめておく。ノンフィクションを全然読まなかったのは猛省に値する。代わりに楽器練習など,他の趣味に割く時間が増えたということで自分を納得させている。SFは19作品(再読2冊を含む),ミステリィ(森博嗣のみだが)16作品ということで,森博嗣をずいぶん読んだ年でもあった。
【SF】
マジック・キングダムで落ちぶれて(C.ドクトロウ)
マッカンドルー航宙記(C.シェフィールド)
ハル(瀬名秀明)
太陽レンズの彼方へ(C.シェフィールド)
老ヴォールの惑星(小川一水)
象られた力(飛浩隆)
タウ・ゼロ(P.アンダースン)[再読]
宇宙消失(G.イーガン)[再読]
フレーム・シフト(R.J.ソウヤー)
シンギュラリティ・スカイ(C.ストロス)
火星縦断(G.ランディス)
竜の卵(R.L.フォアード)
スタープレックス(R.J.ソウヤー)
コラプシウム(W.マッカーシイ)
リングワールド(L.ニーヴン)
神の目の小さな塵(L.ニーヴン&J.パーネル)
敵は海賊・海賊版(神林長平)
カズムシティ(A.レナルズ)
ゴールデン・フリース(R.J.ソウヤー)
【ミステリィ】
笑わない数学者(森博嗣)
詩的私的ジャック(森博嗣)
封印再度(森博嗣)
幻惑の死と使途(森博嗣)
夏のレプリカ(森博嗣)
21世紀本格(島田荘司編)
今はもうない(森博嗣)
数奇にして模型(森博嗣)[再読]
有限と微小のパン(森博嗣)
人形式モナリザ(森博嗣)
月は幽咽のデバイス(森博嗣)
夢・出逢い・魔性(森博嗣)
魔剣天翔(森博嗣)
恋恋蓮歩の演習(森博嗣)
六人の超音波科学者(森博嗣)
捩れ屋敷の利鈍(森博嗣)
【ご参考】2005年の総括
「ゴールデン・フリース」(R.J.ソウヤー)[bk1]読了。
ソウヤーの処女長編をようやく読むことができた。SFミステリ(ミステリSF?)としての評価も高い本作品。文句なしに面白い。かなり特異な倒叙ミステリ(犯行方法も犯人も冒頭で明かされ,すべてが犯人による一人称の独白で進む)で,これはSFというジャンルでなければ絶対に書くことができない話だと思う。ボリュームもちょうど良く,程よいハードさ。
宇宙船の全機能を支配するAI,しかも人間に対して秘密を持っていて反抗までするというと,どうしても「2001年宇宙の旅」(A.C.クラーク)のHAL9000を連想してしまうが,その辺はソウヤーも充分承知しているところらしい。
今まで読んだソウヤー作品とは違いハッピーエンドとは言い切れない終わり方だった(殺人事件が起こっているのであたりまえだ)が,読後感は良く,ソウヤーにハズレなしの格言は今回も守られた。
「敵は海賊・海賊版」(神林長平)[bk1]読了。
シリーズものなのでなかなか手が出なかった作品。ネコが活躍する話ということで思い切って1作目を買ってみた。
著述支援システムで書かれたという設定や人工知能搭載の宇宙戦艦,カッコいい戦闘シーンはSFっぽいが,ストーリーはファンタジーのようで,評価が難しい。神林作品の「味」と言われればそんな気もする。シリーズを読み進めるかどうかは今後の気分しだいか。
「捩れ屋敷の利鈍—The Riddle in Torsional Nest」(森博嗣)[bk1]読了。
Vシリーズ第8弾だが保呂草さん以外のいつものメンバーが登場しない。代わりにS&Mシリーズの萌絵ちゃんと国枝先生が参加。両シリーズを橋渡しする意味合いの話ということか。ページ数も少なく文字も大きいので番外編的な位置付けかもしれない。
犀川先生もチラっと登場するが,久しぶりにシビれた。シリーズの今後が気になるところだが,そろそろSFも読まなくては。
「六人の超音波科学者—Six Supersonic Scientists 」(森博嗣)[bk1]読了。
紅子さんとゆかいな仲間たちが活躍するVシリーズ第7弾。保呂草さんの車のバッテリーが上がったときは「きたきた!」と思ったが,意外な展開でまんまと著者の術中にハマっているという感じ。
見取り図付きで動きが把握しやすいし,ロジックもスマートで良かった。
ノウンスペース(既知宙域)というシリーズ物の集大成的な位置付けと聞いており,シリーズの他の作品が入手難ということもあって敬遠していたのだが,本作があまりにも有名な上,リングワールド自体が独立してシリーズ化されているということでようやく読む決心がついた。
とはいえ,やはりいきなり読んでも背景に関する知識がないので異星人の名前やエピソードがポンポン出てくると混乱する。まあそういう部分を抜きにしてもリングワールドの途方もないスケールの描写は充分にSF好きの心を満足させてくれるものだと思う。
ネコに似た好戦的な異星人「クジン人」が出てくると,なんとなくピートを思い浮かべてしまう...。
SFとしては結構ハードなガジェット満載で,ストーリーはスペオペ宮廷ヒーローもの(?)で表紙は萌え系という不思議な作品。
表紙に釣られて買った人,逆に表紙で拒絶したマジメな人,両方ともある意味裏切られる内容だと思う。マッカンドルー航宙記と似た雰囲気を感じた。
続編が4作も刊行されているらしいがいったいどういう方向に向かうのだろう。とりあえず次回作からは表紙だけは普通にしてもらいたい(店頭で手に取るのが恥ずかしくてネットで買った)。
ソウヤーにハズレなし!である。痛快娯楽ハードSF。やはりSFはハッピーエンドに限る。未来は明るい方が良いに決まっているのだ。
ハードSFといえば必ず挙げられるのが本書。直径20km,表面重力670億Gという極限環境の中性子星の上に進化した知的生命(生活速度は人間の100万倍)とのファーストコンタクト。
その設定は確かにこの上もなくハードだが,中性子星人の社会描写があまりにも人類と似ているのにはちょっと違和感。まあ似ていて悪いということではないのだが,もっと突拍子もない社会の方が"リアリティ"があるよなぁ,などと思ってみたり。最近のハードSF異星人モノはそのあたりの描写で差別化する傾向があるかもしれない。
「恋恋蓮歩の演習—A sea of deceits」(森博嗣)[bk1]読了。紅子さんとゆかいな仲間たちが活躍するVシリーズ第6弾。
謎解き役は一応紅子さんだが,保呂草さんの活躍が目立っている(保呂草さんによる「演出」だと作中で書いてあるくらいなので当然と言えば当然だが)。
保呂草さんの「秘密」を巡って,このシリーズはどの辺に着地するのだろうか。それが気になるところである。
リアルな火星サバイバルのお話で,ハードSFといえばハードSFだが,普段読んでいるブっとんだ展開の作品と比べると,地に足のついたSFと言えるかもしれない。
短い章立ての構成は毎日少しずつ読み進めるWebmasterとしては読みやすかった。
しかしときには,いくら頑張っても,いくら勇気を奮っても,追いつかないこともある。 宇宙は冷たく,空っぽで,非情で,人間の悲劇も土壇場の英雄的行為も際立った操縦技術も,一顧だにしない。 ときには,まにあわないこともあるのだ。
「シンギュラリティ・スカイ」(C.ストロス)[bk1]読了。久々に新鋭作家の作品に挑戦。ハードなガジェット満載でなかなか楽しめた。時代遅れ(?)の宇宙軍の懲りない面々もいい味を出している。宇宙艦隊戦の描写は燃える(萌える?)人も多いのでは。
ナノテクが避けられない時代の流れ,というのは理解できるが,ナノテクさえあれば何でもアリという風潮は,ファンタジーにおける魔法みたいなもので,何か一定の縛りを設けないとハードSFとしての面白味が失われてしまうような気がしている。
そういえば同じく英国新鋭作家A.レナルズの啓示空間の続編が出ているが,さらに殺人的な厚さになっていた。とりあえず持ち帰るのは断念。通販で買うにしても読むためには持ち歩かなくてはいけないし,ブックカバーには入らないし,悩ましいところ。
「小説『聖書』新約篇」(W.ワンゲリン)[bk1]読了。98年の発売当初に旧約篇,新約篇のハードカバーを買ってあって,旧約篇は一応読んだのだが新約篇は長いこと未読本リストに残っていた。ハードカバーなので持ち歩いて読むことができないし,旧約篇で神様は相当わがままで酷いやつだと感じたので新約篇を手に取る気にならなかった,というのもある。
とはいえ,SFを読むにしてもキリスト教的世界観は一般常識として知っておく必要がある(メジャな海外SF作家はたいていキリスト教圏在住だし)ということで,寝る前に1ページでも5行でもいいからと思ってコツコツ読み進め,ようやく読了。
ナザレのイエスが言いたかったことはつまり,「規則(律法)に盲従するのではなく,良いことをしましょう」という感じだろうか(無理矢理まとめ過ぎ?)。
現実の世界はといえば,未だに旧約聖書的な考え(異教徒はとにかく絶対悪なので滅ぼしてしまえ)の人だらけで,表面的にはキリスト教信者であるはずの世の中の大多数の人も,イエスの教えなどまったく無視しているように感じるのはWebmasterだけだろうか。
「フレームシフト」(R.J.ソウヤー)[bk1]読了。そろそろSFも読まなければと,危機感に駆られて近所のスーパーの書店に行った。わずかに(本当にごくわずかに)置いてあるハヤカワ青背の中から,未読かつ読む価値のありそうな本を探して,本書を手に取った。ハードSFでは無さそうだが,今までに読んだソウヤーでハズレはなかったし,SFに復帰するにはちょうどいいリハビリになるだろう。
テレパス(近くにいる人間の言語思考が読める)が少しだけアクセントになっている程度で,SFよりは理系ミステリという趣き。ハードSF好きにはちょっと物足りない展開だが,解説にもあるように「地に足の着いた小説」という感じだろうか。
「魔剣天翔—Cockpit on knife edge」(森博嗣)[bk1]読了。紅子さんとゆかいな仲間たちが活躍するVシリーズ第5弾。
保呂草さんの活躍(?)がカッコ良い。また飛行機の描写が生き生きしていて,それだけでも楽しい。
茨城には航空自衛隊の百里基地というのがあって,近くまで行くと戦闘機が編隊飛行しているのを見ることができる。戦争のために作られた物騒な機械だが,皮肉なことにそういったモノの持つカタチというのは洗練されていて美しい。
それにしても最近本当にSFを読んでいない。そろそろ禁断症状が出そうだ。
「夢・出逢い・魔性—You May Die in My Show」(森博嗣)[bk1]読了。紅子さんとゆかいな仲間たちが活躍するVシリーズ第4弾。
Kinoppyに「タイトルが駄洒落なの」と指摘されて初めて気付いた。まったく頭が固いWebmasterである。
犯人の独白を交えながら進行するので,ストーリやトリックを推理して楽しむというよりは,保呂草氏や新登場の探偵仲間,稲沢氏の探偵ぶりや,練無くんのアイドルっぷりを楽しむ軽いノリの作品かもしれない。稲沢氏のキャラクタはけっこう好きなのだが,今後も登場するのであろうか。
「月は幽咽のデバイス」(森博嗣)[bk1]読了。紅子さんとゆかいな仲間たちが活躍するVシリーズ第3弾。ある前提条件がバラせない以上,何を書いてもネタばれにつながってしまうので,何も書けない。ミステリの感想というのは本当に難しい。とりあえず面白かった。
「人形式モナリザ」(森博嗣)[bk1]読了。紅子さんとゆかいな仲間たちが活躍するVシリーズ第2弾。
メインの殺人事件は関係する登場人物が多くて,考えるのが面倒だったので流して読んでしまったが,それ以外のところで度肝を抜かれる展開があって,「黒猫の三角」と同様楽しめたし,シリーズの今後も気になってきた。
「宇宙消失」(G.イーガン)[bk1]を再読。最初読んだときはあまり感じなかったのだが,イーガンの一連の作品を読んだ後に再読すると,本作にも「自分とは何なのか」というテーマが強く現れている。波動関数が収縮する際に,拡散中の自分たちが消滅するという概念は「順列都市」序盤の思考実験にも似ている(ような気がする)。
クライマックスの盛り上がりは個人的には今ひとつ(ブラッドミュージックっぽくないですか?)で,後の作品の方が好みだが,本作の魅力はやはり近未来の目くるめくようなナノテク,特に脳のニューロンを再結線して任意のソフトウェアとして機能させる「モッド」の描写であろう。
最近,新刊/既刊に関わらず新しいSF本を買っていない。いくつかシリーズ物で続編待ちという作品はあるが,買ってまで読みたいと思うSFがなかなか無い。最近第3部が出たニーブンの「リングワールド」シリーズや,超有名な「ハイペリオン」シリーズなど,気になるものがいくつかあるにはあるが,新たなシリーズ物に挑むのはかなりの気合が必要だ。ハードSFに関してはもう,イーガンさえ読んでいれば幸せという感じで,「イーガンよりつまらないだろうことが判っている,未読のSF作品」を読むモチベーションをいかに高めていくか,というのが現在の課題である。
「タウ・ゼロ」(P.アンダースン)[bk1]読了。4年ぶりの再読になる。減速装置が破壊され,光速に向かって限りなく加速しつづける宇宙船がその先に見るものは・・・。という設定のハードSFの金字塔。
1992年のベストSF海外編の第1位に選ばれているが,原著が書かれたのは1970年。しかしその輝きは今読んでも色褪せることがない。スケールの壮大さで言えば,これを超えるのは文字通りの「永久」とか「無限」というテーマを扱ったいくつかの作品に限られるだろう。巻末に金子隆一氏の科学解説も付いており,とってもお得。
ちなみにP.アンダーソンは「永劫」のG.ベアの義理の父親なのだそうだ。これにはちょっと驚いた。
有限と微小のパン—THE PERFECT OUTSIDER(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ完結編。とうとう読み終えてしまった。これでもう犀川先生と萌絵ちゃんの楽しい掛け合いが読めなくなると思うと寂しい。
感想は何を書いてもネタバレになりそうなので難しいところだが,「そうきたか」「やられた〜」感はけっこう強い。1作目「すべてがFになる」と並んでSFっぽい話になっている。
▼「中学生はこれを読め」 書店主が推薦リスト、全国波及(asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0506/003.html
札幌の本屋のオヤジは気がついた。「最近の中学生は本を読まないと言うが、うちには彼らのコーナーがなかった」。オヤジは500冊のお薦めをリストアップし、専用の棚を作って、こんなキャンペーンを始めた。(以下略)
500冊のリストは「これ読め」のホームページで見ることが出来る。
いくら今どきの中学生が読書しないからといって,「これを読め」って押し付けがましくリストアップされてもどうなんだろうか。おせっかいというか余計なお世話というか。どうでもいいけどSF少なすぎません?ざっと眺めても「アルジャーノンに花束を」,「夏への扉」,「ジュラシックパーク」くらい。同じフィクションでもファンタジー作品はけっこうリストに挙っているのになんか偏ってるなと。どうせリストアップして全国展開するなら,おやじ一人の独断じゃなくてもうちょっとなんとかならなかったものかと。つまりSFが少ないとWebmasterは言いたい。
そういうWebmasterの中学時代の読書はどうだったのかというと,じつはまだSFには目覚めていなかった。中学生の頃に小遣いをファミコンやマンガなどに無駄遣いせずコツコツとSFを買ったり図書館で借りたりしていれば今頃1000冊くらいは楽勝で読めていただろうにと後悔することしきりである。
当時何を読んでいたかと言えば,フィクションは図書室でホームズをたまに借りていた程度で,あとはブルーバックス(ハヤカワ青背ではなく,講談社の新書の方)の宇宙モノをちょっと背伸びして読んだり,MSXの雑誌(ゲームのプログラムリストが載っていて打ち込んで遊ぶ)を買っていた程度。いずれにしてもヒマがあった割に読書量は極端に少なかった。
友達には毎週毎週図書室で10冊ずつ借りるような強者も居たが,だからといって大人になっても読書好きかどうかというのはまた別問題のような気がする。
とにかく何が言いたいかというと,500冊のリストにもっとSFを入れてはどうか。(しつこい)
数奇にして模型—NUMERICAL MODELS(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ第9弾。
じつは初めて読んだ森作品である。結婚前にKinoppyがオタクっぽいあなたにはコレがオススメ と言って貸してくれたのだ。
S&Mシリーズのことなどまったく知らずに読んだそのときも,なかなか面白いと感じた記憶があるので,今回S&Mシリーズを1〜8作まで順に読んできたあとに再読したらどんな気分だろうと,なかなか楽しみだったのである。
そうして読み始めたらトリックから何からすっかり忘れてしまっていた。Kinoppyにも言われたが,まったくお得な体質と言えよう。たぶん現時点で持っている蔵書を順番に読んでいって,最初に戻って再読する頃には記憶がリセットされているから,いつまでも新鮮な気分で読書が可能である。素晴らしい!
というわけで本書も面白かった。特に萌絵ちゃんのコスプレがいい! この良さは確かにシリーズを読んできていないと解らないものだ。
象られた力(飛浩隆)[bk1]読了。SFが読みたい! 2005年版国内編で1位となった中短編集。
この著者の作品は初めて読んだが ,初読の日本人作家で中短編集という点で共通する「老ヴォールの惑星」(小川一水)と比べるとちょっとインパクトが弱かった気がする。どの作品もなかなか面白いのだが,読後の感動は薄かった。あくまでも個人的感想であって,冒頭の短編「デュオ」などはSFとしては異色の音楽(ピアノ)モノだったりして,ハマる人はハマるかもしれない。「グラン・ヴァカンス」という長編も出ている(文庫化はまだ)らしく,電脳空間/AIモノらしいのでWebmasterの好みにはそちらの方が合いそうなので文庫化を楽しみにしている。
収録作品のテーマがわりと広いジャンルにまたがっていて全体の感想が書きにくいので個別に少し。
・デュオ
上述のように音楽モノ。ミステリ的な楽しみもある。
・呪界のほとり
クラークの第3法則「充分に発達した科学技術は,魔法と見分けが付かない」の究極の姿。こういう設定はキライではない。
・夜と泥の
地球化(テラフォーミング)組織「リットン&ステインズビー協会」が出てくる,表題作と共通の世界観。
・象られた力
図形のもつ力と物理宇宙のインフラストラクチャへのアクセス系の話。ジャンル的には神林長平に近いかもしれない(偏見)。この表題作が一番ボリュームがあり読み応えもある。
今はもうない—SWITCH BACK(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ第8弾。
清々しい読後感。殺人事件が起きているのに清々しいという感想はいかがなものかと自分でも思うが,この「やられた〜」感はなかなか心地良い。
一作目でこの話を書くことはできないし、シリーズ未読の人がいきなり本書を読んでも,面白さは半減以下だろう。そういう意味でシリーズものの特性を最高に上手く生かした傑作だと思う。SFでしか得られない感動がある,と書いたことがあるが,シリーズものミステリでしか味わえない感動もまた,ある。
「21世紀本格」(島田荘司編)[bk1]読了。2006年版「SFが読みたい!」で国内編2位の評価をされているがWebmasterは未読の「デカルトの密室」(瀬名秀明)という作品があって,本書にその前のお話である「メンツェルのチェスプレイヤー」が収録されているというので買ってみた。森博嗣のバーチャルリアリティーテーマの作品もちょっと期待していたのだが...久しぶりにハズレの読書をしてしまった感がある。
「21世紀的なミステリ」ということで,ライフサイエンスやコンピュータテーマなど,SFっぽい話が必然的に多くなっている。そこでこれをSFとして読んでしまうと,大変チープでSF的には時代遅れという感想を抱いてしまった。もしかしたらミステリばかり読んでいる人にとってはこういう話が新鮮なのかもしれないが,どうなのだろう。
肝心のメンツェル〜にしても,ロボットを小道具にした軽いミステリという程度で,突っ込みが足りずなんとなく物足りない。これは難解と評判のデカルト〜に期待するしかない。
「トロイの木馬」(森博嗣)は設定には萌えるモノがあるがこれはミステリ...なのか?
まったく21世紀的でない「交換殺人」(麻耶雄嵩)が素直にミステリを読む気で読んだためか,一番面白かったような気がする。
当然かもしれないが,SF読みとしては「ミステリ作家が書いたSFっぽい話」よりも「SF作家が書いたミステリっぽい話」の方が性に合うらしい,ということを確認できた1冊。
【収録作品】
神の手(響堂新)
ヘルター・スケルター(島田荘司)
メンツェルのチェスプレイヤー(瀬名秀明)
百匹めの猿(柄刀一)
AUジョー(氷川透)
原子を裁く核酸(松尾詩朗)
交換殺人(麻耶雄嵩)
トロイの木馬(森博嗣)
「夏のレプリカ—REPLACEABLE SUMMER」(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ第7弾。第6弾の「幻惑の死と使途」と時系列的に重なっている事件だが,特に内容が絡んでいる部分はなく,独立した話として読むことができる。この章とこの章の間にはこんな出来事があったのね,的な楽しみ方は出来ると思うが,それには2冊を交互に読む必要があるだろう。
話としては度肝を抜かれる大ドンデン返し系だったと思うが,すでに犀川先生と萌絵ちゃんのやり取りが楽しみになってしまっている(今風に言うとキャラ萌え?の)Webmasterにとっては,中盤までほとんど2人が出てこないので不満である。
SFが読みたい! 2006年版 発表!ベストSF2005[bk1]購入。2001年版からは毎年買うようにしている。ランキング上位の作品が自分にとっても高評価となるわけでは必ずしもないが,自分の好みが世間(といってもSFファンダムだが)の評価とどの程度ズレているかの目安にはなる。もちろん紹介記事は今後読む本を決めるときの参考にもなる。
今年は海外編1位が「ディアスポラ」,国内編1位は「老ヴォールの惑星」。その他の上位作品は文庫化されていない関係で未読のものも多く判断を保留したいところだが,国内外とも1位に関しては文句なく同意のWebmasterである。ディアスポラはWeb上の感想を読むと「絶賛の嵐」か,「難しすぎて読み進めることすら苦痛」かという両極端な評判が目立つが,これはそのまま読者のハードSF耐性を示していると思う。ディアスポラのハードさは飛び抜けているので,正直SFファンダムが対象のランキングでも評価が分かれるのではないかと想像していたWebmasterである。しかし1位になったところを見ると,読者の平均的な好みがハードSF寄りになってきた,ということかもしれない。
これでディアスポラには「海外編1位!」の新しい帯が付いて重版が書店に並ぶことと思うが,ハードSFと聞いてピンとこない読者の方は,手に取る前に覚悟が必要である。ハードSFを求めている読者にとってこの作品は全ての欲求を満たし,さらに想像すらしていないレベルに到達させてくれる極上の一冊だが,そうでない読者にはまるで情報理論か数学の教科書でも読んでいるように感じられるかもしれない。
ディアスポラに比べれば老ヴォールの惑星は万人にオススメできる作品。タイプの違う中篇が収められているので,どの作品が気に入るかで,自分好みのSFのサブジャンルが見えてくるのではないだろうか。
「幻惑の死と使途—ILLUSION ACTS LIKE MAGIC」(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ第6弾。第7弾の「夏のレプリカ」と対になっているらしく,章立ても奇数章のみになっていたりと凝っているが,この作品はこの作品で終始一貫していて,どの辺が次に絡んでくるのか楽しみなところ。
犀川先生の新車選びが楽しい。ルノーの安い車で1997年(単行本出版時)頃というと,トゥインゴだろうか。渋いと言えば渋い・・・かな。
「封印再度ーWho insideー」(森博嗣)[bk1]読了。S&Mシリーズ第5弾。駄洒落タイトルだが内容と関連もありなかなか工夫されている。
ミステリに限らず,5冊も同じ登場人物の長編を読んでいるとそれなりに愛着がわくもので,本作で萌絵ちゃんが○○になって犀川先生に××したシーンでは,すっかり動揺してしまったWebmasterである。
丸の内の神社に初詣に行くシーンがあって,Webmasterも昨年仕事で何度か丸の内のホテルに泊まったのでどの辺だろうと思って調べたら,下記に那古野神社(作中では名護野神社)というのがある。ここがモデルだろうか。Webmasterが泊まったのは少し西の22号線を渡ったあたりのビジネスホテルだった。まあだからどうだということもないのだが...。
ご参考:那古野神社(googleマップ)
「詩的私的ジャック」(森博嗣)読了。S&Mシリーズ第4弾。Kinoppyが古本屋でまとめ買いしたときに間違えて2冊買ってしまったもの。そのまま1冊捨てるのはもったいないので,Kinoppyが1冊,Webmasterが1冊それぞれ別々のを読んだ。
国立N大のシーンが多かったが,コンサートが開かれたT講堂というのはまさに先日見てきたところ(左から3枚目の写真)ではないか。その辺りの場面を頭に思い描きながら読むことができて良かった。萌絵ちゃんたちがコーヒーを飲んだ喫茶店の前あたりでピートのお土産のドングリを拾ったのであった。
犀川先生と萌絵ちゃんのラブコメがいい感じである。恋愛ドラマ系は苦手なWebmasterであるが,それは恋のライバルが登場したりしてドロドロするのが嫌いなだけで,こういう爽やかなのは良いと思う。これを「ままごとのような恋愛」と評して嫌う人もいるが,他人の幸せを喜ぶ心の広さが欲しい(ちょっと違うか)。
ところで,犀川先生も萌絵ちゃんも旨そうにブラックコーヒーを飲むので,影響されやすWebmasterは今日の会議で出たコーヒーをブラックで飲んでみた。しかし,やっぱりいつもと同じく苦い後味に顔をしかめるだけだった。
Webmasterはコーヒーはあまり美味しい飲み物だと思えない。Kinoppy(奥様)が飲むときは付き合うようにしている(※)が,甘いお菓子の付け合わせがある場合を除いて,たっぷりと砂糖とミルクを入れてもらうようにしている。苦い味より甘い味を好むのは本能だと思っていたが,ビールやブラックコーヒーが好きな人は結構多いようだ。
そういえば犀川先生も酒は飲めないし,味覚も「子供の好物はたいてい好き」と書いてあったではないか。にもかかわらずブラックコーヒーとタバコを好むという設定にはちょっと共感できないWebmasterであった。
※Webmasterは「食わず嫌い」がキライだ。味覚は時間とともに変化するものであり,昨日マズイと思ったものが今日は美味しいと感じるかもしれない。なのでコーヒーもそのうち美味しくなるかもしれないと,毎回楽しみにしながら試している。アレルギーでもないのにひどい偏食の人がいるが,人生を損していると思う。
笑わない数学者(森博嗣)読了。S&Mシリーズ第3弾。トリックは早い段階で見破れたので,Webmasterもだいぶミステリに慣れてきたかな,とちょっと得意になって他の書評を読んでみたら,この話は特別トリックが簡単だったらしい。
現実世界では,特殊な建物のトリックや密室殺人ではない,ただのコンビニ強盗や車上荒らし,そして子供が巻き込まれる犯罪などでも,犯人がなかなか捕まらない,あるいは完全に迷宮入りになる事件が多々ある。正直に生きている人間,ましてやそれらの犯罪の被害者にとってはまったくやりきれない話で,それこそ「神様はちゃんと見ておられて,悪いことをした人はたとえこの世で捕まらなくても,死んだら地獄で苦しむのだ」とでも信じないことには到底気持ちが収まらないだろう。
神様が罰を与えてくれると本気で信じているのなら,何も捕まえて人間が罰を与える必要はないわけで,結局は捕まえられなかったことに対する「逃げの思考」でしかない。まったく不条理な世の中だ。
2005年は「写真ってたのしいねっ」にとってはかなり大きな変化があった1年だったと思う。まずISP乗り換えに伴って,サイト全体を7年使ってきた旧ISPホームページスペースから,レンタルサーバ(SAKURA)に引っ越した。その後すぐにその旧ISP(地元のローカルプロバイダ)は,ちょっと大きな別のローカルプロバイダへの営業譲渡を発表。33.6kbpsのアナログダイヤルアップの頃から世話になってきたプロバイダだったのだが,時代の流れというものだろうか。まあ乗り換えのタイミングとしてはちょうど良かった。
レンタルサーバになって容量とCGIなどの自由度が上がったため,更新履歴&ときどき日記のコンテンツを,HTMLの手書きからブログ(Movable Type)に移行。更新の手間はたいして変わらなかったが,SEO的には多少効果があったようで,検索エンジンからのビジターが増えた。
コンテンツの更新は相変わらずスローペースで,肝心の写真からしてほとんど更新できていない。ちぇぶネタ,ストップくんネタもサボっている。更新はもっぱらブログばかり。ブログはSEO的には優れているかもしれないが,基本的には動的なコンテンツ向けで,古い記事へのアクセス性が悪いなど,そのままでは静的なコンテンツには向かない。この点は今後の課題であろう。
自分のコンテンツではないが,Kinoppy(奥様)のpyon*webはlivedoorブログでピート(猫)ネタを始めてからかなりのアクセスがある。マメな更新と他との差別化(散歩ネコなど),レスポンスの速さ(コメント,掲示板)が効果的という実例である。
読書ネタはやはり更新履歴の大部分を占めてしまった。今年読んだ本を以下にまとめておく。SF23作(再読含む),ミステリ3作,ノンフィクション2作ということだが,SFは文庫の新作で未読のものが底をついてしまったので,新たに調査して買わなければいけない。
【SF】
前哨(A.C.クラーク)
過負荷都市(神林長平)
非Aの傀儡(A.E.ヴァン・ヴォークト)
奇術師(C.プリースト)
あなたの人生の物語(T.チャン) 再読
コンタクト(C.セーガン)
タイムマシンのつくり方(広瀬正)
太陽の簒奪者(野尻抱介)
'71日本SFベスト集成(筒井康隆 編)
'72日本SFベスト集成(筒井康隆 編)
復活の日(小松左京)
ソラリスの陽のもとに(S.レム)
物体O(小松左京)
ウォー・ゲーム(D.ビショフ)
ホミニッド(R.J.ソウヤー)
ヒューマン(R.J.ソウヤー)
UMAハンター馬子 完全版1(田中啓文)
UMAハンター馬子 完全版2(田中啓文)
順列都市(G.イーガン) 再読
日本SFベスト集成 '73(筒井康隆 編)
ディアスポラ(G.イーガン)
ハイブリッド(R.J.ソウヤー)
啓示空間(A.レナルズ)
【ミステリ】
黒猫の三角(森博嗣)
冷たい密室と博士たち(森博嗣)
すべてがFになる(森博嗣)
【ノンフィクション】
スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実(松浦晋也)
国産ロケットはなぜ墜ちるのか H-IIA開発と失敗の真相(松浦晋也)
すべてがFになる(森博嗣)読了。ようやくS&Mシリーズの第一作目にして森氏の作家デビュー作を読むことができた。
元々書評や感想文を書くのは苦手だが,特にミステリーの感想というのは非常に書きにくい。面白かった点を書いてしまうとそのまま肝心な部分のネタバレになってしまう。
Webmasterは読書に限らず,娯楽はできるだけ「何か自分にとって得るものがあるか否か」で選択するようにしている。人生は有限だし,貴重な時間を何の役にも立たないことをして過ごすのはもったいないと思うからだ。従って「あー面白かった」で終わってしまう類いの映画/テレビ/マンガ/小説は優先順位が低い。その点,森氏のミステリーは,メインストーリー以外にも犀川先生の学問/研究に対する考え方などが面白く,それを追っていくだけでも価値があると思っている。
ちなみに「すべてがFになる」文庫版の解説はあの瀬名秀明氏なので,それだけでも読む価値ありかも。
「冷たい密室と博士たち」(森博嗣)読了。こちらもKinoppyの蔵書の中から貸していただいたもの。S&Mシリーズを読むのはこれで2作品目で,発行の順番は無視して(しかも肝心な1作目「すべてがFになる」は未読だし...)読んでいるが,ストーリーは一冊ごとに完結しているし,レギュラー登場人物の紹介も毎回されるので致命的な不都合はない,と思うが,たぶん通しで読んでいればニヤリとさせられる演出が多数あるのだろう。
国立N大学というと名古屋大だろうか。工学部には研究会か何かで行ったことがあるので多少親近感が...あるほどでもない。しかし国立大の工学部には萌絵ちゃんみたいな子は居ないだろう,あれは自分の学生に萌絵ちゃんみたいな子が来たらいいな~という森氏の妄想ではないか,というのがWebmasterとKinoppyの共通した感想である(偏見?)。
冷たい~のトリックは論理的ではあるが複雑で,Webmasterには想像すらできなかった。ミステリ好きな人だと状況と途中までのヒントでトリックと犯人が判ってしまったりするのだろうか。今回は「まさかこの人が犯人ではないだろう」という(先入観・思い込みによる)除外すら出来なかったので,犯人が判ったときも衝撃は少なかった。
それにしても犀川先生はともかく,萌絵ちゃんまでタバコを吸うのはちょっとなぁ。イメージが...。
黒猫の三角(森博嗣)読了。秋の夜長はミステリー…というわけでもないのだが,未読のSF本が一段落したのでKinoppy(奥様)の蔵書の中から貸していただいた。Webmasterは小中学生の頃にホームズを少し読んだ程度で,基本的にミステリーに対する耐性がない。物語を淡々と読み進めて…度肝を抜かれた。まさかそう来るか~っという感じで,まったく理想的な読者だと自分でも思う。
今まで読んだ森氏の作品は理系ミステリーという感じで,とても読みやすく好感が持てる。気になるのは登場人物に喫煙者が多いことくらいか。推理のときなど,タバコを吸わせて間を持たせるのは確かに楽かもしれないが,非喫煙者としては喫煙者に対して少なからず悪いイメージを抱いてしまうのは事実。せめて非喫煙者の登場人物の前では吸わない気遣いを見せるとか,外で吸うときは携帯灰皿の描写を入れるとかしてくれたら良かったと思う。
「国産ロケットはなぜ墜ちるのか H-IIA開発と失敗の真相」(松浦晋也)読了。これまた図書館からのレンタル品。
「所詮宇宙開発はネクタイだ」
という言葉がすべてを表している。日本という国にとって宇宙などその程度の認識ということだ。政治家・官僚の理工系教養のなさというのも確かに大きいと思うが,日本ではやはり国民の無理解という壁が大きいように思う。「何百億円もロケットにつぎ込んだ挙句に失敗するくらいなら,もっと他に使い道があるだろう」というわけだ。道路公団その他巨額の税金の無駄遣いに比べればロケットなどかわいいものなのだが,その価値はなかなか理解されることがない。子供を退屈させるな!
というのはまったくその通りで,子供に夢を与えることもせずに小手先の少子化対策などしても意味がないとWebmasterは思う。
そんな中,「はやぶさ」の小惑星イトカワへの到着は明るいニュース。サンプルリターンに無事成功することを心より祈っている。ちなみに「はやぶさ」にはWebmasterの名前も含む88万人の署名がターゲットマーカーに刻み込まれており,もうすぐイトカワに降り立つことになっている。
「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」(松浦晋也)読了。久しぶりのノンフィクション。ハードカバーは置き場所がないので図書館からレンタルである。
Webmasterはアポロ後に生まれたので,宇宙船といえばスペースシャトルという世代だ。子供の頃は学研ひみつシリーズの「スペースシャトルのひみつ」を読んで「なんて素晴らしい技術なんだろう!これで将来は誰でも宇宙に行ける時代になる!」と感動したものだが,その後の停滞は周知の通りである。本書はスペースシャトルを,世界の宇宙開発関連の貴重な時間と金を浪費させただけの大失敗作だと断じている。この話はそれ系のWebなどでは有名で,大人になったWebmasterも先日のディスカバリー号飛行再開のニュースを複雑な心境で見ていた。野口宇宙飛行士は9年辛抱してようやく宇宙に行くことが出来た。しかしスペースシャトルの高コストと低信頼性のおかげで,いつになったら宇宙に行けるのかわからない宇宙飛行士が日本にも世界にも大勢いるのである。
滑空して飛行場に着陸する姿は確かにカッコいいかもしれない。しかし現実にはパラシュートで海に降りるソユーズの方が,不恰好かもしれないが信頼性が高く安い。宇宙往還機という概念は魅力的だが,地球の重力と,水素-酸素系エンジンの効率,人類が生み出せる材料の強度という限界が克服できない限り,大変な非効率となるというお話。
アポロの後の開発が純粋に技術的な観点で進められていれば,今頃は有人月面基地くらい出来ていたかもしれないと思うと残念でならない。